「ネットワーク社会=匿名社会」という考え方がマスコミによって
定着した感がありますが、日本で古くからインターネットを利用
して来た人は、「なんでそ〜なるのだろう?」と首を傾げている
ことでしょう。もともと、日本のインターネットの基礎となった
junetは学術系専用のネットワークだったためか、ユーザが何かの
サービスを利用するときは、自分の身分をはっきりと告げるのが
普通でした(サービスの種類によっては必要ありませんでしたが)。
現在でも、ニューズグループの一つであるfjは当時の色を残し
ているため商利用禁止ですし、記事を投稿する際にはまず名前と
所属を明らかにする習慣があります。
#公開ftpサーバ(匿名ftpサーバ)に接続するときは、ユーザ
名にanonymous、パスワードの代わりに自分のE-mailアドレスを
入力するという約束事があるのですが、最近はWWWブラウザから
のアクセスがあるので守られていない場合があるようです。
NetscapeNavigatorの場合は「ネットワークの設定」の「プロト
コル」メニューで、「匿名ftpパスワードとして電子メールアド
レスを送信」をチェックしてから使いましょう。この約束を
守らないと、サーバによっては接続を拒否されることがあります。
さて、問題となっている匿名メールですが、現状ではある程度 の知識(と若干の根性)さえあれば簡単に出すことができます (もちろん、ここにその具体的な方法を書くつもりはありません)。 発信されたメールは、それを配送したシステムのログを解析 することによってどこから来たのかある程度特定することは 簡単です。半端な知識で偽造されたメールの場合、確かに ほぼ100%確定することは出来ます。しかし、巧妙に発信された 場合、それが本当は誰が出した物なのかは特定することは 出来ないのです。
それでは、正当なハッカー達は悪質ないたずらを指をくわえて
みているしかないのでしょうか? いえ、もちろんそんなことは
ありません。サーバ自体を不正なメールから守れば良いのです。
不必要な(つまり、自分と関係ない)サイトからのメールの中継
を拒絶するように設定することで、少なくとも外部のサイトから
のメール攻撃に利用されることを防ぐことができます(ただし、
この方法は管理者でないと設定することができません)。
#詳しいことはhttp://www.sendmail.org/とか、
http://www.cert.org/あたりに書いてあったと思います。日本の
サイトではhttp://www.jpcert.or.jp/にあります。ちょっと古
い情報でもよければ、アスキーから出ているUNiX MAGAZINEの
97年9月号に記事があります。大学の研究室などでメールサーバ
を管理している場合は目を通す必要があるでしょう。
また、個々のユーザの場合でも、メールを送りたい相手に 自分の身元を証明することが出来れば、偽のメールによって もたらされる被害のいくらかは防ぐことが出来ます。ここで、 防ぐことのできる被害というのは「クラッカーに自分の名前 でメールを出されることによる被害」です。ネットワーク上 に限らず、信用というのはなくすのは簡単ですが、取り戻す のは難しいことですから。具体的にはどうするのかというと、 PGP(プリティ・グッド・プライバシー)を使うのです。
PGPは公開鍵暗号方式を使った暗号化・認証方式です。ユーザ
は自分のメールを暗号化したり、電子署名するための秘密鍵と、
復号・認証するための公開鍵の対を作成します。
公開鍵の正当性を証明するためには、鍵を直接(FDなどで)
受け取るか、すでに鍵を持っている誰かに鍵を渡して、間接的
に証明してもらう必要があります。
#WWWサイトに置くという方法もありますが、その場合は受け
取ってから鍵の持ち主に確認した方が良いでしょう。また、
秘密鍵の方はパスワードと同じ位重要なので、絶対に盗まれ
ないようにしなければいけません。ダイアルアップPPP接続で
使うだけならばあまり心配はないと思いますが。
件名(Subject)
Subjectに関してはRFC822の基本定義と、MIMEのヘッダ部分
の拡張に関するRFC2047(
RFC1522のアップデート)などがあり
ます。
インターネットが元々英語圏の技術であることから、シス
テムの多くは他の言語(というより、非ASCII文字)を解しま
せん。そこに、直接日本語のような異質なコードを放り込むと
誤動作の原因にもなりかねません。
そこで、電子メールなどでは、非ASCII文字はASCII文字の組み
合わせで表現する(カプセル化するとかエンコードするとかいう)
ことで安全に扱えるようになりました。ただし、UNIXシステムなど
に標準で添付されているメーラは旧式等の理由でこれに対応していない
場合もあるので、日本語を使う前に相手に確認した方が良い
でしょう。相手のシステムもMIMEに対応している場合、
Subjectに日本語の使用をためらう必要はありません。
#例えば、FreeBSDなどに付属しているmailでMIME非対応の
日本語Subjectを受け取ると文字化けを起こしてそれ以後の
画面が読めなくなりますし、MIMEでカプセル化してあった
ところで文字化けしないだけで意味は分かりません。黎明期
の頃など、本文に日本語を使う場合ですらSubjectに(In Kanji)
といった注釈をいれるという習慣がありました。
日本語subjectを/usr/bin/mailで見て苦しんでいるところ
署名(シグネチャ)
シグネチャは本来必要なものではありません。なぜなら、
メールの発信者はヘッダ部分(From:またはSender:)に記載
されていますし、返信先が別に必要ならばヘッダのReply-To:
で指定出来るからです。それでもシグネチャをつける事が
多いのは、単に明示的に自分のメールアドレス等を記載したい
場合や、近い将来にメールアドレスが変更になる場合のお知ら
せのように、頻繁に同じ事を書く手間を省けるからです(もち
ろん、次にあげるように単なる趣味でつけていることも多々
あります)。
また、アスキー文字を使った絵や、詩や小説の一節を引用
している人がいますが、トラフィック(ネットワークを流れ
るデータ)を無駄に増やさないように、4行以内おさめるこ
とが推奨されています。
#アスキーアートでも相手の使っているフォントによっては
期待通りに表示されません。
補足
PGPに関してはO'REILLY社(日本での販売はオーム社)から
詳細な解説本(その名もずばり「PGP」)が発行されていますし、
いくつかのWWWサイト(たとえば
PGP国際版ホームページや
PGP for 98の紹介
)がありますから、そちらを読んで下さい。
補足その2
RFC2047だけでは日本語Subjectを
デコードすることはできません。メッセージ本体のバイナリ部分や
非ASCII文字を転送するのに使うBase64という方式を規定する
RFC2045が必要です。