配達されないラブレター

 ここに一通の手紙がある。
机を整理していてノートにはさんであった手紙を偶然に見つけてしまった。
何だろうと思って開いてみたら、それは僕の字でかかれた愛の告白だった。
以前に書いたものだが、ポストに投函されることなく僕の机の引き出しに眠っていたものだ。

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XXXさんへ

僕は君のことが好きだ。
君はたぶん気付いていないと思うけど、本当に君が好きだ。
僕は君と目が会った瞬間から、
まるで魔法にでもかかったように君の事ばかり考えるようになった。
車で走っている時も、
仕事をしてる時も、
夜眠りにつくまで、
いや、夢の中でさえも君の事を考えている。
いままで何度か恋したことあるけど、
こんなにも好きになってしまったのは初めてのことだ。
君に会いたい。君に触れたい。君を抱きしめたい。

君のことを好きになってから、僕は付き合っていた彼女と別れた。
だから君にその責任を取ってほしいなんてことは言わない。
だけど、それだけ僕が真剣だということをわかってほしい。
本当に世界中の誰よりも君のことだけを愛している。
君と話しがしたい。君を守りたい。君と過ごしたい。

このあいだ君の夢を見た。
夢の中で君は僕に微笑んでくれた。
僕は微笑みながら、やさしく君の髪をなでた。
夢から覚めたとき、それが現実だったらどんなに幸せだろうと思った。
いつの日かきっと君をこの僕の腕で抱きしめる日が来ることを願っている。
君に会いたい。君に触れたい。君を抱きしめたい。
君に会いたい。君に触れたい。君を抱きしめたい。

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いま読み返してみると、なんという大袈裟な文章なんだろうと恥ずかしくなってしまった。
まるでくさいフォークソングの歌詞みたいじゃないか。
でも、その頃の気持ちが素直に表現されているなとも思った。
結局、この手紙は書くには書いたが出す勇気がなくて引き出しにしまったものである。
当然、相手には気持ちを伝えることは出来なかった。そして時間だけが過ぎてしまった。
この手紙は永遠に投函されることはない。ということは永遠に相手に届くことはない。
配達されないラブレター。
いまとなってはいい思い出である。
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