もうひとつの世界

 僕は時々、意味不明な夢を見ることがある。
先日見た夢もそんな夢であった。

その夢の中で僕は学校の廊下を歩いていた。そう、僕は高校生になっていたのだ。
僕の隣には体の大きな友達が一緒だった。あまり覚えていないが何か話しをしながら
歩いていたと思う。
階段のところまできたところで、誰かが僕の大腿部の後ろを蹴ってきた。
2,3回蹴られたところで、「何すんだよー」と僕も相手を蹴り返した。
相手は背は僕とあまり変わらなかったが、がっしりと体格でいかにも強そうであった。
彼は怒り爆発という感じで、廊下にたむろしていた彼の部下らしき生徒に
「おい、人集めろ!」と命令を発した。
僕は一瞬のうちに僕のほうが圧倒的に不利であるという状況を悟った。
ここは平和的な解決しかないと判断した僕は、彼に向かって
「何で俺が蹴られなきゃいけないの?」と聞いた。
すると彼は「自分の胸に聞いてみろよ。」と答えた。
僕は一生懸命、考えたのだが、何も理由が浮かばなかった。
(当たり前である。夢の中で起こることに正当な理由なんてあるはずがない。)
そこで僕は彼の正面に立ち、
「ねえ、俺にはこれっぽっちも思い当たらないんだけど・・・。何か間違えてんじゃない?」
と真剣に尋ねた。
彼は「ついてこいよ。」と言って歩きはじめた。
ある教室の前まで来ると、彼は教室の中にいた女子生徒に声をかけた。
その子は僕と同じクラブに所属する女の子であった。
(現実には全然、知らないのだが、夢の中では知っているのだ。ああ、ややこしい。)
どうやら、彼は彼女と僕の仲を疑っているようである。
僕は彼女とはただの友達であって、それ以上の関係は全くなかったので、
何とか誤解を解こうと思った。
そこで彼と彼女、僕の3人で話しをした。
彼が彼女に向かって「おい。おまえ、○○の事が可哀相だとか言ってたよな。」と聞いた。
彼女は「だって、私、○○君から借りた、たまごっち無くしちゃったの。」と答えた。
(ここで登場している○○君といのうのは、僕の名前ではなく、全く聞いたことのない名前であった。
しかし、それが僕の事だとは何故か理解していた。)
僕は「えっ、そんなのどうでもいいよ。」と答えて彼のほうを見た。
彼は彼女に「お、おまえ、そんな事で可哀相って言ってたのかよ。」
「うん。」と彼女は頷いた。
そこで僕はもう一度、彼のほうを見た。
彼は右手を顔のところまであげて、僕に「スマン」と言った。
僕も一気に気が楽になり、「なんだよ。そんなことか。」と笑った。
そして彼が僕を蹴ったことを許そうと思った。
それから彼に「ねえ、友達になんない?」と話しかけた。

というところで目覚ましがなって、僕は夢から現実へ連れ戻された。
寝ぼけた頭の中で、「何でこんな夢見たんだろう」と考えたが、
全く何も思いあたらなかった。
意味不明の夢はよく見るが、主人公が僕であって、僕ではない夢というのは
そんなに見た記憶がない。
しかも、登場人物すべてが現実には知らない人ばかりなのである。
本当に不思議な夢であった。
いや、もしかしたら、本当の夢はこちらのほうかも知れない。
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