消込処理 31 | ![]() |
1.消込処理とは | ||
「消込処理」とは、帳簿上の債権・債務を個別に消去する処理を指します 具体的には、売掛金が決済条件通りに入金されたとき、買掛金や未払金を請求書通りに支払ったとき・・・その事実を記録する処理をいいます 例えば、売掛金であれば、売掛金を減少させ、入金口座の預金等を増加させます([借方]当座預金/[貸方]売掛金 の仕訳を起票する) 会計実務としては、どの売掛金の入金なのかを確定し、請求額と異なる入金があった場合は原因を調査し、その原因に応じた会計処理を行い(振込手数料の計上など)、約定通りの入金がなければ督促や貸倒処理の検討等を行います 「展開一番」で売掛金の消込処理を行う手順は、概ね以下のようなります 1.仕訳ファイルから消込処理する仕訳を抽出する................YY1005 No0911 売掛金/売上 2.抽出した仕訳の逆仕訳を指定した会計日で自動生成する........YY1210 No0911 売上/売掛金 3.逆仕訳の借方科目を所定の科目に置き換える..................YY1210 No0911 当座預金/売掛金 4.伝票番号などを自動計算させ仕訳を完成させる................YY1210 No1328 当座預金/売掛金 5.消込処理の仕訳を仕訳ファイルに追加する |
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2.消込処理を行う仕訳を抽出する | ||
ここでは、買掛金の支払いを例にとって説明します 買掛金は支払日等が決まっているのが一般です、例えば、月末締め翌月20日振込など この例では、支払月において、前月に計上した買掛金が支払い対象となります 仕訳ファイル(XJ_hhhh)から、「経過月」をキーとして前月の仕訳を抽出し(「Sel9MA1XJ2WXJ_SetV(#232)」スクリプトを利用)、 さらにその中から勘定科目Codeが買掛金の仕訳を抽出します(「Sel12WXJ(#170)」スクリプトを利用) ここでは、抽出条件に注意して下さい、買掛金計上の仕訳だけを抽出するため、上記スクリプトのパラメタのキーに貸借識別文字を含める必要があります・・・具体的には、Sel12WXJ("J_CA",2100,2100) とします(2100は買掛金の科目Codeです) なお、買掛金の支払いと訂正を区別するため、訂正の仕訳は貸方のマイナスで処理しておくとその後の処理が楽になります 上記スクリプトを連続して実行するユーザスクリプトを作成・保存し、利用するときにパラメタだけを変更すれば効率的に作業できます これで仕訳抽出ファイル(WXJ_hhhh)に、前月の買掛金の計上仕訳だけを抽出することができます なお、支払保留の買掛金があれば削除し、支払保留の買掛金を支払うときは追加しておきます 仕訳抽出ファイルを出力して、当月20日の支払内容をチェックする作業は必ず行うようにしましょう (註)スクリプトの後の番号(#XX)はスクリプト識別番号です、以下同じ |
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3.逆仕訳ファイルを自動生成する | ||
2.で作成した「仕訳抽出ファイル」の仕訳からその逆仕訳を作成します 逆仕訳を作成するスクリプトは、「Rev7J1Ent12WXJ(#164)」または「Rev7J2Ent12WXJ(#165)」です 仕訳タイプ別に二種類あります、一科目仕訳で運用している場合は「Rev7J1Ent12WXJ」を、二科目仕訳で運用している場合は「Rev7J2Ent12WXJ」を、利用して下さい 逆仕訳の会計日は、スクリプトの引数として指定します(例えば、Rev7J2Ent12WXJ(20120505) なお、会計日がゼロで始まる場合は、ダブルクォーテーションで囲む必要があります−この説明は「Q&A」メニューの「スクリプト、ユーザスクリプト」の「Q2101」で解説しています− 上記のスクリプトを実行すると、仕訳抽出ファイルの仕訳が逆仕訳に変換されます 会計日は引数で指定した日になり、一科目仕訳の場合は仕訳貸借区分が逆になり、二科目仕訳の場合は以下のタグ名の値が貸借逆になります(例えば、借方部門Codeが貸方部門Codeになります) ・部門Code,科目Code,消費税Code,資金Code,プロジェクトCode ・金額,消費税額,個別摘要 仕訳データにユーザが定義したタグを使用し、逆仕訳の対象としたい場合(つまり、貸借のタグを使用しているとき)は、スクリプトを変更する必要があります スクリプト変更の例については、「Q&A」メニューの「スクリプト、ユーザスクリプト」を参照して下さい |
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4.消込科目の相手科目を所定の科目に置き換える | ||
3.で作成した反対仕訳の消込科目の相手科目を所定の科目に置き換えます 例えば、買掛金の支払いであれば、生成された反対仕訳は、[借方]買掛金/[貸方]仕入高 となっているので、消込科目買掛金の相手科目である仕入高を当座預金等に置き換えます 特定のタグの内容を指定した値に置き換えるスクリプト「Set7ValInc12XJQ(#230)」が用意されています、 例えば、「Set7ValInc12XJQ(1,"J_CA",7100,7100,"J_CA",1100,0)」とすれば、上記の仕訳が[Dr]買掛金/[Cr]当座預金になります 第一引数の「1」で仕訳抽出ファイルを対象とし、第二から第四引数で処理対象を指定し−貸方科目Codeが7100(仕入高)である仕訳−、第五から第七引数で置き換えるタグとその内容を指定する−処理対象の仕訳の貸方科目に1100(当座預金)を増分ゼロで順次セットする−、ここでは、置き換える仕訳を判定するタグ(フィールド)と置き換える対象のタグ(フィールド)が同じになっています、つまり、貸方科目Codeが7100であれば、これを1100に置き換えることになります これで上記の仕訳が[Dr]買掛金/[Cr]当座預金になります 〔参考〕 これまでの説明では、仕訳に勘定科目名を使用していますが、仕訳ファイルに勘定科目名は必須のタグではありません 仕訳ファイルに勘定科目名を含めて運用する場合は、仕訳定義ファイルに勘定科目名をユーザ定義タグとして記載することになります(「Q&A」−「マスタ、インサイド処理(仕訳作成)」−「Q1313」参照) 仕訳に勘定科目名を含めて運用している場合は、反対仕訳の勘定科目名も変更することになります、勘定科目Codeに対応する勘定科目名を指定フィールドにセットするスクリプト「Set7ActN12XJQ_RYA(#178)」があります Set7ActN12XJQ_RYA(1,"J_DA","J_U_DAName")、Set7ActN12XJQ_RYA(1,"J_CA","J_U_CAName")、とすれば、借方/貸方科目Codeに対応する勘定科目名が「J_U_DAName」「J_U_CAName」タグにセットされます |
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5.伝票番号などを自動計算させ仕訳を完成させる | ||
4.までの処理で、会計日と勘定科目の処理は終わりましたが、伝票番号や経過月は前のままです 伝票番号を処理するのに適したスクリプト「Set7ValInc12XJQ(#230)」があります 第一引数に仕訳ファイルのタイプ(仕訳ファイルか仕訳抽出ファイルか)を指定し、第二引数から第四引数で、処理する仕訳の範囲を指定し、第五引数から第七引数で、値をセットするタグと初期値及び増分値を指定します、例えば Set7ValInc12XJQ(1,"J_M",4,4,"J_SlipNo",400,1)とすれば、仕訳抽出ファイルの仕訳の、経過月が「4」の仕訳の伝票番号欄に初期値を400とした連番をセットできます 〔参考〕 「Set7ValInc12XJQ_SV(#233)」を利用すると、元の番号に初期値を加算した番号をセットすることができます 一科目仕訳では複数の仕訳で一つの取引を記述します、このため複数の仕訳に同一の伝票番号を使用することがあります 消込仕訳に連番号を振ると仕訳の同一性が確認しづらくなるので、従来の番号を残して連番を振ることができるようにしました 例えば、元の番号が、105,105,105,106,106・・・・のとき、初期値を7000に差分をゼロにすれば 7105,7105,7105,7106,7106・・・・となり、7月定期払いの消込仕訳の伝票番号に計上時の情報を残すことができます 経過月については、「Cal7JM12XJQ(#112)」スクリプトで自動計算させることもできます、このスクリプトの作動条件は指定フィールドの値がゼロのときという条件があるので注意して下さい 上記の他、修正すべきデータがあれば、スクリプトを利用して修正し、反対仕訳を完成させます 反対仕訳を出力し内容を確認した後、仕訳ファイルに追加します(「Apd1WXJ2XJ(#105)」スクリプトを利用) この後、「Srt12XJQ_Tag(#229)」スクリプトで仕訳を会計日・経過月・伝票番号順に並び変えます |
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6.ユーザスクリプト | ||
消込処理を行うユーザスクリプトの例を挙げておきます、条件は以下のとおりです 「展開一番」を二科目仕訳で運用します、仕訳で使用するタグは、会計日・経過月・伝票番号・借方科目Code・借方科目名・借方金額・貸方科目Code・貸方科目名・貸方金額・全体摘要 の10項目です、法人番号は「5140」とします 借方科目名と貸方科目名はユーザ定義タグで、「J_U_DAName」「J_U_CAName」として仕訳定義ファイルに登録されています 2021年1月末までに計上した未払費用(科目Code1500)を2021年2月20日に当座預金(科目Code1020)振込で決済します 振込手数料は全額自社負担で、未払費用計上額をそのまま支払い、振込手数料は後日纏めて銀行に支払います 決算期は12月、消込処理に使用する伝票番号は初期値911、差分1を使用します 摘要文を「2021年2月定期払い」とします -------------------------------------------------------------- require "t1" Sel9MA1XJ2WXJ_SetV("m","J_M",0,1) Sel12WXJ("J_CA",1500,1500) Rev7J2Ent12WXJ(20210210) Set7ValInc12XJQ(1,"J_CA",1500,1500,"J_CA",1020,0) Set7ActN12XJQ_RYA(1,"J_DA","J_U_DAName") Set7ActN12XJQ_RYA(1,"J_CA","J_U_CAName") Set7ValInc12XJQ(1,"J_M",0,1,"J_M",2,0) Set7ValInc12XJQ(1,"J_M",2,2,"J_SlipNo",911,1) Set7V12XJQ_Tag(1,"J_Rem”,"2021年2月定期払い") Apd1WXJ2XJ("5140") Srt12XJQ_Tag(0,"J_Date","J_M","J_SlipNo") -------------------------------------------------------------- このユーザスクリプトのファイル名を「xxx.rb」とし、Rubyで実行(Ruby xxx.rb)すれば消込処理を行うことができます ただし、実務上は、抽出範囲の確定や消込仕訳の確認など段階を追っての作業となることに留意して下さい |
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Last Update 2022/02/10 | ||