方向音痴

 自慢するわけではないが、僕は方向音痴である。
つい先日も都庁近くで迷ってしまい、飛行機に乗り遅れるはめになったばかりだ。
いつ頃からそんな人間になったのか覚えていないが、子供の頃からよく道に迷っていたようだ。
小学生の頃、よく買い物に行っていた商店街があった。
そこは小さなアーケードがあって、本屋さんが向かい合っていた。
僕は母がスーパーで買い物している間は一人でこの本屋にいることが多かったのだが、
ある程度漫画を立ち読みして外へ出ると自分が右から来たのか左から来たのか
わからなくなることが度々あった。
普段の生活では山や周りの風景で方角を判断していたので、道に迷うことは少なかったのだが、
山が見えない場所に行くと、もう全然だめであった。
当然、地下街は最大の苦手であって、一旦地下街に入ってしまうと目的の出口から地上へ出ることは
非常に困難な作業であった。
とりあえず地上へ出ては、場所を確認して、再び地下へ降りる。
そしてまたとりあえず地上へ出てといったことの繰り返しであった。
ある時、友達と二子玉川の高島屋へ行ったときは悲惨であった。
地下街へ降り買い物を済ませたまではよかったのだが、駅へ向かう出口がわからなくなってしまったのだ。
あちこちさまよい歩き、1時間くらいかけてようやく駅の近くに出たのであった。
それから、これはもう時効だと思うが、2年ほど前に僕は仕事関係の飲み会に誘われたことがあった。
参加することにした僕は当日、時間に余裕があるように早めに家を出た。
念のために会場である居酒屋の地図と電話番号のメモも持って行った。
しかし・・・店が見つからないのだ。
たぶん、このあたりだろうと思われる付近を何度も行ったり来たりしながら、
一軒一軒チェックしていったのだが見つからない。
そんなことをしている間に飲み会の時間になってしまった。足はくたくた、頭がぼぉっとした状態で、
ついに店に電話をした。
そして店員に場所を聞いて指示された通りに探したのだが、それでも見つからない。
30分ほど探してから、また店へ電話したら、さっきと同じ店員が出た。
また詳しく教えてもらい、「今度こそ!」と思い直して探してみたが結局見つからなかった。
すでに飲み会の開始時間はとうに過ぎ去り、終了の時間が近づいていた。
とうとう僕は諦めて家路についた。
へとへとになって帰りついてから、もう一度、店へ電話し、今度は幹事を呼び出してもらい
「急用が出来ていけなくなった」と嘘をついてしまった。
だって、店がわからなかったなんて恥ずかしくて言えなかったのだ。

これはお願いだが、僕を知らない場所へ誘う場合は、詳細な地図を用意していただきたい。
そうでないと、また「急用でいけなくなった」と言わなきゃいけないことになるかも。
ああ、自分が情けない。
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