ギャラリー 「れんぎょう」にようこそ!
ご来場ありがとうございます。ここは、「絵一枚、詩一編」のとても小さな私的なギャラ リーで、その他のものは何もありません。今回はその13回展です。 (2001年5月15日 藤川 昶)


ポピー
( 藤川久代/
2001.5)
![]()
秩父、両神(りょうかみ)荘で
―永井均に―
1
早朝の暗い雨の庭
満開の桜の木が数本
濡れそぼって立っている
山がそこまで迫り
深緑の小さな百万塔が
薄墨色の山の背へと
やわらかく積み上がっている
空は白磁の薄明り
山肌を霧がまだらに流れていく…
雨の庭は洗いたて
絵のように隅々まで綺麗
絵にはない広々とした静かさ
2
人には誰でも
悲しげな様子の子どもがひとりづつ居る
ふだんは人に見えないが
こんなに静かでこんなに綺麗な
雨降りの朝の庭には
おや不思議
そんな子どもらがいつのまにやって来て
黙って思い思いの
一人遊びをしているのが見えてしまう
あたりに仄かに光る不思議な気配がする
霧が漂う山肌や雨に濡れた花盛りは
澄明な雲母の輝きを帯び
それがじっと遊ぶ子らを視つめる…
だが子どもらは無邪気に
ただ山には霧が流れ
花は雨に洗われて
ぼうと明るいだけと思う
3
暗い早朝
まだ誰もいないロビーの硝子の壁際に坐り
早起きの老人が庭全体を虚心に眺めている
精霊の子らと美々しい死~を
(1999.4.29 )