「もー、はやく起きないと本当に朝ご飯なくなっちゃうよー」
「だーかーらー、朝の5分はレム睡眠一周期分に相当するって前から言っているだろ。その貴重な時間を邪魔するな」
「本当に朝ご飯なくなっても知らないからね」
バタン。
やれやれ、やっと出て行ったか。貴重な睡眠時間が少なくなってしまったではないか。では、おやすみ。
・・・・・・
「・・・・・・で、一時間寝過ごしてしまったと言うのね」
「・・・・・・はい」
依子さんはしばらく考え込んでいたが、やがてうれしそうに
「君の理論からすると、一時間寝過ごしたんだから24時間分のレム睡眠をとったわけよね。なら、今日は眠らなくても大丈夫ね」
と言うと、俺の机の上に大量の問題集を積み上げた。
「提出期限は明日の朝だから、がんばってね(はあと)」
「・・・・・・オニ」
この間あった化学の小テストの答案が帰ってきた。
自分の席に戻る途中、ふと透子の答案が目に入った・・・・・・0点である。なんとなく気になったので、
「透子は化学苦手なのか」
と話しかけた。
透子はしばらく考え込んでいる様子だったが、俺のほうを向くとこう言った。
「・・・・・・私には、イヒが失われているから」
「・・・・・・イヒ?」
「・・・・・・イヒ」