初恋 初恋という言葉には甘く切ないイメージがある。僕の初恋はいつのことだったのか、自分でもよくわからない。思い出せるかぎり恋の記憶を辿ってみよう。僕がはじめて女性を意識したのは4、5歳の頃だと思う。ほとんど何も覚えていないが隣に住んでいたひとつ上の女の子だったと思う。そして保育園に通っていた頃に同じクラスの女の子を好きだったのを覚えている。結構、早熟だったのかも知れない。小学校の頃もクラスに好きな女の子がいた。この頃は大体クラスが変る度に好きな女の子が変っていたように思う。恋愛で真剣に悩むことなどなく、ただ何となく好意を持っているという感じだった。中学生になってはじめて胸が痛くなるような恋をした。彼女の事を考えると胸がキュンとなって涙が出そうになった。これが恋なんだなと感心した記憶がある。そしてはじめて女の子からバレンタイン・デーにチョコレートをもらったのもその頃だった。その後はそのチョコレートをくれた女の子の事を意識しすぎてほとんど話しもできずに卒業してしまった。高校生になってはじめて女の子と二人でデートをした。しかし緊張してしまった僕はまともな会話をすることができなかった。結局、その女の子とは長く続かなかった。多分はじめて胸が痛くなった中学生の時の事が一般的にいう初恋というものなのだろう。彼女は同じクラスの女の子だった。背が低くてほっそりしていたが、性格は活発で明るい子であった。他の男子生徒も彼女に憧れているやつが結構大勢いた。その頃も僕はその子の事を遠くから見つめているだけで幸せだった。そして彼女との恋が結ばれる事を夢想しては楽しんでいた。ところがある日、彼女に好きな人がいることを友達に知らされた。彼女が好きだったのは同じクラスの学級委員をしているやつだった。成績だけは僕のほうがよかったが、その他では全然相手にならなかった。その日はとても悲しかった。夜ベットの中で彼女の事を思い胸が張り裂けるくらい痛んだのを覚えている。それからもずっと好きだったのだが彼女に対しては何のアプローチも出来なかった。やがて中学を卒業し別々の高校へと進み、会うことはほとんどなかった。それでもたしか高校を卒業する頃、自動車学校で一緒になり、僕が「東京へ行くんだ」と言ったら、何か言ってくれたと思う。何を言われたか覚えてないということは大したことではなかったのだろう。それ以来、彼女とは会っていないし別に会いたいとは思わない。いや会いたくないというのが本心である。それは彼女も僕と同じ歳だから恐らく結婚しているだろうし、また独身であってもあの頃とは変っているだろうからだ。あくまでも僕が好きだったあの頃の思い出のままでいて欲しいと思うのだ。もう二度と初恋はできない。しかしその時その時で恋の形は違うから、いつでも初恋みたいに新鮮な気持ちで恋ができればいいなと思っている。