鉄道模型の小型レイアウト製作のススメ

小型レイアウトの製作についての私の考えです。
最近、レイアウト製作に関心が出てきたというあなたは是非ご一読を。
あなたも、拡張性を持った「ユニット式レイアウト」にチャレンジしませんか?
Nゲージを基本に書いていますがHOnも同じです。Zの方は寸法を(150/220)して読んでくださいね。

●私の発見
 日本の鉄道模型ファン、特にNゲージャーの方の多くは、車両工作とコレクションを主な愉しみにしている方が多いですが、私は鉄道模型は「走ってなんぼ」、やはり運転を愉しみたいと思っています。
 運転を愉しむ方でも、その多くがフロアレイアウトか、情景無しのベニヤ合板に線路を固定している方が多いようです。しかし、サイズが大きくてもフロア運転や、ベニヤ平原の運転ではどうしても面白みに欠けるのではないかと感じます。

 レイアウトというと、大きなものが本格的、小さなものは入門用か、あるいは、鑑賞目的のジオラマ派のためのものと思われがちですが、はたしてそうでしょうか?
 運転を愉しむためには大型レイアウトが必須であると思われる方が多いですが、ほんとうにそうなんでしょうか?

 このホームページに紹介したHOnやNゲージの小型レイアウトは私が初めて取組んだジオラマ付きレイアウトです。そして、これらの製作を通じて感じた事は、必ずしも大型レイアウトが小型レイアウトに勝るものでは無いということでした。
 むしろ、小型レイアウトの方が走りを愉しめることも多い のではないかと感じたのです。


●Nゲージにおける600mm×900mmの可能性
 例えばNゲージを例にした場合、長編成の貨物列車や首都圏の電車など、中〜長編成の列車を運転する場合、最低でも定尺の900mm×1800mmが必要で、600mm×900mmという大きさでは物理的に無理があります。600mm×900mmでは、20m級で1〜3輛、2軸貨車の編成でも機関車+4〜5輛程度が現実的な編成になります。
 この時点で早々と600mm×900mmはダメと判断し、興味の対象から除外される方が多いようです。

 たとえば、600mm×900mmのボードに展開できる大きさの小レイアウトをフロア上やボード上に仮組して運転してみてもあまり楽しくありません。いざ、ジオラマ付きレイアウトに挑戦しようとして600mm×900mmのボードにレールを仮固定して試運転を行なってみても、そのつまらなさに意気消沈し、や〜めたとなってしまうくらい小さく、つまらなく感じます。走行音だって、「ゴ〜〜〜ッ」っと響き、やる気を無くしてしまうこと請け合いなのです。普通はこの時点でやる気が失せます。
 確かに情景がないと、目先でエンドレスをくるくる回るプラレール(失礼)のようで、じっとながめて鑑賞するには人並外れた想像力が必要と思われます。

 ところがです、そこにある程度の情景、ジオラマがあると臨場感、広がり、運転の楽しさが想像以上に大きく変化するのです。
 ジオラマによるスペースの広がり効果は、ほんとうに不思議なくらい大きいものなのです。それは、このホームページで紹介しているいくつかの写真と、フロア上の線路にそのまま置かれた車両との対比でも一目瞭然です。ポイントレール(ターンアウトレール)無しの、単純な小さな楕円エンドレスであっても、ジオラマを構築することで実感が大きく増して、運転の愉しみが何倍にも膨らむのです。
 レイアウトの大きさ、複雑さよりも、ジオラマの有無のほうが重要だと言ってもいいでしょう。  走行音だってジオラマによってかなりのレベルで低下します。スポンジ道床もコルク道床も不要。プラスチック道床の直付けでも大丈夫です。
 
 ジオラマ付きのNゲージの600mm×900mmレイアウトは、ジオラマ無しの900mm×1800mmをはるかに超える広がり、雰囲気を感じられます。
 
 「そんなこと言ったって、やはり長編成の列車が運転できないのは致命傷だ」との声が聞こえてきそうです。

 そこで、古くからNゲージでよく採用されるのが、600mm×900mmのレイアウトを基本にしてレイアウトを拡張できるようにする構成です。
 600mm×900mmのボードで準モジュール形式として製作し、大きなレイアウトにしたい場合は、レールをボードの外側に拡張して運転します。準モジュール式というのも変なので、ここでは「ユニット式レイアウト」と呼ぶことにします。
 ユニット式レイアウトは基本となる小型レイアウトを用意して、必要に応じて拡張ユニットを増設するやり方です。それ単独での運転の他、拡張ユニットの増設で変化が愉しめます。
 拡張ユニットは、別途、レイアウトボードに製作するほかに、橋脚を用いて勾配を介してフロアレイアウトへ展開することだってできます。同じ600mm×900mmをひとつ、またひとつと増設して拡張することもできます。
 何故か、我々日本人にとって「拡張性」というのは殺し文句のようで、この気掛かりを解決できるわけです。
 
 最近はNゲージでもディテールは素晴らしく、20cm〜30cmでの至近距離での鑑賞に十分耐えうるものです。フロアレイアウトでも、結局はかぶりつきで走行車輌をながめると言うケースが多いのです。
 車両の雰囲気を感じるのに目の届く範囲はせいぜい1m四方で、至近距離ではその数分の一になります。ジオラマは、最低限その大きさでも良いのです。
 言い換えれば、フロアレイアウトの一部に情景付きモジュールを組み込んだだけでも効果は十分大きいと言うことになります。
 しかし、モジュールでは用途が限られることもあるので、どうせなら、以下の図のように単体で運転が愉しめ、かつ制作に負担のない600mm×900mmのエンドレスレイアウトを基本にすればいいのではないかと思うわけです。


「ユニット式レイアウト」の増設例

 フロアに拡張しエンドレスを2重に


 ヤードの拡張モジュールを製作して追加する


 同一サイズのモジュールや、直線モジュールを追加して拡張


 フロアに拡張して長編成対応?


 拡張して長編成対応してみたところ
 延長部分の直線レールは、情景付直線モジュールを製作して置き換えるという手も考えられる
 情景付直線モジュールはいろいろ製作して気分によって交換してもいいかも
 後々の愉しみをキープできるのは小型レイアウトならではのもの



●Nゲージにおける600mm×900mmのメリット
600mm×900mmのジオラマ付きレイアウトには以下の様なメリットがあります。

1. 維持、管理、収納が容易
 固定式レイアウトは、思いのほかレールクリーニングや、情景の清掃が大変です。
 しかし、600mm×900mm程度ならずいぶん楽ですし、収納はタンスの上に乗せることだってできます。
 標準的なタンスの奥行きって60cmなんです。知ってました?

 タンスの上なら、以下の左の写真のように収納できます。天井近くで比較的ホコリも少ないのです。
 長期の保管には新聞紙でも被せておけばよいでしょう。
 また、右の写真のように奥行き45cm程度の壁収納(クローゼット)に立てかけて収納する方法もあります。
 立てかけ収納は、場所をとらないとてもお勧めの収納方法です。
 


 実は、この右の写真は、marklin_Zがらみでお知り合いの ななつぼし☆さん からお借りしたものです。
 畳一枚分ものZゲージレイアウトで重さも20kg超だそうです。
 要するに、造り付けにしなければ(デスクトップ型なら)このような収納も可能であり、
 日常生活をする上で、目に付かないようにすることもできると言うことです。
 もちろん、600mm×900mm程度の立てかけ収納なら、出し入れを含めてかなり楽になるでしょう。

2. 持ち運びが可能で、写真撮影も屋外でできる
 はたして持ち運びの必要性があるのかという事もありますが、写真撮影や移転、売却等で大きなメリットとなります。
 何せ小さいと車にも積めて何かとハンドリングがいいのです。

3. 初めてレイアウト製作にトライする際でも、最後までやり通せる大きさ
 普通のサラリーマンが週末にコツコツ続けれるという事が、どれだけ重要なことか...。

4. 長編成には拡張で対応可能
 中型〜大型の本格的な固定式レイアウトでは意外と拡張が大変なんです。
 ここでいうユニット式レイアウトの概念は持ち込めません。
 フレキシブルな拡張の可能性については小型の方がはるかに勝っています。
 最初に拡張を考慮した線路配置にさえしておけば、後でボードを継ぎ足して延長し、より大きな固定式レイアウトに拡張することも容易です。
 要するに、できあがってからも継続して手軽に愉しめるのは小型レイアウトです。

5. 市販のレイアウトボードが利用可能で、自作する際でも大きさが手ごろ
 先ず最初のハードルとなる、土台、ボード製作が購入でまかなえるというのは大変いい事です。
 また、600mm×900mm以下なら持ち運びができるので、特別に作業部屋を確保せず、作業に適した(そこでやりたい)場所に持ち運んで制作ができます。
 収納もタンスの上を1か所確保できればOKです。

6.製作費がリーズナブル
 異論はないですよね?いちばん高いのはポイントレールだったりします。

7.全方向鑑賞が可能
 たとえ定尺(900mm×1800mm)でも、ジオラマ付きのレイアウトではシングルベッドに近いサイズとなり、部屋の壁面に固定することが多くなります。
 よって、運転の際に眺める方向というものが自動的に決まってしまいます。
 一方、600mm×900mmでは、どの方向からでも自由に鑑賞が可能で、常に違った角度からの眺めを愉しめます。
 いつも同じ方向から眺めていると、ある程度の広いサイズがあっても飽きがきやすいものです。
 また、鑑賞は目線の高さに車両が来るのが効果的。フロアレイアウトではどうしても上からの眺めになりますが、600mm×900mmでは比較的容易にテーブルなどに載せて目線を最適にできるのです。

 以上のように、小型の「ユニット式レイアウト」は決して妥協の産物ではなく、より愉しめるやり方とも言えるのです。

●私が伝えたいこと
 「ジオラマ付きレイアウトには挑戦したいと思っている。600mm×900mmなら何とかなりそうだが、長編成が走らせない。
  かといって定尺(900mm×1800mm)以上では根気も無いし場所も無い」 
 という方が結構多いのではないでしょうか?
  
 私はそういった方々には是非とも600mm×900mmを基本にした「ユニット式レイアウト」の製作をお勧めしたかったのです。先ずはスタートしてみると言うこと。拡張できれば後の心配は要りません。そして、自分の手元で、ジオラマ付きレイアウトによる運転の愉しみを感じていただきたいと思います。


●いざ造るとなったら

 実際に製作しようということになったら、以下の点を参考にしてみてください

1.フラットトップ
 小型レイアウトで情景を設けるとスケールスピードが速く感じられ、ある程度のスロー運転が基本になります。すなわち、走行がスムースに行くような配慮を十分にすべきで、最初は急な勾配と複雑な工作は避けた方が懸命です。したがって、レール部分はフラットトップタイプをお勧めします。一方、地面の起伏、山地等については起伏を大きくして変化を付けたほうが良いと思います。

2.エンドレス
 600mm×900mmのレイアウト単体でも小編成の運転が楽しめる様にエンドレスを基本として、1〜2か所に拡張用の引き出しレールを設けるタイプが良いと思います。

3.情景
 定説通り、ストラクチャーにせよ樹木にせよ、できるだけ多く配置して、ある程度「車両を隠す」工夫が必要です。平原にぽつぽつと家や樹が配置されている程度では、フロアレイアウトとの差異はありません。トンネルを設けるか、中央に山を造ったりストラクチャーを多く配置するなどして情景を分断するのが効果的です。車両がエンドレスの向こう側へ行ったときに、ある程度隠れるような構成にすることで、小型であるハンディを大幅にカバーできると思います。

4.電気配線
 後の拡張を考えた場合、拡張後のレイアウト、運転形態を考慮したギャップを仕込んでおくことが必要です。このあたりは、自分であれこれ考えるか、電気配線が苦手な方の場合は行きつけの模型屋さんに相談するなどして検討しないといけません。後で切り離すよりは繋ぐほうが簡単なので、迷ったときは、ギャップを入れてフィーダを付けておけば良いかなと思います。

5.ジオラマ付きレイアウト製作の基本
 線路を固定し情景を考える前に、先ず時代を決めましょう。その次に季節、また、温暖な土地か寒冷地かなどもイメージすることが大切です。そして、電化か非電化か。非電化用のトンネルポータルを使用して後に電化にするのは骨が折れます。(とはいっても、トンネルポータルの交換なんて想像以上に楽ですけどね)
 一方、非電化区間のトンネルは建築限界ぎりぎりのほうが雰囲気がでると思います。
 それと、忘れがちですが東西南北。これは、地形の起伏を付ける前に考慮したほうが良いかも知れません。

6.やりとげるには
 細く長くが基本となります。私のように山間部や平野など土の地面がある場合はコースターフをまけば後は大丈夫です。パウダーだけではおもちゃの域を超えれなかったものが、このコースターフまき作業でグッと雰囲気が上昇します。
 その後は勝手に作業が進むでしょう。
 道床付きレールを使い、道床ごと、つや消しのフラットアース色等で塗装すれば、バラストまきをしなくても意外なほど実感が出ます。バラストをきっちりまいて未塗装よりもかえって実感があるほどです。
バラストまきはレイアウト製作において一つの壁になることは事実です。面倒な人はバラストまきは省略してもよいでしょう。でも、フラットアース等での塗装はしましょう。


 とりあえず、小さなものから始めてみませんか?
 レイアウトは、その大小にかかわらず欲張りは禁物です
 御健闘をお祈りします。


 2011年のOsaka Z Workshopで発表した資料「小型レイアウト制作のススメ」は本サイトの超縮刷版です。
 こちらに置いてありますのでご参考まで!


  「小型レイアウト制作のススメ」(11年10月1日、2.1MB、PDFファイル)のダウンロード


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