華麗なる天才
今年は日本サッカー界にとってW杯初出場という記念すべき年である。
そんな年にJリーグデビューを果たしたひとりのスーパールーキーがいる。
浦和レッズの小野伸二18才である。
Jリーグ全チームとオランダのアヤックス、イタリアのユベントスといった海外の
名門クラブからも誘われた逸材である。
雑誌等のマスコミが、凄い凄いと騒いでたのは以前から知っていたが、
正直言って僕は彼の実力を疑っていた。
いくら超高校級といっても、プロのレベルでは新人なんだし、
そこそこやれるかな?くらいに思っていたのである。
しかしTVで実際の小野のプレーを目にした瞬間に自分の考えの誤りに気がついた。
まず彼の体に驚いた。
175cmという身長は決して大きくはないのだが、がっちりと鍛え上げられた肉体は
先輩Jリーガを凌いでいた。
そしてゲームが始まり、彼がプレーする度に驚きは喜びへと変わっていった。
ゲームが進むにつれて胸が踊るというかわくわくしてきた。
僕は実際にはサッカーの経験はほとんどない。
学校の体育の時間と社会人になって草サッカーをほんの少しかじっただけである。
しかし見るほうは日本リーグの木村、水沼、原らのプレーや、マラドーナ、ルンメニゲ、
プラティニの全盛期を見てきた。
そしてJリーグが始まり、ジーコ、リネカー、ストイコビッチといった超一流のプレーも見てきていた。
そんな僕にとって小野のプレーは驚きだった。
たしかに90分間全体で考えれば、スタミナや守備などでまだまだ課題は多い。
岡田監督も「スピードについていけてない」と言ったそうだが、それもたしかにあると思う。
しかし、パスを出す瞬間やドリブルする瞬間の小野は、そんなマイナスを補ってあまりある
輝きを見せてくれる。
プレーのひとつひとつが華麗なのである。
いまや人気No.1の中田も素晴しい選手だと思うが、彼がデビューした時はこれほどの驚きはなかった。
しいてあげれば名古屋の小倉を初めて見た時すごいと思ったのが近いと思う。
ほとんどのパスをダイレクトで出すのだ。それも実に柔らかくそして正確に。
そしてパスを出す相手がいない場合は、ペナルティエリアまでドリブルで持ち込みシュートを放つ。
18才でこのプレーができるのだ。まだまだ発展途上にあるから数年後にはどんなプレーヤーに
なるか想像もつかない。
僕は勝つためだけのサッカーはあまり好きではない。
どちらかといえば魅せるサッカーのほうが好きである。
華麗なパスやドリブル、そして豪快なシュート。
スピードのあるカウンターとそれを止める激しいタックル。
それらが混在しながらサポーターも興奮しスタジアムが揺れるようなゲームが見たいのだ。
Jリーグの人気が盛り上がらないのは、ずばり試合がつまらないからだと思う。
しかしこれからしばらくは小野の登場によってJリーグの試合も面白いものになると思う。
なぜしばらくかというと、小野には近い将来海外でプレーさせたいからだ。
プレースタイルから言って、オランダかスペインがいいと思う。フランスあたりでもいいかもしれない。
イタリアはその後がいいと思う。
W杯には出場するかどうか微妙なようだが、岡田監督にはぜひ小野をフランスへ
連れていってもらいた。
日本にもこんなすごい選手がいるんだということを世界に知る日が近づいている。
がんばれ華麗なる天才、小野伸二。
がんばれ日本代表。