*ACT7とACT8の狭間で* (バァンがエスカフローネを動かした直後のお話です)
「ひとみ、動かすから離れてろ。」
バァンは、血の契約を済ませると、すぐにエスカフローネを起動させた。
ゆっくりと立ち上がるエスカフローネの機体は、日の光を受けて、きらきらと真珠の様な輝きを放った。ひとみは、その巨大で美しい姿にしばし見とれたが、その足元を見て、悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁぁぁー!いやぁぁぁぁぁぁぁーー!!」 「ひとみ!どうした!」
あわてて操演宮から飛び出したバァンは、ひとみが指差す先、たった今までエスカフローネが膝を着いていた場所を見た。そこには、むき出しになった地面の上に人の手のひら大ほどもある黒い物体が多数うごめいていた。
「なんだ、『だんごむし』じゃないか。」
バァンは呆れたように言うと、どこから出してきたのか、バケツと雑巾を持って、エスカフローネの膝についた泥を落とし始めた。
「これ、『だんごむし』?」
地面をわらわらと這い回っているその虫は、サイズを無視すればたしかに『だんごむし』だ。
「なんか・・・おっきな、ミミズも、いるみたいね・・・。」
ふるえる声でそう言うひとみに向かって、バァンは雑巾がけをしながら事も無げに言った。
「ああ、ここいらのは、良く太ってて美味いぞ。『だんごむし』の方は、メルルの好物だしな。」
「hっ・・・」
―おかあさ〜ん。私、やっぱり、帰るぅ・・・。
折角会えたんだから、少しの間でも良いからバァンの傍にいたい。そう思ってガイアに残ったひとみに、ほんの一瞬、バァンの傍にいるの、も、いいやと、思わせた一件だった。 *そうそう。タイトルは、『でかい岩どけると必ずだんごむし』だ。 |