ジ・エンド 仕事を終えて部屋へ帰り着いた。明かりをつけると、テーブルの上に一通の手紙が置いてあった。着替えもせずに手紙を手にとり封を開けた。彼女からの手紙で内容は気持ちの整理がついたのでさようならというものであった。こうなることはわかっていたし、こうなるように自分で仕向けたのである。しかし現実にこうなってみると、とても虚しかった。「これでいいのか」、「これでいいんだ」と何度も自問自答を繰り返した。部屋の中から彼女の荷物はすべて姿を消した。もう何も残っていない。僕は一枚のCDをかけた。ドアーズのファースト・アルバムである。11曲目をセットしスタート・ボタンを押した。「ジ・エンド」が流れた。ジムの声が聞えてきた。「これで終わりだ。 美しい友よ。 これで終わりだ。 ただ一人の友よ。 これで終わりだ。      ...」静かな演奏を背に、語りかけるようにジムは「これで終わりだ」と繰り返し歌った。この曲はF・コッポラ監督の「地獄の黙示録」のオープニングとエンディングに使われた曲である。ジム・モリソンとコッポラはUCLAでの同級生で、ジムの生前に共同で映画を撮る話しがあったらしい。余談だが、この曲はあのブルーザー・ブロディーが殺された後、全日本プロレス中継で追悼のために何度も流されていた。「ジ・エンド」を聴きながら、これですべてが終わったんだと思った。もう僕には、愛する人も愛してくれる人もいなくなった。真っ暗な空を眺めながら「ジ・エンド」を口ずさんだ。