洋画 サ行
紀元前1世紀。
ナザレのイエス・キリストは、神の存在を近くに感じながらも、預言者として生きることに恐れを抱いていた。
だがある晩、砂漠で神に清められたことを感じたキリストは、ようやく預言者として生きていく決心をする。自分の口を通して神が話し、自分の肉体を通じて神が行動する……そんな生き方を受け入れたのだ。やがて彼の元には続々と弟子が集まってくるようになる。
しかし彼は次第に自分の運命を悟っていく。それは、十字架にはりつけられて死ぬ、という運命だった。恐れ、恐怖におののくキリストは、神に「他に道はないのか」と泣いて問うのだった。
「人間」イエス・キリストを描いた問題作。マーティン・スコセッシがメガホンをとり、ウィレム・デフォーがキリストに扮しています。
公開当時、非常に話題になったのを記憶しています。キリストがセックスするシーンがあったり、死に怯えて泣くキリストの姿を描いたりと、キリスト教信者からみたら抗議したくなるのも致し方ないかな、とは思います。
しかし、実際「人間」であったキリストは、やはり死に対しては苦悩したんではないかと思いますし、その苦しみをしっかり描き、悪魔の誘惑の姿をきちんと描いたという点では評価してもいいんじゃないかな、と思います。
何より、ウィレム・デフォーの、その場その場の的確な演技は特筆に値します。神々しさと卑屈さ、尊大さと矮小さを併せ持つ人物像を、きちんと演じて見せた彼の演技だけでも、観る価値は十分にありました。
文明が崩壊した後の世界。世界にはペストが蔓延し、荒くれ者たちと病気とに、人々は苦しめられていた。そんな時代、わずかに文明が残るデトロイトから、サイボーグとなった女性科学者が旅に出た。その目的は、ペストの治療薬のデータを得るため。だが、そのデータを狙って荒くれ者が彼女を捕まえてしまう。そこへ、その荒くれ者に家族を殺された過去を持つ戦士が現れて……。
ジャン・クロード・ヴァン・ダム主演のアクション映画。これもB級ですね。それも、超がつく程に(笑)。アクションシーンがもっとスピーディーならば爽快な感じが楽しめたのに、ちょっと残念でした。でも、敵方のキレっぷりといい、ヴァン・ダムの後ろ回し蹴りの美しさといい、楽しめたシーンも多々ありました。
……ヴァン・ダムたちはサイボーグじゃなかったんですね……。
サイボーグの開発にしのぎを削る二つの会社。その競争により、サイボーグはもはや感情や肉体的特徴にいたるまで、人間と同じレベルにまで完成されていた。そして、片方の会社が、ライバル会社に自社ロボットをもぐりこませることを画策する。液体爆薬を体内に仕込ませ、社内で爆発させて社の中枢を破壊しようというのだ。早速、女性サイボーグの体内に液体爆弾が注入された。果たして、彼女の運命は?
「サイボーグ」の続編。今回はブレイク前のアンジェリーナ・ジョリーがサイボーグ役に扮し、人間の男性に恋をする姿を熱演しています。まだ小娘っぽい彼女ですが、これがまた可愛いですね。しっかりベッドシーンまで演じていて、気合入ってます。作品の出来も、B級SFとしてはいい感じ。かなり楽しめました。ラストはちょっともの哀しげで、切ないです。
ペンシルバニア州バックス郡。牧師だったグラハムは、半年前に妻を交通事故で亡くしたことをきっかけに、神への信仰をなくし、農場を経営しながら2人の子どもと、弟と暮らしていた。ところがある日、彼のトウモロコシ畑に、巨大なミステリー・サークルが出現する事件が起きる。悪戯ときめつけるグラハムだったが、すでにそのとき、彼の目の前には、これから起こる事件への兆候 サインが示されていたのである。ひとつひとつのサインを全てまとめ上げたとき、大きな事件の全貌が表れることに、グラハムはまだ気がついていなかったのだ……。
M・ナイト・シャマラン監督のハリウッド第3作目となるスリラー映画。今回は主演をメル・ギブソンが演じています。とにかく、凝ったカメラアングルと、閉塞感漂う緊迫感の演出はお見事です。固唾を呑んで見入ってしまいました。サスペンスタッチの場面では、本当にこの監督の手腕が冴え渡りますね。その一方で、「アンブレイカブル」にも言えるのですが、ストーリーの説得力の持たせ方にちょっと難があるかな、というのが正直な感想でした。裏付けもない、証拠とはいえない証拠が提示され、それを元に主人公達は行動を起こしていく、というのは、何だか映画の展開の仕方としては弱いかな、と思いました。とはいえ、サスペンスの描き方は本当に上手いです。とても楽しめました。
それにしても……シャマラン監督、本当に出すぎです。今回は、結構重要な役で出演しています。好きなんですね……。
若い女性ばかりを狙う連続殺人鬼グリフィン。元FBI捜査官のジムは、彼の捜査を担当していて恋人を彼に殺害され、その心の傷が元で現役を退いてシカゴへ越してきていた。しかし、グリフィンはそのジムを追ってシカゴまでやってきて、再び連続殺人を始めるのだった。何のために? ジムは再び、グリフィンとの対決に挑むことを決心する。
キアヌ・リーブス、ジェームズ・スペイダー共演のサイコスリラー。ストーリーとしてはなかなか面白く、都会の無関心なところを突いた殺害予告など、結構はらはらさせてくれました。キアヌ・リーブスの、何となくオタクっぽい雰囲気なんかはなかなかよかったと思います。まぁ、あれだけ盛り上げた標的を必死に探す緊迫感も、最終的には全く関係のないままラストへなだれ込んでしまうのが残念と言えば残念ですが。
それにしても、マリサ・トメイが老けちゃいましたね……ちょっとショック(笑)
きっかけは、1本の映画だった。アメリカで公開された、カナダの2人組の芸人主演の映画。それは放送禁止用語を連発する下品な映画だった。しかし、子供達はこの映画を面白がり、普段の生活の中でも汚い言葉を連発するようになってしまった。親たちの怒りは、主演の芸人2人を逮捕する事態を引き起こし、やがてアメリカとカナダの戦争にまで発展してしまう。果たして、子ども達は2人の芸人を助けることが出来るのか。そして、戦争の行方は?
毒の利いたブラック・コメディ映画と思っていたのですが、その点については思っていたほどではなかったというのが正直なところですね。もうちょっと突き抜けてブラックに仕立ててくれたら、もっと面白くなったと思うのですが……。卑猥語を露骨に発言することが反骨であるとは思えないんですけどね。とはいえ、コミカルな部分は結構楽しめました。
精神科医ネイサンは、感謝祭の前日、あるひとりの少女、エリザベスをカウンセリングする。10年もの間、いくつもの精神病院を転々とし、20回の診察で20通りの診断を下されたその少女。だが、その記憶の奥には、ある秘密が隠されていたのだ。その翌日、ネイサンの娘が誘拐された。誘拐犯の要求はただひとつ、「エリザベスから6桁の数字を聞き出せ」というもの。ネイサンは、必死にエリザベスの治療にあたるのだが……。
マイケル・ダグラス主演のサスペンス映画。ストーリー展開が凝っていて、とても楽しめました。エリザベスが、ネイサン父娘の姿に、記憶の中の父と自分を重ねてみる心情の表現などがとてもよく出来ていたと思います。マイケル・ダグラスは作品の選び方が上手いとよく言われますけど、本当にそうだな、と思いましたね。かなり見応えのある映画でした。
売れないミュージシャンJは、ある夜、バーで女性と出会い、そのまま彼の自宅へとふたりで赴く。ところが、そこへ見知らぬ男が現れ、Jを殴り倒して女を殺害したのである。あわてて逃げ出してしまったJには、女殺害の濡れ衣が着せられることとなる。更に、殺された女は身元データに隠蔽するべく手を加えられた後があり、Jは警察と女を殺した真犯人の両方から負われる身となるのだった。果たして、殺された女は何者なのか。そして、彼に濡れ衣を着せた人物は何者なのか?
イギリス映画のサスペンス作品です。状況が何も分からず事件に巻き込まれていく主人公、という形のストーリーですが、展開が読めずに引きずられていく感覚はなかなか小気味よかったと思います。ただ、少し展開としてはきつすぎる気がしますね。最終的に、設定が大がかりになりすぎて物語に説得力が弱くなってしまったのも残念。とはいえ、ハラハラするサスペンスを観たい、と思ったときには観てみても損はしない作品ではないでしょうか。
「あの日」、ケネディ大統領の警護についていながら、目の前で大統領を暗殺されてしまった経歴を持つシークレット・サービス、ホリガン。そんな彼の元へ、ある日、現職の大統領暗殺を予告する電話が入った。その男の名はミッチ。彼は、ホリガンを挑発するかのように繰り返し電話をかけてくる。彼にとって、これはホリガンとのゲームであるかのように……。その彼に対し、ホリガンは、再び大統領の警護につくことを決意する。今度こそ、大統領を守るために。
クリント・イーストウッド主演、ウォルフガング・ペーターゼン監督のサスペンス。悪役ミッチにジョン・マルコビッチを迎え、緊迫した駆け引きを見せてくれます。ホリガンの熱い頑固さと、ミッチの物静かな完璧主義のぶつかり合いはそれだけで画になりますね。とても楽しめました。
……ですが、レネ・ルッソと恋仲に、というのはさすがに無理があるかなぁ……なんて、ちょっと思いましたけど(笑)。
1050年前後の米国。
まだまだ人種差別が根強く残る海軍へ、ダイバーを目指してカール・ブラシアという黒人の青年が入隊してきた。黒人はコックか雑用係にしかなれないと言われていたこの時代だが、ブラシアは泳ぎの才能を発揮し、ダイバー養成学校へ入学を許可される。
しかし、そこで待っていたのは、教官であるビリー・サンデーによる強烈なしごきと、同僚からの人種差別であったのだ。
実在する、アメリカ軍初の黒人ダイバーの姿を描いたドラマ。
キューバ・グッディング・Jrとロバート・デ・ニーロ共演のこの作品は、軍隊の中に存在する人種の壁を崩そうと、努力の限りを尽くす人々の姿と、古いしがらみに縛られてその壁を守る人々の姿を対照的に描いています。
人種というものに戦いを挑み、マスター・ダイバーまで登り詰めたカールは、その後障害とも戦うことになり、見事に勝利を収めていきます。その不屈の精神力とねばり強さには、ほとほと感服。
キューバ・グッディング・Jrの演技も素晴らしかったですね。ブラシアの青年時代から中年時代まで、まさに入魂の演技で演じきっていたと思います。
また、デ・ニーロが演じた役は実在の人物ではなかったそうですが、この作品でのデ・ニーロの存在感と格好良さは格別でした。その妻役のシャーリーズ・セロンは、ちょっともったいない使われ方をしていてちょっと残念ではありましたけど。
過去のアメリカで、黒人の世界を拓いていった人物の不屈の物語。静かな感動を味わいました。
1986年、韓国の片田舎で女性の他殺体が発見された。それは、手足を拘束されてレイプされるという惨い手口の殺人だった。その後、同じ犯人によるものと思われる、同じ手口の殺人が連続して起こっていく。
特別捜査本部が置かれた現地警察で、パク刑事とソ刑事はこの難事件に挑んでいくが、犯人の手がかりは全くつかめず、次第に警察内部には焦りの色が濃くなっていくのであった。
韓国で実際に起きた連続殺人を元に映画化された、サスペンス。
終始、重苦しい映画でした。恐らくはその時代の空気を描く演出なんでしょうが閉塞感に満ちていて、映像も暗め。主人公の刑事達も、証拠の捏造や容疑者への拷問、自白の強要などを当たり前に行っていて、民主化前の高圧的な権力側の愚鈍な人間として描かれています(もっとも、そのことで自らが苦しみ、虚無感に襲われているという描写がありますので、救いはありますけどね)。
現実には、80年代の半ばから90年代初頭にかけて、10人の女性が殺され、3000人を超える容疑者が取り調べを受けたとか。
捜査に関わった捜査員は延べで180万人以上。にも関わらず、犯人は未だ捕まっていない……。
この事件は、韓国警察の、近年最大の汚点でもあるのでしょう。
事件から、まだ20年も過ぎていません。遺族だって生きています。犯人がこの映画を観る可能性だってあります。
作品の重苦しさは、その、現実の重苦しさを反映したものであるように感じました。
そんな「事件の重さ」を感じさせてくれた点で、この作品は完成度の高いものであったと思います。
詩人である主人公が、旅の部族と出会い、運命によって共に彼らの集落を荒らしている怪物たちを倒しに行くことになる。果たして、怪物の正体とは何なのか? 彼らは、無事集落を守ることが出来るのだろうか。
ジョン・マクティアナン監督、アントニオ・バンデラス主演のアクション映画。
これは映像がきれいで、アクションシーンも男臭く、面白い映画でした。
個人的にはバンデラスが表にしゃしゃり出てこないで、あくまで作品の語り部に徹しているところがグッドでした。英雄になるのはあくまで英雄になるべき人間である、というのが良かったですね。
また、壮大な話なんですが、それを100分少々の尺の中に本当にすんなりと納めてしまったマクティアナン監督の手腕はお見事!
個性的な13人の戦士たちと美しい映像ともども、観るべきところの多い作品でした。
でもこの映画、集客があんまり良くなかったみたいですね。ある雑誌では公開早々に「カルトな名作が誕生してしまった」なんて書かれる始末……がんばれ、マクティアナン監督!
ダグラスは、ロサンゼルスにある大企業のビルの13階で、バーチャル社会の開発を手がけていた。その社会は1930年代を模して作られており、その社会の中では、架空の人物達が生活をしていた。そして、その世界の特定の人物の心に、自分の脳の中をダウンロードすることによって、あたかも現実であるかのようにその社会の中で暮らすことが出来るのである。そのシステムの完成は、もう目の前まで来ていた。ところがそんな時、開発のトップであった上司が殺される事件が起きる。しかも、殺される直前、その上司はバーチャル・リアリティの中へ入っていたようなのだ。ダグラスは、上司の死の謎を解くため、バーチャル世界の中へ入っていくのだが……。
ローランド・エメリッヒ制作のSFドラマ。かなり楽しめる、まっとうなSF映画です。エメリッヒが絡んでいるのでもうちょっと荒唐無稽なものになるかと思っていたんですけど、意外でしたね。ストーリー展開も真ん中あたりで全部読めてしまうんですけど、それも真っ向勝負で描ききった感があり、面白く観ることが出来ました。安心して楽しめる、佳作SF映画です。
火事によって妻を失い、幸せだった家庭が崩壊してしまったアーサー。彼はふたりの子供達と小さなアパートに移り住み、荒み気味の生活を送るようになる。そんな彼の元へ、ある日弁護士がやってくる。その弁護士が持ってきた話とは、アーサーの叔父の死の報せと、遺産として残された豪邸相続の話だった。早速その豪邸を観に行くアーサー達一家。だがそこで彼らを待っていたのは、叔父の研究の謎と想像を絶する恐怖だったのだ。
「TATARI」に続く、ダークキャッスル制作のホラー映画。特殊なメガネをかけることにより、幽霊を見ることが出来るようになるという設定で、作中でそのメガネを面白い使い方で見せているシーンがいくつかありました。こういう工夫は楽しいですね。
一方、ホラーとしてはそんなに怖くありません。「ある計画」のために集められた12人の幽霊達(13人でないところがミソ)は、幽霊的な恐ろしさと言うよりは凶暴な化け物的恐ろしさで描かれているので、何が起こるか分からないという不安感があまり感じられないんですね。
それでも、壁が全面ガラス張りという特徴的な豪邸のビジュアルデザインと、家族の愛情を描いたストーリーにはそこそこ楽しませてもらいました。
時はケネディ政権下のアメリカ。キューバへのソ連の核兵器運搬を察知したアメリカ政府は、ソ連への警告を発する。それに対し、心当たりはないと答えるソ連側。ひとつ間違えると第3次世界大戦を引き起こしそうな緊迫感の中で、大統領は事態の収拾へ向けての道を探っていた……。
ケビン・コスナー主演。キューバ危機の真実を描く、ドキュメンタリー調のエンタテイメント作品。
これは面白かったです。歴史上の事柄なので最後の結末は分かっているんですが、細かに何が起こったかということまでは知らなかったのと、ホワイトハウスの中で何が起こったのかということは分からないので、この映画はなかなか興味深く鑑賞できました。
もちろん、映画なのである程度の脚色はなされていると思いますが。
ケビン・コスナーはジョン・F・ケネディ大統領の補佐官を演じています。このコスナー、力の抜けた演技をしていたと思います。妙に力の入りすぎた役柄を観ることが多かったので、この演技には好感が持てました。
しかし、コスナーさん、ケネディ大統領がらみの映画がお好きですね(笑)。
「ある事件」をきっかけに、霊能力が備わった男。彼はその力を使って、詐欺まがいの霊感商法を行っていた。しかし、ある時、彼の前に死に神が現れる。その死に神は、彼の脳裏から離れない「ある事件」と関わっていたのだった。死に神との対決を決意する彼。果たしてその死に神の正体は? そして対決の結末は?
主演マイケル・J・フォックス、製作総指揮ロバート・ゼメキスの「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」コンビによるコメディー・ホラー映画です。
特別に注目された作品ではなく、大きく取り上げられた記憶もない映画ですが(実際僕もビデオが発売になってから観ました)、良くできた映画です。DVDが発売になったので購入してきました。
初見の時は、とにかくストーリーが読めなかった。しっかりと脚本が練られていて、随所に使われているCGの使い方もお見事。
ずっと振り回されているようなストーリー展開は乗れたら快感ですよ。
佳作です。
少年時代、母親が働くロンドンの地下工事現場で、巨大なドラゴンに遭遇した経験を持つクイン。そのドラゴンは彼の母親を殺し、地上に上がると、人々を襲いながら瞬く間に繁殖し、人類を滅亡へと導き始めたのだった。
そして、20年後。わずかに生き残った人々は、各地に隠れるように住み、飢えと闘いながらもドラゴンが食糧難で死に絶えるのを待つだけの生活を送っていた。
そしてクインは、イギリスのある要塞で、小さな集落のリーダーとして成長していた。
そんなクインの要塞に、ある日、アメリカ人の兵士達が、ヘリやジープを率いてやって来る。彼らはロンドンへ行き、最初のドラゴンを殺すことでドラゴンを滅亡させると言うのだが……。
文明が壊滅した後の世界を舞台に、火を吐くドラゴンと生き残った人々の戦いを描く映画ですが、んー、突っ込みどころは満載ですね。大体、核ミサイルを撃ち込んですら殺せなかった化け物相手に、あんな武器で立ち向かうのか? と思わせるラストとか、そもそも何でアメリカ人達は「雄はたった一頭。そいつを殺せばあいつらは滅ぼせる」なんて言い切れるのか……(たまたま殺した200等が雌だった、ってことだけで)。
とはいえ、それらの矛盾や疑問を流して観てみれば、それなりに楽しめる映画だったと思います。ドラゴンの炎も迫力があったし、CGで描かれたドラゴンの存在感も十分味わえましたし。
それに、マシュー・マコノヒーのマッチョなスキンヘッドには本当に驚かされました。迫力のある演技をしてましたね。「コンタクト」の頃の繊細な優男というイメージが、吹っ飛んでしまいました。
ある夜、一人の少女が、自宅で不可解な死を遂げた。その叔母にあたる、シアトル・ポストの記者レイチェルは、その葬儀で姪の友人達から不思議なうわさ話を聞かされる。「死んだ彼女は、見たら7日後に必ず死ぬ呪われたビデオを見たのだ」と。そして、彼女と一緒にビデオを見たボーイフレンド達も、なんと彼女と同時刻に不自然な死を迎えていたことが分かる。果たして、呪いのビデオテープは本当に存在するのか。取材を開始したレイチェルは、しかし、やがて自らも恐ろしい運命に巻き込まれていくことになるのだった。
日本で大ヒットを記録し、「和製ホラーブーム」を決定的なものとした傑作「リング」の、ハリウッドリメイク版です。ストーリーや展開の仕方もほぼオリジナルと同じ。色々といじってはあるものの、オリジナルの恐怖のエキスはほぼそのままに作品中に活かしてありました。その点については、オリジナルの完成度が高かったためにいじるにいじれなかった様な印象も受けましたが、でもその怖さは非常に上手く表現してあり、楽しめました。
もっとも、オリジナル版を初めて見たときの「心臓が止まる」かのような恐怖は味わえませんでしたけど……これはこのリメイクがオリジナルにかなり忠実だったためでしょうね。
主演のナオミ・ワッツも好演。久々に見応えのあるホラー映画でした。
宇宙探査のため、宇宙船に乗って地球を旅立った研究者たち。しかし、事故が起こって不時着した惑星では、猿が君臨し、人を支配する惑星だった。猿にとらえられた科学者は、なんとか逃げだそうとするのだが。
あまりにも有名なSF映画の名作ですが、実は僕は今まで観たことがありませんでした。この当時としては、このビジュアルはかなりショックだったんでしょうね。世界観や設定など、かなり作り込まれていると感じました。ただ、ヒトがしゃべらない理由だけが分かりませんでしたが(笑)。
電磁波に飛ばされ、どこなのかも分からない惑星に不時着した宇宙飛行士。彼がそこで見た物は、猿が惑星の支配者であり、人間がその下で狩られる立場にあるという、地球の環境とは逆転した惑星だった。捉えられてしまった彼だったが、猿の中でも人間愛護を唱える者の力を借りて、猿相手に立ち上がるのだが……。
大ヒットしたSF映画「猿の惑星」の、リメイクです。今回は設定を大きく変えて、かなり楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっていました。ティム・バートンの凝り具合は今回も健在ですね。独特さがかなり潜んでしまったような気がしたのは、ちょっと残念ではありますが、演出の力はやはり力強くていい感じでした。
でも、ラストのオチは、個人的にはいらなかったなぁ……(笑)。
宇宙にいくつも広がる平行宇宙(パラレル・ワールド)。その多くの宇宙には、それぞれ少しずつ異なった同じ人間が存在しており、その生命エネルギーは各宇宙間で共有されていた。つまり、ある宇宙である人間が死ぬと、別の宇宙の同じ人間に、その生命エネルギーが分け与えられるのだ。それに気づいた男ユーロウは、次元間転移を繰り返し、123の宇宙に存在する自分の分身を殺害するという犯罪を犯していた。そして、後ひとり殺せば、彼は全宇宙にただひとりの存在となる。そのとき、ユーロウは全能となるのだ。しかし、ただひとり残った男ゲイブにも、殺された分身達からの力が流れ込んでいたのだった……。
ジェット・リー主演のSFアクション映画。ジェット・リー対ジェット・リーという図式が、とても素晴らしいです。最後の一人二役での殺陣は、お見事としかいいようのない程。この人の動きのキレには目が追いつきませんね、ホント。
反面、映画としてはちょっとどうしようもない程穴だらけ、というか、安っぽいテレビドラマ並みの展開を見せてくれてちょっと辛いです。しかし、それもジェット・リーのアクションで全て帳消しにしてあまりある程。ジェット・リーのアクションさえ観られれば満足、という人だったら観て絶対損はしないと思います。
世界を股にかけて活躍する国際救助隊、サンダーバード。
ジェフ・トレーシーが自分の息子たちとともに創設したこの救助隊は、孤島トレーシー・アイランドを拠点として活動を展開していた。
ジェフの末息子アランは、まだ隊員として父親に認めてもらえずに、兄たちの活躍をテレビで見ては憧れる毎日を過ごす日々。
だがある日、ジェフに恨みを持つフッドという男が、サンダーバードに攻撃を仕掛けるという事件が起きたことから事態は一変する。宇宙ステーションサンダーバード5号にミサイル攻撃を仕掛け、ジェフ達がその救助に向かったスキに、トレーシーアイランドを占拠してしまったのだ。
ジェフはそのまま、サンダーバード2号を使って世界の銀行を襲撃する計画を立てる。
サンダーバードを守り、ジェフの銀行襲撃を阻止できるのは、トレーシーアイランドに友人達と取り残されたアランしかいない!
アランと友人達は、サンダーバード本部の奪回作戦に乗り出すのだった。
かつて人気を博した人形ドラマを実写映画化。
サンダーバード隊の活躍を楽しみに観に行ったのですが……えーっと、これ、いきなり番外編ですか?
この作品、末弟のアランが隊員になる前の話で、つまり人形劇で描かれた物語の前日談。で、物語開始早々にアラン以外の隊員が宇宙船に閉じこめられてしまうため、「サンダーバード隊の活躍」といえるようなものはほとんど見られません。大部分が、敵に占拠されたアラン少年とその友人達の活躍に割かれています。
そんな訳で、キッズムービーとして仕上げられてしまった本作品。それが悪い訳ではなく、また、その方向での作品としてはよくまとめられていて面白くもあるのですが、せっかくサンダーバードという題材を持ってきたのであれば、やっぱりサンダーバード1号から5号までのマシンが大活躍する、大活劇を見せてもらいたかったところでした。それがちょっと残念。
組織スペクターによって、NATOの爆撃機から、原子爆弾が二基盗み出された。スペクターはその原爆を盾に、世界の国々を脅迫しにかかる。一方その頃、ジェームズ・ボンドは、休暇中のある療養所で入れ墨の目立つ男を目にする。その男は、スペクターの構成員だったのだ。NATOの原爆強奪との関連を疑い、ボンドはその地域の調査に乗り出すのだが。
「007」シリーズの第4作目にして、派手な娯楽色がいっそう強まったエンタテイメントアクション映画です。凝った見せ場と、ショーン・コネリー演じるボンドの渋さ、スマートさを堪能させてもらいました。
若干、最後の海中戦が長すぎる気がして少しだれましたけど、この当時としては本当に工夫を凝らしてその一大乱闘シーンを撮影しているのが画面から伝わってきて、その意欲に不満も吹っ飛んでしまいました。
ボンドの洗練されたたたずまいと、美しくスクリーンを彩るボンドガールの美女達。
エンタテイメント作品として、本当に楽しませてもらいました。
アマゾンの熱帯雨林の破壊に反対する思想家が、何者かに暗殺された。取材に訪れたジャーナリストは、現地で反対活動に従事しているアメリカ人女性とともにその犯人を探ろうとするが、そのことから彼らも命を狙われることとなるのだった。
サンドラ・ブロックがまだ無名だった頃に主演した映画で、日本未公開だった作品です。とはいえ、観てみると、未公開にしたのが納得できる内容でしたね……。テーマは社会的な物を扱っていながら、森林伐採の実体の描き方も、開発による問題点の描き方も不十分で、訴えるものが伝わってきません。これでは、映画として評価できませんね。
この作品では、サンドラ・ブロックが濡れ場も演じていますけど(たいしたシーンではありませんが)、これじゃあ脱ぎ損ですね……こんなシーン入れるくらいなら、きっちりと物語の輪郭を描くシーンを入れて欲しかったです。低予算映画としても、残念な出来でした。
17歳でトップモデルとなった、ジア・キャランジ。彼女は、幼い頃から両親が不仲で愛情に恵まれず、そのため支配欲、独占欲の強い女性だった。
レズビアンで女性を愛し、だがどこまでも愛情を求め続けるために満たされないジア。やがて、彼女は麻薬に心の安定を求めていくようになってしまう。
麻薬中毒に苦しみ、エイズに冒され、26歳の若さでこの世を去ったスーパーモデル、ジアの人生とは。
実在のモデルの生涯を描いた、これはテレビ映画ですね。
主演はアンジェリーナ・ジョリーで、この作品でゴールデングローブテレビ映画部門の主演女優賞を受賞しているようです。
その受賞が伊達でなく、アンジェリーナ・ジョリーは役になりきっていますね。実在した、モデルの歴史を変えたと言われるジアの、幼少時代の家族不和故に大人になっても満たされぬ愛情飢餓と、売れっ子に上り詰めた故の孤独感、そして麻薬に溺れていく恍惚感などを、恐ろしいほど鬼気迫る演技で表現しています。いや、凄い。
また、映画の冒頭には、これでもかと言わんばかりに裸全開。素っ裸で廊下を歩き、エレベーター前で恋人(女性)を呼び止めたりするシーンは、もう見せすぎって感じもします。いや、嬉しいんですけどね。
ただ、やはり救われない女性を描いたドラマですから、物語は本当に重く、暗いです。
所々に挿入される、生前のジアを語る関係者達のインタビューが、多面的なジアという人物像を、様々な立場からの視点で浮かび上がらせていますね。それが作品のテンポを落としてもいるんですが、伝記物を描く試みとしては面白いな、と思いました。
ただし、そのインタビューを受けているのは実在の本人ではなく、作中その人物を演じた俳優が役柄のままインタビューされているんですよね。これにはちょっと違和感がありました。そのせいでフィクション色が強くなりすぎてしまった感じがします。まぁ、架空の人物も登場してますので、仕方がなかったのかなとも思いますけど。
個人的には、現代的なモデルの先駆けと言われているジアという人物を知ることが出来ただけでも収穫だったな、と思います。けして共感は出来ないけれど、愛情に飢え、売れていくことで孤独感を強めていった彼女の人生。特に母親が、自分の虚栄心を満たす道具としてでなく、彼女の存在その物を愛してあげれば、この悲劇はなかったかも知れない……そう考えると心が重くなります。
けして万人にお勧め出来る作品ではありませんが、アンジェリーナ・ジョリーの熱演を堪能出来る佳作です。
近未来の地球で、とうとう冷凍処理されることになった伝説の連続殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズ。だが、その処理段階でジェイソンが暴れ出し、科学者ローワンはやっとの思いで処理を施すものの、自らも冷凍保存されてしまうこととなった。それから400年。人間は宇宙へと移住し、荒廃し見捨てられた惑星となった地球へ、考古学の研究として大学生達がやってくる。そこで彼らが発掘したのは、ローワンと……ジェイソン・ボーヒーズだったのだ。
70年代から80年代にかけて大ヒットしたホラー映画シリーズ「13日の金曜日」の第10作目。とうとう、今作では宇宙船に舞台を移し、SFとなってしまいました。このシリーズ、第8作目の「ジェイソンN.Y.へ」辺りから迷走、というかどう考えてもホラーを装いつつギャグやっているなぁ、と感じていましたけど、ここまでやってきたか、と思いました。あ、楽しい意味で。
後半から、ジェイソンに対抗する究極兵器(?)が登場してから、作品のペースもテンションも一気に上がります。展開の爽快さとハイテンションはB級映画の要ですからね。この辺りは見ていてとても楽しいものでした。
それに、デビッド・クローネンバーグ監督がどうしようもない科学者役で出演していたのも遊び心があって楽しめましたね。
欲を言えば、もうちょっとジェイソンに不気味な感じを出してもらえたら良かったのに、とも思いますが、これまでのシリーズのイメージというものもありますから、これはこれで良かったのかも知れません。
ラストの終わり方は、なかなか綺麗でよかったです。印象的でした。
ただ、「13日の金曜日」を観てこなかった人たちにとっては、この映画も魅力半分かなぁ、と思いました。これまでのセルフパロディーとかも含んでますから。これはシリーズものである以上、仕方のないことかも知れませんけどね。
18世紀のフランス・ジェヴォーダン地方で、女子どもばかりが殺される事件が相次いで起こった。残された傷跡から巨大な獣の仕業だと推測されたが、その正体はようとして知れなかったのである。果たして、オオカミの仕業なのか? それとも別の何者かが襲ったのだろうか。フランス史上最大の伝説である「ジェヴォーダンの獣」の謎が明かされる。
アクションが素晴らしい作品でした。果たして、どこまで真実でどこまでが推測なのかは分かりませんが、なかなか見応えもあります。ただ、作品の雰囲気自体はじめっと陰湿な感じがして、個人的には苦手な部分が多かったのも事実。少し気持ち悪くなってしまいました。
それにしても、モニカ・ベルッチの身体は息をのむ程素晴らしいですねえ……。
落ちこぼれの刑事によって集められた刑事訓練生3人。彼らは、その刑事の元で働くよう言われ、嫌々協力することになる。しかし、その事件を探っている内、大きな組織間の抗争が見えてきて、彼らはそれに巻き込まれていくのだった。
ジャッキー・チェンが制作に加わり、仲村トオルが悪役で登場する香港映画。
香港のニュージェネレーション・ムービーといったところでしょうか。なかなか面白かったです。
ストーリーの展開は「スピード」以来ひとつの典型となった形なんですが、キャラクターそれぞれの描き方がなかなか的確(もっとも、主人公3人の捜査への起用のされ方はかなりウソっぽいですが ^^;)。
仲村トオルは、なかなかの存在感を見せてましたね。ちょっと発音に難ありの英語と、明らかに演出でごまかしているアクションシーンはご愛敬ですが(香港でアクションやれる俳優なんてそうはいないか)、悪の色気の出し方は結構堂に入った物でした。最後、お涙方面に行きさえしなければ喝采していたところです(笑)。
最後にちょっとだけジャッキー・チェンが出てきたところも、かつてのファンとしては嬉しいところでした。
香港ノワールなんて言われて暗い作品が多かった時期の香港映画の特色と、元来の持ち味である娯楽色が融合して、楽しめる映画になっていたと思います。
山奥にある、美しく静かなホテル。そのホテルは、美しい姉妹が経営するホテルだった。オーナー姉妹の妹ルーシーは精神に病気を持っているため、ホテルの中だけを活動の場としていたが、ある日、宿泊に来たマットという青年に恋をしてしまう。そのときから、姉妹が隠してきた過去が、次第に影を落としてくるのだった。
ジェニファー・ジェイソン・リー主演のホラー映画……と、いうか、サスペンスでしょうか。
レンタルビデオ店でもホラー映画のコーナーに置いてあったんですが、全く怖くありません。というより、映画の後半まで、あまりにも何事もなく話が進んでいって拍子抜けというか……。
霊の存在を臭わせようとするシーンもあるのですがあまり効果的でないし、答えがあかされる直前まで、犬が1匹しか殺されていないのでは怖がろうにも怖がれないというか……。
見所といえば、冒頭と後半に少しはいるジェニファー・ジェイソン・リーの、すごく可愛いらしいヌードくらいでしょうか。
人類が、宇宙へその生活圏を広げて既に2百有余年。宇宙コロニーは自治権を求めて軍をもち、地球政府との対立を深めていた。そんな状況の中、地球とコロニーは遂に戦争状態に突入。コロニー側が密かに開発していた人型戦闘機(モビルスーツ)に、元地球政府軍パイロットの主人公は乗り込んでいくのだった。
という訳で、アメリカで制作された「ガンダム」です(笑)。厳密に言うと多分映画ではなく、テレビ映画だと思うのですが……主人公の名前すら見終わったあと覚えていないというのがこの作品に対する僕の評価を如実に物語っていますね(苦笑)。CGで描かれたモビルスーツの戦闘シーンも、動きがかなり不自然で、一見の価値はない、と言ってもいいでしょう。かなり観ていてつらい作品でした(涙)。
過去の診療の失敗により、心に傷を負った児童精神科医。彼は自らを立ち直らせるべく、ひとりの少年の診療を開始する。その少年は、過去に失敗した少年と、症状がそっくりだったのだ。しかし話をしていくうち、彼は少年に秘められた驚くべき力を知ることになるのだった。
ブルース・ウィリス主演のホラー映画(と形容していいのかな……?)です。
子役のハーレイ・ジョエル・オスメント君の演技力と、衝撃のラストが話題になった映画ですね。
脚本の出来、演出、そして役者の演技と、どれをとっても文句のつけようがない傑作だと思います。1999年公開の映画では僕のベスト1です(ちなみにそれまでは「交渉人」でした。あれを越えるものはその年にはないと思っていたのに……)。
「衝撃の結末」については、残念ながら途中で気づいてしまいましたが、それでも、というか、だからこそ、一つ一つのショットが細かな伏線になっているのを感心しながら観ることが出来ました。
最後は、かなり泣けました。
科学技術の発達によりクローン技術も飛躍的に進歩した近未来。「クローンで人を創ってはならない」とする「6d法」が成立し、人間に対するクローン技術の適用は禁止されていた。しかし、ヘリコプターの操縦士であるアダムは、誕生日の夜に帰宅し、もう一人の自分が家族から祝福されているのを目撃する。そして襲い来る、謎の襲撃者。誰が、何のために彼のクローンを創ったのか? 自分の命を狙って襲ってくる奴らは誰なのか? 家族を、自分を取り戻すため、彼の孤軍奮闘の戦いが始まった。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクションSF大作。突然自分の生活を乗っ取られてとまどう男、といった役をやっていますが、さすがシュワちゃん、とまどうのは最初だけ(笑)。がんがん銃をぶっ放すわ、恐れも知らずに敵にぶつかっていくわ、とても「普通の男」には見えないですね。脇役たちはどこまでも脇役で、深く描かれることが全くなく、シュワルツェネッガーの「俺映画」といった風情。いえ、それが悪いとか面白くないとかいうことではなく、それが「シュワ映画」の一番の特徴ですし、それで押し切りまくってこそシュワルツェネッガーですから、これはこれでいいんです。十分楽しめました。
伝説の車泥棒メンフィスは、今は足を洗い、子供たちにカートを教える日々を送っていた。そんな彼の元に昔の仲間が現れ、彼の弟が車泥棒の仕事を失敗して命が危ないということを告げられる。弟を救うためには、彼がその失敗した仕事をやり遂げるしかない……。追いつめられたメンフィスは、やむなく車泥棒へと復帰する決意をするのだった。
ニコラス・ケイジが足を洗った伝説の車泥棒を演じています。
面白かった!
これ、細部をつつくと色々出てきそうです。手際の良い泥棒の手口をスタイリッシュに描いてはいるのですがその描写が案外あっさりしていて食い足りなく、網をかいくぐっていくようなスリリングな盗みをやっている描写も物足りないし(「ルパン三世」の方がこの辺りは上かな、と思います)、車をあれだけ見せておきながらカーアクションがメインでは決してない(いや、ストーリーはきちんとしていると思うんですよ。あくまで、演出の問題)。
でも、いいんです!
なぜって、ニコラス・ケイジが輝いている(笑)!
そしてフェラーリやシェルビーのエンジン音に体が震えた!
これだけで、この映画はいい作品なんです!
こんなに生き生きとしたニコラス・ケイジを見たのは「シティ・オブ・エンジェル」以来かなぁ。演技にますます磨きがかかってきたって気がします。
新聞社のインク係をつとめる冴えない中年男クオイル。彼は、子供の頃からの父親の厳しい教育により、劣等感と空虚感だけを抱える無気力な男になっていた。そんな彼だったが、妻ペタルが愛人と一緒に事故で死んでしまったのをきっかけに、ひとり娘を連れて父親の故郷であるニューファンドランド島へ移り住むことにする。その島の新聞社で港湾ニュース係になった彼は、慣れないタイプライターで記事を書きながら、その島にすむ人々との出会いや触れ合いを通じて、次第に妻を失った喪失感、そして幼い頃から胸に巣くっていた劣等感や空虚感を癒していくのだった。
ラッセ・ハルストレム監督の人生ドラマ。主演はケビン・スペイシーで、ジュリアン・ムーア、ケイト・ブランシェット共演。
全面的に「泣かせよう」という演出方法をとっていないのに好感が持てました。躾の名を借りた厳しさが子供の成長に与える深刻なダメージをしっかりと、しかしさらりと描いて見せたのはうまいですね。押しつけがましくない作風は、ハルストレム監督の持ち味でしょうか。叙情詩ではなく叙事詩であることが、この作品の爽やかさ、感動につながっているように思います。
それにしても、ケビン・スペイシーは、本当にダメ男を演じさせたらはまりますね。今回は「ミスター・コバヤシ」との再共演も興味深く見させてもらいました。
しかし何よりも、ケイト・ブランシェットのビッチ振りが何よりも強烈でした……。
女子大生のトリッシュは、春休みの帰省のため、弟のダリーの運転で田舎道の家路を急いでいた。と、そのふたりの車の後ろに突如、猛スピードでトラックが接近してきたかと思うと、けたたましくクラクションを鳴らし、接触するすれすれのところで追い抜いていったのだ。唖然としてその車を見送るふたり。だが、更にしばらく車を走らせると、道の脇にある古ぼけた協会に、そのトラックが停車しているのをふたりは目撃する。そして、その協会の脇にある排水用のパイプに、黒い人影が血に染まったシーツに包まれた「人間のようなもの」を捨てているところを見てしまうことになるのだった。その人影は、ふたりに見られたことに気がついて、猛然と後を追ってくる。果たして、その人影は何者なのか。そして、ふたりの運命は?
フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮を担当したホラー映画。正体が分からないまま追ってくる化け物には、なかなか迫力を感じました。
しかし、欲を言えば、相手が人間でない分だけ、何をされても驚きが少ないというか、どんな展開になっても新鮮味がないというか……やっぱり、見る側の私が、モンスター・ホラーに慣れすぎちゃってるんでしょうね、哀しいかな(笑)。
でも、雰囲気的には「悪魔のいけにえ」にも通じるようなところがあって、結構ドキドキしながら観ることが出来ました。「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」にも見られた、コッポラ監督のセンスを感じましたね。
アメリカの片田舎で、白血病を発症する子供が相次いだ。町にある製皮工場の廃液が地下水に流れ込み、それを井戸から汲んで飲んだ住人が発症したらしい。その事件を持ち込まれた弁護士は、その工場をもつ会社を相手に訴訟を起こすが、それは泥沼の闘いの始まりであった。
ジョン・トラボルタが熱血弁護士に扮した、実話を元にした法廷映画。お金の亡者だった弁護士が、次第に金以外の目的で動くようになっていく様を好演しています。訴訟社会の裏のことまで描いて見せた点に好感を持ちましたね。地域に根づいた産業が環境破壊を引き起こしてしまった場合、解決がなかなか難しいということを改めて考えさせてくれた作品でした。
冬の間は雪に閉ざされ、外界との接触が全くなくなってしまう「展望ホテル」。その管理人に、冬の間だけ雇われた作家のジャックは、妻と息子を連れてホテルへやってくる。だが、そのホテルには、邪悪な「何か」が巣くっていたのだ。その存在に影響されたのか、次第に様子がおかしくなっていくジャックだったが……。
スタンリー・キューブリックがスティーブン・キングの原作を元に完成させたホラー映画。いや、この映画は本当に怖いです。ほぼ全編に渡って、非常に不気味な雰囲気が画面に溢れています。ど派手ではなく抑えた演出なんですが、光の加減やカメラ構図など、とても閉塞感のある画作りに、観ているこちらまで息が詰まりそうになりました。未だにホラー映画の傑作といわれているのも納得の出来です。
それにしてもやはり見所はジャック・ニコルソンの怪演。本当に狂ったかのような演技は、もう鳥肌ものです。
余談ですが、原作のスティーブン・キングはこの映画の出来に強い不満を抱いている、というのは有名な話です。その不満振りは、あまりに強すぎて自分でテレビ映画の制作をしてしまった程。そのテレビ映画も日本でビデオレンタルされていますが、こちらはあまり怖くないんですよね……話は面白いんですが、ホラー映画とはちょっと違う感じ。さて、皆さんはどちらの「シャイニング」がお好みでしょうか? 私はどちらも好きですが、やはり「ホラー」という観点から、どちらかといえば映画版の方が好きですね。
1921年のドイツ。映画監督F.W.ムルナウは、1本の吸血鬼ものの映画を撮影していた。それは、1922年に公開されて以後、吸血鬼映画に計り知れない影響を与えた傑作「吸血鬼ノスフェラトゥ」の撮影であった。その撮影にあたって、ムルナウが吸血鬼役に選んだのは、シュレックという無名の俳優。だが、ロケ地で初めて彼を観た撮影隊一行は、そのあまりの異様な風貌に愕然となる。その姿は、まさに本物の吸血鬼さながらだったのだ。そして後に名作となる映画の撮影は進行していく。その後に起こる惨劇も知らないままに……。
ウィレム・デフォーとジョン・マルコビッチというふたりの個性派俳優が共演した、メタ映画とも言うべき映画。
吸血鬼映画の基礎を作ったと言われるサイレンス映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」で吸血鬼を演じたシュレックは、実は本物のヴァンパイアだった、という設定に面白い物を感じました。私はこの「吸血鬼ノスフェラトゥ」は観ていないので実際にどうだったのかは知らないのですけど、本当に鬼気迫っていて怖かったそうですね。しかし、現実にはその後、このシュレックという役者は目立たない平凡な役者としてスクリーンから消えていったそうですが……。
この「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」についていえば、ウィレム・デフォーはまさに本物の人外の物とでもいうような迫力を見せてくれています。そしてジョン・マルコビッチも、まさに渾身の演技。これに恐らくは意図的な古くさい構図の演出や、見せ方の巧さで、じっくり最後まで見せてくれました。こういった映画も、たまには面白くていいですね。
それにしても、やはりこの作品の一番の功労者は、制作に回り、ウィレム・デフォーとジョン・マルコビッチのふたりを出演させたニコラス・ケイジかも知れませんね。
警官のシャフトは、ある晩、殺人容疑でひとりの男を逮捕した。だが、男は名家の息子であり、家と金の力で男は保釈され、そのまま逃走してしまう。それから2年。再び戻ってきた男を、シャフトは再び逮捕した。だが、またもや男が保釈されてしまったことから、シャフトはもはや法律では及ばない悪へ立ち向かうため、超法規的な行動をとり始めるのだった。
サミュエル・L・ジャクソン主演の刑事物。30年程前の映画「黒のジャガー」のリメイクだそうです。設定は探偵ではなく刑事なので、だいぶ違うみたいですが。サミュエル・L・ジャクソンはかっこよかったんですが、もうちょっとクールな役回りかな、と予想していたので、その点が残念でした。もっとクールにかっこよくしようと思えば出来たはずなのに、と思いましたね。でも、勧善懲悪のストーリーであり、現在の人種問題もうまく取り込んでストーリーを組み立ててあるようなので、観ていて楽しめました。
フランスが、イギリスの侵攻を受けていた暗黒時代。
民衆の中には語り継がれる伝説があった。
「ロレーヌより乙女が現れて、フランスを敵から救う 」。
そしてついに姿を現した、わずか17歳の少女ジャンヌ・ダルク。彼女は自らを神の使いであると言い、フランスの王太子に向かって、必ずフランス王にしてみせると宣言する。
自ら兵を率いて、イギリスの制圧下にある町に乗り込むジャンヌ。言葉通り、イギリスの手から町を解放させ、やがてついにフランスの王太子を正式なフランス王として認める戴冠式を行うに至る。
しかし、王となった彼は、未だ戦いを望むジャンヌを次第に邪魔に思うようになっていた。
そして、ジャンヌはイギリスに捕らえられ、教会による裁判を受けることになるのだった。
リュック・ベッソン監督がフランスの伝説の救世主を描いた史劇巨編。
この作品で、ベッソン監督はジャンヌ・ダルクという女神の神話をそぎ落とし、17歳にして突如歴史に現れ、わずか2年間で処刑された一人の少女の姿を描こうと試みています。
結果として、ジャンヌに焦点を当てたため、他の人物が全く描かれていない状況になってしまい、そのことで作品の評価が賛否分かれてしまったようですが、僕はこの映画はよく出来ていると思います。
もっとも、良さに気がついたのは2回目の鑑賞で、でしたが。1回目はやはり「中途半端だなぁ」と感じてしまって、あまり高く評価する気にはなれなかったんですね。2回目では、ベッソン監督がどういう意図でこの作品を撮影したのかが最初から分かっていて観たため、やっと理解できた、というのが実状です。
そうそう。この映画のDVDですが、驚くほど高画質です。この映像は素晴らしい!
また、特典として収録されていたミラ・ジョヴォヴィッチのインタビュー(この時のジョヴォヴィッチは本当に綺麗!)などで、ジャンヌが実際に送ったとされる手紙などが紹介され、また最後の裁判シーンのセリフなどもほとんどが本当にジャンヌが言ったとされるセリフで構成されていると知り、真実の重みを感じました。
大変見応えのある作品でした。
アメリカ、カーソン・シティで保安官を勤めるようになっていたチョン・ワンの元に、ある日妹から悲報が届く。それは、疎遠になっていた父親が何者かに殺害されたという報せだった。
その犯人はイギリスにいると妹の手紙に書いてあったため、イギリスへと渡る決意をするチョン。彼はその旅費として、かつての相棒ロイ・オバノンに預けているお金をもらうため、ロイの住むニューヨークへと旅立つのだった。
ジャッキー・チェン、オーウェン・ウィルソン共演のアクション映画「シャンハイ・ヌーン」の続編。今作でも再びこのふたりが共演し、楽しいアクションを見せてくれてます。
ジャッキー・チェンのアクションも円熟味を増してきましたね。
様々なシチュエーションで、色んなアイデアを盛り込んで行われるアクションは、コメディー色を前面に押し出して楽しさいっぱいです。これぞジャッキー・チェンの真骨頂。特に「市場での大乱闘」シーンでは、往年のミュージカル映画やサイレンス映画へのオマージュをふんだんに盛り込みつつ、美しいアクションを楽しませてくれました。
若干オーウェン・ウィルソンとのコンビが良くない感じがしたり、ラストでのせっかくのドニー・イェンとの対決が短かったりと、不満もない訳ではないんですが、全体としてとても面白いアクション・コメディに仕上がっていました。
クリスタル湖で大量の他殺体が出て、多数のパトカーと救急車が乗り付けることになった。その犯人はジェイソン。頭を斧で割られており、既に死体となっていた。そのジェイソンの遺体も救急車で病院の死体安置所に運び込まれることとなる。だがその夜、死んだと思われたジェイソンは起きあがり、遺体安置所を管理している職員を殺害してクリスタル湖へ舞い戻っていった。
同じ頃、クリスタル湖畔の別荘に住むトミーとトリッシュ姉弟の隣りに、若者達のグループが遊びに来ていた。そして、若者達と姉弟は、ジェイソンの恐怖にさらされることとなるのだった。
「13日の金曜日」シリーズ第4作目にして、一応の「完結編」。一応の、というのは、この作品で一旦ジェイソンは本当に死ぬことになるものの、後の作品でしぶとく復活してくるからなんですが。
さて、この作品なんですが、観客を脅かそう、怖がらせようという演出は上手くて楽しめたんですけど、ちょっと殺される若者達(青年)の人物造形が軽薄すぎたかなぁ、というのが気になりました。
それにしても、キャストにはちょっとびっくり。トミー少年は、なんとコリー・フェルドマンが演じてるではないですか! 殺される青年の一人として、クリスピン・グローバー(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマーティーのパパ、ジョージを演じた人)が出ているし。
このふたりに久し振りに会えた気がして、嬉しかったです。最近、どうしてるんでしょうねぇ。
ジェイソンの幻影から未だ逃れることの出来ないトミーは、自分の悪夢にケリをつけるため、病院に無断で再びクリスタル湖へとやって来た。かつての惨劇を忘れるため、フォレスト・グリーンと改名されたそのキャンプ地は、丁度週末のジュニアキャンプとして子供達を受け入れようとしているところだった。トミーはその地に眠るジェイソン・ボーヒーズの墓へ赴き、それを掘り返し始める。土葬にされているジェイソンの遺体をガソリンで燃やし、灰に葬り去るためであった。だが、その墓を暴き、棺を開けたところで、落雷がジェイソンの体を襲い、なんと6年間土の下で眠り続けた腐乱死体だったはずの彼が、再び蘇って来たのだ。そしてジェイソンは、再びかつてのクリスタル湖へと足を向けるのだった。
「13日の金曜日」シリーズ第6作目。
「新13日の金曜日」から数えてトミー出演第3作目でもあります。
この作品から、ジェイソンは本当に人間ではなくなり、まさにゾンビとして復活してきます。そのため、心理的な怖さという演出はあまり感じられず、どちらかというとジェイソンというモンスターを相手にしたパニックもの的な味付けの方が強いですね。しかし、そのお陰で却って「人間VS化け物」といった図式が出来上がって、なかなか面白く観ることが出来ました。
ただ……この作品に限って言えば、全ての元凶はトミーだよなぁ……。
オープニングは完全に「007」シリーズのパロディで、この作品から「笑い」の要素も強くなってきたんですね。
余談ですが、この作品、十数年前にTV放映したときはトミーの吹き替えを池田=シャア・アズナブル=秀一さんがやってらっしゃいました。これがとてもはまっていたので、DVDには日本語音声としてそれを収録して欲しかったなぁ(DVDには、日本語音声は未収録。残念)。
時は60年代。スザンナはアスピリンで自殺を図り、精神病棟に入れられることとなった。そこで出会う、様々な症状を抱えた少女たち。スザンナは彼女たちと交流を持ちながら、病棟の生活を送っていくことになる。しかし、そこで出会ったサラという女性と出会ったことから、スザンナの変化が始まることになるのだった。
ウィノナ・ライダー主演、アンジェリーナ・ジョリー共演のドラマ。スザンナの自伝を元にした、実話の映画化です。際立っていたのはサラ役のアンジェリーナ・ジョリーでしょうね、やはり。彼女の役割が、この映画のテーマを総て物語っていました。正気と狂気の境は非常に曖昧で、変わった行動をすれば異常と見なされる。しかしその病巣は総ての人が持っているものであり、きっちりとした線引きなど出来はしない……「病気が治ったら裁く側に回るのか」というサラの台詞が強烈でした。
……ただ、17歳の人が出ていないのですが……このタイトルは何? 日本で17歳の若者が起こす事件が増えていた時期の作品だから? だとしたら、非常にいただけない邦題なんですけど……。
父親殺しの罪で裁判にかけられた少年。公判が終了し、後は12人の陪審員の審議を残すのみとなった。11人の陪審員は有罪による死刑を主張。しかし、たったひとり、無罪と主張した陪審員がいた。彼は、有罪無罪の確信が持てないので、死刑にする前にせめて1時間、話し合ってあげようと主張する。そして、蒸し暑い部屋の中で、12人の男達の議論が始まったのだった。
ヘンリー・フォンダ主演の密室劇。この脚本のサスペンスは素晴らしいですね。一見完全に思える理屈の疑問点を指し示し、理論を突き崩していく様は観ていて爽快ですらありました。少数意見を無視せずに話し合う、という民主主義の理想を、それこそ理想的に描いた作品といえるでしょう。
考古学者のグラント博士は、ともに発掘を続ける仲間のサトラー博士と一緒に、ハモンド財団のジョン・ハモンドから依頼を受けてある島に訪れることとなる。その島にハモンド財団が建造中の、テーマパークの検証をして欲しいというのがハモンドの依頼だった。しかし、そこでグラント達が目にしたのは、生きて、島の中を歩き回る恐竜たちの姿だったのだ。「ジュラシック・パーク」と名付けられたこのテーマパークで、グラント達は見学ツアーに出かけるのだが……。
まさに、映画の歴史を変えた作品と言えるでしょう。
そのCGで描かれた恐竜たちの、なんと生き生きとしていることか。これまでには「ターミネーター2」や「アビス」で「いかにもCG」というCGを使った映像はありましたけど、「本物の生き物のようなCG」が映画で使われたのは、この作品が最初でした。
その表現力は、それまでのストップ・モーション技術とは比べものにならないほどで、映画館で最初にブロントザウルス(現在の呼称はアパトサウルス)が画面に登場したときには、本当に背筋がゾッとして全身に鳥肌が立ちましたもの。湖での群れをグラントが眺めるシーンでは、涙が出そうになりました。映画の表現もここまできたか、と感嘆することしきりでして、それは今観ても色あせることはありません。
この作品には、テンポ良く効果的なアングルでカットを繋いでストーリーを語れる長所と、無邪気に好奇心を全面に押し出してしまい独善的であるという短所、スピルバーグの全てが詰まっています。しかし、これだけ新しいものを貪欲に、好奇心むき出しで作品に取り入れていくスピルバーグでなくては、この映画の革新的な映像は生まれなかったであろうことも確かです。この監督は、本当に驚きを与えてくれますね。
この映画の主役は、間違いなく恐竜です。人間は彼らを復活させてしまい、その愚かな行為にしっぺ返しを喰らって右往左往するだけのちっぽけな存在。暴れ回る恐竜たちの存在感に酔いしれた映画でした。
グラント博士は、あのジュラシック・パークでの経験以来、仕事で認められることもなく、細々と発掘を続けていた。そんな彼に、「恐竜の島」へのガイドを頼みたいという話が持ち込まれる。その上空を飛行機で飛ぶだけ、という話に、嫌々ながら同行するグラント。しかし、飛行機が故障したことから、かれは再び恐竜の恐怖と戦うことになるのだった。
という訳で、グラント博士復活の、ジュラシック・パーク第3弾。どんどん、内容が薄くなってますね、このシリーズ(笑)。グラント博士なんて、みんなを導いたりする訳でもなく、何のために出てきたんだか分からないじゃないですか(笑)。とはいえ、2作目に比べたら単純なエンタテイメント作品として楽しめる作品にはなっていましたが、それでも第1作目が大好きだったため、2作目同様、今ひとつでした。
韓国に、北朝鮮からテロリストが潜入した。そんな情報が入り、韓国の情報部は警戒態勢をとっていた。その機関で働く男は、その警戒にあたりながら、婚約者との幸せを模索しようとしていた。そんな彼に、衝撃の事実が訪れる……。
「その映像表現はハリウッドを越えた!」との売り文句で公開された韓国映画ですね。
そんな売り文句が出てくること自体、まだまだ越えていないということの証明でしかないのですが(笑)、やっぱり「それは言い過ぎだろう」ってな感じでした。
では面白くなかったのか、といえばそんなこともなく、楽しめました。
興味深かったのは日本映画に通じる「ツボ」が存在していたことですね。同じアジアの国ですから、感覚が似てくるのかな? 特に「泣き」のツボはよく似ていると思いました。
でも、あの主役のコンビといい、「コネ入社」のキャラクターといい、もしかしたらこの映画、「あぶない刑事」の影響受けてないかい?
不満だったのはストーリーの「謎」。あっさり観客には分かってしまうのに、引っ張りすぎじゃないかな?と感じました。お陰で眠くなったりして(笑)。
あっさりばらして、主人公の葛藤をもっと描いた方が面白くなったのではないでしょうか?
でも、基本的に面白かったからそんな不満も出てくるんでしょう。どうしようもない映画だったら、呆れるだけだったでしょうからね。
いやいや、韓国映画も面白いモノを出してきましたね。今後が楽しみです。
ここは、おとぎの国の住人が住む世界。フォークアード卿は、おとぎの住人を国から追放し、王国を築くためにフィオナ姫を妃として迎えようと画策する。しかし、フィオナ姫はドラゴンに捕らえられ、塔へ幽閉されていた。一方、おとぎの住人が追放された先の沼には、シュレックという怪物が住んでいた。自分のテリトリーが侵されたことに憤慨したシュレックは、沼の所有権をもらうことを条件に、フィオナ姫を助ける旅に出るのであった。
ドリーム・ワークス制作のCGアニメーション。声優にマイク・マイヤーズやキャメロン・ディアス、エディ・マーフィーを迎えて送る娯楽作です。おとぎ話や映画のパロディがたくさん詰め込まれていて、楽しい作品でした。どちらかというと、大人向けの要素の方が多い気もしますが……外見にこだわらず、自分として生きていこうというメッセージのさりげなさがとてもいい感じでした。
アメリカ陸軍の基地の中で、レイプ殺人とみられる裸の女性の遺体が見つかった。被害者はその基地の優秀な大尉であり、将軍の娘でもあるエリザベス・キャンベルだった。しかし調査の結果、レイプされた形跡はなく、死因は絞殺されたことによる窒息死と判明。軍の捜査官であるブレナーは、その事件を調査していくことになるのだが、その彼の前に姿を見せていく真実とは何か? 彼女が昔うけたという「レイプより酷い仕打ち」とはいったい何だったのか?
ジョン・トラボルタ、マデリーン・ストウ共演によるサスペンス。重いし、暗いです。これ、ちょっと元気を出したいときに観たんですが、よけいへこんでしまいました(笑)。お世辞にも、面白いとは言いにくい作品でしたね。
しかし、俳優の演技はいいです。色んな軍人さんが出てきますが、おぢさん以上の方々は、みんな演技が渋い! 唯一、ヒロインであろうマデリーン・ストウだけが、一体何のために出てきたのか分からないような、何の役にも立っていない相棒という配役だったのが残念でした。
あ、そうそう。もう一つ残念だったこと。
……トラボルタさん、お願いですから痩せてください……(笑)。
ロス市警のベテラン刑事ミッチは、潜入捜査中、事情を知らない制服警官のトレイに犯人と間違われ、追っていた犯人を逃がしてしまう。しかも、目立ちたがりのトレイは、自分が犯人を逮捕するシーンを中継しようとテレビカメラを現場に呼んでいたのだ。堅物で有名なミッチは怒り、テレビカメラを銃で撃って壊してしまう。ところが、そのシーンに目をつけたテレビ番組プロデューサーのレンジーは、テレビカメラを壊したことの代償として、ミッチとトレイのふたりにコンビを組ませ、ふたりの日常に密着して番組を制作することを市警に提案するのだった。片や嫌々ながら、片ややる気十分で番組への出演を承諾したふたり。その番組の放送が始まると、一気に人気が出て、ふたりは瞬く間に人気者になってしまう。そんな時、ミッチが追っていた犯人が、何者かに殺される事件が起こるのだった。
ロバート・デ・ニーロ、エディ・マーフィー共演のコメディ・アクション。肩の力を抜いて、素直に笑って楽しめるエンタテイメント作品でした。けっこう脚本がずさんだったり、バランスが悪いシーンがあったりしますけど、この辺りは突っ込むのが野暮ってもんでしょう。散りばめられた小ネタや、デ・ニーロとエディの対比の面白さに、素直に身を任せて楽しんでしまいました。お互いに影響されていく様子とその楽しさに、にやにやしながら観させてもらいました。気軽に楽しめる映画です。
少林寺拳法を信奉する青年シンは、ふとしたことからかつてサッカーの名選手だったファンと出会う。ファンは、シンの蹴りの素晴らしさに目をとめ、サッカーの全国大会に出場を持ちかけてきたのだった。それを少林寺拳法普及のよい機会と考え、シンはかつてともに少林寺拳法を学んだ兄弟達に、ともに参加しようと声をかける。だが、すでに少林寺拳法から遠ざかって久しい彼らは、基礎体力すらおぼつかない状態だった。まずは基礎的な特訓を積むこと。そこから、少林チームは出発することになるのだった。
「2002年ワールドカップ」に当て込んだ映画といってもいいのでしょうか……。しかし、この映画のパワーは相当な物でした。もう、最初から最後まで大いに笑わせてくれました。ノリは熱血漫画なんですけど、それをうまく笑いに転じてあって、そのあまりの馬鹿馬鹿しさに大笑い。少林兄弟それぞれにそれなりの見せ場があって、展開も笑いの中に一息つかせるかのように主人公の恋愛模様などを絡ませてあって、飽きずに最後まで引っ張ってくれました。その展開の仕方が上手いなぁ、と思いましたね。
ともかく、主人公が放ったシュートが相手を弾き飛ばす、なんてことを本当にやってくれてます。もう、それだけで笑えてしまいました。
久し振りに香港映画のパワーを感じました。おおきな「えなりかずき」も出演してますし(笑)、これは是非観ておきましょう!
ダンサーになるためにラスベガスへやって来たノエミ。彼女は場末のストリップ酒場でダンスを踊りながら生計を立てていた。だが、友人のモリーが、彼女の職場である高級ホテルのトップダンサーであるクリスタルにノエミを紹介したことから、ノエミの境遇は大きく変わっていくことになる。クリスタルに侮辱されながらもその高級ホテルで踊るチャンスをもらったノエミは、やがてその情熱的なダンスでのし上がって行くのだが……。
ポール・バーホーベン監督がラジー賞を受賞した作品。要は、トップレスショーのダンサー達のお話です。バーホーベン監督作品だけに、あまり深く人物造形に立ち入っていません。というより、表層だけしか描いておらず、登場人物達はけっこう思いつくままに行動しているような印象です。
ですが、嫉妬や羨望、愛憎が渦巻くショービジネスの裏側を描くには、こういった手法の方が却っていいのかも知れませんね。結局、ある意味本能むき出しな世界な訳ですから。
伏線のように思わせぶりに登場してくる人物が、結局ノエミにほとんど絡まずにそのままノエミの人生の舞台から消えていったり、登場人物達の行動一貫性がなくちぐはぐだったり……と、映画として破綻しているとは思いつつも、実際の人生って他人から観たら案外こんなものかも、とも思ったりしました。
しかしとにかく、ショー「女神」のシーンは圧巻です。本当に豪華絢爛で迫力がありました。
また、クリスタルを演じたジーナ・ガーションの美しさ、強靱さも素晴らしかったです。
お世辞にも面白かった、とはいいにくい映画ですが、印象に残る映画ではありました
香港の料理界で「食神」と呼ばれ、絶対的なカリスマとして君臨する周。しかし、富と名声を得た彼は傲慢になり、やがて「食神」の座を奪われてしまう。落ちぶれた彼は屋台街へと流れ着き、そこで出会った人々と力を合わせて再起を目指すのだが……。
先頃「少林サッカー」で話題を集めた、周星馳(チャウ・シンチー)の監督・脚本・主演の料理バトルコメディー。アクの強さが少々難ですが、勢いで笑ってしまう、楽しい映画でした。「少林サッカー」ほどのパワーは感じませんでしたけど、それはチャウ・シンチーが確実にうまくなっていっている証なんでしょうね。
それにしても、村下孝蔵さんの代表曲「初恋」の香港版カバー曲が劇中に流れてきたときは驚きました。向こうでカバーされていたんですね。
ある山奥の小屋に集った、5人の男女。彼らは、インターネットで募集された「6ヶ月間、無事に全員で過ごしたら賞金100万ドル」という企画に応募して、24時間インターネットのライブカメラで監視され続けるこの小屋に集まったのだった。
窮屈な生活を強いられながらも、無事共同生活を営んできた5人。
だが、もうすぐ6ヶ月が経とうという頃、次第に主催者の妨害工作が起こるようになる。そして、遂に事件は起こってしまうのだった。
果たして、主催者の本当の目的は何なのか。
ネット番組をモチーフにした、サスペンス映画。
小屋のあちこちに仕掛けられたビデオカメラからの映像をメインに構成することにより、実際にこのネット番組を見ているような感覚を観客に与える構成はなかなか面白いと思いました。
ただ、番組を鑑賞している感覚で撮られていると言うことは、映画としての盛り上げにどうしても欠けてしまう面があって、これが作品の内容を退屈にしてしまった感じがしますね。
カメラに囲まれた小屋を舞台にするというのは、アイデアとしては面白かったんですけど、それを作品に上手く反映出来なかった感じがして、残念な仕上がりでした。
馴染みのバーで、ロシアンマフィアのちんぴらと出会ったマクマナス兄弟。ふたりは、正当防衛よりそのちんぴら達を殺してしまう。彼らは一晩、拘置所の中で過ごすのだが、そこで突然神の啓示を感じるのだった。その日から、ふたりの兄弟は法の目をかいくぐるマフィア達を殺していくようになるのだった。
パワーに溢れるエンターテイメントです。「法が裁けないのなら俺たちが裁く」なんてことを、主人公達は結構軽いノリで決めてしまうんですけど、これはこれでいいのか? なんて思いながら、それでも笑いを交えながらうまく展開していって、いつの間にやら引き込まれていました。狂言回しでウィレム・デフォーが出演していましたけど、彼の演技もまたぶっ飛んでいて素晴らしすぎ! デフォーの存在が、この映画の面白さを演出していたと言っても過言ではありません。
ただ、あまりにキレすぎなため、デフォーに嫌悪感を持っちゃう人もいるかも……そしたら、この映画は楽しめないかも知れません。あと、「痛いシーン」がけっこう満載。あれはつらかったです。
ある夜、のどかな島の浜辺で、若い女性の惨死体が発見される。それは、サメにおそわれたものと思われた。
折しも夏、海水浴の季節を迎えようという季節。
その島、アミティ島の警察署長ブロディは、浜辺を閉鎖するよう市長に申し出るが、海水浴の観光客で潤っている街である。推測だけで閉鎖することは出来ないと、申し出は一蹴される。
しかし海開きの日、また一人の少年が海の中へ姿を消して……。
ブロディは、サメとの戦いに乗り出すのだった。
この映画は、いまさら僕が言うまでもなく、本当に面白いパニックエンタテイメントです。今観ても、スピルバーグの演出手腕には本当に感心してしまいますね。
何しろ「見せない」演出が卓越してうまい。で、そうかと思うといきなりぐっと一気に「見せる」。
この辺りのバランスが実にお見事ですね。どきどきしながら観てしまいました。
この作品の後、今に至るまでサメの映画はたくさん作られていますが、僕は未だにこの作品を越える物はないと思います。
そうそう。この映画のDVDは、公開から25周年ということで、かなりコンテンツも力を入れて作ってあります。メイキングやNGシーン、クイズなど、この映画に対する深い思い入れが強く伝わってくる、ファンも納得の仕様になっています。
それでいてお値段3,800円!
このDVDソフト、買って損はないと思いますよ。
シカゴのダウンタウンに住むジョンQは、妻デニスと息子マイクの3人で暮らしていたが、不況によるリストラで仕事時間を減らされており、生活は苦しくなっていた。そんな折り、マイクが野球の試合中に突然倒れてしまった。病院に担ぎ込まれたマイクに下された診断は、心臓肥大症。心臓が十分に血液を送り出す力を失っており、放っておけば余命はわずかであろうという。それを救うには、方法はひとつ、心臓移植しかない。だが、その移植を受けるには、前金だけで7万5千ドルという大金を支払わなければならないと病院の院長に言われてしまう。加入していた保険からも見放され、様々な家財道具を売ってもお金が工面出来ない彼は、やがて一か八かの凶暴な行動に出ることになるのだった。
デンゼル・ワシントン主演のドラマ。お涙系の作品ですが、それを少しも陳腐に感じさせないデンゼル・ワシントンの演技力は圧巻でした。追いつめられて、どうしようもなくなってやむなく凶行に走りながらも、周囲を思いやり、なおかつ息子への想いを強く抱き続けている……そんな複雑な心理演技を、デンゼル・ワシントンは完璧にやり遂げてますね。本当に、この人の演技は素晴らしいです。
それに、ロバート・デュバルも相変わらず渋くていいですね。このおじさん俳優は、私は大好きです。アン・ヘッシュも久し振りにスクリーンで観ましたけど、演技が上手くなってますね。この人も、今後ますます楽しみ。
それに対して、レイ・リオッタ……この人、もうこのような「ちょっとイヤな奴」って役柄しか依頼がこなくなってしまったんでしょうか。ちょっと哀しいです。
さて、作品自体は、何度か物語の展開的にバランスを崩しそうになりながら、それでもギリギリのところで軌道を回復させて上手くストーリーを紡いでいきます。この辺り、監督の上手さでしょうね。ちょっと演出のテンポがずれがちなシーンがいくつかあったのが残念でしたけど、本当によく出来ていたと思います。
惜しむらくはクライマックス。もうちょっとハラハラさせる演出が出来たように思うんですが……ちょっとあっさり終わりすぎかな。それも監督の意図したものだったんでしょうか?
アメリカで人気のテレビ番組「ザ・コンテンダーズ」。この番組は、無作為に抽選で選ばれた人間達に殺し合いをさせる番組だった。妊婦であるドーンは、これまで2度の戦いで10人を殺し、生き残ってきたチャンピオンである。彼女は、あと1度、戦いに生き残ることが出来れば、番組から解放され自由を得ることが出来る。だが、彼女が最後に挑んだステージは、彼女の生まれ故郷での戦いであり、その殺し合いの相手の中には、かつての恋人で現在はガンに冒されて死の床にあるジェフという男も含まれていたのだ……。
テレビ番組を見ているような演出で構成された、テレビ業界や視聴者を皮肉った映画ですね。
全くの素人を番組に起用してドキュメンタリータッチで様々なことをやらせる……これは日本でもよく見かけるテレビ番組の手法ですけど、その手法で殺し合いをやらせる、という発想はかあんりブラックですよね。
素人出演とはいうけれど、本当に彼らは筋書きもなく、自らの意志で動いているのか?
本当にそれで、あれほどドラマティックなことが次々と毎週起こるのか?
そういった疑問を含ませながら、この映画は最終的に「メディアが作り出してしまう大衆心理」を批判していきます。
面白い映画か、と問われれば少し困りますけど、考えさせられる面はありました。
また、有名な俳優は起用されていませんが、出演者達の演技は素晴らしかったと思います。特に主人公ドーンを演じたブルック・スミス(「羊たちの沈黙」で囚われの身になっていた彼女ですね)の演技は巧みだったと思います。
アッシュ達5人は、山奥の貸別荘に遊びにやって来た。古めかしいその貸別荘はだいぶくたびれていたが、値段も格安だったため、彼らはここを選んだのだった。だが、その地下室に眠っていたテープレコーダーを再生させてしまったことから、彼らは恐怖のどん底へと突き落とされることになる。そこに録音されていたのは、死者の魂を蘇らせる呪文だったのだ。そしてひとり、またひとりと死霊に取り憑かれていく彼ら……果たして、この貸別荘から無事に逃げ出すことが出来るのだろうか。
スプラッターホラーのブームを築いたと言っても過言ではない作品。
監督はサム・ライミですが、正直、この作品を撮っていた頃はまさかメジャーな監督になるとは思ってませんでした。
物語は至って単純ですが、この作品のカメラワーク、そして演出の切れ味など、映画としての出来は出色です。特殊メイクの死霊の顔や、死霊を切り刻むシーンなど、やりすぎで気持ち悪いシーンも多々ありますけど、それ以上に全編にみなぎるパワーについつい画面に引き込まれてしまいますね。
しかし、この映画のDVD、何をマスターに使ったんですかね? 画質がひどすぎました……それが残念です。
子供の頃、ジェイソンを殺してその連続殺人に幕を下ろした少年トミー。彼は、しかしその後もジェイソンの悪夢から逃れることが出来ずに精神を病んでしまい、青年となった今でも病院に収容されていた。そんな彼が、療養のために移送されてきたのは、人里離れた自然の中にある療養所だった。そこで入所している若者達と共同生活を送り始めるトミー。だが、その所内である日、殺人事件が起こってしまう。そしてそれを呼び水としたかのように、再びジェイソンの仕業と思われる連続殺人がトミーの周りで起こり始めるのだった。
前作でジェイソンを倒した少年トミーが、成長した後もジェイソンに悩まされるシリーズ第5作目。
前作は「完結編」と銘打っており、今作は原題では「新たなる始まり」とサブタイトルをつけられていたことから、この作品のラストから「新しいジェイソン」が誕生する設定になっていたかと思われるんですが、パート6でその設定を活かさなかったため、この作品は番外編的な作品になってしまってますね。
しかし、サスペンスの盛り上げ方と、死んだはずのジェイソンが何故現れたのか……その設定などは(この手の映画としては)なかなか練ってあって面白く観ることが出来ました。
ちなみに、恐らくこの作品、シリーズ中最も女性の露出度が高いかと思われます。
それをキッチリと殺していくジェイソン。これはこれまでのシリーズと共通していますね。番外編とはいえ、ジェイソンらしいジェイソンを見せてくれた作品だったと思います。
第2次世界大戦下にある世界。アメリカ軍は、日本軍が占拠しているガダルカナルへ軍隊を派遣していた。その島での戦いは苛烈を極め、双方に多大な損害を与えることになる。雄大な自然は、その戦争をただ静かに見つめているだけだった……。
伝説の監督とも呼ばれるテレンス・マリックが、20年ぶりにメガホンをとった話題作。これは難しい映画ですね。戦争映画と思って観るとちょっと肩すかしかも(僕は劇場に観に行きましたけど、肩すかし感があったもので)。しかし、ある意味「哲学映画」として観てみると、かなり打ちのめされますね。見終わった後の、言いようのない虚脱感が空しさを覚えさせます。この戦闘ではアメリカ軍が勝利し、日本軍が敗北します。が、勝ち負けとは関係ないところで、どちらも兵士たちは命を落とし、生き残ったものたちも狂気に染まっていきます。戦争映画にありがちな、「自分たちだけが苦しかった」というような描写がなかったところに、この映画の「反戦映画」たるところがあると思います。
シドニーは、大学を卒業して3年の月日が流れたにも関わらず、深い人間不信から山奥にこもり、電話相談員として直接人と接触する必要のない仕事に就いていた。
一方、シドニーが体験した事件を映画化したホラー映画「スタブ」は人気シリーズとなり、現在パート3制作の真っ最中。だが、その出演者が殺されるという事件が起こり、その殺人現場に若き日のシドニーの母親の写真が残されていたことから、再びシドニーは惨劇に巻きこれていくことになるのだった。
「シドニー、お前は本当に終わったと思っていたのか?」という電話の声とともに……。
「スクリーム」3部作の完結編。
今回は、脚本が前作までのケビン・ウィリアムソンから交代していますが、これが吉と出たのか、前作までのマンネリといってもいい程のしつこい思わせぶりなシーンやサスペンスシーンは影を潜め(その代わりに怖さも減ったと言えそうですが)、その代わりにシドニーはじめ主要人物の精神的な成長が描かれていて、完結編としても1本の映画としてもまとまりの良いものに仕上がっていたと思います。
かつての惨劇を映画化した「スタブ3」。そのセットに再現されたかつての惨劇の舞台となったかつての自宅で、かつての惨劇の犯人と同じ格好をした殺人鬼に追われるシドニー、という設定は非常に面白いアイデアでした。今回の事件を通して、かつての事件で負った心の傷を乗り越えていくシドニーの姿を描くことが出来たのは、3部作の最後を飾る意味でもとても重要であったと思います。
それにしても、パート1と2で「ホラー映画のセオリー」を語ってくれたランディが、思いがけず再登場したのには笑ってしまいました。随所に見られる、このようなユーモア感覚、あるいはパロディ感覚というものが、このシリーズの真骨頂。存分に楽しませてもらいました。
ただ、今作は、全編通してシドニーよりもデューイ、ゲイルのふたりが中心になってましたね。まぁ、この筋立てでは仕方ないのかも知れませんが、最後の完結編で主役を追われたように感じられてちょっと不憫でした(笑)。
偶然道ばたで出会ったふたりの男、マックスとライオン。彼らはふとしたことから友人になり、ふたりで洗車の事業を始めようと意気込む。そんなふたりだったが、性格は正反対。マックスは頑固でけんかっ早く、人を許容することをあまり知らない。しかしライオンの方は、陽気でバカばかりやっているお調子者であった。ライオンは言う。「案山子(スケアクロウ)はカラスを脅すと思われているが、違う。案山子をみてカラスは笑うんだ。だって、滑稽な格好をしているだろう。そして、楽しませてくれた礼に、カラスたちはその畑を荒らすのをやめてくれるのさ」と……。それは、ライオンの生き方そのものであった。その信念を貫く彼に、たびの途中でマックスも次第に影響を受けていくのだった。
70年代の名作ですね。ちょっとしたことで今回観る機会を得ましたが、いやいや、凄い映画でした。今のハリウッドがすっかり失ってしまったものが、この時代にはまだあったんですね。じっくりと人間関係を描き、人の心を丹念に捉えていく視点が、この映画には存在していました。見知らぬ人間に最後のマッチを分け合ったことからふたりに信頼が芽生え、次第にそれは強固になっていく……。最後には哀しい結末が待っていますが、それでも友情を貫く姿が印象的でした。
それにしても、特筆すべきはアル・パチーノ。美青年ですね! しっかりとした演技と存在感、そして何より観客の視線を捉えて離さない、その表現力の巧みさに魅入ってしまいました。
そして、彼の息子役の少年……パチーノそっくりでしたね。ホントの親子といわれても絶対疑いませんよ、あれは(笑)。
ジャズクラブのオーナー、ニックは、ベテランの泥棒という裏の顔を持っていた。その彼の元へ、若い男が厄介な仕事を持ちかけてくる。その報酬は、400万ドル。最初は乗り気でなかったニックも、その報酬に、これが最後の仕事と引き受けることを決めるのだったが……。
ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン共演の強盗サスペンス映画。とにかく、このふたりの演技合戦が見物です。醸し出す、画面から伝わってくる緊迫感はただ者ではありません。久し振りに手に汗握って最後まで観させてくれた映画でした。騙しあい、腹の探り合いをする男たちのやりとりには固唾をのみっぱなしでしたね。
特に素晴らしかったのはデ・ニーロ。その存在感はやはり素晴らしい! 画面に出ているだけで雰囲気が引き締まるのはそのオーラ故でしょうか。また、若手ナンバーワンと目されるエドワード・ノートンの演技もやはり非の打ち所がなく、このふたりの役者の演技を観るためだけに劇場へ行っても損はないと思います。
いやぁ、満足させてくれた映画でした。
5000年前の古代エジプト。エジプト全土の支配を目論む戦士メムノンは、各地に点在している部族や集落を襲い、制圧していた。その残虐な猛威に各部族は対抗しようとしていたが、メムノンには全ての事象を見ることが出来る予言者がついており、彼に敵対する動きはことごとく潰され、メムノンは無敵を誇っていた。そこで部族の長達は、凄腕の暗殺集団であるアッカド人の生き残り、マサイアス達3人に予言者の暗殺を依頼するのだった。
「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」の悪役スコーピオン・キングが、王になるまでを描いたアクション映画。主演は当然ザ・ロックです。
「ハムナプトラ」シリーズ同様、全く何も考えずに見ることが出来る娯楽作です。ラスト、全くの成り行きで王になってしまうのは、いささかどうかとも思うんですが、それも含めて娯楽作なのでまぁいいか。
ただ、元となった「ハムナプトラ」シリーズは古代の呪いとか超常現象といった、そういった浪漫をちりばめて雰囲気を高めていたのに対し、この作品ではそういった雰囲気を高める演出には乏しく、あまりにストレートなアクション映画になっていたのが残念でした。予言者の予知能力とかが描かれてはいましたけど、もうちょっと、やりすぎにならない程度に呪術や魔力といったものを取り入れても面白くなったかも知れませんね。
7月14日、パリ祭りの日。特殊警察の女性中尉ラボリは、マフィア幹部の護送の任務に就いていた。だが、途中でマフィア一味の強襲を受けてしまい、工業地帯の倉庫へ逃げ込む羽目になってしまう。そしてそこには、たまたまこの日、この倉庫に盗みに入っていた若者の窃盗グループがいたのである。圧倒的火力を有して倉庫を包囲するマフィア達によって、窃盗グループと共に倉庫に閉じ込められてしまうラボリ。手元に残ったわずかな銃と弾薬を頼りに、窃盗グループのメンバーと一緒に抗戦するしかない状況に追いつめられてしまうのだった。
重量アクション、との触れ込みですが、アクション自体はそこまで詰め込んでいなくて、若干ドラマの方に物語が振られていましたね。
しかし、派手に撃ちまくるシーンも多々ありますし、閉じ込められて追いつめられた人間達の心理的な葛藤や駆け引きなども描かれていて、過不足なくまとめられていたと思います。
若干ドラマ部分が薄かったので、そこは少し残念に思いました。
共和国のジェダイの騎士であるクワイ=ガン・ジンは、パダワン(弟子)のオビ=ワン・ケノービと共に、交易紛争の調停にある星へとやって来た。その星は、通商連合の軍により、不当に包囲され、占領を迫られていたのだ。そして通商連合軍は、調停の使者であるクワイ=ガン達にも刺客を差し向ける。その裏に何者かの陰謀を感じ取ったクワイ=ガンは、その惑星の王女アミダラとともに辛くも包囲網を抜け、辺境の惑星タトゥイーンへ逃げ込むが、そこでアナキン・スカイウォーカーという少年と運命的な出会いをすることとなるのだった。
スター・ウォーズの原点となる作品。壮大なSF絵巻物の第1章です。……が、この作品は、シリーズにとって重要な人物がたくさん出ては来ますけど、今ひとつその人物を描き切れていませんね。CGによる映像も綺麗なんですけど、綺麗なだけでメリハリがないというか……。恐らく、話の展開に何の期待感もハラハラ感も感じられなかったことが原因かと思います。SF「冒険物」というのがこのシリーズのウリだったと思うのですが、その「冒険心」を、ジョージ・ルーカスが忘れてしまったかのような出来でした。
無論、観ていて楽しいシーンもあるし、今後に繋がる重要なエピソードも含まれてはいるんですけどね。
そうそう。アナキンの母が「処女懐胎」をほのめかす台詞がありましたけど、このシリーズってアナキンをキリストに見立てて本当に「神話」を目指してるんでしょうか?
アナキン・スカイウォーカーがオビ=ワン・ケノービのパダワンとなって10年。少年だったアナキンも、今や青年となっていた。そんな時、かつてのナブーの王女であり、今では共和国の議員であるアミダラの、暗殺未遂事件が起きる。その護衛を命ぜられたアナキンは、10年ぶりに彼女と再会し、恋に落ちる。しかしそれは、ジェダイには禁じられている行為だった。一方、暗殺未遂の捜査にあたったオビ=ワンは、事件の背後に大規模な陰謀があることに気づくのだった。
スター・ウォーズの、5本目となる作品。この作品では、基本に立ち返ったかのように、主要な登場人物達が持ち味を活かして大活躍してくれます。時には追いつめられ、それを何とか切り抜け、まさに大活劇と呼ぶに相応しい立ち回りが随所に観られて大満足でした。
また、今後に向けてのドラマも展開しています。シスの暗黒卿とアナキンの会話シーンとか(ネタバレぎりぎりですか?)、タトゥイーンの懐かしい家のシーンとか、観ていて鳥肌が立ちました。いずれ、この家でルーク・スカイウォーカーが育つんだなぁ、と感慨深げに思ったり。
シリーズの最終作となる「エピソード3」が楽しみです。
砂の惑星タトゥイーン。
そこに叔父達と暮らす若者、ルーク・スカイウォーカーは、この辺鄙な惑星から飛び出すことを夢見ていた。
時、折しも戦乱の時代。広大な宇宙では、帝国軍と反乱軍が戦火を繰り広げていた。
その戦火を逃れてきた2体のドロイド(ロボット)がルークの元へたどり着いたとき、彼は運命に導かれるように、戦乱の中へと身を投じていくのだった。
遠い昔、遙か彼方の銀河系で……。
「スター・ウォーズ」は、あまりにも有名なSF映画の大ヒット作。そもそもB級の域を出なかったSFというジャンルの映画が、今日のように超大作の目玉としてのし上がれたのも、この作品あってこそです。
これは、その1977年に公開された「スター・ウォーズ」を、デジタル技術でフィルム修復、及び充分でなかったSFXシーンを補填、追加し、さらに音声をドルビーデジタル化した特別編です。
今回改めて鑑賞し、今観ても充分面白い映画だということを再認識しました。筋立てはオーソドックスながら、冒険物としてわくわくし、意外に細かいところまで脚本が練られていることに感心することしきり。
なるほど、ヒットした訳だ、と納得しました。で、冒頭に「エピソード4」なんて出てきますから、当時の観客の方々、相当気を揉んだんじゃないかなぁ、と余計なことまで考えてしまったり(笑)。
追加のシーンとしては、ジャバ・ザ・ハットとハン・ソロのやり取りが描かれていたことが一番の重要シーンでしょうね。これによって、3部作通してハンとの関係がはっきり認識できるようになっています。
これはやはり外してはいけない作品でしょうね。
帝国軍と反乱軍の戦いは、その圧倒的な戦力差により、徐々に帝国軍の勝利へと傾きつつあった。
そんな中、反乱軍の戦士となったルークは、ジェダイの騎士(フォース=万物に働く、お互いを結びつける力を操る)となる決意をし、戦列を離れて修行へ入る。
そのルークのフォースの力を驚異に感じる帝国軍のダース・ベイダーは、ルークをフォースの暗黒面へ落とすため、罠を張り巡らせるのだった。
初期3部作の第2作目。
伝説のジェダイ、ヨーダが登場し、ルークが本格的に修行を始める話ですね。
この映画は面白いです。僕は、初期3部作の中ではこれが一番好きかも知れない。
帝国軍が圧倒的に反乱軍を追いつめていく展開と、フォースを使いこなせずに焦り、ダース・ベイダーに全く歯が立たないルークの姿とが相まって、悲壮感すら漂います。ドラマとしてはシリーズ中出色の出来かと思います。
ただ。
クラウド・シティ(鉱業都市)は、CGでスケールアップされているのはいいんですが、アップしすぎで更に綺麗すぎて、なんだか違和感がありますね。頭首ランドの言葉では「小さくてギルドには認められていない」ということですから、オリジナルバージョンの方がこじんまりとして、しかも汚れて場末っぽくて良かったような気がします(笑)。
帝国軍は、強力な要塞デス・スターを再建し、反乱軍の一掃を目論んでいた。
一方、ルークの修行に対し、ヨーダはダース・ベイダーとの対決を最後の課題と告げる。彼と対峙せねば、ジェダイになれないのだ、と。
揺れる彼の心をよそに、反乱軍はデス・スターに帝国軍のトップである皇帝が到着したという情報を得、デス・スターへの総攻撃を決定する。
そして、帝国軍対反乱軍の、最後の戦火が切って落とされた。
初期3部作完結編。
イウォークやっと登場(笑)、ですね。
シリーズ総括のまとめの話ですし、3部作通して観れば感慨深い物があります。「エピソード1」での予告通り、アナキン・スカイウォーカーは宇宙のフォースの流れを正しますしね。
それから、今回この特別編で思ったんですが、SFXシーンがあまり追加されていないんですね(最後の締めくくりのシーンは別ですが)。それだけ、オリジナルのシーンが優れていたということなんでしょうか。
人類は、未だバグズとの戦いを続けており、それは激化の一途を辿っていた。
そんな中、辺境にあるバグズの星で戦っていたシェパード将軍の中隊は、敵の攻撃の前に撤退せざるをえなくなり、サイキックであるディル中尉とレイク軍曹が隊の撤退の指揮にあたることとなった。
そしてたどり着いたのは、放棄された地球連合軍の前線基地。
彼らはそこに立てこもり、防衛設備を機能させて救助を待つことにするのだが、基地内に「上官を殺した」として殺人罪に問われた男が幽閉されていることに気がつく。
さらに他の部隊の生き残りが基地にたどり着き、部隊は彼らを仲間として基地をバグズから守ろうとするのだが……。
ポール・バーホーベンが監督した「スターシップ・トゥルーパーズ」の続編。
とはいっても今作はテレビ映画であり、非常に低予算になってるようで……。
監督は、前作では特撮監修を務めていたフィル・ティペット。
低予算のテレビ映画ということもあり、作品のスケールはかなりダウンしてます。どちらかというとB級な仕上がりになってました。
しかしながら、登場人物たちの絡んでいく関係性や、密室劇のやりとりはなかなか練って作ってある印象。バグズも、前作ほどに大量には出てきはしませんが、質感や迫力は劣っていませんでしたね。この辺は、フィル・ティペットの意地でしょうか。
織り込まれたホラーSF的要素も楽しめたので、個人的には小粒な良作といえる作品でした。
あ、ただ、前作のおバカな要素は皆無ですので、それを期待すると駄目駄目だと思います、念のため。
第2次世界大戦中、最も過酷なソ連とドイツの戦いが繰り広げられたスターリングラード。そこに派遣されたソ連軍兵士の中に、ヴァシリという優れたスナイパーがいた。兵士の志気を高めるため、英雄に祭り上げられた彼は、次々とドイツ兵を狙撃していく。その彼を葬るために、ドイツ軍は狙撃に優れた将校をスターリングラードへ派遣するのだった。
戦時中のスターリングラードを舞台に活躍したソ連軍のスナイパーと、ドイツ軍のスナイパーとの息詰まる攻防戦を軸に描かれた戦争映画です。主演はジュード・ロウ。
この映画は、とにかく画面に漂う緊迫感が凄いですね!
ジュード・ロウは勿論ですが、それに相対するドイツの将校に扮したエド・ハリスの演技もまた見事。狙撃銃を構え、スコープを覗き合う二人の対決の、異様なまでに高いテンションの緊迫感が全編を貫き、思わず画面に見入ってしまいました。
ラストは安易な感じもしましたが、レイチェル・ワイズもやはり魅力的で気持ちのいい終わり方でした。……これ、どこまで実話なんだろう?
「弟が欲しい!」という息子のために養子縁組の施設に出かけたリトル夫妻。だが、彼らがそこで養子として選んだのは、スチュアートという名の白いネズミだった。息子はもちろん、リトル家の飼い猫も当然そんな家族は歓迎しない。しかしスチュアートは、めげずになんとか家族の一員として認められようと頑張るのだった。
かなり奇妙なファミリードラマなのですが、これはとても面白い映画でした。喋るネズミを当然のように受け入れていく周囲の人々の奇妙なキャラクターには楽しめましたし、本当に家族として受け入れられるまでを演じる声優のマイケル・J・フォックスの熱演も感心して、しっかりはまり込んで観てしまいました。笑えて、ちょっと泣けて、幸せな気持ちになれる映画ですね。続編の制作も決定しているとか。楽しみに待ちたいと思います。
すっかりリトル家の一員となったスチュアート。小学校に通い、サッカーにも参加したりと、元気に日々を過ごしていた。だが、遊び相手だった兄のジョージは最近ほかの友人とばかり遊び始め、両親は新しく生まれた妹にかかりきりで、スチュアートは段々孤独を感じてきていたのだ。そんなある日、スチュアートの運転する車に、タカに襲われた小鳥が落ちてきた。マーガロと名乗ったその小鳥との出会いから、スチュアートは元気を取り戻し、マーガロと心を通わせていくようになるのだが……。
スチュアート・リトルの第2作目。前作は「スチュアートが正式なリトル家の一員になる」話だったのですが、今作は「リトル家の一員となったスチュアートが、リトル家の一員として成長していく」お話です。
子どもを主なターゲットにしているということもあって、丁寧に心の動きなどを表現していますね。CGで描かれたキャラクターたちの表情など、とても表現が巧みで見入ってしまいました。
「けして諦めない、諦めたときから可能性が消えてしまうから」という、心の強さ。そんなものをさりげなく描いてくれたんじゃないでしょうか。
そうそう。飛行機で飛び回るシーンはとても楽しかったです。DVDのサラウンドも含め、心躍りましたね。あのシーンだけでも満足してしまいそうでした。
それにしても、スチュアートだけでなく、マーガロとも普通に喋っているリトル一家……なのに、昔からの飼い猫スノーベルの言葉は理解しないなんて、あんまりじゃないかなぁ(笑)?
スーパーの写真現像所に11年間勤続しているサイ・パリッシュは、友人や恋人もおらず、孤独な人生を送っていた。彼は常連客のヨーキン一家の家族写真に写し込まれた、幸せそうな家族の姿に憧れを感じ、いつしかその家族の一員になる妄想に取り憑かれていく。そして彼の行動は、次第にエスカレートしていくのだった。
ロビン・ウィリアムス主演のサスペンス。物静かで穏やかだけれども実は精神が歪んで怖い人物、という難役を、ロビン・ウィリアムスがやすやすと演じて見せています。
目の奥に潜む狂気、笑顔の中にある絶望、そして内心に巣くったやるかたない憎悪といったものを、彼は見事に体現していて、観ていてぞっとさせられました。
ただ、最後に彼が口走る、「何故彼がこのようになってしまったのか」を臭わせるセリフは少し薄っぺらだったかな、と残念に思いました。それまで一定の緊張感が張りつめていたのに、それが台なしになってしまった気がします。作品そのものが描こうとしている内容については文句ないだけに、少し残念に思いました。
作品の性質上、少し狂ってはいますが男の孤独を描く作品ですので、お薦め出来る作品とはなかなか言いにくいんですが、ぞっとするようなロビン・ウィリアムスの演技を観るだけで、十分価値のある作品だと思います。
68カラットのダイヤがロンドンに持ち込まれた。その情報は裏社会を巡り、奪いあいが始まった。裏ボクシングのプロモーターやギャング、ジプシー達まで巻き込んで、ダイヤの行方は意外な方向に転がり出すのだった。
ガイ・リッチー監督のクライム・コメディとでもいうべきか。とにかく先の展開が読めませんね。奇抜な演出方法や、ひとくせもふたくせもある登場人物達など、観ていて楽しめる要素がたくさんの娯楽作でした。色んな不自然さに「そんな訳ないだろ!」って突っ込みながら楽しむ、そんな映画でした。
キャシーは、数ヶ月前に夫に出て行かれ、そのことを離れて暮らす母親たちには言い出すことも出来ずに、父が残した海辺の家にただ一人、住んでいた。
だがある日、免除を申し出ていたはずの税金が原因で、キャシーは突然家を差し押さえられ、追い出されてしまう。そしてその税金が行政の手違いで免除になっていなかったことが判明した時には、すでに家は他人の手に渡った後だった。
家を買ったのは、イランで軍の上層部に所属しながら政変により国を追われたベラーニという男。彼も、国を追われた際に否応なく奪われた自分の生活を取り戻すためにこの家を手に入れており、この家に対して並々ならぬ執着を持っていたのだ。
お互いに、家の所有権を主張するもの同士の関係は、やがて悲劇を招くことになっていくのだった。
ジェニファー・コネリー主演のドラマです。
キャシーを演じたジェニファー・コネリーも、ベラーニを演じたベン・キングスレーも、過去に執着して外面を取り繕い、現実に対面できない弱さを持った人物を講演しています。
キャシーは過去、幸せに暮らしていた過去の象徴として。
ベラーニはイランの軍に所属していた時の栄光の象徴として。
それぞれに過去にとらわれて物質としての家を求めてしまう哀しい人間の性を、この映画はじっくりと描いていきます。
家を手に入れても、過去の幸せな生活は戻ってこない……それなのに家を求めてしまう。
実体の伴わない物質は虚しいのに、それを求めてしまう人間の弱さ。
そういったものを丁寧に描いた映画だったと思います。
しかしそれにしても、ジェニファー・コネリーはやっぱり綺麗です。ヌードまで披露してますが、その肢体も本当に美しくて見とれてしまいました。
かつては敵同士の凄腕スパイだった両親の元に生まれた、姉カルメンと弟ジェニ。だが、二人は両親がかつてはスパイだったことも知らされず、ただ平凡な生活を送っていた。そんなある日、スパイが次々と姿を消す事件が発生し、引退した彼らの両親に捜査の依頼が舞い込んでくる。久しぶりの現場復帰に意気揚々と事件に乗り出すふたり。だが、ブランクによる衰えは隠せず、両親はあっさりと敵に捕らえられてしまう。残されたカルメンとジェニは、両親が残したスパイグッズを手に、敵と戦うこととなうのだった。
ロバート・ロドリゲス監督が挑んだファミリー・スパイアクション。とにかくケレン味たっぷりの演出に、最初から最後まで楽しませてもらいました。奇妙な世界観にはちょっと馴染めないものも感じましたけど、これも子どもの目にとっては楽しい世界だろうなと納得。
何も考えずに笑って観て楽しむ、そんな映画でした。
カルメンとジュニの姉弟は、新設されたスパイキッズ部門の腕利きエージェントとして働いていた。だが、彼らのライバルであるギグルス兄妹に陥れられ、ジュニはエージェントとしての職を追われてしまう。ジュニの汚名を返上するため、極秘に任務に潜り込むことにした彼らだったが、たどり着いたのは、ハイテク機器が全く使えず、見たこともない生物が闊歩する不思議な島だった。
ロバート・ロドリゲス監督の子供スパイアクションシリーズ第2弾。ケレン味溢れる演出は健在でしたが、ちょっと味が薄まってしまったかな、という印象は否めませんでしたね。これはちょっと残念。
しかし、少し成長したカルメンやジュニらが頼もしく、楽しい掛け合いも見せてくれるので、とても楽しんで観ることが出来ました。とにかく子供が観て楽しい映画を作ろう、というスタッフの思いが伝わってくるようでした。
かつては諜報組織OSSの凄腕キッズエージェントだったジュニ。だが、彼はOSSに不信感を募らせ、組織から抜け出して独りで生きていく道を選んでいた。
そんな彼の元に、OSSからカムバックの要請がくる。トイメーカーと呼ばれる男が、ネットワークゲームを使って全世界の子供達を洗脳し、世界征服を企んでいるというのだ。
既にゲームの中にエージェントを送り込んだが、逆にトイメーカーに捕らわれ、ゲームの中から出てこられなくなってしまったという。
一旦は要請を断ろうとしたジュニだったが、その捕らわれたエージェントの名前を聞いて愕然とする。そのエージェントとは、ジュニの姉カルメンだったのだ。
カルメンと世界を救うため、ジュニは再びOSSエージェントとして、ゲームの世界に乗り込むのだった。
ロバート・ロドリゲス監督の「スパイキッズ」シリーズ第3弾。
今作では青と赤のセロハンで作られた3Dメガネで、飛び出す映像を堪能できる作品となっています。
が……正直、今ひとつ飛び出し具合が良くなかった気がしました。完全に立体に見えずに、赤い色が映像からずれて見えたりしてちょっと辛かったです。それに、ちょっと酔っちゃいました。
また、今作ではアントニオ・バンデラスらの演じる両親の出演が極端に少なくて、前作までの「家族そろって楽しめる」という要素が薄れてしまったように思います。これはかなり残念。
ただ、小学校低学年くらいまでなら、かなり楽しんで観られると思います。ゲームの中に入り込み、立体映像で描かれた世界の中を子供達が駆けめぐる……その映像だけで、子供映画としては十分すぎる出来でしょう。
今作は、子供だけにターゲットを絞った作品として素晴らしいものに仕上がっていたと思います。
中国蘇州の厳戒な刑務所へ潜入したCIAエージェント、トム・ビショップ。彼の目的はそこに捕らわれた人間を救出することだった。だがその救出劇は失敗し、彼は囚われの身になってしまう。一方、トムをCIAに引き抜いて育て上げたネイサン・ミューアーは、その優秀なキャリアを残して退職の日を迎えていた。その最後の日にトムの投獄を聞いて心揺れるネイサン。CIAはトムを見殺しにしようとしているのだ。そんな状況で、ネイサンのとった行動とは? トムの処刑まで残された時間は、あと24時間しかないのだった……。
新旧スター対決といわれた、ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット競演の頭脳サスペンス。考えてみたら、共演するのは初めてなんですね。話としては、映画のほぼすべてを回想シーンが埋めつくしています。どうやってネイサンがトムと出会い、育てていき、決別したか、ということを描く回想シーンがメインですね。で、CIAの裏をどうやってかいていくか、という駆け引きが裏で展開されていく訳です。これはなかなか楽しめました。
ただ、派手なアクションはほとんどないので、あの予告のやり方はちょっと違うかな、とか思ったりしましたけど。
それにしても、ロバート・レッドフォードは、年老いても格好いいなぁ……この役は美味しすぎです。
上院議員の娘が、学校から突然誘拐された。犯人は、2年間その学校の教師に変装し、なりすましてきた周到な知能犯。その犯人は、犯罪心理捜査官アレックス・クロスに捜査をするよう電話をかけてくる。言われるとおり、捜査に乗り出すアレックス。果たして、犯人の思惑は何なのか? そして、事件の裏に隠された真の姿とは?
「コレクター」に続く、アレックス・クロスのシリーズ第2弾です。アレックス・クロスには前作に引き続きモーガン・フリーマンが扮しています。この役は本当に似合いますね。当たり役と言っていいと思います。
作品については、前作よりはだいぶ面白くなっていました。前作は、観賞後に何だか肩すかしを食らったような気になりましたので……(ラストが想像の域をでていなかった)。
今作は、モーガン・フリーマンの抑えたものながら聡明な演技を、十分に楽しむことが出来ました。
スペースシャトルが墜落し、奇跡的に生還したパイロット。NASAに回収された彼だったが、その口からは蜘蛛がはい出てきて、人を襲い始めたのだった。人を襲うごとに大きくなっていく蜘蛛。この蜘蛛はいったい何なのか? 倒すことは出来るのか。
……救いようのないくらいB級な映画です(笑)。
設定に無理があるし、展開も矛盾をはらみ、そもそも主人公がわがままで事態を好転させてない、というところがいけませんね。
とはいえ、かなりアナログな感覚と、この手の作品の命の痛快さが感じられて、そこそこ楽しめる作品でした。何も期待しないで観ると、何となく楽しめます(笑)。
アレクサンドラとジェーソン夫婦は、ボートで海をクルージング中に嵐に襲われ、通りかかったタンカーに救出される。タンカーの乗組員は二人にとても親切にしてくれ、遭難時にケガをしてしまったジェーソンの手当も施してくれた。しかし、やがてジェーソンは巨大グモに襲われる幻覚をみるようになり、やがて……。
宇宙グモとの戦いを描いた(笑)「スパイダーズ」の続編。とはいっても、ストーリー的に何のつながりもありません。前作がB級アクションの爽快感を備えていたのに比べて、今回はちょっとパワーダウンですね。巨大グモも、都合良く悪人だけを食べていくのはやめなさいって(笑)。エイリアン2の影響も見えたりなんかして、やっぱり続編を作るには無理があったかなという感じでしたね。
高校生であるピーターは、心優しく、科学に関する知識に優れた秀才だったが、ひ弱で臆病な性格の青年だった。そんな性格が災いして、隣に住む幼なじみメリー・ジェーンにも恋心を抱いていながら、言い出せない始末。だがある日、高校の行事である研究所の見学に行ったピーターは、そこで研究されていた遺伝子操作されたクモに咬まれてしまう。その日から、彼の体に、次第に異変が起きていくのだった。
40年以上続くアメリカン・コミックヒーローの映画化。この作品、何度か映画化の話がありながら、権利を獲得した会社が倒産したりして、なかなか映画が完成しなかったようですけど、難産の末、ようやく公開されましたね。一言でいうと、とても面白かったと思います。自在に壁をよじ登っていき、ビルとビルの間を飛び回るスパイダーマンの躍動感と、それをこねくり回したようなカメラワークで捉えていく演出に、痛快さを覚えました。主人公が突然手に入れてしまった能力と、それを活かしてヒーローになる動機づけ、そしてグリーン・ゴブリンとの戦いまでを、すっきりと簡潔に、上手くまとめて観せてくれましたね。楽しめました。
それにしても、ウィレム・デフォー……彼のお陰で、適役のグリーン・ゴブリンのキャラクターが立ちまくりです。そのことも、とても楽しんで観ることが出来ました。
ピーターがスパイダーマンとして生きることを誓ってから2年。
彼は、学業やアルバイトと、ヒーローとしての生活に折り合いを付けることの困難さに直面していた。優秀だった成績は下がり、仕事でも失敗ばかり。
また、親友のハリーは変わらずスパイダーマンを父の敵と恨みを募らせており、舞台女優としてデビューを果たしたメリージェーンは、心を開かないピーターを思い続けることに疲れ、新しい恋人をつくっていた。
次第に精神的に追いつめられていくピーターは、孤独の中で、スパイダーマンとして生きていくことに迷いを感じ始める。
そんなとき、ピーターはオクタヴィウス博士と出会い、彼の核融合実験に立ち会うこととなった。この実験が成功すれば、エネルギー不足の問題が一気に解決される、画期的な実験であった。
だが実験は失敗に終わり、その時の事故で、オクタヴィウス博士の背中に付けた核融合制御用のアームが、その肉体と融合してしまったのだ。
彼は、失敗に終わった実験を再び、更に大規模にして行おうと目論む。だが、同じ失敗で事故を起こすと、今度はニューヨーク中が吹き飛んでしまう。
ピーターは、スパイダーマンとして彼に立ち向かうことが出来るのか。スパイダーマンは、彼の実験を止めることが出来るのだろうか。
サム・ライミ監督のヒーロー映画第2弾。良くできていました。
前作でピーターが選んだ、ヒーローとしての生き方。それによって彼の中に生じてくる悩みや葛藤を物語の軸に上手く描き込み、作品に深みを与えることに成功していると思います。
自分の全てを犠牲にし、どんなに誹られても黙って耐え続け、ヒーローとして生きて行かなくてはならないのか?
そんなピーターの苦しさや悩みが、等身大で描かれているからこそ、この作品は他のヒーロー物とは違う親しみを、観客に感じさせてくれるんでしょう。上手いなぁ、と感心しました。
また、映画の最大の目玉であるアクションシーンも秀逸。重力を完全に飛び越えた全方向へのスパイダーネットアクションは前作から更にスピード感を増し、また電車の上を舞台にしたアクションも色んなアイデアを盛り込んであって飽きさせません。
続編に良作なし、なんてジンクスを軽々と破って、とても面白い作品に仕上がっていたと思います。
あ、それから、劇中で一部「死霊のはらわた」で有名なサム・ライミ独特のカメラアングルを思わせるシーンがあって、ニヤリとさせられました。
医療船ナイチンゲール229は、ある時、無人のはずの星域からSOS信号を受け取った。いぶかしく思いながらもワープでその星域に向かったナイチンゲール229。しかし、それが悲劇の始まりだった。
ジェームズ・スペイダー、アンジェラ・バセットといった実力派俳優共演のSF映画。しかし……これは、正直もうちょっとまとめようがあった気がします。展開次第で、もうちょっとスリルやサスペンスに満ちたお話になったんかないかと。ラストもあんな終わり方で良かったんだろうか? やたらと裸になりたがる登場人物にしてもそうですが、もうちょっとストーリー展開に必然性が欲しかったですね。
過去に打ち上げられた旧ソ連の通信衛星が操作不能になり、地球への落下を始めた。修理しようにも、使用されている回路があまりに古いため、現在の技師達には直すことが出来ない。出来るのは、それを設計した者だけ……。NASAは、もう60歳をこえてしまっている当時の宇宙飛行士訓練生メンバーを集め、スペースシャトルの打ち上げ計画を開始したのだった」
クリント・イーストウッド監督・主演のSF映画です。昔宇宙に行けなかった飛行士達が、老いぼれてなおもその夢を果たす、という映画ですね。お茶目なおじいちゃんたちのがんばり様は楽しめました。
それにしても、詳しく書くとネタバレになってしまうので書けないのですが、さすがのクリント・イーストウッド御大といえど、トミー・リー・ジョーンズにはおいしい役を用意せざるを得なかったみたいですね。自身の監督作でもいつも一番おいしいところをもっていくイーストウッドですが、今回一番おいしかったのはトミー・リーおぢさんでした。やっぱかっこいいわ、このおぢさん。
湾岸戦争終結直後のイラクで、連合軍のゲイツ少佐達は、捕虜から「イラクがクエートから奪った金塊の隠し場所」の地図を手に入れ、それをかすめ取ろうと隊を抜け出す。半日程で帰隊できる算段で、軽い心づもりだった彼らだったが、地図が示す村にたどり着いた彼らを待っていたのは、イラク国民の現実だった……。
湾岸戦争を舞台にした、ジョージ・クルーニー主演の一風変わった戦争映画。軽いノリの作風を漂わせながら、次第に重たい現実感を描いていく演出のバランスがうまいと思いました。
この作品では、特にアメリカに「打倒フセイン」という標榜を焚きつけられたイラク国民が、蜂起してみたはいいもののその後は全く支援もなく、「アメリカに踊らされて捨てられた」という姿が描かれていたのが印象深いです。イラク兵に「フセインも酷いが、空爆をしたお前らも狂ってる」とか「世界平和のためとか言いながら、他の紛争にお前らは介入したか。お前らは石油のためにやって来たんだろ」なんて言わせているのも、アメリカ映画にしては珍しい自国分析で興味深いシーン。それから十数年後、再びイラクでアメリカの大統領は戦争を始めましたが、根本的な行動は全く変わっていないとため息が出そうになりました。
軽いノリとちょっとバカっぽい印象のある作品ですし、主人公達の行動のきっかけとなったのが「金塊泥棒」であったというところにはちょっと引っかかりますが、それでも次第に良心の行動を見せ始める登場人物達に、いつしか引き込まれてしまっていました。
珍品ですが、良作です。
辺境の村、スリーピー・ホロウ。
この村で、首を狩られるという猟奇殺人が連続して起こっていた。
ニューヨーク市警の捜査官イカボットは、その捜査の命を受け、スリーピー・ホロウへ出向くのだが、彼を迎えた長老達は、この事件が「独立戦争時に斬首された、首なし騎士の仕業」だと告げるのだった……。
米国では数少ない、自国のおとぎ話を元にした、ティム・バートン監督の大ヒットホラー映画です。
これは面白いですね。バートン監督らしく、凝りに凝った美術と世界観に浸りきりました。特に、メイキングを見て驚いたのですが、あの「騎士の森」はセットだったんですね! わざわざあんなセットを造ってしまうとは……金をかけているというか、暇というか……(笑)。でも効果は抜群。見事に「奇妙な雰囲気を漂わせる森」をうまく画面に反映してました。
ジョニー・デップは、ほんとバートン監督作ではいい味だしますね。お互いに持ち味を分かって、信頼し合っている結果でしょうか。画面上で生き生きと生きているという感じを受けました。
クリスティーナ・リッチも、「え? こんなに可愛かったっけ?」と驚いたりして(笑)。弱々しさと力強さが同居している魅力的な役をきっちり演じていてなかなか良かったです。
ロサンゼルス警察のS.W.A.T.(特殊部隊)隊員のストリートは、ある銀行強盗事件で相棒ギャンブルの命令違反のあおりを受けて武器保管庫係に降格を命じられ、ギャンブル自身は警察を辞職してしまった。それから半年後。巡査部長のホンドが新しいS.W.A.T.チームを編成することになり、見初められたストリートはそのチームに入って隊員として復帰を果たすことに成功する。そんなとき、国際指名手配犯の麻薬王アレックスが逮捕され、ストリート達がその護送の任務に就くことになった。ところが、テレビカメラに囲まれたアレックスが「俺を逃がした奴には1億ドル支払う」と言い放ったことから、この護送はたくさんの荒くれ者達に狙われることとなってしまう。そしてその襲撃者の中には、かつてのストリートの相棒、ギャンブルの姿もあったのだった。
コリン・ファレル、サミュエル・L・ジャクソン、ミシェル・ロドリゲス、LL・クール・Jら個性的な実力派俳優が共演したアクション大作。実在のロス市警S.W.A.T.チームが使用している装備品までそっくりにこだわってリアルを指向した作品です。
物語の展開としては、若干強引すぎるきらいがありました。犯人に「逃がした奴に1億ドルやる」とテレビで公言させることで、護送中にどこから誰が襲ってくるか分からない、という緊張感を出そうというもくろみがあったのかも知れませんが、そもそもいくら麻薬王として知られている男の言葉とはいえ、そんなテレビの一言だけで実際に護送を襲撃しようとする奴がいくらでもいる、というのにはすこしリアリティがないような気がしました。
この作品はどう転んでも、ストリートとギャンブルの対決がメインにならざるを得ないプロットなんですから、アレックスがテレビで公言するのではなく、面会に来た手下などを通じて元S.W.A.T.隊員であるギャンブルに仕事を依頼するという展開にした方がより物語が自然に流れたように思うんですけどね。
しかし、芸達者な俳優達の演技といい、アクションを緊張感いっぱいに演出した編集といい、全体的にはとても満足のいく作品です。
主演のコリン・ファレルは押さえた熱血漢ぶりが好印象。これから本当にいい俳優になっていくでしょうね。
個人的にはミシェル・ロドリゲスも注目している女優さん。特に美人ということでもないんですけど、あの瞳は本当に印象的です。こんな大作にもヒロイン級で出演してくるようになったのは嬉しい限りです。
サミュエル・L・ジャクソンはもう、言うまでもなく素晴らしい演技ですし、この俳優陣には本当に楽しませてもらいました。
個人的には、続編を期待したいところ。このメンバーが事件解決を繰り返すうちに信頼を積み重ね、チームワークも堅くなった後の事件対応、という姿を観たいものです。
1993年。フランスに駐留するアメリカの軍人ジョシュアは、妻子を殺された恨みからアラブ人を無差別に射殺してしまい、名前を奪われてフランス外人部隊に投入され、ボスニアへ赴くことになった。そこは、イスラムの勢力とセルビア人達が紛争を起こしている地域だった。ギルと名を変えたジョシュアは、セルビア人側につき、イスラム勢力と戦っていたが、ある日、敵の捕虜となっていた妊婦と出会ったことから、彼はその女性と、産み落とした女の子を守る旅路につくことになる。
デニス・クエイド主演の戦争ドラマ。懸命に子供を守ろうとするデニス・クエイドの演技や、ドラマの進行自体は悪いものではありませんでした。戦争の虚しさ、生命の大切さは、それなりに映画の中から伝わっては来ます。ですが、それなり、でしかないんです。
冒頭、主人公はイスラム原理主義者のテロによって妻子を殺されますが、逆上した彼はそのまま手近なイスラムの寺院へ赴いて、そこで祈りを捧げている信者達を無差別に、背後からいきなり皆殺しにしたのです。この行為について、この主人公は一切悔恨の情を表そうとはしないんですよね。そういった意味では、若干視野が偏った映画だったかな、と思います。この設定さえなければ、もっといい映画になったと思うのですが……残念です。
ボルティモアの映画館で行われた、あるハリウッド映画のプレミア上映会。しかしその会場は突然襲撃を受け、来場していたハリウッド女優ハニーは誘拐されてしまう。
その誘拐を仕組んだのは、セシル・Bと名乗る男が率いる集団。彼らは映画を制作しているといい、その映画の主演をやらせるため、ハニーを誘拐したのだった。
彼らの撮影は予算もないため、常にゲリラ撮影。金やきれい事ばかりの映画が作られている現状に嫌気がさし、そんな映画の撲滅を訴える映画テロリストであった。
そんな彼らに無理矢理撮影に参加させられるハニー。しかし、撮影を繰り返す内、次第にこれまでの映画になかった精神的な昂揚を感じ始めるのだった。
メラニー・グリフィス、スティーブン・ドーフ共演。
基本的にアンチ・ハリウッドな映画なんですけど、色んな映画のパロディやオマージュが散りばめられていて、コメディというか馬鹿映画というか、とにかく結構楽しめました。
特に、「ゾンビ」のパロディシーンにはもう大爆笑。ジョン・ウォーターズ監督も、かなりのテンションで作った映画なんじゃないでしょうか。
メラニー・グリフィスは少し頭の足りないハリウッド女優を好演。
しかし、スティーブン・ドーフは、彼にしては少し大人しめな感じだったように思えました。いや、それでもかなりぶっ飛んではいるんですが、その中にも少し落ち着いた感じを受けました。「目」が映し出す狂気が薄かった、とでもいいましょうか。ちょっと物足りなかったです。
19世紀に建てられた、先鋭的な治療法で栄えたダンバース精神病院。だが、そこで行われる治療法はやがて暴走を始め、ロボトミーやショック療法といった非人道的な治療を生み出していき、やがて1985年に閉鎖に追い込まれた。それから15年余。荘厳なゴシック建築のこの病院を再利用すべく、改修が行われることになった。その改修の前に、大量に使用されていたアスベストを除去するため、5人の男が雇われる。彼らは短い工期で仕事を請け負い、働き始めるが、病院の中にはかつての凄惨な治療に供された被害者達の想いが漂っていたのだった。彼らの仲間のひとりが、この病院で行われていた治療(セッション)の記録をとったテープを見つけたとき、次第に狂気が彼らの中に浸透し始めるのだった。
実在の精神病院、ダンバース病院をモデルにしたサイコ・サスペンス。
正直、ちょっとストーリーが練れていないかな、という印象でした。
精神的な怖さは、息詰まるような病院内(特に地下)の描写や情緒不安定感を巧みに表したセリフ回しなどで上手く演出できているんですけど、それ以上のものはなかった感じがします。
仲間が一人、消えたかと思ったら一気に最後のネタばらしまで突き進んでしまうため、サスペンス要素の盛り上がりが今ひとつになってしまった感が拭えません。
そもそも犯人が何故狂気に走ってしまったのかということと精神病院という舞台設定に接点が見いだせず、物語が散漫な印象を受けてしまいました。
雰囲気は良かったので、物語がキチンと練れていれば面白くなっただろうと思えるだけに少し残念でした。
それにしても、昔の精神病治療って惨いものだったんですね……。アナトミーなんて、「人の脳を一部削って大人しくさせる」治療法だったって言うんですから驚くやら呆れるやら。
そして、最後に出てきますけど、発ガン性物質であるアスベスト(石綿)、日本は未だ大量に消費しているそうです……これには(映画には直接関係ありませんけど)ぞっとしました。
白血病を患い、その血液型の特殊さから骨髄移植のドナーも見つからない息子を抱えた刑事。やっと見つけた適合者は、知能指数150の死刑囚だった。その彼に、移植を承諾するよう頼む刑事。だが、移植手術が始まろうとしたとき、彼は警察の手から逃れて脱走するのだった。
アンディ・ガルシア、マイケル・キートン共演のアクションサスペンス。いささかうーん、な感じ(笑)。アンディ・ガルシア演じる刑事が、ちょっとやりすぎかなぁ。息子のために、という気持ちも分かるけど、「同僚の刑事を危険にさらしてどうする!」って突っ込み入れたくなりますね。そもそも、このアンディ・ガルシア、あんまり「主演」というものが似合わない……(笑)。「アンタッチャブル」「ブラック・レイン」「愛と死の間で」などで脇役をやっていたときにはいい役者だと思ったのですが……脇で光る俳優、というのが僕の印象ですね(笑)。アクションの主演をやるには、この人は繊細すぎると思うのです。
かたや、マイケル・キートン。「ひゃ〜、初代バットマンがこんな悪い奴になっちまった〜」って感じ(笑)。悪役を、実にしっかりと演じてくれていました。元々好きな役者ですが、やはりこの人の演技は素晴らしい!
総合的には、それなりに面白かったな、というところでしたね。もしかしてアンディ・ガルシアではなく、例えばブルース・ウィリスが主演だったとしたら、かなり面白い映画になっていたかも? そのあたり、ちょっと残念な気がしましたね。
退職を1週間後に控えたベテラン刑事のサマセットは、新人のミルズ刑事と共に、激しい雨の中、殺人現場へ出向く。そこにあったのは、イスに縛り付けられ、胃が破裂するまで物を食べ続けさせられたあげくに汚物と食べ物に突っ伏して死んだ、巨大な肥満体の男の死体であった。そしてその男の部屋の壁には、犯人が残した物と思われる、「大食」の文字があった。
それから間もなく、敏腕で有名な弁護士がオフィスで殺害されているのが発見される。そして、オフィスの壁には「強欲」の文字が……。
サマセットはこの殺人が聖書の「七つの大罪」に基づいて行われていると読みとり、あと5つの殺人が起こると確信する。
そうして捜査を行うふたりだったが、彼らは次第に、綿密に、緻密に計算された犯人の思惑に絡め取られ、思いも寄らぬ悲劇に巻き込まれていくことになるのだった。
デビッド・フィンチャー監督、モーガン・フリーマン、ブラッド・ピット、ケビン・スペイシー、グウィネス・パルトロウ共演のサイコ・サスペンス。
猟奇殺人を描いた映画として、とても完成度の高い作品だと思います。猟奇殺人が起きて捜査を開始する刑事を描くところから始めておいて、最後には猟奇殺人に巻き込まれる人間の気持ち悪さを思う存分観客に味わわせる演出、展開は本当に完璧。
また、俳優もいいです。特に、世の中に対して諦観を抱いているサマセットを演じたフリーマンと、歯車が狂っていながらどこか気高く神々しささえ感じさせる犯人を演じたケビン・スペイシーのふたりの演技は素晴らしいものがありました。
前述したとおり、気持ち悪い作品でして、後味は最悪といってもいいくらいです。それ故、万人にお薦めとはいきませんけど、デビッド・フィンチャー監督の高い演出力を堪能できる作品です。
北朝鮮軍の強硬派であるムーン大佐を暗殺する任務を帯び、ボンドは北朝鮮へと侵入する。何とか任務は果たしたボンドだったが、何者かから情報が漏れており、北朝鮮軍に捕まってしまう。それから14ヶ月。捕虜として拷問を受けていたボンドは、CIAが捕らえていた、中国の諜報員を殺害し、かつてはムーン大佐の腹心でもあったザオという男と捕虜交換でイギリスに返されることとなった。だがイギリスで彼を待っていたのは、拷問に屈して情報を漏らしたという疑いであった。ボンドが捕らえられている間に、各国の諜報員達の正体に関するデータがどこからか漏洩し、各国に被害をもたらしていたのである。ボンドは007のコードを剥奪されることになってしまう。窮地に陥ったボンドは、自らのプライドにかけ、自分の身と引き替えに自由を得たザオを追い、キューバへ向かうのだった。
007シリーズの20作目にして、シリーズ40周年の記念すべき作品です。コネリー・ボンドから40年も経つのかと思うと感慨もひとしおですね。
いろいろなシリーズに対するパロディやオマージュが散見されて、楽しめました。
今作では、半ば個人的な復讐といった感情でボンドは動いていて、いつもとは少し印象が違う感じがしました。これもまたいいですね。
ただ、非情さでは「ワールド・イズ・ノット・イナフ」の方が上だったかも……。あのときのボンドを上回る迫力を期待していたので、それだけはちょっと残念でしたけど、でもいつもながらの仕掛けの楽しさ、アクションの娯楽性が楽しめる良作だったと思います。
そうそう。今作でもっとも印象的だったのはやはりハル・ベリーが演じたジンクスというキャラクターでした。彼女の存在感と活躍は、ボンドを喰ってしまうくらいの物がありましたしね。
ジンクスが主役のアクション映画の企画も出ているとか。実現するとしたら非常に楽しみです。
石油王、キングの依頼を受けたジェームズ・ボンド。
だがその依頼主キングは、英国諜報部本部内でテロリストにより殺害されてしまう。
次に狙われるのは、キングの娘、エレクトラか?
身辺警護にあたるボンドの前に、核テロを目論むテロリストグループリーダー、レナードが立ちはだかるのだった。
ピアース・ブロスナンが三度ジェームズ・ボンドに扮したシリーズ19作目。
このボンド、いいです。
初めて、僕はこのボンドに凄みを感じました。あまりに非情な凄み。体が震えましたね。
凝ったアクションの演出と軽妙な台詞回し(英語が分かると今作はとても台詞が楽しいそうです)、そして必要なときには鬼になる迫力に、画面に引き込まれてしまいました。
それに、ふたりのボンド・ガール、ソフィー・マルソーの美しさとデニース・リチャーズの眩しさにも非常に楽しめました。対極、といってもいいようなふたりの配置は絶妙でしょうね。
ボンド・ガールがただの飾り物だった時代はもう終わってる、なんて言わずに、この際ノーブラタンクトップの核化学者、なんて非常識な設定にも目をつぶって、画面の華やかさを楽しむのもいいんじゃないでしょうか。
仮釈放中の凄腕ハッカー、スタンリーは、ある日ジンジャーという美女の訪問を受ける。彼女が持ちかけたのは、ゲイブリエルという男に協力すれば多大な報酬を支払うという儲け話だった。気乗りしないながらも、彼女に乗せられて男と会うスタンリー。しかし彼を待っていたのは、引き返すことの出来ない計画だったのだった。
ジョン・トラボルタがカリスマ性溢れる悪役に扮し、ヒュー・ジャックマン演じる凄腕ハッカーを手玉にとる怪演を見せるクライム・サスペンス。いやいや、なかなか先を読ませないように工夫されたカット割りと、スピーディーな展開に最後まで引きずられるように観てしまいました。面白かったです。最後、あんな終わり方でいいのか? なんて思ったことも事実ですが(笑)。
それにしても、ヒュー・ジャックマンは格好いいですね。「X−MEN」のときは半分コスプレみたいなものでしたけど、今回は素顔ですからね。久し振りに正統派のハンサム・タフガイが出てきたという気がしました。それと、ハル・ベリーも久し振り(「エクゼクティブ・デシジョン」以来かなぁ……)に見ましたけど、やっぱ綺麗ですね。今回は、スタイルも抜群なところを見せてくれています。
惑星ソラリスを探査する宇宙ステーションで働く友人から、奇妙な事件が起こっているので来て欲しいというメッセージを受け取った、心理学者のケルヴィン。だが、彼が宇宙ステーションへたどり着いた時、すでにその友人は自殺していた。そしてケルヴィンは、宇宙ステーションに居るはずのない、男の子の姿を目撃する。果たして、この宇宙ステーションで何が起こっているのか? 疑問を抱くケルヴィンだったが、その翌日、彼の前に、今度は自殺したはずの彼の妻が現れるのだった。
ソ連時代のロシア映画「惑星ソラリス」に続き、「ソラリスの陽のもとに」を映像化したSF作品。監督はスティーブン・ソダーバーグ、主演にジョージ・クルーニー、制作にはジェームズ・キャメロンが名を連ねています。
「惑星ソラリス」が人間の哀しい性までを哲学的に描いたのに対し、この「ソラリス」は恋愛感情に焦点を絞って描いてあるようですね。人間の弱さを描きながら、それでも「愛」を人間性の根元に持ってくる辺りは、さすがジェームズ・キャメロンといったところでしょうか。
この作品は、あくまで「ソラリスの陽のもとに」の再映画化であって、「惑星ソラリス」のリメイクではありません。ですから「惑星ソラリス」と比較するつもりはありませんし、比較して作品の良否を下すなんてのはナンセンスです。
この作品が描いているのは、愛をベースにしながらもやはり人間の性。人間は本当に理解し合えるのか。かつて自分の過ちで失った人が、妄想ででも自分の元に返ってきたら、今度こそ幸せにやっていけるのか、その過ちは償えるのか。そして、人間性の在処とは……。
そういった諸々のテーマを、この映画は描こうとしています。
テーマが大きいだけに、2時間足らずのこの映画では突っ込み不足の感は否めませんが、それでも考えさせるテーマの提示は何とかやってのけていますね。
なんとなく、ダスティン・ホフマン主演の「スフィア」を思い出したのは私だけでしょうか。
メスカトニック大学の学生ダンは、チューリッヒ大学から転入してきたウェストに地下室を貸すことになった。ウェストは優秀な学生で、その地下室に実験装置を運び入れて、夜な夜な実験に没頭するようになる。その実験とは、死体の蘇生実験であった……。
H・P・ラヴクラフト原作のホラー映画。ホラーファンの間ではあまりにも有名な作品ですが、実は私は今回初めて鑑賞しました。
最初はスプラッターな気持ち悪い映画かな、と思ったんですが、意外とそういうシーンもなく、笑いを誘うお遊びのシーンをうまく絡ませながら、人の心の闇へとまとめていくラストは見応えがありましたね。
ハーバート・ウェストを演じたジェフリー・コムズの見事な開演振りには拍手喝采。ヒロイン役のバーバラ・クランプトンの脱ぎっぷりと美しいボディ・ラインも素晴らしかったです……って、これは映画にはあまり関係ありませんが。
ともかく、とても楽しめたホラー映画でした。