ふられた話(PART3)

   「2度ある事は3度ある」とはよく言ったものだ。
僕が2度目にふられてから3年後に、3度目がやってきたのだから。

その相手の女の子とは、友達の紹介で知り合った。
決して美人ではなかったが、性格のいい子で、何度か会ううちに僕は彼女に恋をした。
そしてきちんと付き合うようになり、たまには喧嘩もしたが、
会社でも公認のカップルとして付き合いを重ねていった。
半年ほどたったころに、僕はそれまで住んでいた会社の寮を出て、アパートで暮らし始めた。
目的はもちろん彼女との時間を長く持ちたいからであった。
引越しした頃は、デパートへ一緒に食器や生活用品を買いに行ったりして、
まるで新婚夫婦みたいな楽しい時間を過ごした。
が、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
彼女は、会社の寮に住んでいたのだが、僕が夜電話しても外出してることが多くなったのである。
「あれ?」と思いながらも、ただの偶然だろうと思っていただが、
連絡がつかない日々が続いていくに連れて不安になってきた。
二週間くらいたったある日にやっと電話に出た彼女は元気がなかった。
「どうしたの?」
「ううん、別に・・・」
「最近、電話してもいつもいなかったようだね?」
「うん、色々あって忙しかったの」
「ふうん・・・」
といった会話の後で、急に彼女の態度が変わったことに気づいた。
泣いているわけではなく、半分怒ったような口調になり
「もう、会いたくない。」
と言われてしまった。
あまりの突然のことに僕は動揺し、
「ど、どうしたの?」
「何があったの?」
「俺は別れたくないよ」
と矢継ぎ早に言葉を発した。
とにかく電話じゃ埒が空かないと思ったので、
「これから、そっちに行くから。駅前で待ってる。」と告げて、駅まで走り電車に飛び乗った。
時計を見たら午後9時少し前だったので、門限にはまだ1時間はあった。
彼女の住む駅で電車を降りた僕は、駅前の電話ボックスから女子寮へ電話をかけ、
彼女を呼び出してもらった。
が、しかし、彼女は電話に出ず、代わりに友達が「会いたくないって言ってますよ。」と言った。
「とにかく、駅前で待ってるんで、来てくれるように伝えて下さい。」とだけ言って電話を切り、
駅前のビルのシャッターの前で彼女が現れるのを待った。
冬の冷たい風が僕の体に容赦なく吹き付けた。
結局、3時間ほどそうしていたのだろうか?
僕はとうとう諦めて最終の電車に乗ってアパートへ帰った。
翌日、僕は彼女に手紙を書いた。
内容は「君を愛している。結婚しよう。」というものであった。
しかし、彼女からの返事はこなかった。
それから数日が過ぎた頃、友達のおかげでようやく彼女と会う機会がもてた。
僕はアパートの部屋で彼女が来るのを待っていた。
「コンコン」というノックにドアを開けると、そこには彼女が立っていた。
僕はできるだけ明るく「やあ。久しぶりだね。」と話しかけた。
彼女は、それには答えず、「失礼します。」と言って部屋へ上がってきた。
テーブルを挟んで座った彼女は、持っていたバックから2つの包みを取り出し、
テーブルの上に並べた。
ひとつは指輪、もうひとつはバックであった。いずれも僕が彼女へ贈ったものだ。
「え・・・」
「どうもお世話になりました。」
そう言って立ち去ろうとする彼女に、僕は
「ちょっと待ってよ。何が何だかわかんないよ。きちんと説明して!」
と少し強い口調で言った。
彼女は「あなたのことが嫌いになったの。」とはっきり言った。
「そんな・・・。俺はこんなに好きなのに・・・。」
と、力なく呟いた僕に彼女は止めの一撃とばかりにこう言った。
「あなたの愛が重荷なの。」
その言葉を聞いた瞬間、すべてが終わったことを僕は悟った。

帰ろうとする彼女に「こんなもん、俺が持ってても仕方ねえだろ。」と無理矢理バッグを持たせた。
彼女は逃げるように僕のアパートから去って行った。
テーブルの上には、指輪だけがポツンと寂しそうに残っていた。
僕は指輪を掴むと、アパートの窓から、彼女が走り去った方向の空へ向かって投げた。

とまあ、これが3度目のふられた話である。
どこにでも転がってるような話だが、当時の僕にとっては世界の終わりに等しい事件であった。

この”ふられた"事件の後、僕は極度の女性不信に陥ってしまい、
”不毛の2年間パート2”を過してしまうのであった。
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