久美浜箱石浜の砂鉄の観察

         ハコイシハマ         スナハマ   サテツ        
久美浜箱石海岸    砂浜に置かれたフェライト磁石 選別された砂鉄

海岸の砂鉄
 どものころ、砂場で磁石を使って砂鉄集めをした思い出がありませんか。磁石につくので、砂鉄は鉄くずのように思いますね。しかし、砂鉄が鉄くずであるとすれば、雨水にうたれれば、赤さびになってしまうはずです。また、砂鉄が鉄くずであればかなづちでたたく と薄く広がるはずですが、砂鉄は粉々に割れてしまいます。どうも砂鉄は鉄とは違う性質を持っているようです。

海岸で見つけた砂鉄
京都府久美浜町箱石海岸へ出かけた時、砂浜を歩いていると、バレーコートくらいの広さが黒い砂におおわれキラキラ輝いていました。太陽の光を受けたいへんきれいでした。この砂を調べてみると、びっくりするくらい重く、磁石にもくっつくので、砂鉄だとわかりました。さらに磁石で砂鉄と砂を分けてみると、半分くらいの割合で砂鉄が入っていました。日本海の荒波で重い砂鉄と軽い砂に分離され、海岸に打ち寄せられた砂鉄が砂浜にたまったものと思われます。砂鉄をルーペで観察すると、三角形をした黒い面が光っていることがわかります。さらに注意深く調べると、美しい正八面体の結晶を見つけることができます。実は砂鉄は、鉄と酸素の化合した磁鉄鉱という鉱物なので、これ以上さびることはありません。

砂鉄で遊ぶ
砂鉄と砂は磁石を使ってより分けます。砂を新聞紙の上で十分乾かし、サラサラの状態にします。大きめの磁石をビニール袋に入れて、砂に近づけると砂鉄だけを分けることができます。この作業をするだけでも砂鉄と砂の質感の違いに気づきます。砂鉄は黒々し、キラキラ輝きを持っています。一方砂には輝きがありません。砂鉄だけを袋に入れて持ってみると砂鉄の重さを実感することができます。普通の砂に比べてたいへん重いことに気がつきます。砂鉄を磁石につけると砂鉄が直線状にきれいに並びます。磁石が作る磁界を観察することができます。磁界は平面的なものでなく、立体的なものであることがわかります。いろいろな形の磁石を使うことによって、N極からS極に向かう磁力線を見ることができます。

砂鉄の源をさぐる!
波の力で箱石海岸に集められた砂鉄はどこからやってきたのでしょうか。海岸で見つけたため、海からやってきたように思われます。しかし、山に源があります。私たちが住んでいる大地から流れ出したものなのです。この砂鉄はマグマが冷えてできた岩石(カコウ岩、ゲンブ岩など)の中に磁鉄鉱と呼ばれる小さな粒として1〜2%含まれていたものなのです。これらのごく普通に分布する岩石は長い間の雨や風によってゆっくりと砕けていきます。そして、川の流れによって運ばれ、はるばる海にたどりついたのです。

砂鉄とのかかわり
日本では鉄鉱石があまり採石できないため、砂鉄を利用した独特な鉄づくりが行われてきました。農機具や刀づくりで発展し、「たたら法」と呼ばれています。「たたら法」は砂鉄と木炭を混ぜて燃やします。木炭が砂鉄から酸素を奪い、炉の底に鉄が残るという方法です。「たたら法」による鉄づくりは出雲地方(島根県)で盛んに行われ、大正十年ごろまで続けられましたが、鉄鉱石とコークスを使う西洋の方法に太刀打ちできず、現在ではほとんど行われていません。しかし、「たたら法」で作られた鉄は自然がより分けた純粋な砂鉄を原料にしたため、今でも世界最高の品質といわれています。私は箱石海岸で砂鉄を見つけましたが、他の砂浜でも比較的簡単に砂鉄を見つけることができます。あなたも海岸に出かけ黒い砂を探して、磁石を近づけてみませんか

【参考事項】
砂の主な成分二酸化ケイ素の密度は2.20〜2.65g/cm3で砂鉄のおもな成分酸化鉄の密度は5.1〜5.2g/cm3です。

京都パスカル 金剛晴彦