手取層群の観察    2004年10月製作

クラドフレビス.SP 白峰村桑島 ホソバ・タチシノブダマシ 白峰村桑島 イチョウ.SP  白峰村桑島
エダワカレシダ  白峰村桑島 1989年 エダワカレシダ  白峰村桑島 1989年 ヤナギバ・サヤガタソテツ美山町小和清水
          美山町小和清水 美山町小和清水 1991年 タニシ.SP  福井県和泉村後野
テトリシジミ       白峰村桑島 オルソコーツァイト 白峰村桑島 小和清水砂岩 美山町小和清水    

はじめに  

 手取層群調査はじめに 手取層群の研究は古く明治の初頭ドイツ人J.Reinによる後期ジュラ紀2植物群の研究にさかのぼり、近年は福井県が中期事業実施計画に「福井県恐竜化石調査事業」に取り上げられ、肉食恐竜3科,草食恐竜7科の骨や歯を発見している。恐竜の他にも鳥の足跡化石、魚類、カメ、ワニなどの脊椎動物が確認している。脊椎動物以外ではシジミ、タニシなどの汽水性の貝化石や豊富な植物化石が報告されている。 このような今までになかったような大規模な研究成果があるにもかかわらず、地学教材としては活用されないで恐竜をはじめとする古生物の学習は外国の研究成果が利用されてきた。 そこでこれらの研究成果を活用して日本産恐竜の教材化をめざし、白山周辺の手取湖が存在したと考えられる中生代ジュラ紀後期から白亜紀にかけての動植物の古環境を再現する試みを行い、これらを小学生から高校生までの発達段階に応じた教材として活用することを念頭においた調査研究を積み重ねたい。 

手取層群 手取層群は福井、石川、富山、岐阜、長野に点在し、各県の県境そびえる白山、立山山麓に分布している。時代はジュラ紀〜白亜紀にかけて堆積したと考えられている。手取層群は九頭竜、石徹白、赤岩の3つの亜層群に分けられます。九頭竜亜層群 模式地は福井県大野郡和泉村一帯で神通川上流、飛騨古川、庄川上流、足羽川上流に分布し、主に海生層でジュラ紀中〜後期のアンモナイトを採集することができます。石徹白亜層群 模式地は福井県大野郡和泉村の石徹白川流域で手取層群全域に分布しています。全体的に汽水成でジジミやカキなどの貝化石や植物化石を採集することができます。 赤岩亜層群 模式地は石川県石川郡白峰村の手取川上流域で手取層群全域に分布しています。淡水〜汽水成層でトリゴニオイデスなどのドブ貝の仲間やタニシ、カワニナなどの淡水性の貝化石をはじめ豊富な植物化石を採集することができます。  

調査確認できたこと福井県足羽郡美山町小和清水 中生代ジュラ紀後期  1億4000万年前 この調査地点は1969年にアスワテドリリュウが発見されたところで、産出層準は 九頭竜亜層群の境寺互層です。昔から"小和清水石”と呼ばれていたアルコース質砂岩の石切場があったところで砂岩の中からは大陸起源のオルソコーツアイト礫やゼノキシロン(Xenoxylon)属の化石をさがすことができます。 黒色炭質頁岩と茶褐色細粒砂岩とが互層をなしていて、植物化石を多く含んでいます。 ヤナギバ・サヤガタソテツ Podozamites lanceolatus LINDL オニキオプシス Onychiopsis elongata ポトザミテス Podozamites reinii クラドフレビス Cladophlebis ゼノキシロン Xenoxylon ニツポン・ニイルセンソテツ Nilssonia nipponensis アサクボミ・オビシダ Taeniopteris emarginata

福井県大野郡和泉村後野 中生代 1億3000万年前 この調査地点は獣脚類の足跡化石や日本最古の鳥類の足跡化石をリップルマークに残っていたところで、産出層準は石徹白亜層群上部の伊月頁岩層です。石川県石川郡白峰村桑島の恐竜化石産出層準と同じと考えられています。 シジミ Corbicula sp タニシ Pila sp カワニナ Melanoides sp ヒルギシジミ Polymesoda sp石川県石川郡白峰村桑島 中生代白亜期 1億3000万年前 この調査地点は明治の初頭ドイツ人J.Reinが植物化石を調査し、昭和32年には国の特別記念物に指定されました。また、昭和60年には高校生松田亜規さんがメガロサウルスの歯を発見し、手取層群から最初の恐竜化石が発見されました。産出層準は石徹白亜層群桑島層です。 ユニオUnio ogamigoensis シジミ Corbicula sp オニキオプシス Onychiopsis elongata ホソバ・タチシノブダマシ クラドフレビス Cladophlebis エダワカレシダ アサクボミ・オビシダ Taeniopteris emarginata ナトホルスト・イチョウモドキGinkgoidium nathorsti YOKOYAMA ビリシア Genus Birisia   ゲッペルト・クサビシダ Sphenopteris goepperti DUNKER

手取層群石徹白亜層郡桑島互層の動物群白峰恐竜動物群

白亜期前期(約1億3000万年前) 白亜期前期(1億2000万年前)

メガロサウルス カガリュウ アロサウルス カツヤマリュウ Megalosauridae gen.& sp.indet Allosauridae gen.& sp.indet 竜盤目 獣脚類 竜盤目 獣脚類全長 9m 全長 6〜7m ヨーロッパ 南アメリカ アジア アフリカ 北アメリカ アフリカ オ-ストラリア 歯 4.2cm 2本 尺骨13.1cm 尾椎骨13.0cm

デップロドクス ハクサンリユウ イグアノドン フクイリュウ Diplodocidae gen.& sp.indet Iguanodondidae gen & sp.indet 竜盤目 竜脚類 鳥盤目 鳥脚類全長 27m 全長 6〜8m アジア 北アメリカ アフリカ ヨーロッパ モンゴル 歯 2.1cm 2本 歯 2.2cm 下顎骨

鳥盤目のグループ シマリュウ プシッタコサウルス タキナミリュウ Ornithischia family indet Psittacosaurid gen.& sp.indet 鳥盤目 角竜亜目 ケラトプス亜目全長 5〜9m 全長 2m歯 2cm 6本 中国 西ドイツ モンゴル シベリア 大腿骨3.7cm 脛骨8.6cm 肉食恐竜の足跡 クワジマリュウ 37cm カマラサウルス スギヤマリュウ Camarasauridae gen.& sp.indet 草食恐竜の足跡 竜盤目 竜脚類 シラルネリュウ 43cm 17cm  全長 12〜15m 北アメリカ 歯 2.8cm 3本

ドロマエオサウルス キタダニリュウ Dromaeosuridae gen.& sp.indet 竜盤目 獣脚類 全長 2〜3m 北アメリカ 歯 2.2cm 

手取層群赤岩亜層群北谷互層の動物群勝山恐竜動物群

ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写東,1991 東,1991

大道谷互層 北谷互層 赤岩砂岩層 大倉礫岩層 伊月頁岩層 赤 石 九大淵礫岩 葦谷互層 山原礫岩層 山原坂互層 貝皿頁岩層 徹栃餅山砂岩層  大井谷互層 下山礫岩層 岩 白 頭 亜 A 礫岩 B 礫質砂岩 C 砂岩      足羽 亜 層 竜 D 頁岩 E 凝灰岩 層群 群 層 亜手取層群の総合柱上図 群 群

ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写東,1991 東,1991

ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写 ヒサクニヒコより改写東,1991 東,1991

九頭竜亜層群 石徹白亜層群 赤岩亜層群

福井県美山町 福井県勝山市 福井県大野郡  石川県石川郡 岐阜県大野郡 小和清水 北谷町杉山   和泉村後野  白峰村桑島   白川村

教材化 《 大陸の分布は今と大きく違っていた。 》

 アジア大陸東部はシベリア、中国北部(中朝地鬼)、中国南部(揚子地鬼 )、の3つの主要ブロックからできていますが、古磁気のデータから白亜紀 には緯度的に同じ位置にあったことがわかっています。 日本列島は当時アジア大陸の東縁で大陸と陸地でつながっていて日本海は 存在しなかった。 手取層群の恐竜は韓国南部ゲオンサン盆地のジンドン層に存在する白亜紀前期の化石プシッタコサウルス類翼竜動物群に類似している。東アジアの地方的動物群であったと考えられる。
1.勝山北谷で発見されたカマラサウルス(スギヤマリュウ)の3本の歯は中国山東省メンイン層群のエウヘロプスに近いと考えられている。

2.勝山北谷で発見されたプシッタコサウルス(エチゼンリュウ)はモンゴルでしか産出していない。

3.手取層群の地層中には大陸起源のオルソコ−ツァイト礫が多量に存在する。 《 肉食恐竜にかまれた骨 》勝山北谷で発見された恐竜の骨の中には肉食  恐竜にかまれたと考えられる傷跡が見つかった。

 

《 手取の森の様子 》

 中生代の日本列島はテ−チス海の一部でありアンモナイト、イノセラムス、や三角貝の住んでいました。1億3000万年前になると北方から入り込んでいた内湾の環境が変化して海が退き、汽水や淡水の湖が広がるようになりました。 一方陸地では白山周辺と立山周辺に盆地が形成され周辺部には断層崖があり、山地からは大きな川が流れ込み、大陸起源のオルソコ−ツァイト礫が大量に供給されるとともに、砂と泥が互層になって堆積していきました。 現在の北陸地方に広くひろがっていた手取湖にはドブ貝の仲間、タニシ、カワニナ、シジミが生息していました。魚類やワニ類も存在し、鳥類も岸辺で羽を休めていました。湖の周辺部ではオニオプシスやフラドフレビスなどのシダ植物が繁茂しねイチョウやナギなどの裸子植物が優勢をきわめ、アサクボミ・オビシダなどの被子植物の仲間も生息を始めていました。直径が1.5mもある珪化木「ゼノサイキシロン」と呼ばれているものも確認されていますから豊かな森林が形成されていたと考えられます。ただし現在の熱帯のジャングルのようなものではなく、温帯的な要素を持った植物層で、日差しが地面に届くような森林であったと考えられています。 このような豊富な植物にささえられて恐竜たちは生存することができました。イグアノドン、カマラサウルス、プロトケラトフ゜ス、デップロドクスなどの草食恐竜7科と、メガロサウルス、アロサウルス、ドロマエオサウルスの肉食恐竜3科が確認されています。最新情報 福井県立博物館が1989年より行っている恐竜化石の発掘調査は今年で4年目を迎えています。後2回の発掘が予定されていていますから今までに発掘された結果とあわせて、研究成果が期待できます。 1990年までの調査でイグアナドン科の上顎骨以外にも肋骨、肩甲骨、大腿骨、尾椎骨などが発見されていて、同一個体のものではありませんが、イグアナドン科の全身骨格標本の復元が可能になってきたそうです。

ふくいミュージアムNo.20 1991. 9.30よりまとめ 桑島の化石壁は国の特別天然記念物に指定されているため文化庁の許可なく観察採集することはできません。和泉村の露頭は和泉村の条令のため和泉村教育委員会の許可なく採集することはできません。小和清水の露頭はドライブイン建設のためセメントでおおわれて観察・採集することができなくなりました。そのため河原の石を採集しているのですが、転石でははっきりした層準がどこだということを特定することはできませんでした。 新指導要領では「生物の進化」が取り上げられ「生物の歴史と化石」を教えることになっていますが、これらの項目の中で日本産出の恐竜についてもふれたいものです。 また、プレートテクトニクスについての記述も一層明確な扱いになっていますが、手取層群中の大陸起源のオルソコ−ツァイト礫が多量に存在することなどにも目を向け、地学現象に興味関心のあり、科学的に物事を考える生徒を育てたいと考えています。

手取層群で見つかった化石
1874年M7 ドイツ人J.Reinが白峰村で植物化石を採集してジュの植物化石であることを世界に紹介した。日本ではじめて化石によって地質時代を明らかにした。
1966年s42 アスワテドリリュウ (Tedorosaurus asuwaensis) ハ虫類トカゲ亜目 九頭竜亜層群        福井県美山町小和清水
1975年s50 昆虫の羽          石川県石川郡白峰村
1978年s53 カメの甲羅   石川県石川郡白峰村
1982年s57 ワニの全身骨格  勝山市北谷町
1982年s57 メガロサウルス科の歯     石川県石川郡白峰村 (カガリュウ)
1986年s61 獣脚類の足跡化石       石川県石川郡白峰村
1987年s62 イグアノドン科(シラミネリュウ)の足跡化石   石川県石川郡白峰村
1987年s62 鳥盤目の歯(シマリュウ)
1987年s62 硬鱗魚類のアゴとウロコ   石川県石川郡白峰村
1987年s62 鳥の足跡化石   福井県大野郡和泉村
1987年S62 ヒプシロフォドンの歯 岐阜県庄川村尾上郷川
1988年S63 恐竜の卵 岐阜県庄川村尾上郷川
1988年s63 コエルロサウルス下目の歯  勝山市北谷町 (キタダニリュウ)
1988年S63 プシッタコサウルス科 勝山市北谷町 の大腿骨(タキナミリュウ)
1989年H1 福井県恐竜化石調査事業 はじまる
1989年H1 アロサウルスの尺骨   勝山市北谷町 (カツヤマリュウ)
1989年H1 カマラサウルス科の歯 勝山市北谷町 (スギヤマリュウ) アロサウルス科の尾椎骨 勝山市北谷町 (カツヤマリュウ) イグアナドン科の歯 勝山市北谷町 (フクイリュウ) プロトケラトプス科 勝山市北谷町 (エチゼンリュウ) メガロサウルス科 勝山市北谷町 (ツチクラリュウ) イグアナドン科の足跡化 岐阜県白川村 (フクイリュウ)
1989年H1 ディプロドクス科 (ハクサンリュウ)の歯    石川県石川郡白峰村  
1990年H2 ステゴサウルス科の骨   勝山市北谷町  
1990年H2 肉食の獣脚類の足跡化石   福井県大野郡和泉村  
1991年H3 イグアナドン科3個   鳥盤目15個 肉食の獣脚類3個 足跡化石 大型の植物食の竜脚類1個 鳥類14個 勝山市北谷町 恐竜以外のハ虫類8個 両生類50個 イグアノドンの上顎骨 勝山市北谷町

参考文献
石川県教育委員会 1978.3  手取川流域の手取統珪化木産地調査報告書 野義緒 1978.10 日曜の地学6 北陸の地質をめぐつて平凡社 1989.11 アニマ11.1989.No.206 日本の恐竜時代東  洋一 1990.4 恐竜時代 −日本と中国− 福井県立博物館ヒサクニヒコ 1990.5 日本恐竜図鑑 岩崎書店 KYOIKUSHA 1990.8. Newton別冊恐竜年代記長谷川善和 1990.11. 日本にも恐竜がいた伊地知英信東 洋一  1991.4 手取層群からの白亜期前期の恐竜動物群福井新聞