このアルバムは、1975年に発表された3枚目の作品である。
本人が「僕はあのアルバムで、ディランのような詩を書き、スペクターのような
サウンドを作り、デュアン・エディのようなギターを弾き、そして何よりもオービソン
のように歌おうと努力した」と語ったようにロックン・ロールの歴史が詰め込まれた
大傑作である。
とにかくすべての曲が涙が出るくらい素晴らしいのである。
オープニングを飾る「涙のサンダーロード」やタイトル曲の「明日なき暴走」は
無茶苦茶かっこいいナンバーで、現在でも彼のコンサートではこれらの曲は欠かせない
ナンバーとなっている。
そしてこのアルバムの素晴らしさは最後のナンバー「ジャングルランド」に結集されて
いるといっても過言ではない。
ストリングスとピアノの静かな音色で始まり、スプリングスティーンの息遣いが伝わって
くるようなヴォーカルは徐々に歌い上げていく9分を超える大作である。
実は私は幸運にもスプリングスティーンのライブを生で観たことがある。
その時の興奮と感動は一生忘れない思い出となっている。
これまでU2やエアロスミス、ヒューイ・ルイス・アンド・ニュースなど大物と呼ばれる
アーティストのライブをかなり観てきたが、はっきりいってスケールが全く違っていた。
東京ドーム中が本当に総立ちで熱狂したあの夜から、私にとってスプリングスティーンが
こそが世界一のそして唯一のロックン・ローラーとなった。
そのスプリングスティーンの最高傑作がこの「明日なき暴走」である。
1949年9月23日に、ニュージャージー州で生まれた。
13歳でギターを始め73年1月「アズベリー・パークからの挨拶」でデビューした。
「ニュー・ディラン」と評される。セカンド「青春の叫び」を評論家のジョン・ランドウ
が絶賛したころから一部の熱狂的な支持を受けはじめる。そして75年の「明日なき暴走」
が全米にセンセーションを巻き起こしアメリカを代表するロックン・ローラーとなった。
その後も活動を続け、84年に発表した「ボーン・イン・ザ・USA」が世界的な大ヒット
を記録し、世界的なスーパースターとなった。さらにグラミー賞も獲得し名実ともに「ボス」
に相応しい活躍を続けている。