ふられた話し(PART2) 僕が二度めに”ふられた”のは社会人になってすぐの頃であった。彼女は同じ会社の同期入社であった。入社式の翌日に、工場内の休憩コーナーで友達と話していたところへ、一人の女の子が近づいてきて「あのー、友達になってくれませんか?」と言われたのが付き合い始めたきっかけだった。それから平日であれば昼休みに一緒に散歩したり、会社の帰りにお茶を飲んだりして過ごした。休日には横浜や渋谷へとデートに出かけていた。しばらくして彼女が僕に相談を持ち掛けてきた。それは年下の男が彼女に言い寄っているとの事で、「彼氏がいるからと言っても、諦めてくれないのでどうしよう。」という事だった。僕はここは大事な出番だと思い、僕が直接諦めるように話すことを提案した。数日後、僕と彼女、それから、その年下の男性と、心配でついてきた彼女の友達の四人で会った。僕は最悪の場合、決闘になることも予想していたのだが、年下の男性はすでに諦めていたのか、僕と彼女を立ててくれたので拍子抜けしてしまった。その日の帰りに、僕は駅で彼女と別れて帰ろうとしたのだが、彼女が大事な話しがあるからと言うので、近くの公園まで行った。彼女はブランコの前に立ち、僕の顔をのぞきこみながらこう言った。「O君は私のこと、どう思ってるの?」「好きだよ」と、喉まで出かかったが、口から出たのは何故か「嫌い・・・じゃないよ。」というものだった。しばらく沈黙が続いたあと彼女は泣きだした。「O君はもてるから。私は太ってるし、可愛くないし。」「そんなことないよ。」僕は戸惑いながら彼女の背中に両手をまわし、ぎこちなく抱きしめた。彼女は顔をあげて問いかけてきた。「私のこと好き?」「好き・・・かな? たぶん・・・。」それは僕にとって、精一杯の愛情表現であった。心の中では好きで好きで仕様がないのに、それを口にすることが出来なかったのである。僕はほとんど毎日、彼女へ電話していたのだが、その数日後に彼女から「電車の中で見知らぬ男性に告白された。」事を聞いた。内心穏やかではなかったが「へぇ〜、そんな事あったんだ。」と気にしないふりをした。さらに数日が過ぎ彼女の誕生日の前日のことだった。僕は彼女へのプレゼントを買うために渋谷まで出かけた。何を贈ったらよいのか何時間も迷った果てに109でネックレスを買った。歩き疲れてへとへとになったが、彼女の喜ぶ顔を思い浮かべながら夕方寮へ戻った。夕食をすませて友達の部屋にみんなで集まり話しをしていると、九時過ぎに電話の呼び出しがあった。友達に冷やかされながら、大急ぎで電話がある玄関へ走り受話器をとった。彼女からであった。「もしもし、Oさんですか?」この時点で何か彼女の様子が違うことに僕は気付いた。いつもなら名前で呼ぶはずが、姓で、しかも「さんづけ」で呼ばれたからだ。「あのー、私たち友達に戻りましょう。」この言葉を聞いた途端に頭のなかが真っ白になった。更に彼女はたたみかけるように、こう続けた。「Oさんはもてるから、私なんかもったいないでしょう。きっともっと可愛い子が似合うと思うの。」僕は泣きたい気分だったが、男らしくしなきゃいけないと思い、「俺もそう思っていたんだ。それじゃ元気で。さよなら。」そういって受話器を置き、茫然と立ち尽くした。それからじばらく経った頃に友達から、彼女が電車の中で知り合った男性と付き合っていることを知らされたのである。この”ふられた"事件の後、僕は極度の女性不信に陥ってしまい、女性と全く会話しないという”不毛の2年間”を過してしまうのであった。