DVD「千と千尋の神隠し」を綺麗に観たい!


 宮崎駿監督の話題作「千と千尋の神隠し」が、とうとう2002年7月19日、発売になりました。
 ところが、その発売直後から、インターネットのあちこちで「色調がおかしい」という話題が巻き起こりました。
 曰く、「赤が強すぎる」「昼間のシーンが夕方みたい」等々。
 私も買って観てみたら、確かに赤みが強すぎるようです。色彩の鮮やかさが宮崎アニメの特色のひとつだけに、これは非常に残念でした。
 ちなみに、これが色彩の比較です。

左が本編劇中の画面、右が特典ディスクに収録された予告編の画面。明らかに、右の画像の方が劇場公開時の色彩に近い。

 2002年8月8日現在、ジブリの鈴木プロデューサーが「この色彩は誤りではなく、何十回もチェックをして決めた色彩である」とのコメントを発表してはいますが、宮崎監督本人からのコメントはまだありません。
 しかし、劇場で観た色彩とは明らかに違う物になっているのですが……。
 この本編の色が正しいというのであれば、DVDのパッケージや店頭の販促ポスター、テレビコマーシャルなどは、正しくない色で消費者に提示されていることになります。それを見て買った消費者としては、納得できない話です。
 とはいえ、それを嘆いていてもはじまりません。このDVDを発売したジブリやブエナビスタへの怒りはとりあえず横に置いておくとして、どうやったら綺麗に観られるか、それを検証したいと思います。
 プロジェクターで調整をするのもいいのですが、私は出来れば出力側で調整したいタイプなので、DVD再生専用パソコン側で調整をしてみたいと思います(DVL−919では調整できませんので)。
 という訳で、ソフトDVDプレーヤーとして使っている「PowerDVD XP」というソフトの、カラー設定のパラメーターをいじってみることにしました。
 通常、私は主に「シアター」という色設定で映画を観ていますので、それを基本に調整していくことにします。

 上の画像が、PowerDVD XPの、「シアター」の基本カラー設定です。
 ちなみに、この設定で「千と千尋の神隠し」のタイトルを観るとこんな感じになります。

 ……やはり、赤い!
 メーカがなんと言おうと赤すぎる! ほとんど夕方みたいな色ではありませんか! タイトル文字だって赤みがかっているし、これはやっぱりおかしいでしょう。
 そこで、とりあえずカラー設定の赤の色を落としてやることにしました。

 とりあえず、カラー1(上から2番目の項目)を、基本値0から−25ほどに落として緑よりに変えてみます。
 ついでに、この設定をこのソフト専用とするため、カラーセット名を「千と千尋の神隠し」として登録することにしました。
 では、再度タイトル映像を観てみましょう。

 ……赤みは落ちましたけど、今度は少しセピアっぽいというか、黄色っぽくなってしまいましたね。
 今度は、黄色を落としてみましょう。

 と、今度はカラー2(上から3番目の項目)を基本値0から+25ほどに上げて、色味を黄色から青よりに調整してみました。
 では、タイトルを観てみましょう。

 うん、だいぶ色合いが納得できるものになってきました。
 しかし、それぞれの色が今ひとつ鮮やかさに欠けますね。今度は、ちょっと色の彩度を上げてみましょう。

 彩度を、基本値の+6から、一気に+20まで上げてみました。
 さて、タイトルはどうなったでしょう。

 これで、各色の力強さが出てきましたね。のっぺりとした感じだった色が、かなりいい感じにまとまってきました。
 しかし、まだちょっと全体的なメリハリに欠けます。それに、若干ですが再び画面が赤く濁ってしまっていますね。
 今度は、コントラストを上げて、色のメリハリをもっと強くしてみましょう。

 コントラストを、基本値の+10から+20に上げてみました。
 今度は、どうでしょうか。

 おお、色のメリハリもきちんとついて、タイトル文字も白くなりました。
 ほぼ、これで納得できる範囲に落ち着いてきたと思います。
 ですが、コントラストを上げたことで、プロジェクターで鑑賞すると暗部が潰れてしまう可能性もあります。
 最後に若干、明るさを上げておきましょう。

 明るさを、基本値の+6から+8へ上げました。
 これ以上あげると、液晶プロジェクターの泣きどころである「黒浮き」に泣かされることになるので、この程度に抑えます。
 と、いう訳で、最終的に整ったタイトル画像はこうなりました。

 うん、空も青いし、タイトル文字は白いし、色の強さもまずまず。
 これで、「千と千尋の神隠し」のDVDは鑑賞することにしましょうか。
 以下に、3つほどシーンの対比を掲載してみますね。
 各シーンとも、左が調整後、右が調整前です。

銭婆の所へ向かう千尋達一行。空の青さが違うね!
水中の回想シーン。色のさわやかさが段違いなのだ!
ラスト近く。夕方ではなく、気持ちのいい日中なのだ!

 如何でしょうか? だいぶ、劇場公開時のイメージに近づいたんじゃないかと思います。
 それにしても、ここまで調整しなくちゃならないなら、普通のテレビとDVDプレーヤーって組み合わせでは出来ませんね。
 スタジオジブリ、とんでもない調整をしてくれたモンです。
 次のDVDは、大丈夫かなぁ……。


2002年 8月 8日UP