天空のエスカフローネ 〜infinite〜

はじめに
 新年あけましておめでとうございます、管理者のだいにと申します。この小説の連載も早2年目に突入しました、これもひとえに読んでくださる皆様がいるおかげです。連載はまだまだ続きますがお付き合いのほどお願いいたします。
 皆様にとってもエスカフローネにとっても幸せでありますようお祈り申し上げて新年のご挨拶に代えさせて頂きます。今年もヨロシク!
 下のおまけ特大号は題名から内容的におおよその察しがつくとは思いますがすぐに読むかはあなたの判断にお任せします(^^;;。

作者より
  こんにちは。いつも読んで下さっている方、これが始めての方、皆さんありがとうございます。
 このお話を書き始めた時は3〜4ヶ月で書き終わるものと思っていたのですが、幹に当たるストーリーはそのままに枝葉が茂りまくりまして、とうとう2年目に突入という羽目になってしまいました。これも一重にエスカキャラ一人一人のしっかりとした個性によるものであり、新ためてエスカ世界の奥深さを感じずにはおれません。
 今後のストーリーは私のオリジナル色がさらに強くなって来るのですが、今まで同様キャラクターはTVシリーズのイメージを崩さないように(あくまで私のイメージですが)書くよう心がけて行きたいと思います。
 2年目という事ですが、ここまで書き続けて来られたのは、読んでくれる皆さんがいるおかげです。本当にありがとうございます。そしてこれからも、どうぞ宜しくお願い致します。

【おまけ特大号】lovely, holy, merry Night
<警告!おまけ特大号は本編の余韻に浸りたい方は読まないでください>
 ドライデンが案内してくれた店は、市場から少し城寄りに入った所にあった。元は帝国軍の士官達で賑わったと言うだけあって、町酒場とは違う高級感漂う店であった。
 料理も素晴しく、魚介類と細かく切った野菜をゼリーで固めた前菜、骨付き肉と根菜を煮込んだスープ、豆と野菜の暖かいサラダ、香草を詰めた肉を石釜で焼いたメインディッシュ、ホイップクリームがたっぷりかかった卵の蒸し菓子等、どれも絶品であった。
 「はぁ、お腹いっぱい。もう、何も入らない〜」
メルルが椅子の背もたれに体を預けて満足そうに言った。目の前には湯気をたてたティーカップが柔らかな花の香りを漂わせている。
「うん。ちょっとボリュームがあったけど、美味しかったぁ」
ひとみがメルルに相槌を打った。
「あら、たしかに美味しいお料理ではあったけれど、ちょっと油がきつかったわ」
ミラーナがカップを口に運びながらすまして言った。
「料理ってなぁ、北へ行けば行くほど油っこくなるもんだ。それがうまいんだよ、寒いトコじゃな」
ドライデンが物知り顔でそう言った。
 「そろそろ時間だな」
アレンの言葉にうなずくと、ガデスが立ち上がった。
「見張りの交代時間だ。当番の者はすぐにクルゼードに戻れ。残りの者は、自由にして良い。ただし、はしゃぎすぎるな。明日の出航に差し支えん程度にしとけよ!」
ガデスの言葉に、クルゼード・クルーの一部は嬉しそうに「酒だ酒だ!」と騒ぎながら、皆に一礼して店を出て行った。
 アレンは酒場組が出て行くのを見送った後、ミラーナに
「姫。我々はクルゼードに戻りましょう。」
そう促した。が、ミラーナは不服そうに言い返した。
「あら。私だって夜の街を見てみたいわ」
「姫ともあろうお方が夜の街を歩くなど」
「良いんじゃないか?王族と言えど、社会見学は大事だぜ」
アレンの言葉をさえぎって、ドライデンがのんびりと言った。さすがにむっとした表情を隠せないアレンだったが、それ以上は何も言わなかった。
 「王様は行くんだろ?社会見学に」
ドライデンはそういたずらっぽくバァンに言いながら、手招きで店主を呼んだ。店主は両手に乗るより少し大きな包みと、小さな書状を持って来た。
 ドライデンは書状を確かめるとバァンに渡した。それから包みをメルルの前に置いて言った。
「こいつを今からクルゼードに持って帰ってくれないか。ダイの食事だ」
「え゛え゛!」
メルルのしっぽが不服そうに逆立った。
「行ってこいよ、メルル。」
「・・・は〜い」
バァンの言葉に耳をうなだらせながらも渋々承知したメルルは、ガデス以下クルゼードに戻るメンバーと共に店を出て行った。
 「ひとみ。ちょっと付き合ってくれないか?」
メルル達を見送った後、バァンがひとみに声をかけた。
「良いけど、どこに行くの?」
ひとみの問いかけに席を立ちながら振り返ったバァンだったが、
「先に、失礼する」
と短い挨拶だけを残し、店の外に出て行ってしまった。
「あ、バァン。待って」
ひとみは残った者達に会釈すると、バァンを追って店を出て行った。


Scene.1 二律背反(ミラーナ)

 「残ったのは、俺達3人か」
「そうね・・・」
「・・・王様と幻の月の女、か。ふっ、似合いのカップルだな。あんたもそう思うだろう?上手くいくと良いんだがなぁ」
あら、十分うまくいっている様に思えるけれど。
 ・・・私だってひとみのように素敵な殿方と夜の街を歩いてみたいわ。もう、ドライデンがアレンにあんな言い方するから、ワガママなんて言えなくなってしまったじゃない。
 「良い香りのお茶だな」
あら、アレンったらこのお茶が気に入ったのかしら。確かに素敵な香りよね。
 こうして見ると、アレン、貴方お茶を飲む姿も優雅でなんて素敵なのかしら。
 ドライデンは・・・なんて無作法なの、肘を付いてお茶を飲むなんて。でもドライデンってこういう感じが似合っているわ。気取りが無くて、ワイルドで
 「姫。そろそろクルゼードに戻りましょう」
まあ、アレンったらそんなに急かさなくても良くなくって。
「このお茶、もう1杯頂けないかしら?とても良い香りで気に入りましたわ」
少し位アレンを困らせたって良いわよね。
「マスター!こちらの姫君にお茶のおかわりだ」
ふふっ、ドライデンったら何を張り切っているのかしら?あら、アレン、ドライデンの事にらんだりしてもどうしようもなくってよ。
 「それにしても美しい」
え?ドライデン・・。私の事、そんなに見つめて・・・
「先日、管理組合の事務所を訪ねて来たあんたを見た時は息が止まるかと思ったぜ。3年前でも十分美しかったのに更にこれほど美しくなるとは、神も罪作りな事をする。なぁ、あんたもそう思わないか?天空の騎士殿」
ドライデン。そんな、私・・・。
 ドライデンはいつだって私を見ていて下さるのね。それに、心ときめく甘い言葉も素敵な贈り物だって・・・。
 「姫の美しさはアストリア国民全ての誇り。どのような美辞麗句を用いても言い表すことなど出来ん」
「ってのがアストリア国民の意思って訳か?俺はお前さん自身の気持ちを聞きたかったんだがなぁ。まあ良い」
・・・アレン。そうよ、アレン。私は貴方の気持ちが知りたいわ。騎士として以上にいつも私の力になって下さる。それに、この間は口づけまで・・・。あれはどういうつもりだったの?アレン。貴方はいったい誰を見ているの?
 「失礼します」
あら、お茶のおかわりが来たのね。一緒に運んできた小ビンは何かしら?
「こちらはこのお茶と同じ香りを付けたお酒です。お茶に少し垂らすと香りが引き立ちますよ」
「使わせて頂くわ」
まあ、本当に素敵な香り。
「姫。このような場所でアルコールなど」
「騎士殿は結構神経質だな」
そうよ、ドライデンの言う通りだわ。アレンったら過保護なのよ。お茶に入れる程度のお酒位、なんて事なくてよ。
「素敵な香りじゃなくって。それにお味の方も良くなっていてよ。」
本当に美味しいわ。もう少し入れようかしら。
「ミラーナ。結構強い酒だから気をつけた方が良いぞ」
あら、ドライデンまでそんな事言って。二人して私の事を過保護に扱おうと言うのね。アレンは私の護衛がお仕事ですものね、当然だわ。でも、ドライデンなら私の事、もう少し理解していると思っていたのに。
 「もう1杯頂けるかしら?」
「姫!」
怒られたって知らないわ。
 ・・・でも、やっぱり3杯は飲みすぎかしら。なんだか体が熱いわ。昼間歩き回って疲れているせいもあるんだろうけど、お茶というより本当にお酒を飲んでいるみたい。
「姫!」
「ミラーナ。顔が真っ赤だぞ!」
あら、本当に強いお酒だったようね。どうしましょう。良いわ、折角だから二人を困らせて差し上げるわ・・・

 テーブルにうつ伏せて眠ってしまったミラーナを挟んで大の男二人がうろたえている様は、なかなか微笑ましいものであった。


Scene. 2 四面楚歌(バァン)

 「バァン!ねぇバァンってば。どこ行くの?行き先位教えてくれたって良いでしょう?」
「ついて来ればわかるさ」
・・・服を買ってやるからついて来いなんて言える訳ないじゃないか。
「もう、バァンったら!」
すぐに怒る所も変わってないんだな、ひとみは。でも、怒ったひとみも可愛いな。前はうっとうしいだけだったのに。
 さてと、ドライデンがくれた地図によると、その角を入ってすぐの店だな、よし!
「・・・ひとみ、あの角の店に・・・」 
なに?なんでジャジュカが居るんだ?
「あーっ、ジャジュカさんだ!何買ってるんだろ」
くっ、これは・・・。いや、確か地図にはあと2軒・・・
「ひとみ、行くぞ」
「あ、待ってよ。ジャジュカさんに声かけようと思ったのにぃ」
声なんかかけなくて良い!
 ええと、ああ、もう見えているじゃないか。
「ひとみ、あそこに・・・」
「よう!王様とひとみちゃんじゃねぇか」
「二人で逢引かい?お安くないねぇ」
・・・クルゼードの皆。酒場に行ったんじゃなかったのか?
「皆、どうしてここに?お酒を飲みに行ったんじゃなかったの?」
「目ー付けてた店が休みでよ、別の店探してるんだ。ひとみちゃん達も一緒に来るかい?」
「おいおい、折角の逢引を邪魔すんなよ。俺達邪魔者は、退散退散。」
「じゃぁな、王様。うまくやんな」
え゛!こいつら何を言っ、あ、ひとみ、顔が赤いぞ!
 「あ、その、ひとみ。あのな、この先に・・・」
別の店があるんだ!
「あ、ちょっとバァン。急に急いだりしてどうしたの?」
「あのな、ひとみあそこに・・・」
・・・あるけど、休みだ・・・
 「何?バァン。あそこに何があるの?」
そんな、ひとみの・・・見たかったのに・・・
「バァン。どう言う事?」
ひとみ?
「あそこって、あの公園みたいな林の事?」
いや違う。だけど・・・
「奇麗・・・」
「ああ・・・」
木が光っている・・・
 木の幹に光苔が生えているのか。
「バァン。これを私に見せたかったんだ」
違うんだ。でも、ひとみ・・・嬉しそうだな。
 そうだ、俺は、ひとみの喜ぶ顔が見たかったんだ。だから・・・
 「あのな、ひとみ」
「?」
「おまえ、前俺に言ってくれただろ。俺の力になりたいって」
「うん」
「俺だって、おまえの力になりたいと思ってる。その、おまえが、喜ぶような、だから・・・」
わ!ひとみ?!突然抱きついて来てどうしたんだ!!
「ありがとう、バァン」
ひとみ・・・あ、急に走り出すな!ひとみ!
「すごーい!きれー」
おい、ひとみ、どこ行くんだ。待てよ。
「ひとみ!」

 楽しそうにはしゃぐ二つの影は、ほんわりと光る林の中をいつまでも駆け廻っていた。


Scene. 3 猪突猛進(ダイ)

 メルルと飯だ!メルルと飯だ!!メルルと飯だ!!!
 オレアデスの整備を買って出たのは良かったんだけどさ、急ぐから食事は後なんて言われてちょっとだけ頭に来てたんだ。けど、メルルが飯持って来てくれるなら話は別さぁ。ドライデンのおっさん、粋な計らいしてくれるじゃん。
 「あーあ、なんで私があんたなんかのために・・・」
ん?メルル、ふてくされてる?
「何、大きなため息ついてんだ?」
俺がこんなに喜んでるのに。
「私だって、バァン様と一緒に夜の街を歩きたかったのに〜」
「お前、本当にあの王様の事好きなんだな」
「あら、あんた今頃気付いたの?」
「いや。最初っからわかってたけど、ひとみって女が付いてるじゃん」
だいたいあの王様、メルルの事は妹位にしか思ってないじゃん。
「・・・私、やっぱりあんたの事、嫌いだわ」
なんでだ?俺は好きだぜ、メルルの事。
 「じゃ、確かに届けたわよ」
おい、メルルもう行くのか。
「待てよ。飯食い終わるまで居てくれないのか?」
「お生憎様。明日の朝ご飯の仕込みがあるから忙しいの!」
え?!それって!!
「明日の朝飯は、メルルの手作りなのか?!」
「そうだけど」
ィヤッホー!!
「クルゼードのお食事の用意は私がやってるんだもん」
そうなのか。ああ、毎日メルルの手料理が食べられるなんて、なんて幸せなんだ、俺!
「わかった!俺、すっごく楽しみにしてるからな!!」
 なんだメルル、また変な顔して。でも、その顔も可愛いぞ。
 あ、そうだ。昼間買ったペンダント。
「メルル。これやっぱり受け取ってくれ」
「いらないって言ったでしょ」
「でも、折角メルルの為に買ったんだからさ、これ。それに、飯のお礼だ」
「?」
「これからさ、俺、ずっとメルルに飯作ってもらうんだろ。だからそのお礼だと思って受け取ってくれよ」
・・・やっぱりだめか?
 わっ。受け取ってくれるのか。
「そういう事なら受け取っても良いわ。・・・奇麗だし」
「そうか!俺、嬉しいぞ!」
やったー、メルル!俺、ずっとお前の事、守ってやるからな!!

 格納庫で盛り上がっている少年と盛り下がっている少女。二人のテンションは足して2で割れば丁度良いなと、見回りに来たガデスは思った。


Scene. 4 独立独歩(ジャジュカ)

 おや?あれはファーネリア王とひとみ。二人で何処に行くのだ?そう言えばこの先に光苔の林があったな。夜はとても奇麗な所だが・・・ふふっ。いや、無粋な事は考えまい。
 「すまないが、その服も見せてもらえないか?ああ、ピンクのじゃなくてパウダーブルーの」
そうだ、服だけでなく肌着も揃えておいてやらなくてはな。セレナを連れ戻しても代えの服がなくてはいかん。

 困惑する店員を他所に平然と女物の服を物色するジャジュカ。
 そこまで尽くす、その君の献身がアレンに不評を買っているのかもしれないぞ。

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