恋はタイミング 工場に入社してすぐの頃の事である。友達が「おまえと話しをしたいという子がいるけど、どうする。」と言ってきた。その頃僕には付き合い始めたばかりの彼女がいたので断るべきだと思い、友達に断ってくれるように頼んだ。しばらくして僕の職場に仕事中、僕の方ばかり見ている女の子がいることに気付いた。視線を感じて振り向くとその子と目が会うことが度々あった。しかし鈍感な僕は「なんで、あの子は僕の方を見るんだろう。」くらいにしか思わなかった。心の奥では「もしかしたら彼女は僕のことを好きなのではないか。」と思ったが、それ以上考えることも行動することもなかった。彼女の名前はたしか「みゆき」であったと思う。数ヶ月後、僕は付き合っていた彼女から突然ふられてしまった。そしてそれから女性との縁がぱったりとなくなってしまった。入社直後には何人かの女の子が好意を寄せていてくれたらしいのだが、僕はすぐに彼女ができたので他の子には全然見向きもしなかった。それがまずかったのではないかと後悔したが、もはや遅すぎた。そのうちに「みゆき」と目が会うこともなくなっていた。好きな女の子がいない状態が長く続いたが、僕の心は少しずつ「みゆき」に傾いていった。彼女の姿をみかけるだけで胸がどきどきし、顔が赤くなるほどであった。僕は遠くから彼女の姿を見つめていた。しかし彼女はもう僕には全然関心がないらしく、決して振り向いてはくれなかった。友達にあの時僕と話しをしたがっていたのが「みゆき」であったと聞いたのはずっと後になってからであった。僕にはこれと同じような経験が何度もある。女の子が僕に好意を寄せてくれているときには全然それと気付かずにいて、僕がその子に好意を抱きそれを打ち明けられずに諦めたあとでに、実は以前その子は僕の事を好きだったと人を通じて聞かされたりするのである。僕の恋愛はいつもタイミングが悪い。きっと一生そうなんだろうと思う。人の気持ちを理解する能力と自分の気持ちを伝える能力が足りないのかも知れない。一度くらいジャスト・タイミングな恋をしてみたいものである。