孤高のギタリスト マイケル・シェンカー

 もう10年近く前にたくさん本を読んだ時期があった。
工場で働いていた頃に寂しさを紛らすために書店へ通い、
その度に何冊かづつ本を買っていた。
とくにヘルマン・ヘッセの作品は出版されているものはほとんどすべて買い揃えて読んだ。
なぜヘッセなのかというと非常に単純な動機なのだが、
当時好きだった斉藤由貴が雑誌で最近読んだ本ということで「車輪の下」をあげていたのと、
マイケル・シェンカーが影響を受けた作家であるということを以前、友達に聴いていたからである。
最初に読んだ作品は「車輪の下」であった。
主人公と自分が重なって感じられ心の中に強烈な印象を与えた。
そして最も感動したのは「愛の嵐」という作品であった。
主人公は若い頃の軽はずみな行動のために体が不自由になってしまう。
つらい人生を歩むが音楽とゲルトールトという美しい女性と出会い希望に満ち溢れる。
ところが最愛のゲルトールトを親友に奪われ自殺を決意する。
ところが突然父親の危篤の知らせが入り死ぬことさえできなかった。
そこで彼は「すべてを諦めることが幸福である」と気付き以後諦観に達するのである。
というのがあらすじであるが、この作品を読んだ時は本当に涙が出て止まらなかった。
また「メルヘン」という短編集もなかなかすばらしい作品が収録されている。

マイケル・シェンカーは「シッダルタ」という作品に影響を受けたらしい。
この作品はタイトルどおりシッダルタ(若い頃の釈迦)の物語である。
孤高のギタリストと呼ばれるマイケル・シェンカーらしい話しである。
10代でUFOのギタリストになり、「ドクター・ドクター」や「ロック・ボトム」
といった名曲を作り天才と呼ばれた。
しかし言葉の問題等(彼はドイツ人、他のメンバーはイギリス人)で精神的に疲れ果て
ドラッグやアルコールに溺れ行方知れずとなってしまう。
しかししばらくのブランクの後、病院で徹底的に治療し、MSGを結成しアルバム「神」で復活を遂げた。
けれどその後もメンバーが固定せずに毎回違うメンバーでアルバムを作っている。
数年前に一度だけ彼のライブを見る機会があった。
その時もメンバーが代わったばかりで100%のステージとは呼べなかったが、
「ドクター・ドクター」や「ロック・ボトム」での彼のギターは素晴らしかった。
彼のプレイの特徴はドイツ人らしい職人気質とでも呼びたくなる非常に正確なピッキング
とクライベイビーを多用した独特の物悲しい音色にあると思う。
しかしそれ以上に彼の抱えている精神的なものが聴くものに感動を与えるのだろうと思う。
最近はまたあまりパッとしないようだが個人的にお願いするとすればクラウス・マイネや
ルドルフ兄さんといった気心が知れたメンバーで好き勝手にギターを弾きまくって欲しいと思う。
そうしたら絶対アルバムを買ってあげようと思っている。
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