映 画 館

洋画 ハ行


「π」(1997年)

 世界のすべては必ず数学で説明が出来ると信じる主人公。彼は、完全に無秩序な、株価の変動といったようなものまでも説明できる法則を解明しようとしていた。だが、その答えが目の前に迫ってきたとき、彼の周囲に異変が起きる……。

 全体的に独特な映像感覚とそのスピード感で見せる映画でした。ただ、スピード感といっても通常はひどく映像に変化がなく、変化が起きるときには一気に変化してしまうスピード感、とでもいいましょうか。なんとなく、沈滞している雰囲気が押井守の映画を思わせますね(笑)。ストーリーは、深いような、なんにもないような……そんな感じでした。個人的には気に入りましたが、人にはお薦めしません(笑)。


「バイオハザード」(2002年)

 古びた洋館の中で目を覚ましたアリス。彼女は、しかし自分の記憶が全くないことに愕然とする。そこへ、突然特殊部隊が進入してきて、アリスを洋館の地下へと連れて去る。その洋館の下には通路があり、そこからアンブレラ・コーポレーションの特殊研究所「ハイブ」へと繋がっていたのだ。何らかの事故が起こり、今、ハイブは隔離状態であるという。果たして、「ハイブ」で行われていた研究とは何なのか? そこで起きた事故とは? そして、アリス自身は果たして何者なのか。地下の研究所で、想像を絶するサバイバルが始まろうとしていた……。

 全世界で2,000万本以上を売ったという人気ゲームを元に制作された、ホラー・アクション映画。ひとくくりにしていえば「ゾンビ映画」になりますね。映画の雰囲気も、過去のゾンビ映画の雰囲気を踏襲しつつ、キレのある映像を織り交ぜたり、大量に押し寄せるゾンビ達で敵の重量感をだしたりしながら、うまく映画流にアレンジしていますね。もっとも、元になったゲーム「バイオハザード」自体に、ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画シリーズへのオマージュがふんだんに盛り込まれてますから、雰囲気そのものの出し方も無理なく出来たという面もあるのでしょうが。
 主演のミラ・ジョヴォビッチも、相変わらず役に対してののめり込み方が凄いです。ある意味エキセントリックな役が似合う彼女ですが、今作でも記憶をなくし、生ける屍に囲まれて恐怖と狂気にさいなまれる役を迫力たっぷりに演じています。
 ただ、若干ノリだけで作ってしまった映画というきらいはあるかな、と思います。最初から最後まで、落ち着く間もなく始まって、落ち着かないまんまに終わっちゃう感じがしました。このテンポはドイツ映画っぽいなぁ、と思っていたら、カプコンから映画化権を買った会社がドイツの会社だったんですね。米独伊の合作ということで、納得しました。
 個人的には「バタリアン4」と呼んでもいいかな、とも思いましたが、それでもゾンビ映画としてみるといい出来だと思います。ミラ・ジョヴォビッチの熱演とあわせて、楽しめました。


「バイオハザードII アポカリプス」(2004年)

 ラクーンシティ地下にあるハイブから、アリスが生き延びてから36時間。
 アンブレラ社の研究室で目を覚ました彼女は、ラクーンシティが生ける死者により壊滅的なダメージを受けているのを目の当たりにする。
 T−ウィルスの流出を食い止めるため、アンブレラ社は町を住民ごと閉鎖。数時間後には、戦術核により町ごとウィルスを吹き飛ばすのがバイオハザード時の対処法である。
 残された時間は、4時間。
 そんなアリスに、アンブレラ社の研究主任から連絡が入る。
 「町に取り残された私の娘を救い出してくれるなら、脱出方法を教えよう」
 こうして、アリスの、生き延びるための戦いが始まった。

 前作「バイオハザード」から2年。引き続き、ミラ・ジョヴォビッチが戦うヒロイン・アリスに扮するシリーズ第2弾です。
 今回は、世界観を広げたためにちょっと散漫になっちゃったかな、という印象を受けました。前作は地下研究所からの脱出、という限られた空間からの脱出であったのに対し、今回は大きな町からの脱出が目的になったことで、物語の収集がつけにくくなっちゃいましたかねぇ? 街がゾンビであふれかえり、大勢の人たちが襲われているにも関わらず、アリスたちには「出来るだけ大勢の人を助けよう」なんて気持ちはこれっぽっちもないみたいだし。そのお陰で、世界観は広がっているのに物語のスケールはほとんど広がっていないように感じてしまいました。
 でも、ゾンビ映画といえば、そもそも「他人の心配なんてしない、している余裕がない」ってのが当たり前ですしね……これはセオリー通りとも言えますか。
 他にも、アクションシーンが観にくかったり、最強の敵のハズのネメシスが意外に強そうに見えなかったりと、個人的には非常に「イマイチ感」が強かったです。
 とはいえ、決してこの手の作品としてはポイントを外している訳ではないので、悪い出来ではないと思います。むしろ、セオリー通りに作られている分、完成度としては高いのかも知れませんね。
 出来れば、もう一回観てから評価してみたい作品です。


「ハイ・クライムズ」(2002年)

 カリフォルニアで夫トムと暮らすクレアは、弁護士としての仕事も順調で、あとは子供が出来るのを楽しみにしていた。だが二人で町中を歩いていたある日、突然武装したFBI捜査官達が現れ、クレアの目の前でトムを逮捕してしまう。そして彼女は、トムが実は別の人間で、かつてエル・サルバドルで一般市民9人を殺した犯人であると告げられたのだ。軍法法廷にかけられることになった夫に、クレアは弁護士として法廷に赴くことを決意する。一般の裁判とはまるで勝手が違う軍法法廷に精通した、チャーリーという弁護士とともに。果たして、夫の無実は証明できるのか。

 アシュレイ・ジャッド、モーガン・フリーマン共演のサスペンス。とらわれる夫役にはジム・カウィーゼルと、キャスト的にもなかなか見所の多い作品でした。
 作品としては、意外性だけを狙ったような理不尽などんでん返しもなく、しかし適度に観客をはらはらさせる展開はキチンと用意された、サスペンス映画の佳作だと思います。とても楽しんでみることが出来ました。
 ただ、この作品の中で暴かれていくアメリカ軍の暴走行為は怖いですね……それを「あり得るなぁ……」などと感じてしまう自分も怖いですけど。


「ハイランダー」(1986年)

 1985年のニューヨークで、刀同士で戦う男達がいた。彼らは首を切り落とされない限り死なない不死人であり、最後のひとりとなるまで互いに戦い続ける宿命を背負っていたのだ。その内のひとり、コナー・マクラウドは、1500年代初頭のスコットランドで生まれた。彼はハイランダー(高地人)と呼ばれ、人として生きたいと願いながら叶えられず、人間の歴史を500年近くも見守ってきていた。やがて、コナーともうひとりが残り、最後の戦いの時が近づいてくるのだった。

 クリストファー・ランバート主演のファンタジー・アクション映画。共演にショーン・コネーリー。
 現代を舞台にして(といってももう20年近くも前ですが)、剣というアナログな武器を振り回して戦う男達の姿はなかなか奇抜でいいですね。アクションのキレ自体は、昨今のCG&ワイヤー全開のアクション映画にはかないませんけど、生身でのアクションの面白さは堪能できました。欲を言えば、もう少し殺陣の出来が良ければ……と思わなくもありませんが。
 それにしてもクリストファー・ランバート、こういったB級テイストの作品で孤高の戦士をやらせたらピッタリとはまりますね。この作品といいフォートレスといい、いい味出してます。
 逆にいうと、このB級テイスト感がこの人のキャリアを滞らせてしまったような気もしますけど……好きな役者さんなのに残念。笑顔が可愛かったりするんですけどねぇ。
 ともかく、いかにも80年代といった感じのアクション映画ですが、そのテのものが好きなら観て損はないかと思います。


「パイレーツ・オブ・カリビアン」(2003年)

 提督の娘エリザベスは、幼少の頃、父とともに軍艦で航海中、漂流していたウィルという少年を助けた。そのとき、ウィルが海賊の印と思われる金貨を所持していたため、エリザベスは彼を助けるために、咄嗟にその金貨を隠し、そのまま手元に置いてしまう。それから数年。ウィルは鍛冶職人として働く青年となり、エリザベスは美しい女性に成長していた。そんなある日の夜、バルボッサ船長と名乗る男が率いる海賊の大軍が、町に押し寄せ、エリザベスをさらっていく事件が起こる。ウィルは、エリザベスを救い出すべく、その日の昼間にたまたま町に流れ着いてたジャック・スパロウと名乗る一匹狼の海賊と手を組んで、バルボッサの後を追い始めるが、相手はただの海賊ではなかった。いくら斬っても銃を撃ち込んでも死なない、呪いをかけられた海賊達だったのである。

 ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム共演のアクション娯楽大作。
 そもそもはディズニー・ランドの「カリブの海賊」を元に制作された作品ですが、さすがはディズニー作品。最初から最後まで、安心して観ていられる娯楽作に仕上がっています。
 特筆すべきは、やはりジョニー・デップ。その存在感と、軽いお調子者風でありながら憎めない軽妙な人物像を、巧みに、喜々として演じていました。その立ち居振る舞いに、すっかり魅せられてしまいましたね。
 また、ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウと対立する船長、バルボッサを演じたジェフリー・ラッシュも、やはりユーモアを交えつつもしっかりとした演技で、どっかりとスクリーンに存在感を残していました。
 このふたりのやりとりは、本当に楽しくて、これだけで観る価値は十分にあったと思いました。
 まぁ、「ノリ優先」で作られた作品なので、突っ込みどころも満載。しかし、それはとりあえずおいといて、気軽に楽しみたい作品でした。


「バウンド」(1996年)

 ヴァイオレットは、マフィアの組織の中でマネーロンダリングを担当しているシーザーという男の情婦となって5年となり、次第にマフィア組織に嫌気が差してきていた。そんな時、ヴァイオレットの部屋の隣の模様替えに、コーキーという女性が現れる。コーキーは窃盗を生業としており、5年の服役を終えて出所してきたばかりだった。レズビアンでもあるコーキーと惹かれ合うヴァイオレット。そしてふたりは、組織のチンピラが横領した200万ドルを奪う計画を立て始めるのだった。

 後に「マトリックス」で一躍有名になるウォシャウスキー兄弟監督作品。ジェニファー・ティリーとジーナ・ガーション共演によるクライムサスペンス。なかなか先の展開が読めない脚本と、凝りに凝ったカメラワークと美術がとてもセンスが良くて、観ていて小気味いい作品です。マフィアの愛人を「ビジネス」と割り切ったヴァイオレットの生き方に「女の強さ」を感じてしまいます……。


「バタリアン2」(1987年)

 米軍が開発した特殊なガス。それは、使者を蘇らせる効果を持ったガスだった。ふとしたことから流出してしまったそのガスが埋葬墓地に流れ出たことから、その墓地を擁する町は死者に乗っ取られることとなってしまった。その町に取り残されてしまった少年たち。果たして、彼らは町を無事に脱出することが出来るのだろうか。

 80年代のホラー映画ブームの最中に作られた映画。もう、徹底的にB級な映画ですが、それだけに楽しさもたくさんある、というタイプの映画です。とにかく、冒頭米軍の機密兵器らしきものがトラックで運ばれていきますが、そのトラックが木材に乗り上げたくらいのショックでそれが荷台から転げ落ちてしまうのですから、「そんな訳ないだろぉ!」って突っ込みどころ満載(笑)。カテゴリーはホラーながら、笑って楽しむべき映画ですね。


「初恋のきた道」(2000年)

 父の訃報に、青年ユーシェンは故郷の田舎村に帰ってきた。冬の雪深く閉ざされたこの村で、父に先立たれた母は、伝統に則り、町に眠る父の遺体を村人で担いで村に返してやりたいと言い出す。担いで遺体を運んであげれば、その霊は村への帰り道に迷うことがないという言い伝えがあったからだ。だが、町までは相当な距離がある。雪深い時期でもあり、ユーシェンは母に車で運ぶように言うのだが、母は全く聞く耳を持たなかった。その頑なな態度に、ユーシェンは両親の恋愛話を思い出す。それは、村では伝説と化した恋愛物語だったのだ。

 チャン・イーモウ監督、チャン・ツイィー主演の恋愛映画。
 美しくも雄大な自然を背景に、繊細で純粋な想いが紡がれるハートウォーミング映画です。
 とにかく、チャン・ツイィーが、その後の悪役路線とは全く違った健気で明るい役柄を好演。
 ストーリー自体は非常に単純な流れでしかありませんが、それを瑞々しく描ききった監督のお手並みもお見事でしょうね。
 小粒ながら、演出が行き届いたいい映画でした。


「パッション」(2004年)

 ユダの裏切りにより、ユダヤ教の司祭に捕らえられ、ローマの司政官に引き渡されたイエス。彼は、熱狂的なユダヤ教徒達の熱烈な要望により、拷問にかけられ、やがて磔にされてしまう。イエスはその苦もすべて引き受け、それに堪え忍ぶことで人類の救済を神から受けようとするのだが……。

 メル・ギブソン監督、ジム・カヴィーゼル主演。イエス最後の12時間の「真実」を描くということで話題になった映画です。
 この作品は、公開前から「反ユダヤ的である」ということで様々な議論を巻き起こしましたが、なるほど、これは問題視されても仕方ないかな、と思いました。この作品は「福音書によるイエスの真実」を描いているのではなく、「カソリックによる伝統的なイエス像」を描いているからです。
 恐らく大きな問題だと思われるのは2点。イエスが白人であることと、ローマの司政官はイエスを殺そうとしなかったがユダヤ教の司祭達が処刑を断行させるというくだり。この時代のイスラエルには白人はいなかったし、ユダヤ教の司祭達の方が処刑を求めたというのは後年ローマ帝国の国教とされた時にイエスの死の責任をユダヤ教に押しつけてローマ帝国を正当化するための改ざんだとも言われてますからね。
 しかし、それまで含めてカソリックのイエス像。メル・ギブソン監督はそれを忠実に描いたということなんでしょう。
 作品としては、「イエスのことを知らない人が観ることなど一切想定していない」作りになっているため、作品中、登場人物の説明が一切行われません。この辺りは、予めイエス伝などを読んで知識を入れておいた方がいいかも知れませんね。私の場合、先日観た「最後の誘惑」という映画でだいぶ助かりましたが。
 しかし、メル・ギブソンの骨太な演出は見事でした。残虐な拷問シーンを延々と描きながら、その演出が軽々しくないために流れる血に重みがあり、重厚な歴史大作としての作風を貫くことに成功しています。また、合間合間にイエスと母マリアの絆、弟子達との絆、マグダラのマリアとの絆などを巧みにすくい上げ、また、キリストを誘惑し続ける悪魔を盛り込むなど、ドラマとして盛り上げることも忘れてはいません。この辺り、さすがアカデミー賞監督といったところでしょうか。
 個人的には、このメル・ギブソン監督の演出力を堪能できただけで満足と思えました。


「パッチ・アダムス」(1998年)

 生きることに絶望し、自殺未遂までした男が、精神病院で「笑いによって人を癒せる」ことを知り、医師への道を志すことになる。大病院での「患者と対等につき合うな」「感情移入するな」などの既成の価値観と真っ向から対立する彼は、それでも自分の信念を貫いていくのだった。

 ロビン・ウィリアムスが実在の医者を演じた感動ドラマ。
 「笑い」による鎮痛作用と心の触れ合いを通じて独自の医療を目指す、というお話です。医者と患者は対等であり、その対等のつきあいによって信頼関係を築かねばならない、医者は決して患者の上に立つものではない、という考えに感動。
 途中、「オイオイ、そりゃやりすぎだろ」って思う点もあるのですが……(笑)。
 こども達の前でパフォーマンスを披露するシーンなんて、ロビン・ウィリアムスの真骨頂ですね(短かったのが残念)。
 実在のアダムス医師は現在も活躍中とか。頑張っていただきたいですね。


「バッド・デイズ〜凶暴な銃弾〜」(1997年)

 ギャングのロイは弟のリーと、ホーレイ、スキップの4人でまんまと宝石強盗を成功させ、2000万ドル以上に相当する宝石を手に入れた。しかし、スキップの突然の裏切りで、リーとホーレイは銃弾に倒れ、ロイは傷つきながらも命からがら逃げ延びる。そして彼は、手にした金でマフィア達と手を組んだスキップに対し、復讐を誓うのだった。

 ハーヴェイ・カイテル主演のハードボイルド。
 個人的には、ハーヴェイ・カイテルの動きにもう少しキレが欲しいところですが、内容は面白かったと思います。寡黙に復讐を成そうとするロイの物語は、地味ではありますがしっかりと描かれていたと思います。
 共演のファムケ・ヤンセンはしっかりとした美しい未亡人を好演。
 スティーブン・ドーフも、ともすれば行き過ぎになってしまいそうなエキセントリックな役柄をうまく演じており、様になっていました。
 そうそう、ルーシー・リューも出演してましたね。本当に、ほんのちょい役ですが……ストリッパー役は、似合わないなぁと思いました。


「バッドボーイズ」(1995年)

 マイアミ警察麻薬課の刑事、マーカスとマイクは、性格的には全く正反対ながら、息のあったチームワークで事件を解決する優秀なコンビだった。だがある日、ふたりが押収して保管されていた大量の麻薬が、こともあろうに警察署から盗み出されるという事件が起こった。内部に詳しいものの犯行と見た内務査察官は署内の刑事達を調査し始める。警察のスキャンダルにもなりかねないこの事件に、ふたりは事件の早期解決を迫られるのだった。

 マーティン・ローレンス、ウィル・スミスのふたりが初の主演を果たし、マイケル・ベイが初の映画監督をつとめたアクション映画です。
 全体としては普通に楽しめるアクション映画だと思いますけど、コメディアンとして人気のマーティン・ローレンスがメインの展開となっているため、若干笑いをとる部分に時間を割かれすぎているシーンが多くて、テンポが良くないと感じてしまいました。特に、ティア・レオーニ演じるジュリーにマーカスがマイクであると思いこませる部分は、ちょっと引っ張りすぎかと思います。
 しかし、ウィル・スミス演じるマイクのスマートな立ち居振る舞い(途中、若干人格に揺らぎを感じますけど)と、マーカスのドジりながらも懸命な振る舞いのコンビネーションは、なかなか面白いですね。
 テンポの悪さがなければ、とても楽しめる作品だと思えたので、続編にはその辺りを期待したいと思います。


「バッドボーイズ 2バッド」(2003年)

 マーカスとマイクは、マイアミ警察で十数年働き続けていた。すでにベテランの域に達しつつあったふたりは、年々巧妙化する麻薬の密輸を取り締まり続けている。
 だが、マーカスはいつの間にか疲れてしまい、マイクに黙って転属願いを出していた。
 一方マイクは、マーカスの妹シドと、マーカスに隠れてつきあい始めている。
 そしてシドは、連邦麻薬捜査官として、マーカスとマイクに秘密で潜入捜査官を勤めていたのだ。
 3人はそれぞれ思惑を持ちながら、やがてひとつの事件でぶつかり合うことになっていくのだった。

 ジェリー・ブラッカイマー制作、マイケル・ベイ監督、ウィル・スミスとマーティン・ローレンス主演のアクション大作。
 8年ぶりの続編ということですが、あのころと比べると制作者も監督も出演者も大物になってしまい、それに伴って作品のスケールも格段にアップしてます。
 マーティン・ローレンスとウィル・スミスの掛け合いは本当に楽しいですね。バディ物はやっぱりふたりの掛け合いが重要ですから、このふたりのやりとりには本当に楽しませてもらいました。
 アクションシーンもよく出来てました。特にカーアクション。「ザ・ロック」の時も思いましたけど、マイケル・ベイという監督はカーアクションを撮るのが上手いですね。「そんなムチャな」とか思いながらも、存分に楽しませてもらいました。
 最後の方の展開は強引に英雄指向になってしまってますけど、これもエンタテイメントとしては王道でしょうか。
 観た後に何か残る作品ではありませんけど、気楽に楽しめる作品として出来のいい映画だと思います。


「バットマン」(1989年)

 悪と不正がはびこるゴッサム・シティー。
 この街に、いつしかコウモリの化け物が現れるという噂が広がっていた。
 果たして、そのコウモリ男の正体は何なのか、その目的は?
 ゴッサム・シティーのギャング団を統率したジョーカーの前に、そのコウモリが現れる……。

 ティム・バートン監督の、バットマン・シリーズ第1作。
 原作は残念ながら読んだことはないのですが、アニメ版は何度か観たことがあります。それと比較するならば、ずいぶんバットマンが人間くさく、いい味を出していますね。ジョーカーとの因縁をつけたりして、映画として頑張っていることがよく分かります。
 ティム・バートン流の味、とでも言いましょうか。娯楽作として楽しめる映画でした。
 そうそう。日本語吹き替えではかのデーモン小暮閣下がジョーカー役として声優参加されています。他の声優の出来がよいとはお世辞にも言えませんが、閣下のお声が拝聴できるというだけでも悪魔教信者の方はDVDを買うべし!(笑)


「バットマン リターンズ」(1992年)

 ゴッサム・シティーに発電所を建設しようと尽力する実業家の前に、謎のペンギン男が現れた。彼は悲しい出生の過去を持ち、これまで陰の世界で生きてきたという。その生い立ちと特異な人物像で、街の注目を集める彼。
 だが、彼の行動に不審を抱いたバットマンは、調査を開始する。
 そんな彼の前に、妖艶な魅力に包まれた美女、キャット・ウーマンも現れて……。

 ティム・バートンが前作に引き続き監督を務めた、バットマン・シリーズ第2作。
 もの悲しさは前作より薄れましたが、ティム・バートン節は今回も健在。もとはバラバラに登場していたはずのキャラクターたちを、よくもこれだけ因縁づけて映画に上手く絡めたもんだと感心してしまいます。
 キャット・ウーマンとのロマンスも見物。楽しめる映画でしたが、「猫は9つの命を持つ」というアメリカの観念を知らないと、彼女の言葉が理解できないですね。
 残念ながらこのシリーズは、次の第3作からは監督が交代し、コミック色がずいぶん強くなってしまいます。映画ならではの魅力としては、この2作目までが優れているでしょうね。


「バーティカル・リミット」(2000年)

 家族での登山中、目の前で父親を亡くしてしまった痛手から、山を登ることをやめてしまった男が、自分の妹を含むパーティーが雪山で遭難してしまったため、吹雪の山へ救助に向かうことになる。さまざまな困難を乗り越え、彼らは無事に遭難者を助け出すことが出来るのだろうか?

 雪山を舞台に、これでもかと言わんばかりの色々な困難を設定し、様々なアクションを見せてくれます。その点については文句なし。
 ただ……。
 これって主人公が「ニトロを持っていこう」と言い出さなければ、救助隊のほとんどは死ぬことはなかったんじゃないの? 何故ニトロ? 爆薬くらい作れるんじゃないの?(笑)
 そのあたりに、何となく映画としての欠点を感じてしまった次第。
 とはいえ、充分楽しめた映画でした。うん、凄かったです。
 それにしても、ビル・パクストン、またこんな役なのね……(笑)。


「パトリオット」(2000年)

 かつて戦争の英雄として敵から恐れられた男、ベンジャミン。しかし、彼も今は家族を大切にし、静かな生活を望む男に変わっていた。しかし、やがてアメリカは独立戦争に突入。平和主義を訴えるベンジャミンだったが、そんな彼をあざ笑うかのように、目の前でイギリス兵に息子を殺されてしまう。その怒りから、再び銃を手にするベンジャミン。それは、長い戦いへの参戦だった……。

 メル・ギブソンがアメリカ独立戦争の陰の英雄を演じた壮大な歴史ドラマ。
 平和主義のギブソンが家族の復讐のために戦いに身を投じるあたり、大好きな「ブレイブ・ハート」を彷彿とさせる物語ですが、残念ながらそれほどは乗り切れなかった、というのが正直なところです。
 ギブソンの演技は素晴らしいし、ストーリー自体も悪くはない。監督も、あの「インデペンデンス・デイ」や「ゴジラ」と同じ監督とは思えないほど(笑)落ち着いた演出でストーリーを語ってくれているのですが……。
 個人的に「愛国心」ってものに多少の嫌悪感があるからかな(苦笑)?
 時間は3時間近くある長尺ものながら、時間を感じさせない展開はお見事でした。


「バニシング IN 60”」(1974年)

 保険員を装い、車泥棒家業を続ける男たち。彼らは、絶対に足がつかないことと、保険金をかけてある車しか盗まないことを常としていた。その彼らに、高級車ばかり40台盗み出せという依頼がくる。順調にその車を揃えていく彼らだったが、エレノアと彼らが呼ぶムスタングだけはなかなか盗むことが出来ず、時間が迫ってくるのだった。

 車泥棒の話ですね。これは、2001年にニコラス・ケイジ主演で制作された「60セカンズ」の元ネタとなった映画ですが、比較してみると、登場人物やアクションの見せ方は新作の勝ち、しかしことカーアクションについては本作の勝ち、といったところでしょうか。なんといっても、本編が98分に対して、最後の30分以上がずっとカーアクションという、なんとも凄い内容になっています。このため、ストーリーなどはかなり大雑把ですが、カーアクションについては見応え十分でした。
 それにしても、かなり古い映画で、ビデオテープの字幕が読みにくかったのが残念……(苦笑)。


「パニック・ルーム」(2002年)

 離婚したばかりのメグは、一人娘をつれてマンハッタンの真ん中にある4階建ての建物へ引っ越してきた。その建物には、以前は資産家の老人が住んでいたため、「パニック・ルーム」と呼ばれる部屋が備えられていた。建物中をカメラでモニターし、専用の電話回線がひかれ、鉄の扉がひとつあるだけのコンクリートで固められた部屋。その部屋の目的はただひとつ   誰も進入させないこと。その部屋をあまり重要に思わなかったメグだったが、引っ越したその夜に、3人の男達が進入してきて……。

 デビッド・フィンチャー監督、ジョディー・フォスター主演のサスペンス映画。とにかくアイデアが面白いですね。けして破れない部屋から、強盗がメグ達をおびき出そうとするアイデアといい、限られた条件下での駆け引きといい、本当に目が離せませんでした。スケールの大きさはないけれど、本当に丁寧に作られた、息の詰まるような展開はお見事。さすがデビッド・フィンチャー監督といったところでしょうか。
 そうそう、フィンチャー監督のカメラワークは今回も本当に凄いです。デ・パルマ監督に挑戦してますか、もしかして?


「バニラ・スカイ」(2001年)

 出版会社の社長デヴィッドは、ハンサムでカリスマ性のあるプレイボーイだった。その夜もジュリーという女性と過ごした彼は、しかし彼女のことはセックス・フレンドだと言い切る始末。だが、誕生パーティーに、親友のブライアンが連れてきたソフィアを一目見たときから、デヴィッドの中に変化が生じる。その心変わりを読みとったジュリーは、デヴィッドとともに無理心中を図るのだった。

 スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」のハリウッドリメイク作。トム・クルーズ主演、キャメロン・ディアス共演、そしてオリジナル「オープン・ユア・アイズ」にも出演していたペネロペ・クルスが、同じソフィア役で共演しています。しかし、中身は正直オリジナルの方が面白かったな、という印象。理由付け、教訓付けをしすぎちゃうと、理屈っぽくなってこの手の映画はよくありませんね。元々「あり得ない状況に振り回されていく快感」がこの映画の基本だと思いますし、それに日々の決断が大切っていうのなら、「彼女の車に乗った」こと以上に、悔やまなきゃいけない決断はたくさんあったように思うのですが……いや、ネタバレになるので詳しくは書けませんけどね。
 やりようによっては、もっと面白くなったはずなのに、オリジナルに手を加えたい、でもオリジナルからは抜け出せない、という葛藤がちょっとだけ垣間見えて、中途半端にまとまってしまった気がしました。残念。


「バーバー」(2001年)

 理髪師エドは、義理の兄の理髪店で働く、無口な中年男だった。彼は妻が浮気していることも感づいていたが、それを口に出すこともなく、ただ流れるままに日々を過ごしていた。そんなある日、理髪店にやってきたセールスマンから新規事業への投資の話を聞かされたエドは、妻の浮気相手を脅迫して投資資金を得ることを計画する。だが、その計画が成功したときから、彼の人生は狂い始めるのだった。

 ビリー・ボブ・ソーントン主演、コーエン兄弟制作のクライム・サスペンス。コーエン節は相変わらずで、本当に奇妙な人物達を奇妙な間で演出してみせるのが抜群にうまいです。味のある作風ですね。
 作品そのものは、人々の欲望への皮肉、ととったらいいんでしょうか。自分の欲望におぼれていく人間達の破滅していく姿を静かに、シュールに描いています。
 それにしてもビリー・ボブ・ソーントン、本当にこの人は何を演じさせてもはまってしまいますね。観るたびに驚いてしまいます。


「パーフェクト・ストーム」(2000年)

 1991年10月、大西洋で実際に発生した100年に1度といわれる大嵐。
 そのとき、沖には漁にこぎ出していた漁師や、レジャーに出ていた船がまだあったのだ。
 容赦なく襲い来る嵐に、彼らはどう対処したのか。そして、救助隊はどのように彼らを助けたのか。
 それは、それぞれの仕事への誇りをかけた戦いでもあった。

 ジョージ・クルーニー主演の、実話をベースにした映画です。
 観測史上最大の嵐に見舞われた海原を舞台に展開する、人間ドラマでした。
 これは賛否分かれたみたいですね。僕が見に行った劇場では概ね良好な反応だという話だったのですが、やはり売り文句がスペクタクルなものを期待させるものばかりでしたからね(「地球は人類など愛していない!」なんていって、人が嵐と闘うような内容を想起させたりしてましたからねぇ……)。
 これは、人が想像を絶する嵐の中で如何にして自らの仕事を全うしようとしたか、というドラマです。主人公の漁師達はじめ、海上に取り残された人たちを救おうとする救助隊達など、自らの仕事にかける誇りと意地を感じました(もっとも、主人公達の行動は完全にフィクションですが)。
 3つの嵐がひとつになって、あんな大嵐に変貌する、というのは……本当に、自然って怖いなぁ、と思いつつ、人間たちが繰り広げるドラマにはとても満足でした。


「パブリック・アクセス」(1993年)

 片田舎の小さな町に、突然やってきた青年ワイリー。彼は、町のケーブルテレビの放送枠を買い取り、視聴者参加型の番組「我らの町」という番組を始める。町の住民から番組に電話をもらい、それぞれに思う町の問題を話してもらって、町をよりよくしていこうという趣旨の物だった。やがて番組は町の住民たちから支持を得ていくことになる。だが、町の持つ問題は、汚さに満ちた物だった……。

 「ユージュアル・サスペクツ」「X−MEN」のブライアン・シンガー監督の監督デビュー作。サイコスリラーもどき、な作品に仕上がっています。正直、展開自体は退屈なところもありましたね。しかし、主人公のワイリーのつかみ所のなさは相当不気味でした。結論としては、番組を作る方も観る方も、安易に表層部分で信じて突っ走ったら良くない、ということなんでしょうか。でも、それだったらあのラストはそぐわないですねぇ……う〜ん……。全体的には今ひとつ、といった印象でした。


「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999年)

 紀元前1290年。
 古代エジプトで永遠に生死の境をさまよう呪いの処刑を受けた僧がいた。
 イムホテップ   彼が蘇るとき、10の災いがエジプトを襲うという。
 時は流れ、1923年。王の財宝が眠るという伝説の都「ハムナプトラ」へ、冒険家たちが訪れた。
 しかし、その地には、かつて極刑に処せられたイムホテップの魂も、目覚めの時を待っていたのだ……。

 超B級映画ですね(笑)。いや、悪い意味ではなくて。
 元は「ミイラ再生」という映画のリメイクなんですが、ホラーというより冒険活劇の色合いが濃いです。インディー・ジョーンズシリーズを狙った、というのもあながち的外れでもなさそう。
 痛快でなかなか楽しめました。パワーに溢れているというか、とにかく観ていて飽きない作品です。
 アクションはこうでなくては! というひとつの見本だと思います(こういうのばかりだと困りますが ^^;)。
 なにも考えたくない時に観る映画としては最適でしょうね(笑)。


「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」(2001年)

 前作から10年。リックとエブリンは結婚し、男の子をひとりもうけて、幸せな日々を送っていた。しかしそんな時、再びイムホテップを蘇らせようとする者たちが、リックたちの前に姿を現す。彼らは、黄金のピラミッドへの道を示すブレスレッドをはめた、リックの息子を誘拐していくのだった。

 考古学アドベンチャー第2弾。
 前作に比べてすごいお金のかけようですね。画面をぎっしり埋め尽くしたCGといい、格段にスケールが上がっています。
 でも何より嬉しいのは、そんなスケールの上がり具合などものともせず、前作からのすばらしいB級スピリットを全開にしてテンポよく話を進めてくれているところでしょうか。あくまでも「ハムナプトラ」でした。そこがとてもよかったですね。力に溢れ、しかしストーリーはちゃんとまとめている。そのバランスが気に入りました。
 ……ただ、どうしても気になったことがひとつ。
 この映画のスタッフに、もしかしたら「ファイナルファンタジー」のファン、いません?(笑)


「パラサイト」(1998年)

 高校生が採取した見知らぬ生物。それは地球上の生物ではなく、やがて人に寄生を始め、仲間を増やしていく。どうやら麻薬を吸わせると退治できるらしいと気づいた発見者の高校生たちは、侵略者の親玉を探し始めるのだった。

 人々が気づかぬ内に、エイリアンは地球への侵略を開始していた……。
 というSF映画。観ていて「これは『ボディ・スナッチャー』だなぁ」と思っていたら映画の中の人物が「これは『ボディ・スナッチャー』よ」なんて言い出してびっくり。他にも「ネーヴ・キャンベルとジェニファー・ラブ・ヒューイットのもろ出しビデオ」なんて内輪ネタのオンパレード(この二人が出ている「スクリーム」シリーズと「ラストサマー」シリーズの脚本家と、この映画の脚本家は同一人物です)。
 そんなパロディーネタを含みながらも、なかなか面白かったです。寄生された人間たちに囲まれるシーンや、親玉が正体をごまかすシーンなど、かなり楽しめましたね。
 でも、ひとつだけ……「スクリーム」でもそうなんですが、「映画ではこうだった」と登場人物が言うと、いつの間にかそのことを規定の事実としてみんな認識してしまうんですよね。そのあたり、説得力がないなぁ……。


「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年)

 幼い頃から叔父叔母の元で育った少年、ハリー・ポッター。彼は、実の両親のことは何も知らないまま、歓迎されない家庭で育つことになる。しかし、11歳の誕生日を迎えた彼に、魔法学校からの入学案内が届き、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

 世界中でベストセラーを記録した、児童文学の映画化作品。いやぁ、素晴らしい映像世界とともに、楽しい展開が目白押しでした。やっぱり、いじめられっ子がいつしか英雄に、ってストーリーは世界共通の王道なんでしょうか。ともかく、「あぁ、これは子供の頃好きだった話だな」なんて思いながら観ていました。子供の頃に帰ったみたいにわくわくして観たりして。とても楽しめました。
 しかし、これ、シリーズ化するんですよね……子役達、大丈夫なのかな? キャストはやっぱり変わっちゃうんでしょうか。今回の3人がいい味を出していたので、そうなったら残念かも。


「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年)

 ホグワーツ魔法学校の1年生を修了し、夏休みで家に帰ってきていたハリー・ポッター。だが、その家では相変わらず叔母達一家のいじめにあう毎日だった。そんなある日、彼の前にドビーと名乗る奴隷の妖精が現れて、「ホグワーツに戻ってはならない。恐ろしいことが怒る」と警告する。だが、ハリーにとってホグワーツは自分の家も同然であり、帰らないわ訳にはいかなかった。だが、ハリーがホグワーツに帰ったのと時を同じくして、校内に不穏な空気が漂い始める。それは、学校のどこかに存在すると伝説に伝わる「秘密の部屋」に封じられた、怪物のもたらすものなのか? やがてハリー達は、学校に巣くう「闇」の世界に対峙することとなるのだった。

 「ハリー・ポッター」シリーズの第2作目。今作も、主要キャストは前作から引き続き、監督もクリス・コロンバスがやっています。
 今作は、ストーリー的にも盛り上がり、非常に見やすい映画になっていました。シリーズものの第2作目なので、色々と説明する必要もなくなったことが大きいんでしょうか。起承転結、クライマックスまで構成がしっかりとしていて、最後まで楽しんで観ることが出来ました。
 ただ、映画の前半の、CGを駆使した魔法のてんこ盛りシーンにはちょっと辟易。これ見よがしに魔法らしき物を画面に詰め込んである部分は、あまり好きになれませんでした。これは、今後のシリーズで解消して欲しいな、と思います。ムリかな……。
 俳優の演技については、今作では特に、ハーマイオニー役のエマ・ワトソンが、前作に比べて演技が上手くなっていたのが目につきました。何作目まで出演するのかは分かりませんけど、今後が楽しみですね。
 総じて言えば、個人的には前作より楽しめました。この調子なら、次作も楽しみです。


「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(2004年)

 ホグワーツ魔法学校の3年目を迎えたハリーたち。だがその時、アズカバン収容所からシリウス・ブラックという恐ろしい魔法使いが脱走したというニュースが飛び込んできて、ホグワーツはアズカバンの看守ディメンダーを学校に配し、ハリーたちは窮屈な学校生活を強いられることとなってしまった。
 やがてハリーは、シリウスが、彼の両親の死に関係していたということを知ることになる……。

 ハリー・ポッターのシリーズ3作目。
 今作から監督が交代してますが、この交代はいい影響を作品に与えたように思います。
 前作まではむやみに魔法を描くシーンが多かったりしましたが、今作ではそれが減って、物語に集中できるようになりました。
 ストーリー展開上で不要な部分をばっさりと切り落として作られた作品となった、と思います。そのお陰で、とてもテンポ良く、映画として飽きずに観ることが出来ました。これが、楽しいけれども無駄なシーンが多かった前作までとの大きな違いでしょう。
 また、ハリーたちにも、そしてラドクリフはじめ演じている役者たちにも成長が見え始めています。今後のシリーズ展開が、とても楽しみになってきました。


「ハロウィン」(1978年)

 ハロウィンの日に帰ってくる、と言われている、マイケルという少年。その少年が本当に姿を現したとき、凄惨な事件が始まるのだった。果たしてこの少年から逃れる術はあるのか?

 ジョン・カーペンター監督が、一躍名をあげた出世作です。
 怖い! とにかく画面に緊張感が張りつめています。この演出は、相当のちのホラー映画に影響与えていますね。
 スクリーミング・クイーン、ジェイミー・リー・カーティスの熱演とともに、とても楽しめました。
 やっぱ好きだわ、カーペンター監督。


「ハロウィンH20」(1998年)

 1978年のハロウィンの日に起こった、マイケル・マイヤーズの悪夢のような事件。あの事件後、交通事故死していたはずのマイケルの妹ローリーは、実はケリー・テイトと名前を変え、ある高校の校長として、ひとり息子と共に生活をしていたのだった。ところが、1998年のハロウィンの日、ローリーは周囲に不穏な陰が忍び寄っていることを感じていた。そう、あれから20年経った同じ日に、再びマイケルが彼女の前に姿を現したのだった。ローリーは再び、マイケルと戦うことを決意せざるを得なくなってしまうのだった。

 ジョン・カーペンター監督の出世作「ハロウィン」からシリーズ化した、第7作目。第1作目と2作目に出演していたジェイミー・リー・カーティスが、同じ役で再出演。元祖スクリーミング・クイーンの力を見せてくれます。
 すっかりシリーズが「人間VS化け物」というスタンスに変わってしまったため、元祖「ハロウィン」にあったミステリアスな雰囲気や恐怖感といったものはもう望めませんが、執念深いマイケルの姿はなかなか良かったと思います。ローリーのその後、という意味では興味深く観ることが出来ました。


「ハロウィン レザレクション」(2002年)

 3年前のハロウィンの夜、マイケル・マイヤーズを殺したローリー。だが、実はそれはマイケルの仮面を被らされた別人だったのだ。その罪の意識から社会から遊離してしまい、精神病院に収監されたローリー。そんな彼女の元に、再び、マイケル・マイヤーズの影が忍び寄ろうとしていた。
 一方、インターネット放送で殺人鬼マイケル・マイヤーズの生家をハロウィンの夜に生中継で探ろうという企画があり、そのレポーターに申し込んだ大学生のサラたち3人。彼らは、他の素人レポーター達と一緒に一晩、問題の家の中で過ごすことになるのだが……。

 「ハロウィン」シリーズ第8作目。
 冒頭でジェイミー・リー・カーティス扮するローリーがゲスト扱いで登場し、マイケル・マイヤーズとの話を完結させます。ここから、このシリーズの新しい物語が始まることになるんでしょう。前作「H2O」で描かれたローリーの息子の存在が無視されているとか、整合性が今ひとつとれてない気もしますが、ローリーの話を完結させたことでシリーズのリセットを図ったということなんでしょうね。
 ネット中継の会場となったマイケル・マイヤーズの生家がメインの舞台となるんですが、家に閉じこめられた素人レポーター達の殺戮が、家のあちこちに仕掛けられたカメラと彼らの頭につけられたカメラとで生中継されていく、というシチュエーションは面白いです。
 ただ、ヒロインがネット友達に放送をチェックしてもらってPDAで情報をもらうシーンがありましたが、このアイデアは今イチうまく活かされてませんでしたね。上手く使えばもっと盛り上がりそうなものなのに……と、ちょっと残念に思いました。


「バンディッツ」(2001年)

 刑務所で知り合ったジョーとテリーは、ふたりで脱獄をし、メキシコへ向かって逃走する。資金を得るために、一切血を流さずに金を奪う見事な手腕で銀行強盗を行いながら逃げるふたりは、いつしか有名人になっていった。しかしある日、テリーが偶然出会ったケイトという女性がふたりの間に入ってきたときから、少しずつ、彼らの関係にずれが生じ始めるのだった。

 ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソーントン、ケイト・ブランシェット共演の、クライム・コメディ映画。タフガイで自信過剰なビリーを演じるウィリス、神経症気味で弱気なテリーにソーントン、躁鬱気味だが心は強いケイトにブランシェットと、なかなか俳優それぞれにピタリとはまる役所で、なかなか楽しめました。
 ただ、私が男だからでしょうか、ケイトのふたりの男に対する発言は、ちょっと受け入れがたいものがありました……ただ自分が楽しんでいるだけじゃないの……。
 ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントンは「アルマゲドン」に続く共演となるんですね。このふたりの演技は安心してみていられます。
 本当は、もっと軽快なクライム映画にした方が格好良かったかな、という気もしますが、結構笑わせてくれますし、これはこれで楽しいからよしとしましょうか。


「ハンニバル」(2001年)

 「レッドフォックス事件」の解決で認められ、今やベテラン捜査官となったクラリス・スターリング。しかし彼女は子供を抱えた犯罪者を撃ち、そのことで厳しい世論の的となって、FBIのなかで厳しい立場に置かれる。そのクラリスを利用して、レクターに恨みを持つある大富豪がレクターへの復習を目論んでいた。一方、脱走して潜むこと10年のレクター博士は、そろそろ表舞台への復帰を考えていた。10年ぶりに交錯しようとするふたりの運命はいかなる方向へクラリスを導くのだろうか……。

 人喰い・ハンニバル・レクター博士のシリーズ第3弾。前作「羊たちの沈黙」に続き、再びレクター博士に名優アンソニー・ホプキンスを迎え、あれから10年後を舞台にクラリスとの再会を描く作品になっています。監督はリドリー・スコットで、クラリスにはジョディ・フォスターに代わりジュリアン・ムーアが扮しています。
 今回の作品では、なんだかすっかりレクター博士がヒーロー扱いですね。いや、やはりそんじょそこいらのダーク・ヒーローなんざ束になっても敵わないくらいの悪の魅力とフェロモンがむんむんで、それはそれで非常に楽しめるのですが、「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」と続いたシリーズではあくまで脇であったレクター博士が、今回は主役を張っていて、映画自体もレクター博士の活躍ぶりを中心に描いてあるので、そこにちょっと違和感を感じなくもないですね。
 もっとも、前作「羊たちの沈黙」であれほどサイコ・ホラーというジャンルの名を高めたこのシリーズではありますが、あれはもはや10年も前の作品。その間、同ジャンルの作品はたくさん作られたし、その中には面白い作品も多々ありました。そんな状況の中で、続編を作るとなれば同じ土俵で作っても意味がないと考えたのでしょうか。
 前2作でのレクターが人の暗闇をかいま見せる代理人だったとすれば、今回のレクターは観客を異常な世界に誘う案内人そのものだったように思います。
 あえてそちらの方向に進んだ作品であるだけに、なかなかに凄惨な映像が随所に出てきます。これは、ちょっと観るのに覚悟が必要かと思われます(笑)。


「ピクチャー・クレア」(2002年)

 モントリオールで旅行中の写真家ビリーと恋に落ちたクレアは、彼を追ってアメリカのトロントへやってくる。だが、フランス語しかしゃべれない彼女は、トロントで右も左も分からずに四苦八苦してビリーの家にたどり着く。だが、彼はそのとき不在で、クレアはビリー宅の側にあるコーヒーショップに入ることにした。そしてそこでリリーという女性と偶然すれ違ったことから、クレアは自分の知らないところで思いもしない運命に巻き込まれていくことになる。時、折しもビリーの個展が開かれる直前。その個展では、大きく引き延ばされたクレアの写真が飾られていた……。

 ジュリエット・ルイス、ジーナ・ガーション共演のクライムサスペンス。凝った映像の見せ方と知らず知らずに絡んでいく二人の女性の運命の描き方がさりげなくて効果的です。
 ジュリエット・ルイスがフランス語しか話せないが心の強い女性を好演。ジーナ・ガーションも相変わらず憎めないけどイヤな女、を演じたら本当にうまいですね。
 大きな物語ではない小作品ですが、楽しめた作品でした。


「ピース・メーカー」(1997年)

 ロシアで解体された核兵器が、テロリストに強奪された。アメリカは非常態勢をしき、軍隊を派遣してその核の奪還を図る。しかし、すべての核弾頭を押さえることは出来ず、その核はニューヨークへ向かっていた……。

 ミミ・レダー監督劇場作品デビュー作。実は映画館まで観に行きまして、その時から僕の中では評価は良くなかったのですが、見直してみても全体的には今ひとつという感じですね。アクションシーンは良くできているけどテンポがちょっと良くないし、展開に説得力が不足しています。しかし、この映画では、アメリカ映画には珍しく「テロリスト側の主張」がきっちりと描かれています。それを観るためだけでも、価値があると言えるでしょうね。


「ビッグ・ダディ」(1999年)

 ソニーは32歳になってもバイト暮らしで、人生の設計も何もないお気楽な道楽者だった。そんな彼に、遂に大学時代からの恋人バネッサも愛想を尽かし、「大人になって」と言い残して彼の元から離れて行ってしまう。そんな時、彼の前に、親友の子供だと名乗る5歳の男の子が現れた。どうやら、親友の一夜の遊びで出来てしまった子供らしい。母親は病気で育てることが出来ず、また、その親友は仕事で中国へ出かけていた。ソニーは、「この子を引き取って育てれば大人になったと認めて、バネッサも戻ってきてくれる」などと安易に考え、男の子の父親として生活を始めるのだが、子育てはソニーの想像を遙かに超えて困難な物だった。果たして、ソニーの子育てはうまくいくのだろうか?

 名コメディアン、アダム・サンドラー主演のコメディ映画。時には子供以上に子供っぽい彼の演技に、ついつい笑いがこみ上げてきました。時には下品に、時にはバカバカしく、しかしラストはきっちりと締めくくる、見終わった後の後味はとても心地よかったです。ホント、アダム・サンドラーってこんな役柄を嫌みなく演じるのが上手ですね。笑ってほろっと泣かせる、いい映画でした。
 それにしても、スティーブ・ブシェーミ……あんた、こんな役やらせたらほんと上手いな……(笑)。


「羊たちの沈黙」(1990年)

 女性を誘拐し、皮を剥いで殺害するという残酷な事件が連続して起こっていた。犯人につけられた呼び名はバッファロー・ビル。FBIは、その解決のため、天才的な精神科医でありながら残忍な殺人犯でもあるハンニバル・レクター博士に事件解決の糸口を探らせようとする。その役目を担ったのは、訓練生であるクラリス・スターリングだった。彼女は早速、獄中の彼に会いに行くが、レクターはその情報の代償として、クラリス自身の個人情報を提供することを望むのだった。クラリスは、レクター博士とのやりとりにより、バッファロー・ビルの実像をつかむことが出来るのだろうか。

 今さら説明する必要もない、サイコスリラーを代表する傑作映画です。今回、DVDで見直して、改めて完成度の高さに感嘆しました。ジョディ・フォスターやアンソニー・ホプキンスらの演技の上手さ、そして全編に漂う不気味さ、ストーリー展開の巧みさなど、本当に面白い映画ですね。
 この映画はホラー映画ではありませんけれど、ある意味で「不死身の殺人鬼(ジェイソンやフレディなど)が出てくる映画を駆逐した」映画だと思います。ジェイソンやフレディなどのキャラクターに比べて、ハンニバル・レクター博士のなんと不気味で荘厳なことか。この作品の後、ホラー映画は真のスピリチュアル・ホラーか、もしくはレクターのような異常心理者が連続殺人を起こすものかといった2系統に大別出来るようになったと思います。生身の人間が、一番怖いということなんでしょうか。


「ピッチ・ブラック」(2000年)

 つかまった脱走殺人犯、リディックは、旅客宇宙船によって護送されていた。しかし、その宇宙船が流星雨に遭ってしまい、船は手近な惑星への着陸を余儀なくされる。だが、その惑星は3つの太陽の周りをまわる、常に昼という過酷な砂漠に覆われた星だった。しかも、暗闇の中には、さらに恐るべきものが隠れていたのだった。

 B級のSFアクション映画ですが、なかなか爽快でしたね。設定も面白かったし、リディックをはじめ、登場人物たちのキャラクターもなかなか面白かったです。期待せずに観た分、意外な掘り出し物と思いました。


「人質」(1999年)

 ある事業家の妻が誘拐され、ビデオが届けられた。そこには、その妻が棺桶に閉じ込められて生き埋めにされる映像が写されていた。このままだと1日ほどで棺桶の中の空気がなくなってしまう。捜査にあたることになったのはアル中に悩み、夫がありながら不倫をやめられない女性捜査官であった。犯人を追いつめ、逮捕する彼女。しかし、犯人は彼女を手玉にとるかのような発言を繰り返していく……。

 あまり有名な作品ではないですね。たまたまレンタルのDVDコーナーに置いてあったので借りてきてみたのですが、残念ながら掘り出し物、とは思えなかったですね(苦笑)。よく言えば可もなく不可もなく、悪く言えば凡庸で退屈なストーリー展開。もう一ひねり加えられれば、それだけでずいぶん違った印象になっただろうに、残念!


「ビューティフル・マインド」(2002年)

 数学者ジョン・ナッシュは、天才の名を欲しいままにするエリートだった。だが、一方では、人づきあいが下手で世の中の全ては方程式で割り切れると信じている変人でもあった。そんな彼は、ある時その数学に強い才能を見込まれて、政府によるソ連のスパイ暗号を解読する仕事をさせられるようになる。強いプレッシャーに押しつぶされそうになるジョン。やがて彼は結婚し、子供を授かるのだったが……。

 実在のノーベル賞受賞者ジョン・ナッシュの半生を描いたヒューマン・ドラマ。ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演。この映画は、とても見応えのある映画でした。改めて、ラッセル・クロウの演技力に感嘆させられましたね。この作品の、内面の演技はとても重要で難しいものだったと思います。しかも、ただの感動作でなく、映画の展開としてナッシュが自分の病気に気づくシーンなどはちょっとしたサスペンスタッチにもなっていますし、そもそもナッシュ自身天才ではあっても常勝のエリートではない、という点が好ましかったと思います。本当に天才数学者を「人間」として描いてあったことで、素直に映画のストーリーに入っていけました。
 この映画のジェニファー・コネリーも本当に素晴らしいです。夫をぎりぎりの状態で支えていく苦悩を、うまく表していたと思います。アカデミー賞助演女優賞受賞おめでとう! 今後はもっとたくさん活躍して欲しいものです。


「HERO」(2002年)

 紀元前200年の中国。戦乱に揺れる中国は秦の国へ、ひとりの剣士がやって来た。彼は、秦国の王を狙う3人の恐るべき刺客を倒したことにより、秦王に謁見を許された「無名」という名の剣士であった。その功績により、秦王まで10歩の距離へ近づき、酒を振る舞われる無名。そして彼は、如何にしてその3人の刺客を倒したか、その結末を語り始めるのだった。

 ジェット・リー主演、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、ドニー・イェン共演のアクション武侠映画。監督はチャン・イーモウ。
 とにかく素晴らしい映画です。アクション映画のスタイルをとっていながら、作品の根底には人間の生き方、社会の在り方を、簡潔に、鋭く深くとらえた視点が息づいています。
 非常に静かな、叙情的な美しいアクションシーンが全編を彩り、確固たる「英雄」という存在がたどり着くべき境地を描き出していく。
 ラストシーン、門の前の「無名」の表情には涙がこぼれそうになります。全てを理解し、その境地に至った彼も、そして重荷を背負いつつその重圧と戦っている秦王も、ともに英雄。
 行き過ぎて間違った個人主義がまかり通っている現代に、非常に考えさせられる作品でした。


「ヒーロー・イン・チロル」(1998年)

 アルプスの美しい山々に囲まれたヒーロー村。かつて探偵として名を馳せたマックスは、この静かな村の山にある洞窟に住処を構え、静かな生活を送っていた。密かに、村一番の美女エマへ想いを募らせながら……。
 ところが彼はある日、村長が大々的な開発を行い、商業主義を前面に打ち出した一大観光地へとこの村を変貌させる計画を立てていることを知るのだった。
 美しく、平和でのどかなこの村と山々を、守らなければならない!
 マックスと村人は、その計画の前に立ちはだかろうとするのだった。

 えー、かなりこの映画の評価は迷うんですが……。
 登場人物達がヨーデルを歌い踊る、ミュージカル・コメディ映画です。そしておバカ。もの凄くおバカ。全編、ベタベタなギャグと下ネタのオンパレードです。出てくる人物みんながとても下半身に忠実です。
 しかし、それらが極めて軽く描かれていますから、けして下品になりすぎることなく、美しい自然の中で、明るく開放的な笑いとなって散りばめられています。
 一番の見所は、やはりマックスとエマのセックスでしょうか。なんとお互いがヨーデルを歌いながら、そのリズムに合わせて腰を動かしあうとは……思わず笑ってしまいましたが、これは今まで観てきた映画のベッドシーンの中で、最も衝撃的なベッドシーンだったかも。
 個人的には、映画の物語の核がちょっと薄かったかな、というのが残念。村を売ろうとする村長との対決か、それともエマとの恋愛か……どちらをメインに描くのかがハッキリしてなかったように思えました。その軸がハッキリしてれば、もっと面白く観ることが出来たんだけどなぁ……。
 でももしかしたら、この映画はそんなこととは関係なく、明るく元気に生きる人たちを描きたかっただけなのかも、とも思ったりしました。大自然の中で、気持ちを開き、明るく(下半身にも)素直に生きていけば幸せだよ、というテーマでは……と、思うのは深読みのしすぎでしょうね、やっぱり?


「ビロウ」(2002年)

 第2次世界大戦中の大西洋。航行中だったアメリカ軍潜水艦タイガー・シャークは、ドイツ軍のUボートに撃沈されたとみられるイギリスの病院船の救助に向かうよう連絡を受け、生存者の救出に向かう。多数の乗船があったと思われる病院船だったが、生存者はたったの3名。しかも、そのなかのひとりは、潜水艦の中では不吉の象徴と言われる女性だったのだ。
 そしてその瞬間から、潜水艦の中では不可思議なことが起こり始める。
 Uボートに発見され、音を立てずに鳴りを潜めている最中に、突然誰もいない部屋から大音量でレコードが鳴り響いたり、不気味な音が艦内にこだましたり、幽霊を目撃する者が現れたり……。
 果たして、この潜水艦で何が起こっているのか? 乗組員たちは無事、帰還することが出来るのだろうか。

 潜水艦の中にホラーの要素を盛り込んだ、ホラー・サスペンス映画。
 映画の雰囲気作りや展開の仕方など、丁寧に作られている感じを受けました。なかなかの佳作だったと思います。
 緊迫した、潜水艦という限られた空間の中で繰り広げられる裏切りや陰謀、そして超自然現象の数々。そしてドイツ軍の攻撃により、追いつめられていく乗組員たち。
 その緊張感と、頭をひねってピンチを脱していく緊迫感がよく描かれていましたね。
 いい拾いものでした。


「ファイト・クラブ」(1999年)

 平凡なサラリーマンのジャックは、日々の仕事と生活にストレスを感じ、不眠症の自分をごまかしながら生きていた。
 そんな彼の前にある日、自由奔放に生きるタイラーという男が現れた。その生き方に憧れを抱くジャック。
 奇妙な友情に結ばれた彼らは、己の中の暴力を解放して発散するべく殴り合う遊びを始める。それがやがて、他の人間を惹きつけ、「ファイト・クラブ」というグループを形成するまでになる。
 だが、そのグループが暴走を始めたとき、ジャックは蚊帳の外にいた……。

 この映画は、とにかく映像感覚の勝利ですね。
 描いているのは、けして気持ちのいい題材でも世界でもない。けれども妙に魅入られてしまう映画。CGを多用した映像のトリップ感覚を味わうことの出来る映画です。
 監督は、「セブン」などで話題をさらったデイビッド・フィンチャー。こういう世界観を撮らせたらさすがですね。
 また、出演している俳優陣がまたいい演技をしてくれています。
 若手の中では希代の名優といっても過言ではないであろうエドワード・ノートンはさすがの演技ですが、それに引きずられるようにブラッド・ピットの演技も素晴らしかったです。
 ブラッド・ピットは、これまでにもこんな「キレた役」をやってきていましたが、今回初めてそのキレっぷりを「いいなぁ」と感じました。その演技を受けるE・ノートンが、静の役目でありながらどこかに狂気を滲ませていたお陰ではないかと思います。お陰で、キレた演技がエキセントリックに浮きすぎることがなかったのでしょう(「12モンキーズ」ではB・ウィリスとの対比で浮いてしまってましたからね)。
 映像感覚と役者の巧みな演技で、独特な作品に仕上がっていたと思います。この感覚は、他の作品ではなかなか味わえませんね。


「ファイナル・デスティネーション」(2000年)

 修学旅行でフランスに行くため、飛行機に乗ろうとしていた一行。だが、アレックスは夢でその飛行機が墜落する予知をし、寸前で飛行機を降りてしまう。その騒ぎで、彼の仲間と教師の数名が飛行機を降りる羽目になってしまったが、彼らが見送る目の前で、本当に飛行機は爆発炎上し、墜落してしまったのだった。結果的に、アレックスに命を救われた形になった彼らだったが、しかし、そこで死ぬことになっていた彼らの運命は、まだ救われたわけではなかったのだ……。

 アイデア勝負のB級映画の典型ですね。いい意味でも悪い意味でも、その手のお手本のような作品だと思います。ホラー・サスペンスとでもいいましょうか。展開のさせ方としてはなかなか面白く、飽きないような見せ方をしてくれますが、今ひとつ人物に感情移入できない面がありますね。これも典型的(笑)。まぁ、暇があれば観てみると面白いかも、といったところでしょうね。


「ファインディング・ニモ」(2003年)

 カクレクマノミのマーリンは、妻のコーラルと共に、400個のタマゴから稚魚がふ化するのを、今か今かと待っていた。
 だが、そんなふたりの生活は、一匹のバラクーダが襲ってきたことによって一瞬のうちに壊されてしまう。
 生き残ったのは、マーリンと、たった一個のタマゴのみだった。
 マーリンは、そのたった一個のタマゴから孵った子供にニモと名付け、守り抜くことを誓う。
 だが、成長し、学校に行くことになった初日に、ニモは人間のダイバーにより、さらわれていってしまうのだった。懸命にそのダイバーの乗ったボートを追いかけようとするマーリン。果たして、ニモを人間から取り返すことが出来るのか。

 ピクサー制作のフルCGアニメーション。
 もはや、このCGのレベルは芸術と称しても過言ではありません。海中という難しい舞台で、海面の揺らぎや射してくる透過光、細かな塵、プランクトンなどまできっちりと描写し、ため息が出るほどに美しい海中の世界を作り上げたこの技術とセンスには脱帽です。
 魚というキャラクターを擬人化し、しかし本物から逸脱しすぎないバランスも本当にお見事。
 細部までこだわった映像と演出の出来は、まさに出色のものです。
 しかし、ストーリーに関しては、残念ながらちょっと不満が残りました。というのも、ニモの父さんであるマーリンが、ドリーという魚と一緒にニモ探しの旅に出るんですけど、何か悪いことがあるたびにそのドリーに責任を押しつけすぎ。それも、ラスト近くになった頃にまでそんな調子なので、いい加減観ていてウンザリしてしまいました。
 それにストーリー展開も、マーリンとドリーがあまり能動的に動かないお陰で、たまたま運良くニモのいるシドニーという街まで来れてしまった、という印象を受けなくもないんですよね。
 ニモについては、人間に捕まった後の水槽での仲間たちとの絆や成長などが丹念に描かれていると感じたので、なおさらマーリン側のドラマ性の薄さが残念でした。
 子供の成長が示される一方、過保護でネガティブな父親がほとんど成長しないまま劇終盤まで行ってしまうというのは、ファミリームービーとしてはある意味致命的とも思えるので、よけい気になってしまったのかも知れませんけどね。
 魅力的なキャラクターが多数出演していただけに、とても惜しいと思ってしまいました。


ファントム(1998年)

 田舎町スノーフィールド。そこに医者として暮らすリサは、妹のティモシーを連れて帰ってきた。だが、ふたりを迎えたのは、ひと気の絶えた、静まりかえった町だった。そして、自宅に入ったリサは、そこでメイドが干からびたようになって死んでいるのを発見する。準備中だったと思われる支度中の食事はまだ温かい……殺人鬼が近くにいると考えたリサは、助けを求めようと外へ出るのだが、待っていたのは意外な事実だった……。

 SFホラー映画、というジャンルになるんでしょうか。冒頭の雰囲気はなかなかサスペンスに満ちていて面白そうです。が、ベン・アフレックと出会ってからの展開がどうにも今ひとつですね。最初のスピード感やサスペンス感がそっくりなくなってしまって、更に妙な生物が出てきてからはもはや単なる出来の良くないB級映画と化してしまいます。それならそれで、最初からその手のノリで展開していれば面白かったかも知れないのになぁ、と思ったりして。もうちょっと話に統一感があったらなぁ、と残念に思いました。


「フィアー・ドット・コム」(2002年)

 ニューヨークで、人が目や鼻から出血しながら怪死するという事件が立て続けに起こっていた。市警のマイク刑事は、その事件を追いかける内、一見共通点のない被害者達が、あるインターネットサイトにアクセスしていた事実を知る。そのサイトは、なんと女性を拷問にかけてじっくり殺していく様子をライブ映像で配信する、というおぞましいサイトだった。そしてそれは、かつて彼が追いかけながらも捕まえることが出来なかった猟奇殺人犯と繋がっていくのだった。果たして、怪死した被害者達に何が起きたのか。そして、死ぬ直前に被害者達の周りに現れる、白い少女は何者なのか。マイクは、次第に謎の核心に迫っていくのだが……。

 感覚を逆なでするような映像を、意図的に使って恐怖心を煽るという手法を多用したホラー映画。
 恐怖の演出についてはなかなか上手いシーンもあったんですけど、物語の練り込みは少し足りないと感じました。
 「サイトを閲覧したら48時間で死んでしまう」なんて設定になってますけど、これもちょっと設定倒れ。それを物語の前半に説得力のある形で描いてあったら、もうちょっと後半のハラハラ感も増したのかも知れませんけどね。
 そもそも、何万ものアクセスが集中するサイトで、それを見たら2日で死ぬ、なんてことが起こっていたら、もっと大事に発展しているハズですが。たったふたりの刑事と衛生局員だけで担当するような小さな事件であるハズがないというか……。
 残念ながら、そんな細かなアラが目立ってリアルさが欠けてしまい、恐ろしさも半減してしまったように思います。「日常の中に忍び寄ってくる超常現象的恐怖」を描くこの手の作品は、日常や設定のリアルさが肝心ですから、この点が本当に惜しかったと思います。


「フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳」(1994年)

 日本や列強諸国が利権を求め、浸食を始めていた時代の中国。日本に留学していたチェンは、武術の師匠が試合で亡くなったことを聞き、中国へ帰国する。だが、チェンが武術を学んだ道場「精武門」は既に弟子離れが始まっており、チェンは道場の未来のために、日本が中国から撤退するまで、日本へは帰らないことを決意する。そして彼は、師匠の死が、何者かに毒を盛られたせいであることを突き止めるのだが……。

 「ドラゴン怒りの鉄拳」のリメイク作品。
 この「精武門の討ち入り」は、歴史上本当に起こった事件らしく、それを元ネタにしてあるようですね(日本人、何やってるんだか……)。
 ただ、設定は「ドラゴン怒りの鉄拳」とは大分変えてあって、主人公チェンの恋人は日本人(演じるのは中山忍)だし、倉田保昭がかなり美味しい役で出ているしで、かなり親日的にシフトしています。
 ただ、物語的にはかなりぐだぐだ……というか、トホホ感が漂ってますね。日本人をマイルドに描いたりして無理矢理物語に絡めてきてますし、登場人物達の関係の描き方も不足がちなので、観ていてメリハリに欠けるというか、ぐだぐだな感じを受けてしまいました。
 しかし、ことアクションシーンについていえば、これが相当いい出来になっています。
 リー・リンチェイの流れるような、それでいて力強いアクションはまさに出色の出来!
 そのリンチェイと倉田保昭の対決シーンは、もう素晴らしいの一言です。
 個人的には「ひとり対集団」のアクションより「ひとり対ひとり」のアクションが大好きな私にとっては、この映画のアクションはどのシーンもとても満足できるものでした。


「15ミニッツ」(2000年)

 NY市警殺人課の刑事、エディは、テレビの犯罪番組にもよく顔を出す、有名な刑事である。ある日、彼は火災現場から出てきた死体の検分に出かけ、そこで放火捜査官のジョーディーと出会う。その現場にあったのは男女2人の死体。火事ではなく、殺人だった。エディは、ジョーディーと共にこの事件を追い始めるのだが、犯人達の狙いはやがて、NYで一番有名な刑事へと向かい始めるのだった……。

 ロバート・デ・ニーロ、エドワード・バーンズ共演のサスペンス映画。刑事物のような展開を最初見せますが、この映画が扱っているのは、マスメディアの暴走と犯罪に絡む者たちの思惑ですね。リアルな描写に、観ている内に気分が悪くなってしまいました。骨太な社会派サスペンスです。力作!


「フィールド・オブ・ドリームス」(1990年)

 「トウモロコシ畑を切り開いて野球場を作りなさい。そうしたら、彼がやってくるから……」
 そんな声を夢で聞き、訳の分からないまま「やらなければ」という思いに取り憑かれて野球場を作り始めた男。やがて完成した野球場に、かつてのメジャーリーグのヒーローだった「裸足のジョー」たちが、かつてのままの姿で現れ、野球を始める。ジョーの大ファンだった男は、そのプレーを喜んで観戦するが、その心はまだ満たされないままだった。果たして、夢で言われた「彼」とは誰のことなのか。そして、この野球場を包んでいく「夢」とはどのようなものなのか?

 この映画、公開から10年経ってやっと鑑ました(笑)。
 僕はケビン・コスナーが苦手だったので(「ダンス・ウィズ・ウルブス」「ロビン・フッド」までは大好きだったんですが)、ちょっとさけてたんですね。
 でも、あるサイトで人に勧められて観てみたら……。
 お、面白いじゃないですか!
 善悪を超越し、人生で必ず味わう挫折や心のキズを抱えた人々が、その想いを癒す場所……。
 淡々とした描写で描かれる、大人のための童話です。とても優しくて、ちょっと切ない、素晴らしい映画。
 ケビン・コスナーや、レイ・リオッタなど、出演者の役どころも素敵で、根っからの悪人など一人もいないんだ、ということを信じさせてくれる、そんな映画でした。


「フェイク」(1997年)

 マフィアへの囮捜査官として潜入したFBI捜査官、ジョセフ・ビストーネ。彼はレフティというマフィアのメンバーから信頼を得て、ドニー・ブラスコという名で6年間もの間、組織に潜入し続ける。その間、うだつの上がらないレフティと、頭角を現して組織に認められていくドニーの間には深い友情が芽生えてきて……。

 アル・パチーノ、ジョニー・デップ主演のマフィア映画。実在するFBI捜査官を描いた映画ですが、うーん、ちょっと僕には今ひとつだったかなぁ。残念ながら、ジョニー・デップ演じる捜査官がどのような心理状態なのか、突っ込みが不足していたように感じられました。家族やFBIとしての自分をどのくらい大切にしているのかもきっちりとは描かれておらず、かといってレフティたちへ感情移入していくプロセスも描写が不足していて、ドニー・ブラスコの行動が唐突なものに思えてしまうシーンがありました。実話を元にしているだけに、そのところは大事に描いて欲しいところでした。
 アル・パチーノの、さびくれた冴えないマフィアという演技は素晴らしかったんですがねぇ……。


「フェイス・オフ」(1997年)

 FBI捜査官ショーン・アーチャーは、雇われテロリストのキャスター・トロイに息子を殺害された過去を持つ。それから6年、ショーンはキャスターへの復讐を胸に、家庭も家族も顧みずにキャスターを追い続ける日々を送っていた。ある日、ショーンはとうとうキャスターを空港で追いつめ、銃撃戦の末、キャスターを倒すとともにその弟のポラックスを逮捕することに成功する。ところが、その後キャスターが事前にロスのどこかに爆弾を仕掛けたことが判明。その場所を知るのは、刑務所に入れられたポラックスと、昏睡状態になったキャスターのふたりだけ……。ショーンは、特殊な手術でキャスターの顔を自らに移植し、爆弾の場所を聞き出すためにポラックスの収監された刑務所に赴く決心をする。だが、ショーンが刑務所に入り込んだあと、昏睡状態から醒めることがないと思われたキャスターが目を覚ますのだった……。

 ジョン・ウー監督、ジョン・トラボルタ、ニコラス・ケイジ共演のアクション映画。
 これは華麗なアクションとハードボイルド、そして信頼関係や裏切りなど、様々な要素を上手く絡めて描かれた傑作アクション映画です。
 圧巻は、やはりなんと言っても主演ふたりの演技力。善と悪というそれぞれのキャラクターを途中から入れ替わって演じ合っているんですが、細かいところでそれぞれのキャラクターの特徴を捉えていて、全く違和感なく見ることが出来るんですよね。特にジョン・トラボルタは、本当に自然に両方の役柄を、顔つきから雰囲気まで演じ分けて見せています。この演技力には脱帽です。
 作品としても、ジョン・ウー監督お得意の、人間同士の絆の描き方が素晴らしい。キャスターとなったショーンが、キャスターの仲間や恋人との絆や約束を結んでいく過程などは、見応えがあって見入ってしまいました。
 ラストが若干ご都合主義的なのに引っかからないではないんですが、しかし十分楽しめる映画でした。


「フォートレス2」(1999年)

 産児制限法を破って子供をもうけた罪で囚われたジョンとカレンの夫婦が、脱出不可能といわれた監獄より脱獄して数年。メンテル社は執拗に彼らを追い、ジョンは遂に再び捕らえられてしまう。妻と息子を守るため、再び脱獄を試みるジョン。しかし、今度の監獄は更なる厳重な環境に置かれていた……。

 クリストファー・ランバート主演の脱出アクション映画第2弾。いやいや、前作以上にB級テイストに溢れていますね、この映画。スタイルのいい脱ぎキャラのお姉さんがしっかりいるし、妙にアナログな感覚がいい感じ。結構気に入りました。
 もっとも、こてこてのB級SFなので、他人にお薦めは出来ませんが(笑)。


「フォーンブース」(2003年)

 ニューヨークの広告屋スチュは、口先だけを商売道具とし、様々な客を売り出す仕事を手広く行い、業界では知られた顔になっていた。
 ある日、スチュは結婚指輪を左手から外し、ニューヨーク・タイムズスクエアの電話ボックスから、顧客の女優パメラに電話をかける。食事をダシにパメラを誘い出そうとしてのことだったが、パメラは乗り気にならず、断られてしまう。
 がっかりして受話器を下ろしすスチュ。しかしその直後、電話ボックスのベルがけたたましく鳴り響く……そして、その受話器を取ってしまったスチュは、恐ろしい事件に巻き込まれていくことになるのだった。
 受話器の向こうから、男が囁く。
 「いま、ライフルでお前を狙っている……電話を切ったり、電話ボックスから出たら、撃つ」

 コリン・ファレル主演のサスペンス。
 いや、よく出来ていたと思います。80分以上の長さを、そのほとんどが電話ボックスの中だけで展開するというアイデアは秀逸ですし、その後電話での見えざる犯人とのやりとりや駆け引きもなかなか緊張感があって楽しめました。ジョエル・シューマカー監督の演出も的確で、本当に面白かったと思います。
 まぁ、限られた舞台設定だけに、色々とおかしなところや矛盾もあったりはするんですが、これは緊迫感を楽しむ映画だということで、私としては満足です。
 コリン・ファレルは、本当にいろんな役をこなしてますね。だんだん演技の幅も広がっていっているようで、今後が楽しみです。


「プライベート・ライアン」(1998年)

 1944年6月6日。連合軍はこの日、フランスのノルマンディーにおいて史上最大の侵攻作戦を決行した。その中に、ジョン・ミラー大尉の指揮する中隊もあった。彼らが目指したのは、5つの上陸ポイントの中のオマハ・ビーチ。激しいドイツ軍との戦いの中で、無数の兵士たちが命を落としていく。その激しい戦闘を生き残り、なんとか上陸を果たしたミラー大尉たち。だが、彼らには、すぐに次の任務が下される。それは、この戦闘で3人の兄を戦死させたひとりの兵士を、母親の元へ無事に帰還させるという任務だった。生死さえ不明なライアン二等兵を捜すため、ミラーは7名の兵士とともに戦地深くへ入っていくのだった。

 スティーブン・スピルバーグの第2次世界大戦を扱った戦争映画です。主演はトム・ハンクス。この映画は、とにかく視覚表現と音響デザインが凄すぎますね。冒頭のノルマンディー上陸時の戦闘シーンや、最後の市街戦の描かれ方は、まさに絶品。観ている人間を戦場へ引き込んでいきます。戦争の恐怖を何よりも強く見せつけてくれるシーンだったと思います。ですが、作品全体としてはなんだかもの足りませんね。スピルバーグ監督が戦争をどう描きたいのか、その意図がはっきりとは感じられないんです。結局、戦死した者を英雄的に描いているため、戦争そのものを徹底的に非難するという姿勢は非常に弱くなっていますし。なんだかまとまりに欠けるまま、映像の迫力だけで力任せにまとめてしまった作品、といったところでしょうか。
 ですが、戦闘シーンの描き方を一変させてしまった作品ですし、なによりスピルバーグの「画の見せ方」の巧さと相まって、一見の価値ありの映画だとは思います。


「ブラックホーク・ダウン」(2001年)

 1993年10月。東アフリカのソマリアでは、長引く内線が暗い影を落としていた。アメリカ軍はそのソマリアで行われている虐殺をやめさせるべく、ソマリアに軍を展開させていた。そしてその日、米軍は首都モガディシオにある敵対勢力アイディド派の拠点を急襲し、敵幹部を拉致する作戦を決行する。それは、わずか30分で終了する予定の作戦だった。そう、米軍ヘリ「ブラックホーク」が墜落させられるまでは……。

 今や巨匠となった感のあるリドリー・スコット監督による、実話をベースにした戦争映画です。見応えはあります。戦闘シーンの迫力は本当に凄まじいものがありますし、そのなかで精神をすり減らしながら必死に生き延びようとする兵士たちの描き方も秀逸です。良いか悪いかは別として、軍人として使命を全うしようとするアメリカ映画の軍人たちの姿は信念が感じられますよね。ですがその一方、ソマリアの民間人たちが、みんな手のつけられない暴徒のような描かれ方をしているのがちょっと気になりました。冒頭で現地の武器商人が言っているように、「これは内戦で、米軍が関与すべき事柄ではない」というのは、やはり現地の人々の本音だと思うのですが。この表現は一方的にすぎるように感じましたね。
 そういえば、某雑誌で、アメリカのベトナム映画について「他人を殴っておいて自分の手が痛かったと言っている映画ばっかりだ」なんて評論を読んだことがあります。なんだかそれを思い出してしまった映画でした。


「ブラッディ・マロリー」(2002年)

 数年前、幸せな結婚をしたはずのマロリー。しかし、結婚式のその夜に、花婿は突然マロリーに牙を向けた。なんと、花婿は吸血鬼だったのだ。マロリーは、涙ながらに斧を振りかざし、花婿の息の根を止めたのだった。そして、彼女は超常現象撃退の特殊部隊隊長として、闇の者との死闘を日々繰り返していた。そんなある日、バチカンのローマ教皇が、悪魔崇拝者の手によって誘拐される事件が起こり、マロリーはその解決の仕事に就くことになる。だがそれは、世界の命運を左右する事件の幕開けだったのだ。

 フランスのホラー・アクション映画、ということで物珍しさで観てみたんですが、観てみてびっくりしました。そこかしこに、日本のアニメの影響が見て取れるんです。
 特に冒頭の、教会内部でのモンスターとの戦いで、対決に駆け寄っていくマロリーとモンスターの背後に効果線が入っていたのには大爆笑。
 マロリーの仲間にも、長身の女らしいオカマとか、いたずら好きなテレパス少女とか、キャラクターがよく立っていて楽しめました。
 欲を言えば、全体的に安っぽさを感じたので、セットにしてもモンスターの着ぐるみにしても、もうちょっと頑張って欲しかったなぁ、というのが正直なところ。
 しかし、これはある映画会社の規格に沿って、低予算の短い期間で撮られた映画だそうなので、それでこれだけの創作が出来たことは褒めてもいいのかも知れませんね。
 ジュリアン・マニア監督、この次はちゃんとした個別予算の映画を撮れるようになることを期待しています。


「ブラッドワーク」(2002年)

 FBIのベテラン心理分析官マッケイレブは、敏腕で知られていたが、「コード・キラー」とマスコミに名付けられた連続殺人犯を追跡に心臓発作に見舞われ、退職に追い込まれてしまった。それから2年。ようやく心臓移植をうけ、徐々に健康を取り戻しつつあったマッケイレブの元へ、ひとりの女性が現れ、自分の姉を殺した犯人を捕まえて欲しいと申し出る。マッケイレブが生きていられるのは、その姉が殺されたお陰なのだから、と……。そう、マッケイレブに移植された心臓は、その女性の姉の心臓だったのである。願われるまま、捜査を始めるマッケイレブ。そして彼は、その姉を殺した犯人が、その数日前に街角のATMで男性を殺していることを知る。この二つの事件の接点は何か? 引き続き調査を続ける彼は、この事件に隠された真実に気づき始めるのだった。

 クリント・イーストウッド制作・監督・主演のサスペンス映画。
 ストーリーそのものはかなり単純なんですけど、手堅くまとめられた作品に仕上がっています。この辺り、さすがイーストウッド監督といったところでしょうか。
 それに、ストーリーが単純とはいってもサスペンスとしての深さはキッチリとおさえてあって、犯人であるコード・キラーのマッケイレブに対する偏執的な行動や関わり合い方は本当にゾッとするものがあります。
 まぁ、すっかりおじいちゃんになったイーストウッドが、心臓手術直後にも関わらず若い女性と寝てしまうなんてシーンを演じたりしていて、少しリアリティに欠けるかなぁ、なんて思ったりもしましたけど、これがなければイーストウッドらしくないという気もしますので、よしとしましょう。
 ともかく、安心してみることの出来るサスペンス映画に仕上がっていました。


「ブルークラッシュ」(2002年)

 全世界のサーファーの聖地であるオアフ島ノースショアで、幼い頃から天才と呼ばれていたアン・マリー。だが、彼女はある大会でけがを負って溺れてしまい、以来思い切ったランディングが出来なくなってしまった。
 それから3年。母親は自分と妹を置いて出ていってしまい、サーフィン仲間のエデン、レナと一緒に暮らしながら妹の母親役まで務めていたアンは、数週間後に迫った大会、パイプ・ライン・マスターズへの参加を目指していた。10メートルを超える波が60センチの浅瀬に落ち込むという、世界最高峰のサーフィン大会。一歩間違えば命を落とす危険をはらんだ大会に、アンは挑むことが出来るのか。
 家族や友情、恋愛、生活、様々な苦境を迎えながら、アンはサーフィン大会を目指していくのだった。

 ケイト・ボスワーズ主演、ミシェル・ロドリゲス共演のスポーツ青春ドラマ。
 この作品はかなり軽妙に作られていて、楽しんで観ることが出来ました。スポ根もの、というとあまりにも汗くささが足りませんので当てはまらないかな、と思いますが、主要な3人の女性達がとても楽しそうに生きている様を上手く表現してあって、心地いい作品に仕上がっています。
 それに、観客をつかむ冒頭の演出が上手いですね。オープニングで、朝起きた主人公達が浜辺に行ってサーフィンを始めるまでが描かれるんですが、ここまでの展開ですっかり作品世界に引き込まれてしまいました。
 作品の出だしって重要だと思うんですが、この作品はとてもその部分が上手く出来ていました。良作です。


「プルーフ・オブ・ライフ」(2000年)

 第三国で仕事をしていたダムの建築技師ピーターが、突然誘拐された。相手は、ビジネスとして誘拐を行う集団。技師の妻アリスは、凄腕の誘拐交渉人として活躍するテリーの力を借りて、夫を取り戻そうとするのだが……。

 公開時、主演のラッセル・クロウとメグ・ライアンのロマンスが話題になった作品。興行収入自体は不振で、監督が腹立ち紛れに「この不倫騒ぎのせいだ」と騒いでしまったとか(笑)。
 まぁ、不倫のせいかどうかはともかく、僕はこの作品の出来だったら大ヒットする映画でないことは確かだと思いましたけど……なんとなく、説得力のないまま映画が終わってしまったような気がします。
 発端は面白いんですよね。誘拐ビジネスに巻き込まれてしまった夫、それを心配しながら助けに来てくれた男に惹かれてしまう妻、そしてプロであろうとしながら妻に惹かれてしまう男……。もうちょっと、メグ・ライアンとラッセル・クロウの心理描写をきっちりと描いていたら、かなり面白い映画になったような気はします。ラッセル・クロウは本当に格好良かったし。かなり惜しいなぁ、と思いました。


「フル・フロンタル」(2002年)

 ある金曜日のロサンゼルス。その夜、ビバリーヒルズの高級ホテルで、大物映画プロデューサーであるガスの40歳の誕生パーティーが企画されていた。
 そのパーティーはガスに近しい業界関係者だけ招いて行われることになっていたのだが、招かれた者、招かれていると勝手に思っている者、それぞれの思いの中で、人々はそれぞれの営みを行っていたのであった。

 スティーブン・ソダーバーグ監督が、ジュリア・ロバーツ、ブラッド・ピットなど、豪華キャストを迎えて撮影した群像劇。
 淡々と進む、様々な人間模様のアンサンブルが魅力でした。ハリウッドの内幕を茶化しながら、セレブたちの様子を誇張しつつ描いていく手法は、ソダーバーグのお得意な演出方法にピタリとはまってますね。
 テレンス・スタンプやデビッド・フィンチャーなどカメオ出演も多く、それだけでも楽しめました。
 ただ、作品自体に実験的要素が強すぎて、物語としては今ひとつかも知れません。その辺りに物足りなさを感じました。


「ブレイド2」(2002年)

 ヴァンパイアと人間の間に生まれた男、ブレイド。彼は自分の宿命として、ヴァンパイア一族を狩ることを自らに課していた。だがある日、ブレイドにヴァンパイア一族から使いがやってくる。バンパイアを襲うヴァンパイア、死神族が現れたため、その殲滅にブレイドの力を借りたいというのだ。その死神族の強力な力故、ブレイドはヴァンパイア達とともに戦うことを了承するのだが。

 ウェズリー・スナイプス主演のホラーアクション第2弾。今回はアクション監督にドニー・イェンを迎え、更にパワーアップしたアクションが繰り広げられます。とにかく、クールなブレイドが格好いいです。そして、徹底的に本格的な闘いのスタイルにこだわったというアクションの殺陣は本当にお見事。痛快で爽快な娯楽映画でした。


「ブレス・ザ・チャイルド」(2000年)

 あるクリスマスの晩、看護婦のマギーの元に、2年間音信不通だった妹のジェンナが突如現れる。彼女はなんと、生まれたばかりだという赤ん坊、コーディを抱いていた。だが、薬漬けになってしまっていたジェンナは、父親のことも何も告げずに、コーディをマギーに託し、姿を消してしまう。それから6年。マギーは何とかコーディを育て、コーディは少女になっていた。そのコーディは、注意力が散漫な傾向にあり、育てるのに何かと気を遣うことが多かった。だが、そのコーディには、普通の人にはない特殊な力が備わっているようにマギーには思えた。そんな彼女たちの元に、ある日突然ジェンナが現れる。彼女は、エリックという不審な男と一緒だった。そして、彼こそが、マギーたちを恐怖に導く存在だったのだ……。

 キム・ベイシンガー主演のゴシック・ホラー。不思議な力を持つ少女と、カルト教団との対立の構図はありふれているといえそうですが、なかなか面白く出来ていました。キム・ベイシンガーが振り回される女性の役を好演。FBIの捜査官も、いい味を出していて面白く観ることが出来ました。


「フレディVSジェイソン」(2003年)

 エルム街の子供達が連続して殺された事件から10年。殺人鬼フレディの存在は人々から忘れられつつあり、人の恐怖心をエネルギーとしているフレディの力は大きく低下していた。このままでは存在そのものが消えてしまう、との焦燥に駆られたフレディは、伝説の殺人鬼ジェイソンを利用することを思いつく。ジェイソンを夢で操り、エルム街で殺人事件を起こさせることで、人々にフレディの仕業と思わせて恐怖心を煽ろうと企てたのだ。そして彼は、クリスタル・レイクで朽ちかけていたジェイソンの夢の中に入り込み、まんまとエルム街に向かわせることに成功する。そして、思惑通り、ジェイソンはエルム街で殺戮を繰り返していくのだが、次第にフレディの獲物までもジェイソンが殺してしまうようになって……。

 とうとう実現した、80年代を代表するホラーキャラクター同士の共演。
 オープニング、懐かしい「エルム街の悪夢」のテーマ曲と、「13日の金曜日」のお馴染みの音楽(?)が連続して流れたときにはワクワクしてしまいました。個人的に「エルム街の悪夢」シリーズが描く不可思議な夢の世界が大好きだったので、特に「エルム街」のテーマ曲には涙。本当にあのフレディが、帰ってきたんだなぁと嬉しく実感しました。
 アイデアも面白いですね。主人公達が、現実世界ではジェイソンに襲われ、眠りに落ちるとフレディが襲ってくる、まさに逃げようのないコンビネーション。感心しました。
 物語的にはアラも多く、2つのシリーズにそれぞれ苦しい付け足しや矛盾などを感じるシーンも多々あったりしたんですが、ソレを補って余りある後半の2大モンスターの戦いっぷりには本当に満足しました。
 ちなみに、劇中、惨殺される人間が何人か出てきますが、一番血まみれドロドロになったのは殺す側であるはずのフレディーでした(笑)。
 それにしても、ヒロインを演じたモニカ・キーナ、「スノー・ホワイト」の時には印象に残りませんでしたけど、6年たって随分綺麗になりましたね。今後は注目してみたい女優です。いや、胸目当てじゃなくて。


「プレデター」(1987年)

 捕虜として捕らわれた政府要人救出のため、南米に呼びよせられたダッチ。
 だが、出向いた先のジャングルの中では、とても人の手によるとは思えない残忍な手口で殺害されたと見られる死体があった。
 そして、ジャングルを自由自在に動き回り、襲いかかってくる見えない謎の敵。その敵に、凄腕の部下たちが次々とやられていく……。
 彼らは、生きてジャングルを脱出できるのか? 見えない敵の正体は?

 まだ中学生だった頃、テレビで放映されたこの映画を夢中で観た記憶があります(笑)。
 まだ超人的でイケイケ(死後)なキャラクターだったシュワルツェネッガーと、見えない凶悪生物との戦いは見物です。
 今見ると、合成などはやはり荒いところも見受けられますが、それでもこのプレデターのキャラクターはいいですね。恐ろしい生命体としての存在感はなかなかのもの。
 時代を感じつつ、でも面白い映画です。


「ブロークダウン・パレス」(1999年)

 タイへ卒業旅行へ行った二人の女子大生。彼女らはそこである男と知り合いになり、少しの間、行動を共にする。しかし、タイから出ようとした空港で、突然ふたりは警察に取り押さえられてしまう。バッグから出てきたのは、身に覚えのない麻薬だった。言葉も通じなければ、司法制度も違うこの国で、彼女たちは裁かれることになるのだった。

 この映画、確か撮影の段階で、刑務所内の描写があまりに非人道的すぎるというのでタイでのロケが許可されなかったということでも話題になっていましたね。
 映画の内容は、というと……。
 あれれ? なんだか、中途半端なところで映画が終わってないですか?
 結局、巻き込まれた事件の真相も描かれず、クレア・デインズ演じる主人公の一人は今後、どうなるのかさえ全く見えない。
 クレア・デインズの最後の行動にはちょっと心動かされましたけど、でもなぁ……。
 友情を描きたかったのか、タイの司法を批判したかったのか、さっぱり分からないまま映画を見終わってしまいました。残念。


「ブロークン・アロー」(1995年)

 空軍パイロットのヘイル大尉は、優秀な先輩ディーキンズ少佐とともにテストパイロットとして核爆弾を積んだ演習飛行を行うことになっていた。ところが、演習中、突如ディーキンズはヘイルに銃を向ける。彼は、積み込まれた核弾頭を奪う計画を立てていたのだ。非常脱出装置で機外へ放り出されたヘイル。そして、ディーキンズはステルスを墜落させるのだった。ブロークン・アロー(核兵器紛失の暗号)が、ペンタゴンへ通達されることになる……。

 ジョン・ウー監督のハリウッド進出第1弾。ジョン・トラボルタが初の悪役に扮して、クリスチャン・スレーターとの駆け引きやだまし合いを演じています。ヘイルとディーキンズとの関係、そのやりとり、そしてアクションシーンと、ジョン・ウー監督らしい演出が楽しめます。とてもハリウッドらしいテイストも盛り込んでいますが、そのジョン・ウー節は健在。面白いアクション映画でした。


「プロジェクトA」(1984年)

 海賊が沿岸の海域を荒らし回っていた時代の、香港。海賊掃討のために、海軍は大がかりな準備を整え、出航の準備を整えていた。
 海軍の突撃体調ドラゴンも、その出撃に備えている一人である。
 だが、出航の寸前、船は何者かに仕掛けられた爆薬により沈没させられてしまうのだった。
 極秘の出撃任務を、情報を漏らした奴がいる?
 訝しがりながら、しかし総督のメイにより、海軍は解散させられ、海賊退治はイギリス軍に依頼されることになってしまう。そしてドラゴンたち海軍の兵隊は、陸軍に繰り入れられることになってしまうのだった。
 果たして、香港は海賊の驚異から逃れることが出来るのか。

 ジャッキー・チェン主演であり、ジャッキーの代表作の1本でもある傑作アクション映画。
 ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウ共演と言うことでも話題を呼びましたが、この3人が全く違う立場、思惑で物語に絡んできて最後に共に戦うことになる展開はとてもいいです。
 集団での乱闘シーンや自転車を使った子気味良いアクション、そして迫力満点の肉体を使った戦いのシーンなど、ワイヤーやCGがあふれる今だからこそ余計にしびれるモノがありますね。
 ジャッキー・チェンを語る上で外せない作品のひとつです。


「プロフェシー」(2002年)

 ワシントン・ポスト紙の売れっ子記者ジョン・クラインは、最愛の妻と新居の購入を決めたその帰りに、交通事故に遭ってしまう。ジョンは無事だったが、妻はけがを負い、病院に入院。その病院で妻はジョンに問う。「あれを見た?」。妻は、ジョンに見えなかった「何か」を見たのだった。その後、脳に腫瘍が見つかり、妻は自らの命を絶ってしまう。黒く不気味な「天使」の絵を何枚も書き殴った手帳を残して……。それから2年後、失意のジョンは、何者かに導かれるかのようにウェスト・バージニア州ポイントブレザントという町にたどり着く。そこで彼を待っていたのは、想像を絶する不可思議な恐怖と、妻が言い残した「何か」の存在だった。

 リチャード・ギア主演のスピリチュアル・ホラー。ハリウッドのホラーには珍しく、抑えた恐怖演出がじわじわと迫ってくる良作です。
 この映画の元になったのは、1967年の「シルバー橋事故」。このときに数多くの奇怪な目撃談が囁かれ、それらの話をまとめて作成されたようです。
 しかし、描き方がしっかりとしていて手堅くまとめてあるため、不自然さや作りものっぽさは感じられず、「本当にそばにいるかも知れない人智を越えた何者か」の存在をリアルに感じられました。これは監督の演出の力量でしょうね。マーク・ベリントン監督は「隣人は静かに笑う」でも非常にリアルで不快な息苦しさを巧みに演出して見せてましたけど、この作品でもその息苦しさは健在。本当に息が詰まりそうな閉塞感と恐怖を感じさせてくれました。
 そして、リチャード・ギアも、腕利きの記者ではあるけれども愛する妻の死を受け入れることが出来ないという繊細な役柄を、うまく演じていたと思います。
 久し振りに、琴線をくすぐるホラー映画でした。


「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(1996年)

 落ち着いた思考で行動する兄のセスと、病的に突発的な行動に駆られる弟リチャード。それが、凶悪な犯罪者ゲッコー兄弟である。彼らは銀行を襲撃し、メキシコへ逃げる際、元神父のジェイコブ家族を人質として拉致する。そしてジェイコブスとその娘ケイト、息子スコットの3人の協力で、無事メキシコへの国境を越えることが出来た兄弟は、仲間と落ち合う約束の酒場「ティーティー・ツイスター」へと向かう。しかし、その店は想像を絶する生物がたむろする地獄だったのだ。

 ロバート・ロドリゲス監督、ジョージ・クルーニー主演、クエンティン・タランティーノ、ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイス共演の……ジャンルとしては、何になる映画でしょうね?
 中盤までは普通のクライム・サスペンス風の演出で盛り上げたかと思いきや、突如として対ヴァンパイアのアクションものとして急転するその物語には驚かされますが、そこはロドリゲス監督、非常に高くセンスのいい演出で面白く見せてくれます。
 この、前半と後半とで全く違う映画になってしまう展開についていけるかどうか。そこに、この映画を気に入るかどうかがかかっていると思います。私は大好きでしたけどね。全編通してかっこいいし、ロドリゲス監督のケレン味もたっぷりだし。
 主演のジョージ・クルーニーは、本当に色気満点。文句なしにかっこいいです。
 サルマ・ハエックも出演していて、露出の高い格好をして身体に蛇を巻き付け、怪しく踊る姿に見惚れてしまいますね。
 B級テイストを強く打ち出しながら、とても楽しめた映画でした。


「フロム・ダスク・ティル・ドーン2」(1999年)

 強盗のベックは、警官の手から脱走した昔の仲間に誘われ、メキシコの銀行を襲撃するヤマを踏むことになった。しかし、仲間が吸血鬼に襲われてしまったことから、彼は思わぬ闘いに身を投じることになるのだった。

 ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ共演でカルトな人気を得た作品の続編。今回は「ターミネーター2」で新型ターミネーター「T1000」を演じたロバート・パトリックが主演。しかしながら、なんともふくらみのない映画になってしまったな、というのが正直なところです。前作ほどドラマを作ろうという努力の跡もなく、テンポの悪いB級映画になっちゃってますね。
 ですが、最後のヴァンパイア相手の戦いというクライマックスはなかなか楽しめます。ロバート・パトリックも格好いいですしね。


「フロム・ビヨンド」(1986年)

 科学者プレトリアス教授が、自宅で開発していた機械。それは人間の脳に共振を起こし、第6感を目覚めさせることの出来る共振器であった。だが、その共振器が作動したとき、彼は時空の彼方から現れた怪物に頭を喰われてしまう。残された首なし死体に、警察は同居人として彼の手伝いをしていたクロフォードを殺人容疑で逮捕する。しきりに異世界の話をするため、精神病院に入れられてしまうクロフォード。その彼の前に、精神分析医キャサリンが現れ、もう1度共振器を動かす実験を行おうと言い始めるのだった。

 P.H.ラヴクラフト原作のホラー、だそうですが、だいぶ脚色してあるようですね。
 問題の共振器とは、脳の松果体に作用して肥大させる機械という設定ですが、その松果体というのは人間の「性衝動」を司る部分でもあるらしいです。んで、精神病の患者を救おうと機械の実験を行ったヒロインのキャサリンでしたが、そんな部分を肥大化させられたからもう大変、いつの間にかボンデージファッションに身を包んで瀕死のクロフォードの上に跨って……と、もう恐怖の演出も物語もすっかり投げ出して、制作者の趣味丸出しな映画になっています。いや、嬉しいですけどね、ええ。
 それにしても、泡式の消化器を吹きつけただけでショートを起こして壊れる機械って一体……それよりもいっそ消化器そのものを投げつけて機械をたたき壊せよ、と画面に突っ込んでしまったのは私だけでしょうか。
 いや、ホラー作品としては、ブラックなユーモアや悪のりな部分もあってかなり楽しめたんですけどね。


「フロム・ヘル」(2001年)

 1888年のロンドンの貧民街で、娼婦ばかりを狙った連続殺人事件が起きていた。その手口は残忍で、ナイフで身体を切り裂き、身体の一部を持ち去るという猟奇的な犯行だった。その事件の捜査にあたったのは、アバーライン警部。彼は阿片中毒でありながら、持ち前の優れた洞察力と、阿片による予知めいた幻覚によって、これまでに優秀な経歴を築いてきた人物だった。後生の世に「切り裂きジャック事件」として語り継がれるこの事件の背後に潜むものはなんなのか? 今、ひとりの警部が事件の真実に挑む。

 「切り裂きジャック」の謎を、ジョニー・デップ主演、ヘザー・グラハム共演で描いたサスペンス。「切り裂きジャック」については未だに謎が多く、犯人像については諸説あるようですが、この映画もそのうちのひとつの説を元に構築されているそうです。
 とにかく、ジョニー・デップが上手い! 切れ者の警部でありながら、阿片に溺れた堕落ものであり、どこか屈折したものをもっている。そんな陰のある役所を、非常に巧みに演じています。
 共演のヘザー・グラハムも、娼婦という貧民街の底辺に生きながらもしっかりした人生に対する強さを持った女性を好演。
 このふたりの演技には本当に楽しませてもらいました。
 演出についても、19世紀末のロンドンの退廃的な空気が画面を覆っていて、雰囲気がしっかりと出ていました。この映画の舞台道具などは、観ているだけで楽しくなるくらい凝っています。
 ただ。ラストだけは、ちょっと物足りなかった様な気がしました。実在のアバーライン警部がそういう人生だったのを忠実に描いただけなのかも知れませんが、観ていて最後に肩すかしを食らったような気になりました。そこだけが、不満だったように思います。


「フローレス」(1999年)

 元刑事のウォルトは、ゲイと娼婦が大嫌いな堅物男だった。ある日、彼の住むアパートで殺人事件が起こり、助けに入ろうとしたウォルトは脳溢血に襲われて倒れてしまう。目を覚ました彼は右半身が麻痺するという後遺症に見舞われていた。そのリハビリとして、上の階にすむゲイの男に歌を習うことになってしまったウォルトだったが……。

 ロバート・デ・ニーロ主演。ずいぶん思っていた映画とは違うな、と思った映画でした(笑)。殺人事件の謎を、デ・ニーロがゲイと衝突しながらも共に解いていくというバディ・ムービーかと思っていたもので。実際には、半身麻痺のリハビリで次第に堅物がうち解けていく、という交流ものでした。もちろん、殺人事件の犯人との絡みも多少ありますが、そちらは単純に描かれていましたね。それにしても、一番印象に残ったのはやはりデ・ニーロ。半身麻痺の難役を、本当に見事にこなしていました。「レナードの朝」でもそうでしたけど、こういう役を難なくこなしてしまうデ・ニーロという役者は本当に凄いです。映画としてはちょっとバランスが悪いかな、という気もしますので、お薦めという訳にはいきませんけどね(笑)。


「ペイチェック 消された記憶」(2003年)

 近未来。フリーのコンピューターエンジニアであるマイケルは、企業を渡り歩き、極秘の開発プロジェクトを行っては、その後機密保持のために開発に携わった期間のすべての記憶を消去することで巨額の報酬を受け取るという生活を送っていた。
 そんなある時、大学時代からの友人が経営するオールコム社から、3年という長期に渡るプロジェクトの依頼を受けたマイケルは、記憶を消される期間の長さに躊躇うが、しかし報酬に提示された9600万ドルの魅力に仕事を受けることになる。
 しかしそれから3年後、彼を待っていたのは巨額の報酬ではなく、自分のサインによる報酬を放棄する旨の誓約書と、過去の自分が現在の自分へ向けて郵送していた19個のガラクタだけだったのである。そして、彼はFBIに突如として身柄を拘束され、尋問を受ける羽目になってしまう。
 果たして、何故記憶を消される前の自分は報酬を放棄し、こんなガラクタを自分宛に送ったのか? 何故FBIは自分を捕まえるのか?
 その謎を辿った時、マイケルの前に、信じられない事実が姿を現してくるのだった。

 ジョン・ウー監督、ベン・アフレック主演、ユマ・サーマン共演のSFアクション・サスペンス。
 原作はフィリップ・K・ディックということで、どうしても鑑賞中に「マイノリティ・リポート」「ブレードランナー」などが頭に浮かんでしまったんですが、この作品はSF的な小道具はほとんど画面に登場せず、同じような近未来作品であっても監督の趣向の違いによってここまでアナログな感じになってしまうんだなぁ、と変なところで感心してました。
 過去の主人公が未来の自分宛に送った謎のガラクタが、自然にストーリーに絡んでいく展開はよく描かれていて、楽しめました。ただ、何故こんなガラクタを自分宛に送ってしまったのか、その謎が判明した後からは、ストーリー展開がだらけてしまった感がありました。それが残念。そこから主人公が反撃に転じていくのですから、もうちょっとカタルシスが欲しかったところです。
 記憶を売る、ということの悲壮感などはもうちょっと深く描いて欲しかった、などという物足りなさもありましたけど、気軽に観るには非常に楽しい作品には仕上がっていたと思います。
 しかし、ジョン・ウー監督、そんなに無理矢理ハトを飛ばさなくても……なんて、今作では苦笑混じりに思ってしまいました。


「ペイバック」(1999年)

 ポーターは相棒に裏切られ、妻に裏切られ、14万ドルを奪われた。銃で撃たれた彼は、生死の境をさまよう。
 5ヶ月後、命を取り留め、街に戻ったポーターは、全てを失っていた。
 奪われた自分自身を取り戻すため、ポーターは持ち逃げされた14万ドルのうち、自分の取り分7万ドルを奪い返そうとするのだが。

 メル・ギブソンが初のアンチ・ヒーローに挑んだ意欲作、というふれ込みで公開された本作ですが、実は劇場で観たときには、今ひとつ乗り切れませんでした。
 アンチ・ヒーローという面を強く期待して観に行ったものですから、なんだか肩すかしを喰らったような気になったんですね。劇中では、けしてギブソンはニヒリズム溢れるヒールではなく、むしろチンピラに近いような気が……。
 見終わった後、やっと気がつきました。これはアンチ・ヒーローの活躍を描いた物ではなく、昔のハードボイルド映画の復活を目論んだ、チンピラなりの意地を描いた作品ですね。
 そう思ってからこの映画を見直すと、ギブソンが生き生きと格好良く見えてくるから不思議な物です。奪われた物を取り戻すために総てを省みず、降りかかる苦痛に耐えて「落とし前」をつける……。
 この作品のギブソン、演技のスタイルもこれまでの作品と変えており、入魂の1作です。


「ペイルライダー」(1985年)

 ある金山の集落では、金鉱を独占しようとするならず者たちからの嫌がらせに困惑していた。そこへ流れ着いた一人の牧師。彼はその集落で働き、人々を助けようとする。その牧師に怒りを覚えたならず者たちは、牧師を亡き者にしようとするが、その牧師は実は射撃の達人でもあったのだった。

 クリント・イーストウッドの西部劇。
 実は、僕はこれ以前にはイーストウッドの西部劇って「許されざる者」しか観たことがなかったんですが、これを観て確かに西部劇での彼はかっこいいと思いました。自分の見せ方を理解しているとでも言うんでしょうか。「俺映画」(笑)であることは間違いないんですが、それもすべて許せてしまうところがイーストウッドのイーストウッドたる由縁でしょうか。
 素直に「かっこい〜!」と思って観るのが正しい映画ですね(笑)。

 それにしても、母娘そろって惚れさせてしまうなんて、罪作りですなぁ(笑)。


「ボイス」(2002年)

 女性記者のジウォンは援助交際の記事を書いて名をあげたが、その記事によって摘発されることになった男の一人から脅迫電話やいたずらメールが送られてくるようになり、悩まされていた。ほとぼりが冷めるまで一時、友人であるホジュン夫婦が買ったものの使っていない家を借りて住むことにし、携帯電話の番号も変えることにしたジウォン。だが、彼女が変更した番号が、恐怖への入り口だった。まだ誰も知らないはずのその番号に、突然かかってきた謎の電話。その電話に出たホジュンの娘ヨンジュは、突然目を見開き、金切り声を上げて痙攣を起こし始めたのだ。その電話をヨンジュから奪い取ったジウォンが電話に耳を当ててみると、不気味なノイズが聞こえてくる。そしてその日から、ジウォンやヨンジュの周辺で、不可解なことが起こり始めるのだった。

 韓国発の心霊ホラー映画。うん、ショッキングなシーンはかなりショッキングで怖かったです。
 しかし、物語としては破綻しているように思います。何故こんな呪いが存在するのか、最後にはそれを解き明かしていくという筋立てになっているんですが、その理由が判明したとき、正直「じゃ冒頭で死んでいった人たちは何故殺されなきゃいけなかったんだ?」と呆れてしまったんです。主人公達が呪われた理由は分かった、でも他の人たちは何故殺されたの?
 謎解きに及んで、ちょっと冷めてしまった私でした。
 あと、若干回想シーンによるドラマ展開が甘めかな、と感じました。
 全体的には驚かすところ、怖がらせるところなど、そういった部分部分は良くできていたと思いますが、それだけに物語が納得できなかったのが残念でした。


「冒険王」(1996年)

 中国に日本が侵攻していた時代。
 冒険王の異名を持つ、考古学者のワイ博士は、中国政府から人智を超えた力を持つと言われる「経箱」と「真経」を手に入れるよう依頼を受ける。ワイは、助手のパオと共にその秘宝を追い始めるが、実は日本軍もその宝を狙っていたのだった。
 宝を巡って起こる争いと策略、騙しと裏切り。果たして、最後にこの宝を手にするのは誰なのか?

 リー・リンチェイ、金城武共演の、アジア版「レイダース/失われた聖櫃」とでも呼ぶべき作品です。
 途中途中で挟まれる、リンチェイのアクションは素晴らしいです。動きの優雅さ、正確さ、そして画面映えする立ち居振る舞いは、まさにアクションスターですね。
 反面、物語はやっぱりちょっと物足りないというか……経箱と呼ばれる箱を開けたら、光があふれて周囲の生き物の生命が脅かされる、という、まんまレイダースのパクリ設定をしてるんですけど、それ以上の何かが感じられなかったのが残念。
 ワイ博士が敵対するのが日本軍からいつの間にか箱によって生み出された化け物になってるし、その敵対関係にしても、化け物の陰が薄くて、因縁めいたものも生み出せなかったので、緊張感が生まれなかったんですよね。面白くする、盛り上げるためのシチュエーションは盛りだくさんにあったのに、本当に残念でした。


「暴走特急」(1995年)

 ケイシー・ライバックは、5年振りに会った姪のサラと、ロッキー山脈を走る豪華特急で休暇旅行に出ていた。
 だが、その特急が突然テロリストたちに襲われてしまう。
 彼らはレーザー砲を搭載した人工衛星を掌握し、ペンタゴン地下にあるという原子炉破壊を目論んでいた。
 彼らの手を逃れたライバックは、そのテロ行為を封じるべく、活動を開始するのだった。

 「沈黙の戦艦」の正当な続編です。
 またしても、スティーブン・セガール強過ぎです(笑)。
 何が起ころうとも、「大丈夫。俺に任せておきなって」なんて言いたげな顔で軽々と危機を乗り切ってしまうかっこよさ。
 へっぽこ映画と紙一重のところをなんとか保ってる、ってところですね(苦笑)。いや、好きな映画なんですけど。
 冒頭の方で、なんとセガールは撃たれてしまうんですが、その後そんなことは何の関係もなくしっかりと戦ってしまう(痛がりすらしない)ところなんて、もう「セガールだなぁ」とにんまりするしかないですね。いや、好きな映画なんですけど。
 というわけで、セガールファンには文句なく楽しめる映画でした(いいのか、それで(笑)?)。


「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)

 1999年4月20日。アメリカが、軍事介入したコソボ紛争において最大級の爆撃を行い、数十万人の人々を殺したその日。アメリカのコロラド州にあるコロンバイン高校において、男子生徒ふたりによる銃の乱射事件が起こった。彼らは生徒を12人、教師をひとり射殺し、その後自らの命を絶ったのだ。その忌まわしい事件にアメリカ国内は騒然となり、彼らが陶酔していたロック歌手マリリン・マンソンの過激な曲にその原因を求めた。だが、そんなに事件の背景は簡単なものなのか? では事件の直前に彼らが熱中していたというボウリングも規制すべきではないのか? そもそもこれだけアメリカで銃による殺人が多いのは何故なのか? 銃の数や人種の多様さはカナダだって負けていないし、失業率だってカナダの方が高い。過激なビデオゲームは大抵日本製だし、家庭の崩壊はイギリスの方が深刻だ。バイオレンスあふれるハリウッド映画だって、世界中で上映されている。それなのに、アメリカだけが何故これほどに銃による殺傷事件が溢れているのか。ドキュメント映画監督マイケル・ムーアが、アポなしで様々な人々にインタビューを試み、その原因をあぶり出す。

 アカデミー賞で「長編ドキュメンタリー部門」に輝いた、傑作ドキュメンタリー映画。正直、私はアカデミー賞はあまり公平なイメージを持っていなかったので小馬鹿にしていたんですけど、この作品が受賞したことで少し見直しました。
 この映画が追求するのは、アメリカ銃社会の真実。
 どれだけ簡単に銃が買えるのかの実証や、他の国との比較論、そして銃を手放せない人々がいるのは何故なのか、様々な語り口から銃社会を見つめていきます。
 「恐怖と怒りがアメリカの消費社会を支えている」という考えに、深く納得させられましたね。
 非常に興味深く、考えさせられる作品でした。
 それにしても、劇中で語られる「アメリカが他国にしてきたこと」は凄まじいの一言。色んな地域紛争や問題に口出ししては数万数十万単位の民間人を殺してきているんですからね。そのくせ、国内で起こった「同時多発テロ」で1300人の命が失われると、それがこれまで自分たちがしてきたことのツケの一端であるということを考えようともせずにそれ以上の報復をしようとする……果たして、この国の正義というのはどこに行ってしまったのでしょうか。それとも、始めからなかったのでしょうか。
 この超大国の行く末に、不安を感じてしまいました。

(注:死傷者の数の比較は、実際にそれで亡くなった人やその親族の方々などにとっては問題でなく、どちらも許せない非道なことだとは分かっています。しかし、中東の国々の人たちが「自国の人々が、紛争に関係ないアメリカに数十万人殺された」のでその仕返しとして「1300人のアメリカ人を殺した」というのでは、一方的にどちらかを責めるわけにはいかないと思うのです。あのテロは、アメリカ政府に多大の問題があったと思わざるを得ないのでこんな書き方をしました)


「僕たちのアナ・バナナ」(2000年)

 ブライアンとジェイクは幼なじみの親友同士。だが、彼らはそれぞれ、カトリックの神父とユダヤ教のラビという、それぞれの道を歩んでいた。そのふたりの前に、16年ぶりに、かつて幼友達だった女性アナが現れる。すっかり素敵なキャリア・ウーマンに成長した彼女を見て、ふたりはすっかり夢中になってしまうのだが……。

 実力派俳優エドワード・ノートンが初監督に挑んだラブ・コメディ。出演もしていますが、作品中では引き立て役に回っていますね。ちっちゃいけれども小気味よくまとまった佳作だと思います。ユダヤ教のラビを演じるベン・スティラーが特にはまり役で、観ていて楽しい作品でした。空撮で捉えたニューヨークの町並みの美しさはため息物です。
 ただ、ヒロインのアナについては……こんな魅力的なふたりから好かれるには、ちょっと魅力不足ではないかな?


「BODY/ボディ」(1993年)

 心臓病を持つ大富豪の老人が、心臓麻痺で死んでいるのが発見された。検死の結果、体内からはコカインが検出された。だが、老人はコカインの常用者ではなく、また、心臓への負担が大きいため、自らコカインを服用したとは思われなかった。そこで浮かび上がってきたのが、老人と恋人関係にあったレベッカという美しく若い女性。老人は、彼女に多大な遺産を残すことを遺言していたのである。警察は、遺産目当てのレベッカが老人にコカインを吸わせ、その上で激しいセックスを要求して心臓麻痺に至らせたのだと主張していた。弁護士のフランクはそんなレベッカの依頼を受け、彼女の弁護にあたるのだが、次第に彼自身も彼女の魅力に惹かれていくのだった。果たして、事件の真相は?

 ウィレム・デフォーとマドンナが共演したサスペンス映画です。とはいえ、ストーリーはあってな無きが如し、といいましょうか。制作されたのが「氷の微笑」が大ヒットした直後ということもあってか、とにかく出てくる女優の濡れ場を撮ることに力が入れられているような作りになっていまして、デフォー演じる弁護士と検察官の駆け引きとか、証人を巡る心理戦とか、そういった法廷ものとしての楽しみの部分がとてもおざなりに描かれていてがっかりしました。デフォーの苦悩もひとつの焦点であったのに、デフォーとマドンナの間の心理的なあやがきちんと描かれていないためにぼやけてしまってますしね……。最後も、あまりにもとってつけたようなラストで、意外感も今ひとつ。ウィレム・デフォー、ジュリアン・ムーアといった達者な役者を配していながら、とても残念な映画でした。
 とはいえ、この映画の楽しみを濡れ場だけと割り切って観てみれば、マドンナ、ジュリアン・ムーア、アン・アーチャーの綺麗なヌードを観れるといった楽しみ方も出来るかも知れませんが……それだけじゃやっぱり寂しいですね。


「ポリス・ストーリー/香港国際警察」(1985年)

 香港警察は、大規模な麻薬捜査に着手していた。
 刑事カクー・チェンは、取引現場での張り込みの末、麻薬密売の元締めと思われる実業家を逮捕することに成功する。一躍、警察の顔として世間に祭り上げられるチェン。
 しかし、裁判では弁護士の辣腕により、実業家は釈放されてしまう。
 そして彼は、チェンを罠にかけ、破滅させようと目論むのだった。

 ジャッキー・チェンの代表作の1本。後にシリーズ作品が制作されてますが、物語、アクション共に最も良くできているのはやはりこの第1作目だと思います。
 「サンダーアーム/竜兄虎弟」で頭蓋骨骨折という大けがを負い、入院したジャッキー。この作品は、その時ベッドで考えたアイデアを元に作成された作品です。
 刑事でありながら、濡れ衣を着せられ、警察に追われる立場に身を落としてしまうジャッキー。その悲壮感あふれる演技に、とかくアクションばかりに目を奪われがちだけれど、実は演技力も備えているというジャッキー・チェンの一面を垣間見ることが出来ます。
 そして、繰り出されるアクションシーンの凄まじいことといったら。
 スピード、組み手の振り付け、そして様々な「舞台となる場所にある物」を取り入れて活かしたアクションシーンのアイデアの数々には、本当に頭が下がります。
 何かで「プロジェクトA」「ポリス・ストーリー/香港国際警察」でアクションはやり尽くした、あとはこの亜流だ、なんてジャッキー・チェン自身が語ってたような記憶があるんですが、それも納得です。とにかく、ジャッキー・チェンのアクションの全てが詰まったような、体を張った怒濤のアクションの連続に、ただただ魅入られてしまう作品でした。
 ヒロイン役のマギー・チャンも、このころはアイドル然としてましたね。本当に可愛い女優さんでした。
 もっとも、それなのに階段から蹴り落とされたりしてますけど……。
 もう一人のヒロイン役ブリジット・リンもガラスケースに突っ込まされたりさせられてるし、自分にはもちろん、共演者にも容赦のないジャッキー・チェンを思わせられるトコでしょうかね。


「ボルケーノ」(1997年)

 その日もいつも通りの平和な一日になるはずだった。しかし、ロサンゼルスの地下では、恐ろしい事態が進行していたのである。それは朝の地震から始まり、地下鉄工事員の謎の焼死事故、公園の池の水温上昇と、静かに、しかし着実に魔の手を伸ばしていたのである。そして、翌日の早朝、遂に「それ」は起こった。そう、ロサンゼルスの地下から、火山が噴火を起こしたのである。流れ出た溶岩は、街や人を一瞬にして焼き尽くし、更に流れていく。果たして、この予想だにされていなかった災害に、人々は打つ勝つことが出来るのか?

 トミー・リー・ジョーンズ主演のディザスター・ムービー(災害映画)です。溶岩流に襲われるロサンゼルスの街を、緊迫感たっぷりに描いています。トミー・リー・ジョーンズが演じるのは、危機管理局のチーフ。次々に巻き起こる困難や災害を、抜群の判断力と統率力で打開していきます。こんな役をやらせたら、本当にこの人は似合いますね。災害対策に尽力する人々の姿など、きちんと描いてあるいい映画だと思います。


「ポワゾン」(2001年)

 時は19世紀のキューバ。コーヒー農園を営むルイス・バーガスは、新聞の交際欄で結婚相手を見つけていた。彼は愛など信じてはおらず、ただ誠実で子供を産んでくれる女性だけを求めていたのだ。その相手として見初めたのが、ジュリア・ラッセルというアメリカの女性。だが、キューバへやってきた花嫁を港へと迎えに行った彼の前に現れたのは、事前に送られてきていた写真とは全く違う美しい女性だった。容姿で選ばないように写真を偽った、という説明に納得し、夫婦となるふたり。だが、やがて彼女の身元に、疑わしい点が現れ始めるのだった。

 アンジェリーナ・ジョリー、アントニオ・バンデラスという2大セクシー俳優共演のラブサスペンス。R−18指定になってしまっていますね。確かにアンジェリーナ、最初の方で脱ぎすぎですけど、18禁指定にする程でもないんじゃないかと思います。作品としてはかなり甘めな感じがしますね。なんだか、脚本の練り方が中途半端でどっちつかずっていうか……あのラストにちょっとがっかり。米仏合作なのですが、アメリカの方がごり押ししてあんなラストにしたのかな? しっとり終わっても良かった気がします。まぁ、それだと確かに救いがないのも確かですけど。


「ホワット・ライズ・ビニース」(2000年)

 湖のほとりに立つ家に住む中年夫婦。娘も大学の寮で生活を始めており、彼らは二人だけの生活をスタートさせたばかりだった。だが、妻の周囲に女性の霊が現れるようになり始めてから、二人の生活は次第にぎくしゃくしたものになっていくのだった……。

 ロバート・ゼメキス監督が、ハリソン・フォード、ミシェル・ファイファー共演でおくるサスペンス・ホラー。これは、かなり怖かったです。何しろ、映画のこけおどしの常套手段ともいえる突然のカットインから始まって、心理的に逆なでしてくる霊の見せ方、音響など、ありとあらゆるギミックを盛り込んであるんですから。うちのスクリーン投射で鑑賞したんですが、久し振りに怖いと思いながら観た映画でした。
 それにしても、特筆すべきはハリソン・フォードですね。本当にうまい! 久し振りに貫禄を感じた作品でした。色んな意味で、面白い作品だったと思います。


「ボーン・コレクター」(1999年)

 優秀な科学捜査官リンカーン・ライムは、事故により体に障害を負い、ベッドでの生活を余儀なくさせられてしまう。
 それから4年。
 パトロールをしていた警官アメリアが変死体を発見。残された遺留品の謎を探るため、ライムは協力を求めらた。その遺留品に、犯人からのメッセージがあると彼は睨む。
 動けないライムは、自分の代わりに現場検分を行う役をアメリアに依頼。協力して捜査を行っていく二人だったが、犯人はメッセージを残しながら、猟奇的な殺人を重ねていくのだった。
 犯人からのメッセージとは、一体なんなのか?

 演技派デンゼル・ワシントンの魅力が充分に味わえる1作です。ベッドの上で動かない体をもどかしく思いながらも捜査を続ける捜査官の役を熱演しています。
 また、共演のアンジェリーナ・ジョリーもいい演技していますね。ふたりの信頼が築かれていく過程は、ありきたりな演出といえどよく表現されていたと思います。ただ、マイケル・ルーカーについては……また、こんな役ですか(笑)。「クリフ・ハンガー」の時にはあんなにいい役やっていたのに……こんな役で使い回されてしまうのは惜しい役者さんだと思うんですがねぇ。
 映画の中身も良くできています。言われるほど気持ち悪い演出はされていませんし、エンタテイメント・サスペンスとして楽しめますね。
 ただ、最後だけは、ちょっと不満かなぁ(笑)。あまりにも落ち着きすぎ、というか、劇中のライムの苦しみ様は何だったの?なんて思っちゃいました。


「ホーンティング」(1999年)

 「不眠症の研究のため、不眠症に悩む人を募集」
 そんな募集記事を見て、研究に参加した被験者たち。しかし、彼らが集められた古い屋敷には、いにしえからの怨念が住み着いていたのだった。
 次々と巻き起こる怪現象に、被験者たちは巻き込まれていくのだった。

 ヤン・デ・ボン監督作品。この監督、僕は「スピード」はもちろん、世間から酷評されてるらしい「スピード2」も「ツイスター」もお気に入りだったので、その期待から入ったのですが……今回は見事に裏切られた感じがしました(苦笑)。
 前半の、音響で不気味さを出す演出はとても良かったのですが、後半から映像として現れる恐怖演出は、いただけませんでした。なんか、ディズニーランドの「ホーンテッド・マンション」で騒いでるだけっていう感じが……。
 ホラー映画は、抑えた演出が一番怖い、ということを改めて感じさせてくれた映画でした。
 「リング」のハリウッドリメイク版が、こんな感じになりませんように……。

 ちなみに、この映画は「たたり」という昔の映画のリメイクということですが、こちらの方は未見です。面白いらしいのですが……。


「ホーンテッドマンション」(2003年)

 不動産業者のジムと妻サラは、家族旅行へ向かう途中、家を売りたいと言う人物の屋敷を訪ねた。その屋敷は湖のほとりに建てられた豪邸で、かつての貴族の優雅な暮らしを偲ばせる物だった。
 ジムはその屋敷の脇にある墓地に多少引っかかりを覚えたが、不動産業者として、その豪華な屋敷を物件として扱うステータスに魅せられて屋敷の中に足を踏み入れる。
 執事のラムズリーに迎えられ、屋敷の主人エドワードと夕食を摂ることになったジム達。だがその夕食の間に豪雨が襲ってきて、ジム達は屋敷に閉じこめられることとなってしまった。
 こうして、ジム達は、この屋敷で恐怖の一夜を過ごすこととなったのだった。

 「パイレーツ・オブ・カリビアン」に続いてディズニー・ランドのアトラクションをモチーフにした作品。エディ・マーフィーを主役に迎え、家族で楽しめるコメディタッチの怖くないホラー映画に仕上がっています。この辺のさじ加減は、ディズニーってやっぱり上手いなぁ、と感心。
 ただ実は、幽霊達に怖さをそれほど感じない故に、物語に緊迫感もそれほど感じない、という困ったことになっていたのも一部では事実なんですけどね。
 という訳で、基本的にはちょっとマヌケな幽霊達を相手にエディ・マーフィーがドタバタをやって、最後は愛の物語でそつなくまとめるという手堅い作品になってました。子どもを交えて楽しく観るのに適しているかも。
 ……逆に、独身の私が一人で観るにはちとつらいものがあったことも事実でした。