アントゥン=ブランコ・シミッチ
詩集「変容」から

炎上

西の空を向こうに
庭では割れた柘榴から
血が滴っている

だが東からは夜が青い顔をして現れ
西空は蒼く、柘榴はもっと赤くなる

貴女は僕のほうに逃げてくる
闇に浮かぶ木々の枝を怖れそして
黙っている

なぜきみの身体はまた焔でもあるのか?

ああ柘榴がはじけ
僕らと一緒に燃え上がる!

星ものぼってこの言葉なき庭の炎上を
強めることはない


ヘルツェゴヴィナ

星空のもとに丘は横たわり草地には低くまばらな家々
蒼い闇から木々が浮かび上がる

道にはもう誰もいない

道は行き止まり
静かな谷の暗がりに頭を潜り込ませて

夜に木々が動くことはない
ただ空を緩やかに音もなく進む星の歩み





     アレクサ・シャンティッチ
       詩集「わが愛」から

     ネレトヴァ

     頭の上で庭の桃の木が揺れている
     緑の葉は扇 紅くなりはじめた実
     陽射しは梢の葉むらにも射し込み
     全てを黄金で縫いつけるかのよう

     僕は壁にもたれて腕組みしながら
     下を眺めてみる えぐれた大岩に
     ネレトヴァは砕け 高い岩場から
     裸の子らが飛込み歓声を上げ泳ぐ

     ひとりは岸辺で寝っ転がっている
     カモメが舞う 洗濯ものを干して
     斜めに置いた丸太の上で叩くのが

     谺となって 消える 川は美しく
     エメラルドに満ち たゆたい輝く
     川面には岸辺の家々が映えている