「映画館で映画を観る」ということ


 「映画を観る」という行為には、いくつか方法があります。
 映画館へ観に行く、上映イベントなどに出かける、ビデオを借りてくる、テレビで放映された物を観る、などなど。
 一番広く行われているのは、ビデオを借りてくることでしょうか。これなら借りている間なら好きな時間に観ることが出来るし、CMも途中に挟まらない、それに外国映画では字幕や吹き替えなど好きなスタイルが選べるのですから。
 しかし、にも関わらず、映画ファンは映画館へ足を運びます。もちろん、僕も。
 これはなぜでしょうか?
 まず、映画館ならではのスクリーンの大きさ。一部マニアな方々の中には100インチ超のスクリーンを自宅に設置されている方もいますが、大多数の映画ファンにとってはそれは異世界の話(僕の60インチでさえ、呆れられてしまうことが多いのですから)。大きなスクリーンで迫力のある映像を観たい、という願望を満たすために、映画ファンは映画館に足を運ぶことになります。
 また、映画館ならではのサウンドの音量。一部マニアな方々の中には完全防音のシェルターみたいな部屋を自宅に完備されている方もいますが、以下同文。迫力のある音量を楽しみたい、という願望を満たすために、映画ファンは映画館へ足を運ぶことになります。
 しかし、一番の魅力とは、「映画の共有」ということではないでしょうか?
 同じ時間、同じ空間で、友人同士、そしてその劇場内に集まった不特定多数の人たちと一緒に同じ映画を楽しむ。その時間、その空間をみんなで共有できる、そのこと自体に大きな魅力があると僕は思うのです。
 その昔、まだテレビが普及する以前には、映画は大衆娯楽の最たる物でした。その頃は上映時間の長い物が多数作られ、映画館も繁盛していたようです。その頃の映画館は今ほど綺麗に整備された場所ではなかったと思われますが、作品が終わってエンドロールが流れ始めるとそのスタッフ名に対して拍手が送られていたといいますから、かなり開かれた空間だったと思われます。皆で一斉に監督名に拍手を送り、笑うときには大きな声で笑う。残念ながら今日の映画館ではそこまでの開かれた空間という感じはなくなってしまいましたが(映画産業が下火になるとともに入場料が高くなり、映画館に行くことが特別なことと思われ始めたお陰でしょうか。本当に静かに観なければならないような気持ちにさせられますよね)、それでも共有している空間、ということは変わりません。
 そういった雰囲気自体を楽しむために、僕は映画館に足を運ぶのかも知れません。いい映画を観た後は、席を立つときにはみんなが満足げな顔をしている。もちろん、自分も満足の顔をしているのでしょう。そんな何とも言えない一体感を感じたくて、映画館へ通っている自分がいるのです。こればかりは、いくらビデオやDVDのレンタルが進んでも、遠く及ぶ物ではありませんからね。
 現在、一部の映画館でもデジタルによる上映が行われ始めており、フィルムという物が世の中からなくなりつつあります。その内回線を通じて映画が配給されるようになるでしょう。更に、その配給先は映画館ではなく視聴者の自宅へ、というような時代が来るかも知れません。それは「最新の映画が自宅に居ながらにして観られる」ということで、映画ファンにとっては夢のようなことです。
 しかし、映画館には映画館の良さがある、ということも、また代え難い事実です。映画ファンが映画館に行かなくなる、ということはないと思います。
 最近はシネコンが主流になっていますが、今後劇場はどのように変わっていくのか、そしてどのような映画がその劇場の発達に伴って生まれてくるのか、楽しみにしていきたいと思います。

 ただ。
 最低限のマナー(禁煙となっている劇場の中でタバコを吸わない、映画のネタバレの話を大声でしない)を守れない人は、映画館にいく資格などありませんね。そんなに自分の好きにしたいなら、人が集まる映画館ではなく、自分の好きに出来る自宅でビデオで観るべきでしょう。他の人に迷惑です。
 そんな人は、とっととレンタルビデオだけで映画を観るようにしてくださいね。
 以上、映画ファンからのお願いでした。

2000年10月 8日UP