しめ忘れたチャック

 時々、スボンのチャックを閉め忘れることがある。
大抵は自分で気が付いて、こっそり閉めるのだが、たまに人に指摘され頭をかきながら閉めることもある。
たしか中学生の頃だったと思う。
昼休みであったか、放課後であったかは覚えていないが、教室で女の子達が数人集まってキャッキャと騒いでいた。
その中にその頃好きだった子がいたので、僕はいつもするように、少し距離を置いて彼女の姿を見つめていた。
しばらくして彼女と目があった。
何故か彼女の顔が少し赤くなっていた。
明らかに僕に対して何か言いたそうであった。
「もしかしたら彼女は、僕に気があるのではないか?」と思い、胸がどきどきした。
すると彼女は、友達と離れ僕の方へと近づいてきた。
僕はいよいよだと思って、思い切り緊張した。
彼女は言った。
「窓、開いてるよ。」
一瞬、意味が判らなかったがすぐに僕は気付いた。
恥ずかしさで顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。
あわてて反対側を向いてチャックを閉めた。
教室中が笑っているように感じられた。
母と妹以外の女性にチャックが開いていると指摘されたのは、後にも先にもこの時だけであった。
いま考えてみると、チャックが開いているからといって、シャツかパンツが見えるくらいなんだから
別にそんなに恥ずかしがることはなかったのではないかと思う。
そりゃ、僕のゾウさんがコンニチワしてたら恥ずかしいけど。
たぶん僕は、チャックが開いていた事よりも、女の子の行動を勘違いした事のほうが
恥ずかしかったのだろうと思う。

僕は色々と勘違いすることが多いほうだと思う。
女の子とちょっとでも目があっただけで、この子は僕に気があるんじゃないだろうかとか、
逆に目をそらされただけで嫌われているのではと思ってしまう。
以前、友達に「深読みのO」と呼ばれたくらい、物事を深く考えてしまうので、勘違いも多いのだろう。
慎重に行動しなければいけないと思っている。
最近はチャックを開けっ放しにすることは殆どなくなったと思う。(鈍くなっただけかも?)
ただシャツやパンツを裏返しに着たり、左右別々の色の靴下を履いてきたりするのは
日常茶飯事だが。
そういえば小学校の頃、割り算をすべて掛け算で答えて0点をとったことがあった。
基本的に「おっちょこちょい」なんだろう。
まあ、少しくらいは愛敬と思って許していただきたいと思う。
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