白骨事件 あれは確か小学3年生の頃だったと思う。そのころの僕は近所の友達たちとよく探検に出かけていた。子どもの頃は行動範囲が狭いので近所から少し離れると、そこには未知の世界が広がっていた。それは例えば戦時中の防空壕であったり、川の上流の小さな滝であったりした。その日の目的地は町のはずれにある空港であった。近所の友達と二人で期待と不安に胸をふくらませながら歩いていった。やがて地元の人に「ほげ」と呼ばれる大きな窪地のそばを通りかかった。その時である。友達が窪地の底を指さし「あっ!あれ何?」と言った。僕は彼の指さす方向に顔を向け目を凝らした。 窪地の底の雑草の茂みに白いものが見えた。何だろう、と思いがけのふちまで近づいて底をのぞき込んだ。「白骨だ。」と友達が呟いた。僕はまさかと思ったが、友達は「あれは絶対に白骨にまちがいない」と言い張った。そうこうしているうちに僕にもそれが何らかの骨であることがわかった。友達の顔色からは血の毛が引いていた。僕もなんだか恐くなってきた。「わあ!白骨だあ。」彼はそう叫ぶと一目散にもと来た方向へ駆け出した。僕も慌てて彼の後を追った。二人して家の近くまで息をきらしながら走って逃げた。やっとの思いで彼の家へ辿り着き、中にいたおじさんに「ほげに白骨があった」ことを伝えた。おじさんは最初は子どもの言うことだからと相手にしてくれなかったが、二人して真剣に訴えるものだから、とりあえず現場を見に行くことになった。おじさんの車で現場へと向かった。現場のそばに車を止め、窪地の底がよく見える地点まで近づいてみた。そこには大きな白い骨が転がっていた。僕と友達は「骨だ!骨だ!」と騒いだ。おじさんは私たちを残して底へおりていった。しばらくしておじさんが戻ってきた。おじさんの顔は少し笑っていた。そしてあきれた声で「たぶん魚の骨だね。」と言った。その言葉を聞いた途端、それまで大騒ぎしていた自分が恥ずかしく、またなんだかおかしくなり友達と顔を見合わせて「ははは・・・。」と笑ってしまった。「まあ、人の骨じゃなくてよかったということだね。」とおじさんに慰めの言葉をかけてもらい家路についた。しばらくしてその場所は宅地開発によって埋められてしまった。最近たまにその近くを車で通ることがあるが、その度に「あれは本当に魚の骨だったのだろうか? もしかしたら人の骨だったのかも。」などと考えてしまう。