グレート・マジンガー 小学生の頃、そろばんを習っていた事がある。僕の意志で習い事を始めたわけではなく、「そろばんくらい習っておきなさい。」と両親に言われ、仕方なく習っていたものだ。その前は習字を習っていたのだが、始めてから2、3回で辞めてしまっていた。基本的にぐうたらで飽きっぽい性分なので、少しでも辛かったり飽きてしまうともうだめなのである。そんな僕ではあったが、親の命令には逆らえない性格なので、親に言われるままに通い始めたのである。そろばん塾は家から歩いて10分ほどのスーパーの裏手にあった。毎週、火曜日と木曜日の午後5時から7時がそろばん塾の日であった。習いはじめた頃はそれなりに面白く、また同級生が何人か同じ塾に通っていたので遊びの延長的な気分で楽しく通っていた。そろばん塾では最初は8級からスタートし、定期的に行われる珠算検定試験を受験するようになっていた。そして合格すればひとつ上のランクへ移っていくのである。僕は4級まではあっという間に進んだのだが、3級の練習をする頃には、すっかりそろばんに飽きてしまっていた。しかし、そろばんというものは3級を持っていると、資格として認められるのだが、4級では何にもならないので「何とか3級を取る」事を親に命ぜられていた。それで嫌々そろばん塾に通っていたのだが、内心は早く辞めたいとばかり思っていた。そこで思い切って両親に「そろばん塾を辞めたい」という事を話した。理由を尋ねられた僕は「将来、事務職をやる気はないから、そろばん習っても意味がない」と答えた。更に「友達もみんな辞めちゃったんで塾へ行っても面白くない。」と付け加えた。しかし、これは表向きの理由であって本当の理由は別にあった。本当の理由は「グレート・マジンガー」が見たいというものだった。そろばん塾の時間と「グレート・マジンガー」の放送時間が重なっていたのである。この理由を話すと「馬鹿!」と怒られることが目に見えていたので、もっともらしい理由を無理やり考えたものである。結局、「すでに月謝を払った分まで塾へ通えば辞めてもいい」という事となった。そうして最後のそろばん塾の日がやってきた。塾の先生に「今日で辞めさせてもらいます。」と話し了解してもらった。僕の心は「これでグレート・マジンガーが見れる!」ということで、すっかり高揚していた。思わず窓から外へ飛び降りて帰ってきたくらいであった。それからは毎週家で「グレート・マジンガー」を見ることができた。もし、あの時ちゃんと資格を取っていたとしたら、違う人生を歩んでいたのだろうか?だとすれば僕の人生は「グレート・マジンガー」に依って変ってしまったことになる。さすが「グレート」と名乗るだけの事はあるもんだ。なんてね。