親友

 人生の中で本当の友達と出会うのはそう多くはないと思う。
僕の人生の中で本当の友達と呼べるのは一人だけだと思っている。
彼と出会ったのは高3の就職試験の時だった。
試験を受ける者は全員会社の寮に泊まったのだが、同室の中に一人だけ遅れてきたやつがいた。
それが彼だった。
それから無事、就職し彼と再会した。
彼は新潟県人で血液型はA型だった。
話しをするうちに趣味が近いことがわかった。
まず第一に巨人ファンであった。そしてさらにプロレスや相撲など格闘技が好きだった。
そしてなによりロック・ファンであった。
しかも自分など足元にも及ばない筋金入りだった。
とにかくレコードを何百枚も持っていたし、色々なことを知っていた。
僕は素直に尊敬した。
さらにアニメが好きで、あの「戦闘メカ・ザブングル」が大好きで本まで持っていた。
とにかく彼と話すと話しが尽きないし、感性が近いのか同じことで面白がったりした。
そのうち寮の中で私が一人部屋へ移ると、いつのまにか彼が布団をもちこみ住みついてしまった。
誤解のないよう断っておくが彼とは肉体関係はなかった。
お互い女性が好きだったし、彼にはちゃんと彼女がいた。(僕には・・・)
まあ、僕が交替勤務だったので、彼にとっても半分自分の部屋だったのだろう。
その頃の僕は生きるのに悩んでいた。
毎日、死ぬことばかりを考えて生きていた。
自殺しなかったのは彼がいたおかげだと思っている。
そのうち彼は寮を出ていった。
当然会うのは会社だけとなったが、僕が早番のときは昼休みに近況を報告しあっていた。
また、泥沼の生活から救われるきっかけを作ってくれたのも彼だった。
彼が知り合いの女の子を紹介してくれて、その子と付き合うことができ、
僕はやっとはい上がることができた。
それから僕が会社を辞めてぶらぶらしていたときにレコードをくれた。
ツェッペリンの「IV」とスプリングスティーンの「明日なき暴走」である。
その後も定期的にお互い部屋に泊まりに行ったり、コンサートやプロレスを観に行ったりした。
その間にお互い何度か恋愛したり、同棲したりしながら成長していった。
現在は彼も郷里へ帰り、僕も熊本へ戻ったので滅多に連絡はしていない。
しかし、彼とならばいつどこで再会したとしても親友に戻れると思う。
彼には非常に感謝しているし、尊敬もしている。
僕も結婚したら(するかしないかわからないが)一度、新潟まで彼を訪ねてみようと思う。
彼はいつもの調子でこう言うだろう。
「おう、来たか。まあ入れや。」
TOPへ戻る