掲示板における管理人の責任


 大手匿名掲示板「2ちゃんねる」に書かれたことで名誉を傷つけられたとして、管理人を相手取って争われていた裁判で、裁判所は原告の訴えを認めて被告に400万円の賠償を命じました。
 「2ちゃんねる」はそもそも誹謗中傷の類の書き込みが多い掲示板ではあるんですが、今回は誹謗中傷を名指しで受けた側が管理人に対して削除依頼を繰り返したものの、管理人は一部を除いて削除をしなかったため、告訴に踏み切ったようです。
 管理人側は「事実かどうかはっきりとしない段階での削除義務はない」と主張したそうですが、判決では「匿名掲示板では、中傷された側が書き込んだ人間を特定することは不可能で、管理人にその発言の責任を求める他ない。管理人は書き込みに対してその真実性を立証する責任がある」という趣旨を述べています。
 つまり、「削除していない書き込みは、『真実を述べている』と管理人が認めた書き込みであり、管理人はその判断の責任を負うことになる」という裁判所の判断が示された訳です。
 この判決は、個人で運営するウェブサイトに掲示板を設置している、私のようなウェブマスターにとっても他人事ではない判決ではありました。
 しかし、ある意味妥当な判決かな、とも思います。
 誹謗中傷を書き込むという行為は、そのことによって必ず不快な思いをする人や不利益を被る人を生じさせる行為です。そのため、多くの掲示板管理人は、誹謗中傷と受けとれる書き込みは削除する方針をとっています。それが真実がどうかの問題ではなく、その行為そのものが他の閲覧者に不快な思いをさせるからです。
 ところが、「2ちゃんねる」は基本的に誹謗中傷類も放置するという方針で運営されています。その利用方法は利用者任せで、発言者にその責任を求めてるのです。
 しかし。
 匿名掲示板である以上、判決にもあるように、発言者の責任を追及することは困難です。そんな掲示板を作ってしまった責任は、やはり設置者である管理人に問われるべきでしょう。
 この判決は、発言をきちんと管理できないのならそんな掲示板を設置するな、という判断の元での判決だったのでしょう。これは確かにそのとおりだと思います。
 そういう意味で、今回の判決は妥当なものだったと私は思うのです。
 これが匿名掲示板ではなく、発言者の特定がある程度可能な掲示板であったなら、管理人に対してここまで責任を追及する判決はまず下りなかったと思いますけどね。
 ともあれ、掲示板を設置している身としては、頭の片隅にでも留めておかなければならない判決でした。

2002年 6月28日UP