初体験 僕が初体験したのは20歳の時だった。20歳というのは当時の平均よりちょっと遅いほうだと思う。その頃の僕は友達がみな初体験を済ませていたので少しあせっていた。そんな頃に友達の紹介である女の子と付き合うことになった。そしてその日は3回目のデートであった。僕は絶対に今夜はきめてやるぞと心の中で誓っていた。いまだから白状するが、計画的に終電がなくなるまで遊びまわり「さあ、どうしようか?」という状況にしてしまったのである。さらにオール・ナイトの映画じゃ疲れるからという最もらしい口実を使って、「何もしないからね」とホテルに泊まることにした。やっとホテルに入ることは出来たのだが、彼女のガードは思ったより固く「何もしないって言ったでしょ!」と言われてしまった。何度も何度もお願いした結果、やっと彼女のお許しが出て初体験の運びとなった。僕は事前に何度もホット・ドッグ・プレスを読んで研究していたのだが、いざ実戦となると勝手が違った。事の最中、黙っているのも何だか間が悪いから「何か言わなければいけない」と思ったが何と言っていいのかわからない。そういえばマニュアルには「愛の言葉をささやく」と書いてあったことを思いだし「愛してる」、「好きだ」を繰り返し繰り返し何度も囁いた。延々と30分以上繰り返していたのだから、はたからみたら相当間抜けである。後で彼女に「あの時は可笑しかったけど笑うのはかわいそうだから我慢していた」と言われてしまいとても恥ずかしい思いをした。セックス自体は正直いって期待していたほど気持ちいいものではなかったが、精神的には大満足であった。翌日、あまりに浮かれすぎて思わずクレジット・カードを紛失したくらいだった。実をいうとファースト・キスを体験したのはもっと遅かった。つまりキスをする前にセックスをしてしまったのである。たぶんこんな人はあまりいないだろうと思う。きちんと順序を踏めばよかったといまでも後悔している。