キャッシュ・フロー計算書(直説法)作成の準備作業 110

キャッシュ・フロー計算書を作成する前に、資金コード別の金額(収支差額)が試算表の資金の増減額に一致していることを確認する作業があります
(1)資金コード別に資金の収支が正しく集計されるように、各仕訳に資金コードが正しく設定されていることを確認します



仕訳ファイル(XJ_hhhh)の抜粋です
伝票番号#310は給与支払時の仕訳、#410は固定資産売却時の仕訳です
最後の2列が資金Code(註)です、仕訳定義ファイル(DJ_hhhh)は以下のとおりです

siiJ_Date
J_M
J_SlipNo
J_DA
J_U_DAName
J_DX
J_DD
J_DP
J_DAmt
J_DTax
J_DAmtS
J_CA
J_U_CAName
J_CX
J_CD
J_CP
J_CAmt
J_CTax
J_CAmtS
J_Rem
J_DCF
J_CCF

(註)資金Codeは「Set7JCF12XJ_RYA」スクリプトを利用して科目マスタから資金コード欄に自動でセットすることができます
この例では、「ruby Set7JCF12XJ_RYA("J_M",1,9,"")」で科目マスタに登録してある資金Codeが自動的にセットされます
以下、参考までに
科目マスタの抜粋
1,10,1060,従業員貸付金,D,0,10,240,242
1,10,1070,立替金,D,0,10,199,199
1,10,1090,その他の流動資産,D,200,10,0,0
1,20,2110,建物,D,200,10,220,222
1,20,2120,機械装置,D,200,10,220,222
1,20,2190,その他の有形固定資産,D,200,10,220,222
1,20,2410,ソフトウェア,D,200,10,220,222
1,20,2490,その他の無形固定資産,D,200,10,220,222
1,20,2590,固定資産未決済,D,0,10,220,222
科目定義ファイルの抜粋
MA_GCode0
MA_GCode2
MA_Code
MA_NameL
MA_DC
MA_XCode
MA_Class
MA_CFCodeD
MA_CFCodeC


(2)試算表を作成します



試算表ファイル(ZTB_hhhh)の抜粋です
4列〜6列が繰越残高、7列〜9列が期間取引高、10列〜12列が繰越残高となっています

試算表ファイルの作成手順は省略します
試算表を作成するには10個のスクリプトを順に実行する必要があります、これらを一つに纏めたユーザスクリプトを作成しておくことを推奨します


(3)資金Code別の金額を計算します



スクリプト「Sum7JCF1WXJ2ZLT」を実行すると上記の資金Code(2列目)別の金額集計表がリストファイル「ZList_hhhh」に追加されます
上記が、「ZList_hhhh」ファイルを「CSVエディター」で開いたものです、「CSVエディター」は列を揃えて表示できるので「展開一番」では必須のツールです
集計対象は仕訳抽出ファイル(WXJ_hhhh)の仕訳なので事前に仕訳ファイルから仕訳を抜き出しておきます(「Sel9MA1XJ2WXJ_SetV」スクリプトを利用)
上記スクリプトの入力ファイルが「XJ」に、出力ファイルが「WXJ」になっています
「展開一番」では資金Codeは必須ですが、その名称は必ずしも必要ではありません
資金Codeに対応する名称を付加するときは、(4)を実行します



(4)資金Codeに名称を付加する

資金Code表のファイル名が「CashflowCode_XJhhhh.txt」であったとします
以下はその抜粋です
100,営業収入
109,その他の営業収入
110,原材料購入支出
112,商品仕入支出
・・・
222,固定資産売却収入
230,投資有価証券購入支出
232,投資有価証券売却収入
240,従業員貸付金支出
242,従業員貸付金返済収入

スクリプト「Set7N12t1F_FileX」は、集計リストファイルに含まれるCodeに名称を付加します
このスクリプトは「展開一番ファイル(t1F)」に含まれるCodeにFileX(Codeと名称からなるファイル)を参照して名称を付加します
したがって、前述の「CashflowCode_XJhhhh.txt」ファイルを「FileX_hhhh.txt」にリネームしておく必要があります
このスクリプトには5つの引数があります(fn,sVi,eVi,v,vs)
fn:「展開一番ファイル」の名称です、ここでは「ZList」になります(法人番号hhhhは不要です)
sVi,eVi:「ZList」の処理するレコードの範囲を指定します(最初の行をゼロとし、3行目から21行目)
v:fnのCodeの位置(ゼロからカウントするので、1となる)
vs:該当する名前がないときに使用する文字列(ここでは"N/A"を使用)
スクリプトは「Set7N12t1F_FileX("ZList",3,21,1,"N/A")」となります
なお、上記スクリプトの出力ファイル名は「AddNameFile_hhhh」に固定されています、以下は、「CSVエディタ」で表示したものです





(5)資金収支の合計額を計算する

必要な資料が揃ったので、資金収支の差額(収入額-支出額)が試算表の資金項目の増加額に一致することを確認します



上記は、フリーソフトウェアの「Libre Office」に、「ZTB_hhhh」と「AddNameFile_hhhh」の必要な箇所をコピーし、金額を3桁区切りにしてから
計算式(背景色薄緑)を入れて、資金の増加額の一致を確認したものです



(6)別解

)前段では、目的とする確認作業にフリーソフトウェアを利用しました
ブリコラージュ会計では、利用できるソフトウェアを組み合わせて会計業務を実行するので、使い慣れた表計算ソフトウェアを利用した例を紹介したのですが
「展開一番」のスクリプトでもこの確認作業は可能ですので、別解として紹介します


(4)で作成したキャッシュフロー項目の一覧表ファイル(「AddNameFile_hhhh」)をグリッドシート(以下、GS)として扱うことにします(GSの説明は省略します)
なお、GSに関係するスクリプトは「アウトサイド処理支援ライブラリ」に纏められているので、ユーザスクリプトの冒頭に当該ライブラリをインクルードしておく必要があります.....require "t1_outside.rb"
最初に、ファイル名を変更(リネーム)します、スクリプトは、Ren12t1F("AddNameFile","GS_v63") となります
縦展開のGSとして扱いたいので、ファイル名に「v」を付けています、識別番号は(なんでもいいのですが、ここでは)63としました
法人番号とファイルの拡張子は自動的に付けてくれます、「GS_v63_hhhh.txt」ができたので、次ぎに資金収入合計額、資金支出合計額、及びその差額を計算します
スクリプトは、順に、資金支出の合計を計算、資金収入の合計を計算、資金の収支差額を計算、するものです(パラメタの意味は「スクリプト詳解」を参照)
GS_vSum(63,3,4,13,3)
GS_vSum(63,3,15,21,14)
GS_vSumCal(63,2,3,14,3,22)



「GS_v63_hhhh.txt」を「CSVエディタ」で表示したものです、4行目と15行目に合計額が、23行目に収支差額が計算されています
因みに、スクリプトの行・列数の数え方はゼロから始めるので、4列目は3に、5行目は4となります

試算表の資金増加額は、
(1)試算表に合計科目を設定して資金の合計を求める.....スクリプトは、Cal7ActG12ZTB(1028,"MA_GCode0")
(2)繰越残高の資金合計額と開始残高の資金合計額の差額を計算する.....スクリプトは、Add7IncCol12ZTB()



「ZTB_hhhh.txt」を「CSVエディタ」で表示したものです
「1028」が合計科目で、13行13列目に資金増加額が計算されています

「展開一番」のスクリプトだけで、資金の増加額の一致を確認できました


Last Update 2022/03/01