クムイウタ 僕は夢をよく見るほうなのだが、最近はあまり印象的な夢を見ていなかった。せいぜい僕の部屋のベランダに完全武装した特殊部隊が侵入してきて、ガス弾を撃ちこまれ機関銃で応戦する夢を見たくらいだ。(なんでこんな夢を見たのかさっぱりわからない。)ところが先日、久しぶりに印象的な夢を見た。僕は夢の中で受話器を右手に持ち電話をしていた。相手は誰だかはっきりしないのだが女性であるようだ。そしてその女性が受話器の向こうで「愛してるって言って。」と僕に言うのである。僕は心を込めてゆっくりと「愛してるよ。」と言った。その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられ熱くなるのを感じた。そこではっと目が覚めてしまった。僕はベッドの上で思った。愛してるよ・・・か。どれだけ長い間この言葉を口にしてないんだろうと。何故こんな夢を見たのか考えてみたが、思いあたるようなことは何もないし相手が誰なのかもさっぱりわからなかった。しばらくぼんやりしていたが、やがてあることを思い出した。それは昨日買ったCDを聴いてすごく感動したことである。そのアルバムを聴いていたら、胸が切なくなるような不思議な感覚に囚われたのである。それはCoccoの「クムイウタ」という作品である。けっこう売れてるんで知ってる方も多いと思うが、決してCoCo(昔のアイドルグループ)ではないのでお間違えないように。歌っているのは「こっこ」という沖縄出身の女性ヴォーカルなのだが、1977年生まれであること以外はよく知らない。ただ彼女の書く詩はとても素晴らしく、また彼女自身が作った曲もメロディが素晴らしい。ハードでうねるような曲から、透き通るような静かな曲まで実にバラエティに富んだ構成になっているが、すべての曲が非常にクオリティが高く素晴らしい出来だ。英語の発音も自然で国籍を超越したロックアルバムになっている。日本のロックもついにここまで来たのかという感じを持った。海外でもかなりの評価を受けているらしいがうなずける内容だ。とにかく彼女の歌声が自然に耳に入ってくる。僕は基本的に女性ヴォーカルは大好きなのだが、これまで聴いた日本人アーティストでは文句なく第一位だ。スタイルや声質は全然違うが、ジャニスを初めて聴いたときを思い出してしまった。僕はこの「こっこ」に恋をしたのかも知れない。このアルバムの最後にこう記されている。消えない過去たちへ消したい記憶たちへ消せない想い出たちへ限りない憎しみとおびただしいほどの愛とおやすみのキスを込めて今夜もまた「クムイウタ」(沖縄の言葉で子守り歌)を聴きながら眠りにつくことだろう。