毛ジラミ

 世の中には思いもよらぬところで思わぬ病気をもらったりすることがある。
僕が「毛ジラミ」になったのも、思いもよらぬ事が原因だった。
「えぇ、フーゾクじゃないの?」とか「どっかのお姉ちゃんにもらったんじゃない?」
と思われるかも知れないが、そうではなかったのである。本当に。
数年ほど前に仕事で上京した僕は、その日の仕事を済ませて予約しておいた
ビジネスホテルへとチェックインした。
部屋に入ると、シャワーを浴びてTシャツにパンツという格好のまま、ベッドの上でリラックスしていた。
エッチビデオを見ようかと思ったが、何とか思いとどまり普通のテレビを見て過ごした。
そのうちに眠くなってきたので布団にもぐりこみ、いつのまにか眠ってしまった。
翌日は土曜日だったのでゆっくり起きてチェックアウトを済ませ、お昼の便で熊本まで帰った。
何のことはない、いつもの出張であった。ただ一点僕の下半身を除いては。
自宅に帰り着いてスーツから楽な服装に着替えくつろいでいると何だか股間がむず痒くなってきた。
何だろうと思いパンツを脱いで背中を丸めて痒い部分をじっと見てみた。
しかし特に普段とかわりなかったので、またパンツを履き夜になった。
シャワーを浴びるときに「もしや、また、いんきん?」と思ったので、念入りに石鹸をつけて股間を洗った。
寝る前にもう一度チェックしてみたのだが「いんきん」の気配がなかったのでそのままベッドへ入った。
ところがベッドへ入ってしばらくしたら強烈に股間が痒くなってきた。
「何だ!」と思いベッドから出て部屋の灯かりをつけ、
さらに電気スタンドを用意して痒い部分を観察してみた。
どうやら痒いのは陰毛の付け根あたりで、よーく見ると小さく赤くなっている部分があった。
さらにその周囲の陰毛の付け根が白く皮膚がはがれているように見えた。
指先で取ろうとしたのだがなかなか取れないので、毛抜きを持ち出しその白いものをつまんでみた。
やっと毛抜きの先にはさまり白いものが取れたのでテーブルの上に置き目を凝らしてよく見てみた。
何とそれは皮膚ではなく脚がたくさんあってウジャウジャと動いているではないか。
「毛ジラミ」という言葉が脳裏をよぎった。
「そんな馬鹿な。」と思ったが、昨夜泊まったホテルがあまりきれいではなかったことを思い出した。
おそらくベッドか布団に「毛ジラミ」がいたのだろう。
そしてそれがいまや僕の股間にいるのだ。
「どうしよう。」と思ったが多分一匹だけじゃないはずだと思い、他にいないか探すことにした。
なかなか見えにくいのでハサミで陰毛を短くカットし顔を近づけて一生懸命に「毛ジラミ」を捜索した。
結局、5、6匹の「毛ジラミ」を発見しすべて除去することに成功した。
土曜の夜中にいい年した男が、下半身裸で毛ぬきを片手に陰毛をかき分けている姿は、
ハタから見れば相当、情けないものだったに違いない。
やがて「毛ジラミ」の姿が見つからなくなったところで股間だけシャワーで洗った。
さらに「毛ジラミ」といっても虫であるから熱には弱いだろうと考え、ドライヤーを強にして陰毛を乾かした。
もう大丈夫だと思いベッドへ入った頃にはもう外が明るくなりかけていた。
みなさんも出張や旅行でホテルに泊まられる際にはくれぐれも注意していただきたい。
それからもし「毛ジラミ」になったとしても、早期に退治してしまえば大したことないんで
少しでも痒いと思ったらチェックしてもらいたい。
それにしても「毛ジラミ」って何であんなところに生息してるんだろうか。
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