3月の終わりに 今年で29歳になってしまう。来年はいよいよ30歳だ。30歳といえばもうおじさんと呼ばれる年齢ではないか。同級生の中にはそろそろ子供が小学校へ入学するやつも出てきたらしい。そういう人は30歳になっても許されるが、僕みたいな人間が30歳になっていいのだろうかと思う。お前みたいなやつは30歳になってはいかんと役所から言われやしないだろうかと心配している。数年前まで27歳までには死ぬつもりでいた。ジム・モリソンやジャニス・ジョプリンが死んだ歳で。けれど僕は生きている。現在は余分な寿命を生きているようなものだ。平凡なサラリーマン生活を営み健全な(と思っている)生活を送っている。「このままでいいのだろうか?」といった疑問に苛まれることさえまれになった。なにもかもに無感動、無関心になってきつつあった。このまま数年後には人並みに結婚して子供ができて・・・といった姿を想像していた。最近、若かった頃みたいにドアーズばかり聴くようになった。ああ、ジムは永遠にこのまぼろしの世界に生きているんだと思うと涙が出てくる。「水晶の舟」や「エンド・オブ・ザ・ナイト」を聞くと背筋がぞっとしてくる。いつもの事だがドアーズを聴きだすとしばらくは毎日続けて聴くようになってしまう。まるで病気にかかったみたいに頭の中でオルガンが鳴り、ジムが吠える。はじめてドアーズを聴いたのは数年前のことだ。友達が聴いてみればというので聴いてみたのだが「ブレイク・オン・スルー」を聴いた瞬間に「これだ!」と思った。僕が探し求めていた音楽がそこにあった。タイトでメタリックな演奏。非常に暴力的でありながら、知性を感じさせるジムの歌は何故か死の匂いがした。それからはまるでジムの亡霊にとり憑かれたようにドアーズにのめり込んでしまって現在に至っている。ジムは1971年7月3日、パリのアパートで謎の死を遂げた。享年27歳であった。彼の死の直後、彼の妻も後を追うように自殺してしまっている。仕事に区切りがついたらどこか遠くへ旅をしたいと思う。そうだ!パリへ行こう。ジムの墓へ花を捧げに、いや酒のほうが喜んでくれるか。ついでにNYへ行ってジョンのアパートへも寄ってくるか。それからジャニスの墓参りもしなきゃな。世界墓参り一人旅もおつなものかも。そんな事を考えながら今夜も「まぼろしの世界」を聴きながら眠りに就くことだろう。