青春

 僕は今年で34歳になろうとしている。
ついこの間まで高校へ通っていたような気がするが、それはもう20年近く前のことなのである。
一生彼女なんてできやしないんじゃないか?と悩んでいた、にきび面の少年は、
白髪混じりの頭を書きながら、少したるんだお腹を気にしている「おやじ」になってしまった。
まあ、まだ結婚してないんで、同級生の中じゃ若いほうだとは思っているが、
あんまり変わらないのかもしれない。

少し前のことだが、テレビから流れてくる曲の中に、すごく気になる曲があった。
それは「だんご三兄弟」でも、宇多田ヒカルの曲でもない。
ニュースステーションで流れていた「THE YELLOW MONKEY」の「SO YOUNG」という曲である。
はじめて耳にした時から、どこか懐かしさを持つメロディーが耳に残った。
特にサビの部分の「それはなんて青春」という歌詞が心に引っかかった。
それからはCDショップに寄る度に買おうか買うまいか悩んだのだが、数度目についにシングルを購入した。
家に帰り、ラジカセにCDをセットしその曲を聴いた。
「THE YELLOW MONKEY」については以前から、どこか引っかかるような独特のメロディーに
興味があったのだが、自分でCDを購入することになるとは思ってもいなかった。
改めてじっくりと聴いてみて、この「SO YOUNG」という曲には、どこか70年代や80年代の始め頃の
雰囲気があると思った。
そう、僕が青春していた頃である。
その頃、流れていた音楽と、どこか似たような感じを受けたのである。

この曲のラストの部分にこういう歌詞がある。
「誰にでもある青春 いつか忘れて記憶の中に死んでしまっても
 あの日僕らが信じたもの
 それはまぼろしじゃない」
そう、青春というものは誰にでもあるのである。
青春の過ごし方は千差万別だったかもしれないが、みんな甘くて切ない青春を過ごしたはずだ。
僕の場合、青春は片思いの歴史であるが、いまでもたまに思い出すことがある。
夜、星空を眺めていて思い出すこともあれば、
街中で高校生のカップルを見かけたときに思い出すこともある。

じつは、僕は高校卒業以来、一度も同級生に会っていない。
正確にいえば、数人とは偶然、再会しているのだが、同窓会といったものには一度も顔を出していない。
高校卒業と同時に上京したのが大きな理由の一つであるが、本当の理由は別にある。
決して現在の自分の姿を見せることが恥ずかしいわけではない。
それは、昔、好きだった女の子に会いたくないのだ。
僕が憧れていた女の子が、結婚し、母親になった姿を見たくないのだ。
一番輝いていた頃の姿を、僕の思い出にしておきたいのである。
もし、現在の彼女らに会ってしまったら、その思い出が萎んでしまうんじゃないかと思えるのである。
青春は心の引き出しにそっとしまっておいてこそ、いつまでたっても忘れないのではないだろうか。
こえからも僕はたぶん、同級生達と現実に会うことはないだろう。
それでいいのだと思う。
すべての青春は思い出の中に、いつまでも輝き続けるのだから。
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