天空のエスカフローネ 〜infinite〜 |
ACT.3 ペンダント |
「じゃ悪いけど、あと、ゆかりに頼むね。では、天野先輩失礼します!」 ひとみは、駅前のポストに写真の入った封筒の束を押し込んだ後、天野に大きく頭を下げ、ゆかりに手を振りながらホームに滑り込んできた電車に向かって走り去って行った。 「ひとみー。また電話するね〜。」 ゆかりの言葉に振り向き様、にこっと笑って、ひとみは電車に乗り込んだ。動き出した電車の窓越しに手を振るひとみに手を振り返して応えながら、ゆかりはぽつんとつぶやいた。 「もう3年だね。」 何を言っているのかいま一つわかりかねて言葉を紡げない天野に向かって、ゆかりは悲しそうに言った。 「ひとみが、ガイアって所から帰ってきて、3年たったのよ。ひとみ、今だにあっちの世界の子の事想ってる。今日だってそう。ずっとずっと想ってる。・・・私が、天野先輩と一緒にならなければ、もしかしたら、ひとみは・・・。」 「ゆかり」 天野がゆかりの言葉をやさしく制した。 「ゆかりは神崎の親友だろう。神崎を、神崎の強さを、信じるんだ。」 タタン、タタン。タタン、タタン。タタン・・・
ひとみが家の近くの駅のホームに降り立った時にはもう日が沈んでいたが、夕日の残光をあてにしてか、街頭はまだ灯っていなかった。住宅街の中にある無人駅にしては、今日は珍しく人影がない。ひとみは、のろのろと改札口に向かって歩き出した。数歩も行かないうちに、ひとみの視線の先、改札口から、数人の人影が出てくるのが見えた。その一つにまとまった人影は、ひとみの行く手を阻むように狭いホームに横並びになって立ち止まった。不安になって立ち止まり、一歩後退したひとみを追うように、人影の一部が前進した。茜色と濃紺が競いあう空をバックにしたその人物の顔はよく見えなかったが、その手に握られた物は薄闇の中でもはっきりと見る事が出来た。
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