超獣と呼ばれた男 ブルーザー・ブロディ

 この4月から全日本プロレス中継が30分番組になってしまった。
土曜の午後8時というゴールデン・タイムで放映されていたのは夢だったのだろうか?
僕も最近は殆どプロレスを見なくなった。
深夜の放送ということもあるが、好きなレスラーがいなくなったのが大きな理由である。
もし彼がリングにいたら、僕はどんな夜中であろうともテレビにかじりついてプロレス中継を
見ていただろう。

彼とは、超獣ブルーザー・ブロディである。
はじめてブロディの試合を見た時の事は、いまでもはっきりと覚えている。
バトルロイヤルに出場したブロディは日本人レスラー二人に上に乗られてフォールされそうになった。
すると彼はあっという間に両方の太い腕で、その二人を一度に弾き飛ばしたのである。
まさに一瞬にして吹き飛んだという感じであった。
僕は何とすごい怪力レスラーがやってきたんだろうと思った。
身長197センチ体重135キロの鍛え上げられた肉体はまるでダビデ像であった。
長髪をなびかせ野獣のような雄叫びをあげ、チェーンを振り回し登場し、
リングを壊さんばかりにロープを揺する試合前のデモンストレーションは迫力満点であった。
また世界最強タッグでは、タッグを組んでいた野獣ジミー・スヌーカと仲間割れを起こしてしまい、
壮絶な大乱闘を繰り広げた。
その後、彼は親友のスタン・ハンセンと最強タッグチームを結成した。
このタッグチームは鶴龍コンビを子供扱いしたかと思うと
ファンクスとの対戦では相手が死んでしまうのではないかと思えるくらいのファイトを展開した。
特に場外でマットを外してのドリーへのパイルドライバーには戦慄を覚えた。
まさしく史上最強のタッグチームであった。

そして電撃的な新日マット登場。
「運命」をBGMにスーツ姿でリングに登場した時のことは鮮烈に覚えている。
それから幾度となくツッペリンの「移民の歌」でリングに現れ猪木との死闘を演じた。
その後、再び全日マットへ戻り鶴田、天龍と名勝負を繰りひろげた。
そしていよいよ盟友ハンセンとの対決を目前に控え、プエルトリコで不慮の死を遂げた。
以前からブロディに対して敵意を持っていたレスラーの凶行であった。
超獣、キングコング、インテリジェンス・モンスターなどと呼ばれ
無敵に思えた男にも死はあっけなく訪れた。
ちなみに彼はユダヤ人であったのだが、同じユダヤ人であり彼が親しくしていた
鉄の爪フリッツ・フォン・エリックの息子達もほとんどが悲劇的な死を迎えている。
何か運命的なものを感じてしまう。

ブルーザー・ブロディは、とにかくかっこよくて強かった。
僕の憧れのレスラーだった。
彼の死後、スタイルだけをまねたレスラーがたくさん出てきた。
僕は大変腹立たしい思いをしている。
いくら体が大きく力が強くてもブロディとくらべたら月とスッポンの世界である。
もう二度と彼のようなレスラーは出現しないであろう。
そんなことを思いながらも週間プロセスを立ち読みしてしまう僕であった。
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