わたくしのお仕事

 たまには仕事の話も少し。…ってここの更新自体たまになんですが。いいんだ、読者少ねえし。
 さて、某少年漫画誌で、読者コーナーの中のインフォメーションという、一番読まれなさそうなページを書いております。ええ、実際ほんとに読まれないようです。例えば電車の中で隣の人が読んでるじゃないですか、その漫画誌。隣の人の興味が巻末の連載漫画にさしかかるのを横目で見て「もう少しもう少し」とか思うわけです、書いた人間としては。隣人は漫画セクションを読み終わります。『■35号に続く■(次号は取材のため休みです)』なんてページを開いてたりします。「良いところで終わるねぇ。それでね、次の次の次のページは俺が書いてるのヨ!読んでヨ!」とか念じても、パラパラっと閉じて網棚に乗せたりしますね、大抵。いや、わかります。かつて私もそうでしたから。
 これが漫画家さんだったらすごいショックでしょうね。眠気締切と闘い、命削って描いた漫画をパラパラと飛ばされてみよう。死にたくなります。逆に狙ったところで「クスッ」なんて笑ってもらえたら、ガッツポーズインマイマインドって感じですか。

 そりゃいいんですが、たまに映画の紹介もやります。カラーページじゃなくて、モノクロ1ページで。扱いの重要度があまり高くなかったり、時期が早くプレス向けの試写会もまだ先だったりして、書くにあたっては試写に行きません。チラシやプレス向けの資料に目を通し、さも観たかのようなふりをして映画の紹介を書くわけです。いや、そうなんですよ、これが。自分が書くようになって他の雑誌のライターが書いた記事をよく読むようになったんですが、他の雑誌も大体状況は同じみたいですね。騙されてた? うん、そうやってある意味騙すのも仕事だし。
 1本の映画の紹介記事。雑誌とライターが変わっても、参考にする資料が同じなもんだから、内容まで似てきます。資料の売り文句を丸写しして、「てにをは」を変えて一丁上がり、みたいな。そこにどれだけ「個性」を入れられるかがライターの腕と意地だったりするわけですが、署名入りの批評記事じゃないし、立場としては配給会社の代弁者みたいなもんだし、文責は編集部にあるので、そこに個人的な感想や思想を入れるわけにはいきません。あまり本意ではありませんが「一丁上がり」記事を書き上げることになってしまいます。それでも、同業者の目を意識して(もちろん一般読者も)、なるべく参考資料の原型を留めず、かつ趣旨は変えずに、いじりまくった「自分の文章」を仕上げようとしている日夜なのであります。週1回だけど。
 複数の雑誌で同じ映画を紹介していたら、読み比べてみるとなかなか面白いと思います。結構同じセンテンスが見つかったりするよ。

 で、たまにどう紹介していいのやら途方に暮れてしまうような映画の記事を書かなくてはいけないこともあります。最近ではウーピー・ゴールドバーグ主演の『チャンス!』という映画がそれでした。これがもうベタベタのフェミニズム映画。アメリカのニオイがプンプンします。まあ、それはいいんです。それが良いか悪いかは別として、中学生あたりをメインターゲットにした少年漫画誌で、フェミニズムバリバリ映画をどう紹介すればいいと思います? その点セガールとかシュワルツェネッガーの映画は楽だぜー。ドカーン!大迫力!! スーパーアクション!正義は勝つ!! みたいな。結局『チャンス!』は、あらすじの紹介と、凄いらしい特殊メイク(記事では「驚異、必見!!」とか書く)について触れただけで1ページ埋めただけのダメ記事になってしまいました。他にやり方を思いつきませんでしたのよ。トホホ。
 でもちょっとだけ主張を入れました。出だしで「いかにもアメリカらしい」って書いたんです。記事では「痛快サクセスストーリー」に続いてますが、心の中では「鼻につくフェミニズム」に続いてます。

 1ページの読み捨て記事にも5分の魂って感じなのです。もし気が向いたら、そんなページにも目を通してみて下さい。

字ばっかりだと読まれないので絵入れます。松たかこ。

#ちなみに『チャンス!』の記事掲載号は8月第4週の発売です。雑誌は内緒。


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