海水浴の思い出 冬生まれの僕は夏が苦手である。暑いと何をする気力もなくなってしまうという情けない人間だ。だからというわけではないが、三十数年生きてきて、夏に海に行ったのは片手にさえ余る回数である。これは、その僕が一番最近(といっても4年ほど前)に海水浴へ行った思い出である。その頃、一緒のプロジェクトをやっていたメンバー(会社は別々)で海へ行こうという事になった。たくさんの人に声をかけたのだが、夏休みは忙しい人が多く、結局は独身男性5人で行くこととなった。当日、会社の駐車場に集まり、2台の車に分乗して福岡の海を目指した。僕は同い年のYさんの車の助手席に乗り、後ろにNさんが乗りこんだ。スタートして間もなく、僕はYさんよりビデオカメラを手渡された。「どうせ退屈だろうから、カメラで撮影でもしてよ。」ということであった。「よし、今日の僕はカメラマンだ。」と決心し、助手席の窓から途中、ポイントとなりそうな風景を写していった。久しぶりの遠出ということもあった楽しく過ごしていたのだが、目的地が近づくに連れて僕のお腹の具合がおかしくなってきた。やっとのことで海水浴場につくと、僕は真っ先にトイレを探した。駐車場の横の海の家にトイレがあったので使用料100円を払って用を足した。「ふぅ、落ち着いた。」と思ってトイレから出ると、海の家の従業員から「どうも、ありがとうございました。」と言われた。たしかにお金を払ったんだから客なのだが、ウンチをして「ありがとうございます」と言われて少し恥ずかしかった。それから駐車場で海パンに着替えて海岸へ行った。その日の海水浴場は思ったより人(特に水着ギャル)が少なくて空いていた。僕はまず砂浜に腰を降ろして日焼け止めクリームを塗った。それからの他のメンバーが泳いでる姿や、ビーチボールで遊んでいる姿をビデオカメラ片手に撮影していたのだ。本当は水着ギャル(しつこい)の姿を撮りたかったのだが、ほとんど若い女性の姿はなかった。結局、夕方になるまで、僕はずっと砂浜に座り、カメラを回す以外はぼんやりと過ごした。同じ姿勢でずっと座っていたものだから、肩や背中だけ異常に日焼けしてしまって後々後悔する羽目になったのはいうまでもない。それから一週間ほど経った頃に、Yさんがビデオテープを持ってきた。先日の海へ行ったビデオをダビングして、丁寧にラベルまでつけてあった。そのビデオを家へ持ちかえり再生してみた。ほとんど僕が撮影していたのだが、結構よく撮れていた。が、砂浜で撮影しながらYさんと話した内容まで全部入っていたのだ。「いやあ、歳をとると日焼け跡がしみになっちゃってねえ。・・・歳はとりたくないねえ。」まるで、「ぼやきじじい」みたいなことを僕は語っていた。参加したメンバー全員、このビデオを見たのだが、みんな僕のぼやきが一番印象に残ったようであった。事実、この時の日焼け跡は、いまでも僕の背中や肩にしみとして残っている。夏の日の思い出である。