ギリシャ編

1992年の五月の末に僕は急に思い立って、仕事の合間を見て一人でギリシャへ行きました。そのころ芝浦工大畑研究室の、キクラデス諸島の集落の調査の本(エーゲ海・キクラデスの光と影ー建築資料研究社)を読んでいて、ミコノス島やサントリーニ島の写真のあまりの美しさに、我慢できなくなって日本を飛び出したのでした。

南回りのアリタリア航空でローマに二日滞在してギリシャに一週間ほどの予定だったのが、飛行機のエンジントラブルでニューデリーで一泊したので、ローマは一日だけになってしまってちょっと残念でしたが、オールドデリーを歩けたのも思わぬ拾い物でした。一日だけになってしまったローマを興奮しながら歩き回って、翌日はアテネへ。アテネは小さいけれど親しみやすい良い町でした。アテネではもちろん、アクロポリスの丘へ登って感激したり、古代博物館へいったりして3日ほどいてから国内便の飛行機でサントリーニ島へ。船で行くという手もあったのだけれどサントリーニ島はエーゲ海の南の端、もうクレタ島に近いところなので、時間がかかるので断念。サントリーニでは写真で見たエーゲ海に面した、崖にへばりつく様にしてたっているホテルに泊まりたかったのだけれど、どこも満員でだめ。飛行場のバス停で、客引きのおじさんのマイクロバスで連れて行かれたペンションは、海は見えないけれど、気のいい夫婦が経営していて、気に入りました。シャワー付きで4000ドラクマ(2800円)は安い。


 

アテネではもちろんパルテノン神殿のあるアクロポリスの丘が有名だけれども、世界の建築のページに載せているのでここでは省略。

これはアクロポリスの麓にあるモナスティラキ広場。小さな下町の広場と言う風情で朝市が立ったりして楽しい。ここから僕の泊まっていたホテルのあるオモニア広場までは一日に何回も往復した。途中には、中央市場があって楽しい。市場の食堂で食べた昼飯がうまかった。

 

アテネの郊外、バスで小一時間ほどいったところにあるダフニの修道院。
ギリシャでは古代建築が有名だけれど、ビザンティン建築にも良いものがいっぱいある。素朴な粗石積で、どっしりとしたプロポーションが見る者を優しい気持ちにしてくれる。
ここまではアテネから、バスの始発から終点まで40分ほど乗っていたので、アテネの町が郊外へ向かって変化する様子や、途中から乗ってくる小学生や買い物帰りのおばさんなどの様子を見ているのが楽しかった。

 

サントリーニ島の中心フィラの急な崖にへばりつくように並ぶ町並みからエーゲ海を望む。
この写真は朝食を食べた小さなレストランのテラスから撮りました。ペンションに朝食は付いていなかったので、散歩しながら見つけたレストランですが、客は一人もいなくて、お店の中には若い女の子が箒を持って掃除をしていました。食事ができる?と聞くと眠そうな声で、パンとコーヒーならと言うので、テラスに運んでもらって、海を眺めながら絵葉書を書いたり、写真を撮ったりしながら、ゆっくりと食事ができました。旅先でのこういう時間は本当にいいものですね。
 

 

サントリーニは元々火山島で、何回かの噴火によって島がえぐられて、フィラの町は今のように、海に向かって落ち込む急斜面に家々がへばりつくような町並みになったらしい。これらの建物は元々地元の人たちがすんでいた住宅なのだけれど、今では観光地化が進んで、すべてホテルかレストランになっている。僕がいった5月の末でも世界中からのリゾート客でいっぱいで、残念ながらこの辺のホテルには泊まれなかった。
この斜面に何十(もっと多いかな?)という建物が上下左右複雑に絡み合っているので、一日に何度も町中をぐるぐる歩き回っていたけれど飽きることがない。下のホテルの屋上が上のレストランのテラスだったり、上から下へ、レストランのテラスからテラスへと自由に移動できる。建物や土地の所有関係はどうなっているのだろうとつい思ってしまう。(日本人ほどそういうことにこだわらないのかもしれないですね。)

 

これは島の北端にあるイアの町並み。交通の便が悪いせいか、フィラよりも開発が進んでいなくて素朴な感じがする。一軒の家を貸し別荘のように、一定期間貸しているところが多い。
建物は半分崖をくりぬいて作ってあり、かまぼこ型のヴォールト天井になってる。たいていは石灰を水で溶いたもので壁を真っ白に塗っている。

ここは交通の便が悪いので、僕はフィラでレンタルバイクを借りて島を一周してみた。何とバイクは懐かしのホンダ・カブ、一日で1000円と言うのも安い。おかげでほとんど観光客が行かないような小さな集落にも寄ってみて面白かった。