禁じられた色彩 築地のある会社に出向していた時に、その会社の女性を好きになったことがあった。当時、僕には付き合っている彼女がいたのだが、何故かその子に強く惹かれてしまった。その子はとりたてて美人ではなかったが、笑顔がとても素敵だった。毎朝、職場へ行くとその子の姿を無意識に探していた。そしてその子の笑顔を見ては「ああ、なんて素敵なんだろう」と心の中で呟いていた。彼女と一緒にいるときも時折、その子の事を思い出しては罪悪感にかられる事があった。「好きになってはいけない。」と何度も自分に言い聞かせたのだが、日増しに気持ちは強くなっていった。そして、何も言い出せないまま時間が過ぎていった。クリスマスが近づいたある日、僕は残業を終えて帰るために会社を出て駅へ歩きだした。すると10メートルくらい前をその子が歩いていた。ひとりではなかった。背の高い男と寄り添っていた。僕はその場に立ち尽くしていた。胸が締め付けれるように痛むのを感じた。その時、ふと聞き覚えのある音楽が耳に入ってきた。道端のビルから音楽が漏れてきていたのである。それは映画「戦場のメリー・クリスマス」のテーマであった。「戦場のメリー・クリスマス」と言えば、デビッド・ボウイ、坂本龍一、ビート・たけしらが出演した大島渚監督の名作である。音楽は坂本龍一なのだが、この曲に歌詞をつけて歌ったのが「デビッド・シルヴィアン」である。「禁じられた色彩」は当初シングルで発売され、後にシルヴィアンの「シークレット・ヒーハイブ」というアルバムに収録された。坂本龍一のメロディだけでも十分に素晴らしいが、そこにシルヴィアンのヴォーカルが加わるとより重厚な感じがして、味わい深い曲となっている。いまでも毎年、クリスマスの季節になるとこの曲を聴きたくなる。ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」と並んで僕のクリスマス・ソングなのである。僕は彼女がいながら他の子を好きになってしまったが、結局その子とは縁がなかった。そして、その時付き合っていた彼女ともいずれ別れることになってしまった。「禁じられた色彩」を聴く度に禁じられた恋の思い出がよみがえる