イタリア編 1 (ローマ)

ローマという都市は、僕たちのように建築が好きな人間にとっては特別な町だ。この町に入った途端に血が逆流して、理性を失ってしまう。
よく言われるように古代ローマ以来の歴史の積層の中に、体ごと投げ込まれてしまった感覚になる。周りを取り囲んでいるのは、ルネッサンス・バロック時代の建築であり、足の下には古代ローマが眠っている。町を歩いていると、所々でその古代ローマが姿を現す。パンテオンのように。そして、フォロロマーノのようにそのまま古代の都市が大きくその姿を現す場所もある。
こんなところは、おそらく世界中にローマだけしかない。だから僕をふくめて、ローマを一度訪れた人間は、いわゆるローマ病にかかってしまうのだろう。


 

ヴェネツィア広場に面したヴィットリオ・エマヌエーレU世記念堂の屋上から眺めたローマの中心街。

前に延びるのがコルソ通りで、その先にポポロ広場がある。右に見える緑の丘がボルゲーゼ公園。

カンピトリーノの丘に建つコンセルバトーリ宮から眺めるフォロロマーノ

ここでカエサルが、アウグストスが活躍していたのかと思うと、つい二千年という時の流れを忘れてしまう。

これはトラヤヌス帝の市場といわれる建物。

クイリナーレの丘の麓に6層の半円形の建築が食い込んでいる。これは古代のショッピングセンターだったらしい。3層までに、通路を挟んでたくさんの商店が並んでいたという。紀元2世紀頃にこんなものが建っていて、庶民にも利用されていたなんて本当にすごい。

オードリー・ヘップバーン主演の映画「ローマの休日」であまりにも有名なスペイン広場

この階段は造形的に本当によく出来ている。上の道路から両脇の階段を下りると、途中のテラスになりさらにその両脇の階段を下りると広い階段になり下に行くにしたがって幅が広くなってゆく。下の広場には、バロックの巨匠、ベルニーニの作った舟形をした噴水がある。

パンテオン、2000年近くの歴史を経たその比類のない建築は、ほぼローマの町の中心に、昔のままの姿で建っています。
正面の小さな広場は一日中にぎわって、夕方ともなれば、カフェのテーブルはコーヒーやワインを飲みながら話し込む人たちでいっぱいになる。

バチカンのサンピエトロ大寺院を前の広場から見たところ。

この日はミサがあるらしく寺院の中には入れなかったけれど、日暮れ時の空が美しく、逆光で見る大寺院は壮麗な感じがしました。

テルミニ駅の向かい側に、古代の浴場跡をミケランジェロが教会に改修した、サンタマリア・デッリ・アンジェリ聖堂があります。

その裏が博物館になっていて、かっての修道院の回廊がそのまま残っています。ミケランジェロの中庭と呼ばれていますが、設計はミケランジェロの死後、その弟子が行ったらしい。端正な柱とアーチが連続する回廊で、2階部分の窓が正方形と楕円の繰り返しになっているところも面白い。

イタリア旅行の楽しみの一つは、やはりおいしい料理を食べることにあるのは誰もが認めるところ。

しかも、どのレストランもカフェも道路に面してイスとテーブルを並べているので、美しい建物に囲まれて、道行く人々を眺めながら食事をするのも楽しい。

これは、2013年に行った時に泊まったホテルの部屋から下にある広場を見下ろしたところ。

小さな広場ですが、真ん中に噴水があり、教会とレストラン、商店に囲まれて、夜ともなればどこともなく人が集まってきて、ビールやワインを飲みながら夜遅くまでワイワイガヤガヤ。これを見ているとイタリア人は本当に生活を楽しんでいるな、と言う気がします。

夕暮れ時のローマの裏通り。

ローマの町の美しさは、ルネッサンス、バロックの様式で統一された建物のファサードに拠るところが大きいのですが、もう一つは黒いピンコロ石で舗装された道路のせいもあるのかもしれません。
夕暮れ時に、建物にはまだ日が残っているとき、すでに道路は黒く沈み込んでゆく景色はたとえようもなく美しい。