類は友を呼ぶ 工場で働いていた頃に、火事にあったことがある。火事といっても、ぼや程度で済んだので大した事はなかったが、初めての事で、大変驚いたのを覚えている。当時、会社の寮に住んでいたのだが、その頃は六畳一間に3人で暮らしていた。本当は僕の部屋だったのが、友達が二人、布団を持ち込んで住みついていたのだ。夜になるとこたつを押し入れの中に押し込んで、三組の布団を川の字に敷いて寝ていた。そんなある晩の事である。夜中にHという友達が僕を起こしながらこう言った。「ねえ、ねえ、さっきトイレに行ったら、上の部屋から煙が出てたよ。」僕は寝ぼけながら、「魚かなんか焼いてんじゃないの?」と言ったが、彼は「部屋の前まで行ってみたけど、どうやら火事じゃないかな?」と言うのである。僕はやっと目が覚めてきて「それならなんで非常ベルを押さなかったの?」と尋ねた。すると彼は「だって面倒くさいもん。」というのである。「なんてやつだ」と思って、部屋の中で彼と言い合っているうちに非常ベルが「ジリリリリリーン」と鳴ったかと思うと、誰かがドアを叩いて「火事だ!」と叫んだ。僕はぐっすりと寝ていたもう一人を起こして逃げようと思い部屋のドアを開けた。廊下は煙が立ちこめていて、真っ白でほとんど何も見えなかった。とにかく廊下の床を這うように走って玄関までたどり着いた。ほとんどすぐに消防車が到着し、銀色の防火服に身を包んだ消防士が火元の部屋へと走っていった。しばらくして煙は見えなくなった。結局、大した火事にはならず、火元の部屋を焦がしただけで済んだようであった。その間、寮の住人は皆、玄関で待っていたのだが、酔っ払って寝ていたのを起こされた僕の友達は大声で「どうでもいいけど、寝せてくれよう〜」とわめいていた。翌日、彼は寮長に怒られることになるとも知らずに。火事の原因はたばこの不始末で、火を出した人は寮を追い出されてしまった。部屋の中はかなり汚かったらしく、たばこの吸い殻が山のように積まれていたらしい。それにしても火事を見つけて放っておくやつと、自分勝手に寝かせてくれとわめくやつが自分の友達であったことは、多少情けなかった。しかし、類は友を呼ぶという言葉があるから、自分もきっと同類なんだろうなと思うと、まあいいかと許す気になった。そういえば、きちんとGパンをはいて避難していたのは僕くらいであった。