二上山自然観察 

火砕流堆積物の観察

       イシキリバ       サヌカイト          ガーネット
      石まくり石切場               サヌカイト                ガーネット       
       ドンヅルボー       カサイリュウ        マメイシ
      ドンヅルボー1993年       火砕流堆積物         火山豆石
2010.2.20 どんづるぼう 2010.2.20 どんづるぼう 1993年と比べると宅地化が進んでいる。
火砕流堆積物
火砕流堆積物 火山豆石
河原でパンニングをしているところ ガーネットが多く含まれる。
河原にサヌカイトが落ちている。 香芝市の二上山博物館

@ 石まくり石切り場の観察   2010年現在 観察不可能
 この観察地では柱状摂理を観察することができます。摂理とはマグマが固まるとき、体積が小さくなり、その時できるきれいな柱です。柱は冷やされた表面に対して垂直にたちます。また、この観察地では割れ口が貝殻のようなもようを残して割れる緻密で堅い石を探すことができます。ピカピカ光りませんが、ざらざらしたかんじで鈍く光っています。これは、古銅輝石という鉱物がたくさんはいっているためで、専門家は非顕晶質古銅輝石安山岩とよんでいます。この石は瀬戸内海沿岸に広く分布していて、香川県の昔の名前の讃岐にちなんでサヌカイトといわれています。黒曜石とならんで石器として利用され、近畿一円の遺跡からよくみつかります。また、この石は緻密なためたたくと良い音がするため、カンカン石ともよばれています。歩いて探しても見つかりますが、崖(大阪層群300万年〜 30万年前)の中にもサヌカイトがレキとしても含まれていますから崖の土の中を探してみるのも一つの方法です。また、サヌカイトよりツヤツヤ光る黒曜石に似た岩石を採集することができます。この石は松脂石(ピッチストーン)といいます。

A 二上層郡の基盤石と溶結凝灰岩の露頭の観察
  石まくり石切り場から北に舗装道路を歩くと、進行方向右手の露頭が花コウ岩になります。この地層は中生代のもので二上山が火山活動を始める前の地層です。さらに歩いて行くと、灰色の石で数o〜数pの黒いガラス質のレンズ形の模様がいっぱい入った岩石を観察することができます。火山活動で吹き出した火山灰が高温(数百度)のまま堆積し、火山灰はガラスにかわり、軽石はレンズ状にはいってできた溶結凝灰岩といっています。この地層は下部ドンヅルボー層といっています。

B石切場の観察   2010年現在 観察不可能  ガーネットは河原で観察することができます。
石切場の見学を行います。この石切場には垂直に走った見事な柱状節理を観察することができ、柱状節理のザクロ石クロウンモ安山岩の標本を採集します。この安山岩を詳しく観察すると、クロウンモが規則正しくならんでいます。これは液体状のマグマの中を個体のクロウンモが流れにもっとも逆らわない向きに流れて固まったようすで 「流理構造」と呼ばれています。このクロウンモの並び方を詳しく研究するとマグマの流れた様子を知ることができますが、この石切場は1500万年前の噴火口ではないかと考えられています。石切場からドンヅルボーに歩いて行く道の右手に川が流れています。この川の砂を注意深く観察すると赤い小さな粒を見つけることができます。これは安山岩の中に含まれていたガーネットで、サンドペーパーとして利用されていました。

Cドンヅルボー南部の観察
ドンヅルボー南部の傾斜のゆるやかな白い地層は粒がたいへんそろっています。このことから地層は火砕流によってできたのではないかと類推できます。谷底の地層より古いこととあわせて考えると、普賢岳でも火山活動が激しくなって火砕流が発生していますからつじつまが合います。この地層をくわしく観察すると急な崖をつくっているところとやや穏やかな斜面をつくっている崖があることに気がつきます。遠くの急な斜面の崖は一枚の地層の厚さが1m以上あり、地層をつくっている粒子の大きさが不揃いで、流紋岩の角礫を含み、火山灰や火山ガスが一気に水中に流れ込んで堆積したものだと考えられます。一方やや穏やかな崖の地層は一枚の地層の厚さは数十cm以下で流紋岩のレキやレンガ色の安山岩のレキを多く含み、地層の下の方に粗い粒子が多く、上の方は細かくなる級化構造を観察することができます。この地層は水底に運ばれて堆積したと考えられています。この観察地では直径数mmの球形の火山豆石を採集することができます。火山豆石は細粒な火山灰が空中に巻き上げられ、その噴煙の中に水滴があると火山灰の雨粒ができます。噴煙の中 をあがったり、下がったりしていると、火山豆石が火山灰のあられになることもあるそうです。

Dドンヅルボー谷底の観察
ドンヅルボーの中に入るとこんな地形が近畿地方にあったのかと思うような風景に出くわします。ドンヅルボーの谷の深さは6階建てビルの高さぐらいで約40mありました。地層は少なくみても5枚ぐらい確認する事ができ、流紋岩のレキや人の頭ぐらいあるレンガ色の安山岩のレキを含んでいる地層がありました。一つ一つの地層をくわしく観察すると、レキを含んでいる地層の粒はふぞろいで、その上に重なっている細かい凝灰岩の地層は粒がそろっている地層は緻密で侵食が進みにくく、粒の不揃いの地層は侵食がはげしく、差別侵食の地形を観察することができました。 これらの観察をもとに成因を考えてみると、粒の不揃いの地層は火砕流や土石流、泥流などによって堆積し、その後火山灰が堆積したことが、何度か繰り返されたことが想像できます。ドンヅルボーの中央の谷底には流紋岩からなる白っぽいレキと割れ口が光っている黒っぽいパーライトがあります。どちらも溶岩が水中に入ってできるものだそうです。黒いパーライトは地層の下部に多く、流紋岩のレキは南から北の方向に傾いていることがわかっています。これらの堆積物の堆積した時の温度は地層に含まれている磁鉄鉱の磁性を調べることでわかるのだそうですが、小さく見積もってドンヅルボー堆積時の温度は550度以上あったことがわかっています。雲仙普賢岳の溶岩ドームの温度も850度でしたから、ドンヅルボーの地層が堆積した時も850度ぐらいあったのかもしれません。

 これらのことからドンヅルボー堆積時のみとを想像してみると、流紋岩の溶岩ドームができて、その一部が水と接触した。パーライトの溶岩が先にこわれ流された。少なくても550度以上の火山灰と溶岩の破片が混じったものが一団となって流れ下った。この火砕流は溶岩ドームの重力による崩壊によるもので、「ブロック アンド アツュ フロー」というタイプのものです。1991年5月からの雲仙普賢岳の火砕流も同じタイプのものですから、1500万年前に大阪の地に恐ろしい火砕流が起こっていたことは確かです。 

金剛晴彦(京都バスカル) 
    参考文献 自然史ハイキング 地団研大阪支部