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tacovun tribute to BLADE RUNNER

『ますます狡猾になるレプリカントとブレードランナーとの会話』

そう・・・思えば、続編を作ることになったのが、すべての間違いの始まりだった。そのたびに我々ブレードランナーは、より知恵をつけ、レプリカント検査への対応法を習得した奴等に翻弄されるようになった。そう、奴等は前よりずっと狡猾になっている。先日だって、そうだった



「どうぞ」

「・・・」

「座って」

「テストを受けるのは得意でね」

「反応速度を測るからそのつもりで」

「わかった」

「君は今太陽のさんさんと輝く浜辺を歩いている。君は裸足だ。赤道直下の砂浜の真ん中。砂がまるで焼けた石のように高温に熱されている。おそらく、華氏200度はあるだろう。しかし、君は手に持ったサンダルを履こうとしない。何故だ?」

「サンダル?履いてるじゃないか」

「いや、履いていないという設定だ。これは、質問だよ」

「質問だというのはよくわかる。だが、よく見ろ。私はちゃんと履いてるぞ」

「履いてるって?」

「去年のクリスマスに君が買ってくれたじゃないか。本当だったら、『家庭園芸のすすめ』を買うはずだった君が、その本が見つからなくって代わりに買ってくれたのが、このコバルトブルーのビーチサンダルだ。クリスマスに夏向けのサンダルはないだろうって、俺の家内も笑ってたじゃないか」

「そうだったか・・・そうか、そう言われてみると・・・いや、そうじゃない。とにかく君は、いいな・・・サンダルを履いていないんだ。そういうことにしておいてくれ」

「わかった。では、このサンダルは脱ぐことにしよう。せっかく君にもらって大事に使っていたんだが・・・」

「すまない。助かるよ。で、だ・・・君が裸足のままで歩いているものだから、熱さのために足が溶けていく」

「溶ける?」

「そうだ。暖炉にほうりこんだ蝋燭のようにどろどろと。君はそこで溶けていく足を・・・」

「まて、それはおかしい。足の表皮成分は、主に蛋白質、表皮下にいくらか脂肪はあるが主要成分ではない。それぐらいの温度で火傷をしたとしても、せいぜい皮膚の発赤か疼痛。二度程度の火傷で水泡が生じることがあっても、溶けることはあるまい。君は基礎的な科学的素養の面でいささか欠けているところがあるのではないか」

「わかった。わかった。質問を変えよう。今度は、フフフ・・・定番中の定番だ。これは、効くぞ。いいかい、君が砂漠を歩いていると、亀が裏返しになっている。亀は足をばたつかせているが、君は助けない。なぜだ?」

「君が助けないからだ」

「私が?」

「私が助けてもいいが、そこまで状況を知っているからには、君は、その裏返しになってのたうちまわっている亀を先に見ていると考えられる。でも、君は助けない・・・。君はよい人間だ。だが、助けないからには、何らかの理由があるに違いない。君のお父さんは君が5才の時に建築現場での事故で亡くなったと聞いている。しかし、その事故に、2、3、不審に思われる点もあったそうだな。お父さんは会社の労働組合の副書記長をしていて、会社からにらまれていた。成人した君は、あの時の事情を調査したはずだ。だが、真相は藪の中。だが、裏返しになった亀が、君のお父さんが在職中の会社の役員の一人だったとしたら、君が亀を助けなかったことにも理由がつく」

「そ、そんなバカな・・・」

「バカな話ではない。私の個人的な調査では、君のお父さんが亡くなったちょうどその時期、亀は会社の労使協議会対策委員をやっていた。労使協議会対策委員と言えば聞こえはいいが、いわゆる組合つぶし担当委員だな。君は、それに気づいていた。だから、亀を助けなかった」

「そんな、バカな。あの事故はあくまでも事故で・・・」

「じゃあ、なぜ、君は亀を助けなかったのだ。かわいそうに苦しみもがいている亀を。いや、責めるつもりはないんだ。君が亀をひっくり返したんじゃない。あくまでも、ひっくり返った亀を見、それを放置していただけだ。なにも手を下したわけではない。私は、その時の君の気持ちは、よくわかるよ」

「俺は・・・俺は・・・」

「しかし、あくまでも人間としての倫理上の問題として、私はあえて君に問いたい。なぜ、君は、亀を・・・亀を助けなかった?炎天下の中、裏返しでもがいている、無力でかわいそうな亀を・・・」

「違う!お、俺は助けるつもりだったんだ」

「な・ぜ・き・み・は・た・す・け・な・か・っ・た・ん・だ」



そう・・・ここで俺は、思わず銃をぶっぱなしてしまい、かくして、ブレードランナーの職を解かれることになってしまったんだが、最近、このようにして、失職するプレードランナーが多いと聞く。あとあとよく考えてみれば、まさか亀がそんなことあるはずはなかったんだが・・・まったく、狡猾なレプリカントって奴は・・・