キノコの部屋 僕は一人暮らしを初めて7年になる。その前は3年間ほど会社の寮に住んでいたので、それを入れると10年選手である。僕は誰か人が訪ねてくる可能性がある場合にはきれいに掃除するのだが、誰も訪ねてくる可能性がない時期には、ほとんど掃除をしない人である。そのために自分の部屋はすごくきれいに片付いているか、とんでもなく汚いかのどちらかであった。会社の寮を出て、初めて一人暮らしをしたのは横浜の江田のアパートであった。そこは木造モルタル2階建てだったが、クーラーなどなかったので夏は蒸風呂のように暑かった。しかもすぐ近くにラーメン屋があったのでやたらとハエが多かった。たしか7月の終わり頃だったと思うが、台所がやたらと臭くなっているのに気付いた。悪臭の発生源を探すと、流しの隅のくず入れから、ツーンと鼻にくるような強烈な匂いが出ていた。恐る恐るくず入れを動かしてみると、その下に何十匹もの白い虫がうごめていた。「男やもめにウジがわく」とはよく言ったものである。その通りウジ虫がわいていたのである。僕は鼻をつまんで割り箸の先でくず入れを動かし、30分くらいかけて全てのウジを排水口へ押し流した。数日前に目玉焼きの食べ残しを捨てていたのが原因だった。それからは生ごみは、まめに捨てるようになった。また、笹塚に住んでいた時には、こんな事があった。そこは一応はマンションであったのだが、6畳の和室と6畳の台所という間取りであった。和室はあまり好きではなかったので、畳の上にカーペットを敷いてベッドを置いていた。夏になって、なんとなく部屋の中が、かび臭く感じるようになったので、原因を調べてみたら、部屋の片隅にあった床置き式のエアコンが水もれをおこして、それがカーペットから畳へ染込んでいたのだった。家具をずらして、恐る恐るカーペットをはがしてみると、畳一面に青や赤や緑のかびが生えていた。そして、なんと畳に接していた柱の根元には、白いキノコが数本生えていたのだった。一瞬、馬鹿な僕は、「食べられるかな?」と考えてしまった。結局、大家さんに連絡して畳屋さんに来てもらって畳を交換してもらい、エアコンは取り外してもらった。それ以来キノコが生えることは無くなったが、たまに心配になって何度もカーペットをめくって確認したりした。そういえば小学生の頃、給食に出たきらいな肉をこっそり机の中に隠したことを忘れてしまい、随分たった頃に思い出して机を開けたら、ゴキブリとかびの生えた肉が出てきたこともあった。結婚するときはきれい好きな奥さんをもらうしかないと思っている。