<あらすじ>
綾波レイが女子短大生になってから、2ヶ月の月日が過ぎようとしていた。
それなりに親しい友人もでき、忙しくも楽しい毎日を過ごしていたある日、
親友のひとりである草薙うららの誘いを断れず、毎回彼女の遊びの誘いに付き
合っていたレイに腹を立てた親友の七瀬ミオとケンカになってしまう。
ひとり河原をさまようレイ……。
そんなふたりをなんとかしようと、ふたりの共通の友人・天城アヤはレイを
探して駆け回っていた……。
その一方、念願であった碇シンジと同じ大学の学生となった惣流・アスカ・
ラングレーは友人の洞木ヒカリと共に喫茶店にいた。彼女のシンジへの想いは、
高校時代よりも幾分か強くなっているようだ。
その洞木ヒカリの想い人・鈴原トウジは、なにやら人集めに奔走していたよ
うだが、果たしてそれは何を意味するのか……少し波乱の予感がする。
○『SCENE1 〜Boys in Heaven〜』
第3新東京市内のとある繁華街の1軒のお好み焼き屋。
碇シンジや鈴原トウジが高校時代からひいきにしていたこの店の一角で、熱
い鉄板を囲む4人の男たちがいた。
「しっかし、ひっさしぶりやな〜、センセ!」
「そうだね」
目の前のお好み焼きを器用な手つきでひっくり返すトウジを見ながら、少し
戸惑いがちにシンジは答えた。……今日のトウジは異様な程に陽気すぎる。
「なかなか逢う機会がなかったさかいな……小さな同窓会っちゅうワケや」
「でも、同窓会だったら、洞木や綾波も呼んであげればよかったのに」
一瞬、トウジの表情に焦りの色が浮かんだけれども、誰もそれに気付く事は
なかった。トウジの隣に座っていたケンスケがシンジを見てニヤリと笑う。
「あれ? 碇〜ぃ、惣流の名前が入ってないぜ」
「そ、それは……」
頬をほんの少し朱色に染めて、シンジは鉄板の上に視線を落とした。
「毎日逢ってるから、逢う必要はないってコトか?」
からかうような口調で彼は言った。ケンスケは数カ月前より、ずっと大人び
た顔になっていた。この店先で久しぶりに彼の顔を見た時、シンジは思わず感
心したものだ。
「ち、違うよ……。そんなワケじゃ……」
「当たり前じゃないか。シンジ君があんながさつな彼女のコトなんて気にする
ワケがないだろう」
透き通った綺麗な声−−。
今まで黙ったまま、もの珍しそうに鉄板の上のお好み焼きをじーっと見てい
た銀髪の少年のものであった。
……こんな場所には場違いな白のタキシードに身を包んだ渚カヲルである。
「カ、カヲル君っ……!」
カヲルはくるりとシンジの方を向くと、その吸い込まれそうになりそうな瞳
でじっとシンジを見つめた。アスカに言わせれば、この瞳は一種の催眠術みた
いなもので、この瞳に見つめられると何も言い返せなくなるという。
「シンジ君、また逢えて嬉しいよ……僕に会いたくなったら、いつでも学校に
来ておくれよね。君ならいつでも大歓迎さ」
「あ、ありがとう……」
戸惑いがちにシンジは答えた。
どうも昔からついついカヲルのペースに巻き込まれがちなシンジである。
ケンスケは「仕方ないな」とでもいうように、ひょいと肩を竦めた。
「……それにしても唐突だよな。何か裏がありそうな気がする」
陽気に振る舞うトウジを横目で見ながら、ケンスケがぽつりと言った。
「な、なんでもあらへんがな〜ケンスケ。ほら、碇。これ、もう焼けたで。ケ
ンスケもうだうだ言うとらんで、はよ食いや」
「あ、ありがとう……」
横から迫ってくるカヲルの視線に戸惑いを感じつつ、シンジは礼を言った。
「まっ、いいか……久しぶりに逢えたんだしな」
ケンスケはそう言うと、鉄板の上のお好み焼きに手を伸ばした。こんな雰囲
気をシンジはとても懐かしく感じる。
思えば、1ヶ月前のあの花見から逢っていなかったのだから……。
「で、どうなんや? ケンスケの方は?」
「忙しいのは相変わらずさ……写真はまだまともに撮らせてもらえないし……。
勉強になる事は、かなりあるんだけどな……」
「モデルっちゅうんはやっぱ綺麗なひとが多いんやろ? うらやましいなぁ」
「だけどトウジ、モデルって、わがままなヤツばっかりだぜ」
そう言ってケンスケは笑った。一足先に社会の荒波の中に飛び込んでいった
ケンスケ。そんな彼のひたむきな視線を、シンジはうらやましく思う。自分に
ここまで熱中出来るものがあるだろうか、とシンジは少し不安になった。
ふと我に返ると、向かいに座っているトウジとケンスケが驚いたようにこっ
ちを見ていた。なんだろう、と思ってその視線の先を追う。
「カ、カヲル君っ……!?」
シンジはそう言ったきり絶句した。
『……あ〜む……』
カヲルがあんぐりと大口を開けて、4等分に切ったお好み焼きを一口で平ら
げようとしていたのだ。
「……なかなか美味しい食べ物だね……」
もぎゅもぎゅとお好み焼きを食しながらカヲルが言う。
「……どうかしたのかい?」
唖然とするシンジ達をよそに、ゴクンと音を立ててお好み焼きを呑み下した
カオルは澄ました顔で皆の顔を見回した。
「お、お前やっぱり人間やないわいっ!」
「心臓が止まるかと思っただろっ!」
「何を怒っているんだい? 怒りっぽい人間は早死にするよ」
カヲルはさらりと受け流して、パクリとお好み焼きを口に放りこんだ。
シンジは3人のやり取りを呆然としたまま見ていたが、やがてクスッと微笑
むと、目の前のお好み焼きを口に運んだ。香ばしいソースの香りが懐かしい。
ずっと一緒にいたからこそ作り出せる空間がここにはあった……。
○『SCENE2 〜子供は好きですか……?〜』
「もうじき陽も暮れますね……」
やわらかで、憂いの感じられる女の声。
「ああ……」
人生の重みを感じさせる落ち着いた男の声。
シンジ達のいるお好み焼き屋からあまり離れていない夕暮れ間際の公園に、
冬月コウゾウとゆうなぎ保育園の保母・春香はいた。
若草色の薄手のブラウスに山の土の色を思わせるような色のフレアスカート
といった簡素な服装の春香は、公園の片隅に置かれたベンチに腰を掛けたまま、
側に立っている白髪の男の横顔を微笑みながら見上げていた。
「お座りになられないんですか?」
「疲れてはいないからな……」
照れくさそうに冬月は言う。それを聞いて春香はクスッと笑った。
今日は朝からふたりで隣町にある民族資料館に出掛けた。時折冬月の昔話を
聞かせてもらいながら、時間を掛けて館内を見て回った後、春香の提案でデパ
ートへショッピングに行った。そのデパートで春香は、日頃のお礼に、と冬月
にネクタイをプレゼントしたらしい。その時の冬月の顔といったら、まさに幸
せそのもので、とてもゲンドウ達に見せられるものではなかった……。
そんなワケで今日は結構な距離を歩いたのだ。春香ですら疲れているのだか
ら、冬月が平気なはずはない。
もちろん、春香は知っている……この自分の隣に立っている男は、照れくさ
さから、自分の隣に座る事をためらっているのだということを……。
「楽しかったですね……」
少し離れた場所で子供達が遊んでいるのを見ながら、春香が言った。
「ああ……」
「また行きたいですね……」
「そ、そうだな……」
「また誘って下さいね……私……待ってますから……」
「……あ、あぁ……」
そう答えた冬月の顔が赤く見えたのは、夕陽のせいなのか、それとも照れく
さい気持ちのせいなのか……。
春香はフッとやさしく微笑んだ。冬月は帰ってゆく子供達の小さな背中を名
残惜しそうにじっと見つめている。
目をやさしげに細めて、子供達の無事を心から願うかのように……。
保育園でも時折見せる冬月のこの目が、春香は大好きなのだった。
「……子供は……好きですか……?」
自然とそう尋ねていた。
「……んっ? ま、まぁ……な……」
視線を背けたまま冬月は答える。
「……そう……ですか……」
春香は嬉しそうに微笑って、やさしいまなざしで冬月を見つめた。
「……いいお父さんになれそうですね」
「……そんな気が少しでもあれば、この歳までひとりでおらんよ……」
少し苦笑いを浮かべながら、冬月は言った。
「ずっとひとりでいたこと……後悔……してるんですか……?」
「……後悔はしてないよ……。なるべくして、こうなったのだからな……」
そう答えた冬月の顔を、春香は少しだけ眩しく感じた。
「……悔やむとすれば……」
そう言って冬月は春香の方を見た。けれどすぐに顔を背けてしまう。
「なんですか……?」
「……い、いや……何でもない……」
照れくさそうな冬月の顔を見て、春香はフフッと微笑んだ。
「……まだ遅くはありませんよ……冬月さんにさえ、その気があれば」
「……えっ?!」
冬月は驚いたような顔で一瞬春香の方を見たが、すぐ視線を逸らした。
それからの冬月はなんだか落ち着かないようで、そんな冬月を春香は嬉しそ
うに見つめていたのだったが、陽もようやく暮れようとした頃
「……さて、と……そろそろ帰るとするかな……」
ひとり言にしては大きすぎる声量でつぶやき、冬月がゆっくりと歩き始めた。
彼はいつだってそうだった……春香と一緒に歩くのを、何かにつけては避け
るような面がある。『避ける』というよりは、『遠慮する』といった方が近い
のだけれども……。
春香は少しずつ小さくなってゆく彼の背中を見つめて微笑むと、勢いよくベ
ンチから立ち上がって駆け出した。
「子供たちですらまだ遊んでいるのに……もう帰っちゃうんですか?」
そう言ってじゃれつくように左腕にしがみついてきた春香に、冬月は戸惑い
の表情を見せた。
「んっ……!? い、いや……それはだな……」
頬を赤く染めて視線を泳がせる冬月を、春香は心底かわいいと思った。
○『SCENE3 〜今そこにある勇気〜』
『……はぁはぁはぁはぁ……』
息も途切れ途切れに綾波レイは短大へとやってきた。
マンションを出てから40分も経っていない……通学時間の最短記録だ。
胸に手をあてて呼吸を整えながら、レイは少し肌寒い校庭をくるりと見回し
た。日も暮れ掛けているためだろうか、辺りには誰もいない。
「……行かなくちゃ……」
レイはきゅっと下唇を噛みしめると、本校舎の3階にある、学内でも最も大
きな教室へと足を向けた。アヤがどうしてその場所を指定したのか分からなか
ったけれど、その教室はレイの大切な思い出の場所だった……。
真横から赤く寂しげな夕陽が差し込む中、レイはようやく3階にたどり着い
た。冷たい空気の漂う廊下には、レイの足音だけがコツコツと響いている。
「……ここね……」
足を止め、大きな木製の扉の前に立つと、ふうと大きく深呼吸をして、高ぶ
った緊張をなだめた。けれども張りつめた緊張の糸は緩む気配もなく、レイは
意を決して、目の前の扉を静かに引いた……。
……窓際の後ろの方の席に誰かが座っている。アヤかと思ったが、一瞬にし
て違うことが分かった。
その『彼女』はあの日と同じ席で、じっと窓の外を見つめていた。レイが扉
を開けた瞬間、一瞬びくんと肩を震わせたが、レイが教室の中に足を踏み入れ
ても、彼女はじっと窓の外を眺めていた。
レイもさすがに初めは動揺したようだったが、敢えてこの場所に呼んだアヤ
の意図を察したのか、静かに歩みを進めてゆくと、最後列の真ん中の席にちょ
こんと腰を下ろした。
ひとつ深呼吸してから、くるりとぎこちなく首を動かして彼女の方を見る。
彼女もまた、レイの方を見ていた。けれども目があった瞬間、どちらからとも
なく視線を背けてしまう……。
‥ ……いけない……このままじゃ…… ‥
自らの意志で座りはしたものの、目を合わせることがなんとなく怖くて、レ
イは静かに瞼を閉じた。教室特有の冷たい空気が今日は妙に寂しい。
空気が微かに動く気配がしたが、レイは目を開けようとはしなかった。
しばらくしてから、レイは自分の隣に確かな人の気配を感じた……。やさし
くて、あたたかで、懐かしく嬉しい気配……。レイは微かな希望と期待に胸を
膨らませながら、ゆっくりと目を開けた。
「あっ……!?」
レイは思わず声を上げた。恥じらうような仕草で、やさしげな笑みをぎこち
なく浮かべながら、彼女が傍に立っていたからだ。
「……あなたもひとり……なんですか……?」
3ヶ月前のあの日と同じ……ぎこちなく、遠慮がちな台詞……。
「私もひとりなんです……うちの学校からここを受けるの私だけで……」
セーラー服姿だったあの日の彼女とは違う、清麗な少女のいでたちではあっ
たけれど、レイの脳裏にあの日の出来事が鮮やかに蘇った。
あの時、レイはただ一言「……そう……」と返しただけだった。そして彼女
は申し訳なさそうに自分の席へ戻っていった。あのせつなげな後ろ姿と不器用
な自分へのいらだちは、今でもはっきりと覚えている。
‥ もう……同じ事は繰り返さない…… ‥
レイはしなやかな仕草で彼女の方を見上げると、そのルビー色の瞳で彼女の
不安げな瞳をじっと見つめ返した。
「……あなたはひとりじゃないわ……私がいるもの……」
強い意志とほのかなやさしさの感じられる言葉……。
それを聞いた瞬間、彼女の瞳から不安の色がさっぱりと消えた。そして彼女
はやわらかな笑みを一面に浮かべる。
「……そうね……」
彼女の返事にレイはホッとして、ふうとかわいらしく小さな息を吐いた。
そして彼女・七瀬ミオは静かに語り始めた……。
「……実を言うとね……不安だったの……」
「……不安……?」
「……ええ……。……綾波さんが私のそばから離れていきそうで……。だって
綾波さんは……自分から声を掛けて創った……初めての友達だから……」
レイは一瞬驚いた顔を浮かべたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「……今までの私って、いつも誰かが向こうから来てくれるのを待ってるよう
な子だったの。高校までずっとエスカレータ式でクラスメイトも変わらなか
ったから寂しくはなかったんだけれど、3年生になる直前の冬にふと思った
の……『私……このままでいいのかな……?』って……」
ミオはしなやかな仕草で、茜色の世界と化している窓の外へ視線を送った。
「……だから自分を変えようと思って、もっと積極的になろうと思って、この
学校を受けたの……。先生にはすごく反対されたわ。だって、私のいた学校
は大学までの一貫教育で有名な学校だったから……」
レイは黙って、彼女の横顔を見つめながら話を聞いていた。
「……そしてあの日、綾波さんと出会った……。周りのコたちは口々に綾波さ
んの事を見て、いろいろと噂してたわ。私もその……最初は不思議な雰囲気
の人だなって思ったけれど、どうしてもお話してみたくて……」
そう言ってから、ミオはくるりと振り返った。その表情には悩みに悩み抜い
た彼女の心中が痛いほどに伺い知れる。
「……そうやって初めて出来た友達だったから、とても嬉しかった。だから、
草薙さんに嫉妬したのかもしれない……。そしてそのうち……そんな自分が
嫌で嫌でたまらなくなっちゃって……」
今にも溢れ出そうな涙をこらえながら、彼女は続ける。
「……お昼にあんな別れ方してから、胸が苦しくてたまらなかった。……でも
ね……ある人が私に言ってくれたの。……同じ痛みを……ううん、それ以上
の痛みをレイは味わってるのかもしれないんだぞ、友達を苦しめているのか
もしれないんだぞ、って……」
涙を振り切るようにミオは力強く、元気な口調で言った。
「……アヤさん……?」
ミオはこくりと笑顔でうなづいた。
「……でも、綾波さんもいけないのよ。遊び疲れて、授業中眠るなんて……」
「あっ……」
恥ずかしそうな表情を浮かべたレイに、ミオはフフッと微笑んだ。
「……綾波さんが断れない理由、なんとなく分かってた……。だって、草薙さ
んに誘われた時の綾波さんって、ものすごく嬉しそうな顔をするんですもの
……心の中の私と同じくらいに……」
「えっ……?」
レイは少し驚いたように彼女を見た。
「……私だって嬉しかったわ……。でも、ダメなのよ……ずっと生真面目に生
きてきちゃったから、簡単には変えられないみたい……」
そう言ってミオはぎこちなくペロリと舌を出した。レイはなんと言っていい
か分からず、ミオの顔をじっと見つめた。
「……少し話しすぎちゃったわね……」
申し訳なさそうにミオが言うと、レイはぶんぶんと首を横に振った。
「……ううん……嬉しかった……とても……」
「……嬉し……かった……?」
少し意外そうにミオが尋ねると、レイは大きく首を縦に振った。
「七瀬さんの事……よく分かったから……」
ミオは一瞬恥ずかしそうに頬を赤く染めてから、そして嬉しそうに微笑んだ。
レイはその彼女の表情を見て嬉しそうに微笑むと、少し真剣な表情を見せて
こう続けた。
「……だから……今度は私の事を知って欲しい……」
レイは静かに語り始めた……。
あまり記憶には残っていない幼少の頃の自分の事。
5年前の自分がどんなに無感情で無感動な人間だったかという事。
エヴァに乗って戦いに明け暮れる毎日だった頃の事。
他人のために……そして自分のために初めて涙を流した時の事。
人として、人間として人生を貫こうと決めたあの日の事。
栗色の髪をした少し勝ち気で、けれど憎めない、友達思いな彼女との事。
少し幼さの残る顔立ちの、自分に笑顔を教えてくれた少年との事。
今自分が最も信頼している、3年前から同居生活を始めた、それまでは話す
ことさえままならなかった金髪の彼女との事。
そして……その彼女を初めとして、いつも自分の周りでやさしく見守ってく
れるみんなの事を、レイはありったけの言葉を使い、あふれんばかりの想いを
こめて、時には熱く、終始一言一言を噛みしめるように語った……。
ミオはその間、ある時は驚いたような、またある時はせつなげな表情を見せ
ながらレイの話を聞いていたが、ずっと嬉しそうな微笑みを浮かべたまま彼女
の話を聞いていたのだった。
話が終わって、彼女は微笑みながらこう言った。
「……いろんな事があったのね……。……私、ようやく分かった気がする……。
綾波さんがどんな人なのかって事が……。それに、綾波さんがどうしてそん
なに素敵な人になれたのかって理由も、分かった気がするわ……」
その一言でレイは、なんでも言い合える、語り合えるという事がどうして友
達関係が長続きする理由なのか、少しだけ分かったような気がした……。
素顔の綾波レイ……それを知ってもらうことが大切なのだと、レイはそれと
なく気付いたらしい……。
こうしてレイはまたひとつ階段を登ってゆくのだろう……。
ゆっくりと、ぎこちない一歩だけれども、それは確実にいい方向へ向かって
いるのだと信じたい。
窓から差し込む茜色の夕陽が、お互いを見つめあうふたりをやさしく、そし
てあたたかに包み込んでいた……。
○『SCENE4』
レイとミオが教室でお互いに微笑みあったその瞬間、突然、入り口の扉がが
たんと不自然な音を立てたので、ふたりは驚いたように扉の方に注目した。
「……アヤさん?」
レイが遠慮がちに声を掛けると、少し間を置いてアヤが姿を現した。
「……悪いな……覗き見する気はなかったんだけど、気になってな……」
照れくさそうにぽりぽりと頭を掻きながら、ふたりに近づいてくる。
「まっ、何にしても良かったじゃないか。お前らはそうやって仲良く並んでる
のが一番サマになってるよ」
アヤは嬉しそうにふたりの顔を順に見てそう言った。レイは満面の微笑みを
浮かべて、アヤの顔を見つめる。
「……ありがとう……電話してくれて……」
「い、いやぁ……おせっかいなだけさ……。だけど、仲直り出来て良かった」
アヤは照れくさそうに、そして嬉しそうに笑う。その笑みにミオも幸せそう
な微笑みを見せた次の瞬間、突然彼女の携帯電話が鳴った。
「は、はい……七瀬ですが……草薙さん!? どうしたんですか? えっ?
アヤさん? はい……いますけど……ちょっと待って下さいね」
ミオはそう言って、心配そうな表情でアヤに電話を差し出した。
「草薙さんからです……かわって下さいって……」
不思議そうな顔で、アヤはその電話を受け取ると、電話口に向かって言った。
「……うららっ、何か用か?」
『アヤちゃ〜ん……お願ぁ〜い……助けてぇ〜』
今にも泣き出しそうなうららのハイトーンな声が受話器から漏れてきて聞こ
えたので、レイとミオは思わず顔を見合わせた。
「ど、どうしたんだよっ?」
『ひ〜ん……今日合コンやるって言ってたんだけどぉ……女の子がみんなダメ
になっちゃって、私しかいないのぉ〜……』
アヤは「またか……」とでもいうようにこめかみに指を当てた。
「……分かったよ。待ってろ、すぐに行くから……。場所は? ……うん……
うん……分かった……。じゃ、またな」
アヤは通話ボタンをオフにすると、ふうと大きくため息をついてから、心配
そうな顔で自分を見ているふたりの少女達の方へ視線をやった。
「仲直りしたばっかで悪いんだけど、少し付き合ってくれないか?」
「はいっ!」
ふたり全く同時に答えたので、アヤは思わず笑ってしまった。当のふたりも
お互いの顔をまじまじと見合わせた後、やがてくすくすと笑い始めた。
もうじき陽も落ちようとしている茜色に染まった教室から、少女たちの幸せ
そうな笑い声が聞こえてくる……。
彼女たちだけの、彼女たちのための空間……そこにはありったけのやさしさ
とぬくもりがあふれているのかもしれない……。
○『SCENE5』
定時後のネルフ本部内。リツコが室長を務めるエヴァ開発室の青光りするデ
ィスプレイの前でひとりの男がキーボードに指を走らせていた。
「あら……? みんなもう出掛けたのに、まだここにいたの……?」
白衣から私服へと着替えを済ませたリツコが居室に戻って来ると、まだ配属
されて2日目の新人でありながら、もうすっかりここには欠かせない人材にな
ってしまった大和がいた。
「はい……どうしても手が離せなくて……」
ディスプレイの方に目を向けたままで彼は答えると、時間を少しでも惜しむ
かのようにひたすらキーボードを叩いた。
「主賓が来ないと歓迎会の意味がないでしょ……。まぁ、でもミサトの事だか
ら主賓がいなくても勝手に始めてしまうでしょうけどね」
フフッとやさしく微笑んで、リツコは大和の横顔に目をやった。理系という
よりは少し体育会系寄りのガタイの良い身体。短く刈り上げた髪と、少し小さ
めの口が特徴的だが、なんといってもその瞳の輝きには何か魅かれるものがあ
った。
「葛城さんですか……? あの人ならやりそうですね……」
大和はそう言って悪戯っぽく笑ったが、それでも指の動きは止まらない。
「あとどのくらいで終わりそうなの……?」
「……5分くらいでキリのいい所までいきそうです」
「そう……。じゃ、私も少し仕事を片付けていこうかしら……」
リツコは部屋の真ん中にある自分の机の椅子に静かに腰を下ろした。その仕
草をちらりと見て大和は言う。
「僕の事なら気になさらないで下さい……」
「別に構わないんだけど……あなた、お店の場所知ってるの……?」
机に頬杖をついて、悪戯っぽい口調でリツコは言った。
「あ……」
一瞬、大和の指の動きが止まる。
「やっぱりね……そんな事じゃないかと思ったわ」
リツコはフフッと楽しそうに微笑うと、机の上の書類を取り上げ、目を通し
始めた。時々、書類の陰から大和の様子を伺う。けれども大和は相変わらず、
端末の操作に夢中で、リツコの視線など気付いてはいないようだ。
3分ほどの間そうしていただろうか……ふと感心したようにリツコが言った。
「……プログラムを組むのが、本当に好きなのね……」
「好きでないとやれない仕事ですから……」
そう言って大和は笑う。彼の笑顔は本当に嫌味というものがない。
リツコはその笑顔を見る度、胸をドキッとさせるのだった。
「赤木博士だって、そうでしょう?」
その言葉に、リツコはハッとした。自分はどうしてこの仕事をしているのだ
ろう……? 今までに何度も自分に問いかけたことか……。少なくとも4年前
までは、ある男のためだけに毎日ここに篭って研究に勤しんでいた気がする。
でも最近は違った……。以前とは違って、仕事中に心の余裕のようなものが
生まれているのを、リツコはしみじみと感じている。
『最近の赤木博士って変わったわよね……』
『ほんと……すごく話し易くなったっていうか、とてもやさしい感じがするわ』
1年前のネルフ本部の廊下ではそんな会話がどれだけ繰り返されたか計り知
れない。まぁ、今となってはそんな話をする者は全然いないのだけれど……。
「……そうね……仕事というよりも私が好きなのはこの場所そのものなのかも
しれないわ……」
しみじみと語られたその言葉に、大和は手を休めてリツコの方を見た。リツ
コは満足げな、それでいて懐かしそうな微笑みを浮かべていた。
「ここが私の居場所……こうしてここに座って、窓越しにエヴァを見ていると
ね……そんな風に思えてくるの……」
そう言うリツコの正面に見える壁面には分厚いガラスが一面に張られてあり、
その向こうにあるエヴァ格納ハンガーの様子が見渡せるようになっている。
暗いハンガーでほのかにライトアップされて浮かび上がるエヴァのシルエッ
トを、リツコはやさしい目で見つめていた。
「ここでこうして座っていると、いつも誰かが私を求めて訪ねて来てくれる…
…それが一番うれしいのかしらね……」
くすっと嬉しそうに微笑むリツコの横顔を、大和はじっと見つめていたが、
やがて納得したかのように、やわらかな笑みを浮かべた。
「……『居場所』ですか……僕にもそう思える日が来るんでしょうか……」
リツコと同じようにハンガーの方に目をやる。
「来るわよ……きっと……。……ここはちょっと変だけど、とっても素敵な連
中がいっぱい集まってる場所なんだから……。あ、私がこんな事言ってたな
んて、ミサトやマヤには絶対言わないでね。後で何を言われるか分かったも
のじゃないから」
「はい、分かってます」
大和は微笑んでから、端末の電源を落とすと椅子から立ち上がった。
「じゃ、行きましょうか……変だけど、とても素敵な人達の待つ場所へ」
「……そうね」
悪戯っぽく笑った大和に、リツコも悪戯っぽく微笑み返した。
4年前までは決して見せる事のなかった、やさしくあたたかな微笑みを……。
○『SCENE6』
レイがアヤやミオと一緒にうららが待つ居酒屋に向かって歩いていると、向
こうの方から見慣れた集団が歩いてくるのに気付いた。
『綾波やないか? えらい綺麗になったなぁ……』
レイが声をかける前に、目敏くレイを見つけた彼に声をかけられてしまった。
「こんにちは……鈴原くん……あ……!」
思わず声を上げてしまったのは、トウジの陰に視界になって見えなかったシ
ンジの姿を確認したからだ。
「や、やぁ…… 綾波……久しぶり……」
そのシンジに声をかけられて、レイは思わず頬をピンク色に染めた。なんだ
か恥ずかしくて、ささっとミオの後ろに隠れる。そのミオは少し戸惑いながら
も、シンジ達に向かって丁寧に頭を下げた。
「こんにちは。鈴原君に碇君……それに相田君と……渚君だったかしら……?」
「あ、あぁ、合っとるで……。久しぶりやな」
そう言ってトウジが笑うと、ミオは少しだけ頬をピンク色に染めた。
「もしかして、綾波らも合コンに来たんかいな」
ぽりぽりと気恥ずかしそうに頭を掻きながら、トウジがレイに尋ねる。
「『も』って……鈴原君たちも……?」
背中の後ろに隠れたままのレイに代わってミオが答える。トウジは一瞬、し
まったというような表情を浮かべた。
「あ、あぁ……センパイらに人数合わせに呼ばれてな」
それを聞いたシンジとケンスケは「やっぱりな」と言うように顔を見合わせ
て苦笑いしたが、カヲルだけはちょっと反応が違った……。
「やっぱりそういう事だったんだね、鈴原クン……。お好み焼きで僕を釣ろう
とはなかなかな心掛けだが、僕はそのテには乗らないよ」
「……しっかり4人前も平らげたヤツが何を言うとんのや」
「それとこれとは話が別さ……僕は帰らせてもらうよ……。さぁ、シンジ君、
僕と一緒に帰ろう」
「えっ? い、いや……その……僕は……」
いきなり話を振られて戸惑いながら、シンジはレイの方を見た。レイはその
真紅の瞳でこっちの様子をそれとなく伺っている。
「……僕は帰らないよ……。トウジも困ってるみたいだし……」
「おおっ、碇〜ぃ。お前ってホンマにええヤツやなぁ〜」
大げさに抱きついてくるトウジを照れくさそうにあしらいながら、シンジは
レイの方を見た。なんだかさっきよりも少し嬉しそうな顔をしているように見
えるのは気のせいなのだろうか。
「仕方ないねぇ……付き合ってあげてもいいよ……」
事を静観していたカヲルがひょいと肩を竦めて言う。それをトウジをギロリ
と睨みつけた。
「……お前は帰ってもええで……。お前みたいな友達がいのないヤツなんか知
らんわ」
「まぁ、いいじゃないか……僕は大きな心をもって、君を迎え入れてあげよう
というんだ……。快く受け入れてくれてもいいだろう……」
「……その言い回し、なんとかせい。無性に腹が立ってくるさかいに」
トウジとカヲルのやり取りを微笑みながら見ているシンジに、ケンスケが悪
戯っぽい口調でこう囁いた。
「碇……本当の理由は違うんだろ?」
そう言ってケンスケは、ミオの陰から薄く笑みを浮かべてカヲル達を見てい
るレイの方へと視線をやった。
「ち、違うよ!」
動揺するとすぐムキになる所は全然変わっていないな、となんだか少し嬉し
くなりながらケンスケはトウジの方を見た。
「トウジ! 早く行かないとセンパイとやらに怒られるぜ」
「そうやったそうやった。渚っ! 連れていったるさかいに感謝せいよ」
「感謝するのは君の方じゃないのかい?」
このふたり、高校時代からずっとこの調子である。
レイは、なんとなく昔を思い出して、懐かしい気持ちになってしまった。
その数分後。
アヤを先頭にガヤガヤと2階に上がってゆく一行。
一番先に部屋の前にたどりついたアヤが襖の戸を開けると、だだっ広い宴会
場に、うららがうつむいたまま、ぽつんとひとりで座っていた。
「あれ? 相手の男どもはどうしたんだ?」
その声でうららは顔を上げる。いつもの彼女とは全然違う、今にも泣き出し
そうな表情だった。うららはぽろりと涙をこぼすと、アヤの方に駆け寄った。
「あ〜ん、アヤちゃ〜んっ。男の子たち……み〜んな帰っちゃったぁ〜っ!」
「……そっか……少し来るのが遅かったかな……」
「……うわ〜ん……アヤちゃ〜ん……!」
アヤは飛びついて来たうららの頭をよしよしというように撫でる。
「センパイら、帰ってしもたんか……。人数合わせせい、言うたさかいにせっ
かく連れてきたったのに。……で、女の子の方はどないなっとるんや?」
トウジはアヤの胸で泣きじゃくっているうららを見て言った。
「このコが幹事しててね……私達も人数合わせに呼ばれたんだ……」
うららの代わりにアヤが心配そうな表情のままで答える。
「そうやったんか……」
申し訳なさそうにトウジはうららの方を見た。その一方でレイとミオは、泣
きじゃくるうららを心配そうな顔で見つめている。
‥ 綾波……綺麗になったよな…… ‥
一方、そんなレイちゃんの横顔をぼーっと見つめているシンジ君。
「おい、碇ってば!」
「んっ? えっ……? な、何?」
「どうする? これから」
「どうするって言っても……」
相変わらず、決断力というか統率力に欠けるシンジである。目の前で泣くう
ららを見ながら、困惑するシンジをよそにこんな声が上がった。
『……やりましょう……ここにいるみんなで……』
決して大きな声ではなかったけれども、しっかりとした意志の感じられる女
の声だった。シンジを初めとして、みんな声の方を見る。……声の主であるレ
イが少し恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。うららでさえも、思わず泣くの
をやめて、レイの方に目をやった。
「……そ、その……せっかく集まったから……」
その言葉に、アヤはふと微笑みを浮かべると、目の前にいるうららの肩をポ
ンッと景気よく叩いた。
「……そうだな。おい、うららっ。お前、幹事だろっ、さっさと酒と料理を頼
んでこいっ!」
元気づけるようにアヤがそうハッパをかけると、うららはクルッとアヤの方
へ振り返って涙を拭いながら、嬉しそうにニッコリと笑った。
「うんっ! 行ってくるっ!」
階段をバタバタと駆け下りてゆくうららを微笑みを浮かべながら見送って、
アヤはみんなの顔を見回した。
「ってワケで、帰るっていうふとどきなヤツは、オレを倒してから行きな」
悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言ったアヤを見て、レイとミオは顔を見
合わせてクスッと微笑む。
天城アヤ……ふたりは彼女と知り合えた事にこれとない幸せを感じずにはい
られなかった……。
○『SCENE7』
さて、シンジやレイのいる居酒屋の1階で、見慣れた二人組の少女が、向か
い合わせに座っていた。
「くぅ〜っ! この一杯のために生きてるって感じよね〜ぇ」
だんっと大ジョッキをテーブルに置く上機嫌のアスカ。
「……アスカってだんだん葛城さんに似てくるわね……」
目の前に置かれたオレンジジュースにちびちびと口をつけるヒカリ。
「……ぐっ……人が一番気にしている事を……」
「あっ、一応気にはしてたんだ〜?」
「……ヒカリ……あんたしばらく逢わないうちに結構言うようになったわねぇ」
「そう……? 多分、これはアスカの影響よ」
「私の……?」
「そうそう……知らないうちに伝染っちゃったのよ、たぶん」
「そんなわけないでしょ!」
本気で怒ったアスカを見て、ヒカリはクスクスと笑う。
「しっかしまぁ、あそこの体育大なら男ばっかだから、変なムシがつく心配も
なくていいわね」 とアスカが言えば、
「アスカこそ、いつも見張っていられるから余計な心配しなくていいから安心
ねぇ」 とヒカリが言い返す。
はははは……とお互いに乾いた笑いを返してはみたものの、心の中では心配
で心配でたまらなかったりするのだ。
「んっ……!?」
赤ら顔のアスカが何かを聞きつけたようで、勢いよく席を立った。
「ちょ、ちょっとアスカっ! どこに行くのよっ!」
「ちょっと待ってて!」
アスカは栗色の髪を揺らせながら、店の奥の方へと消えていった。
ヒカリはふうと一息ついて、オレンジジュースを一口飲んだ。少し離れた席
で恋人らしいカップルが楽しそうに話しをしている。それをちらちらと横目で
盗み見ながら、ヒカリはふとトウジの事を思い出した。
「そういえば一緒にお酒を飲んだ事ってないなぁ……」
ふぅとせつなげにため息なんかついてみる。
「もしお酒なんか一緒に飲みに行ったりして、私が少し飲み過ぎて酔っぱらっ
ちゃったりするじゃない。それで帰り道でふらっとよろけたところを鈴原が『
大丈夫か?』な〜んて言って抱きとめてくれたりなんかしたら……キャッ、想
像するだけでも恥ずかしいっ……!」
『ほら……あのコ、大丈夫かしら……』
ふとそんな声が聞こえた。ハッと我に返ると、オレンジジュースの入ったグ
ラスを胸にしっかと抱きしめている自分のお間抜けな姿に気がつく。
瞬時にして頬が真っ赤に染まった。
「……いやっ……これはそのっ……」
気の効いた言い訳も思いつかず、ヒカリは恥ずかしそうにうつむいた。
妄想少女ヒカリ……彼女の前途は実に多難である……。
さて、ヒカリが妄想モード真っ最中な頃。アスカは2階の座敷部屋の前にい
た。襖に耳を当てて中の会話を盗み聞きしていたアスカは、ほんの少しだけ戸
を空かして、中の様子を覗き見た。一瞬にして酔いが醒める。
「あんのバカっ……! どうしてこんな所であいつと一緒にいるのよっ!」
グラスを両手で持ったまま頬をピンク色に染めたレイと、シンジが楽しそ
うに話していた。
「く〜っ……私を誘いもしないで、こ〜んなトコロでファーストとよろしくや
っていたわけね。ぜ〜ったい、ただじゃ済ませないんだからっ!」
バ〜ンと襖を両手で勢いよく開ける。中のみんなが一斉にアスカに注目した。
「シンジっ! ちゃんと説明してもらいましょうか!」
びしっとシンジを指さしながら、声高らかにアスカは言う。
でも、突然動いたのでアルコールが回ってしまったのか、アスカはふらりと
その場に倒れ込んでしまった。
「ア、アスカっ……?」
みんなが駆け寄ってくる足音を畳越しに聞きながら、アスカは薄れゆく意識
の中でつぶやいた。
「……馬鹿シンジぃ〜……許さないんだからね………」
最後に幸せそうな笑みを浮かべて、アスカは短い眠りにつく……。
全くお騒がせな、けれどもどこかしら憎めない不思議な少女である。
○『SCENE8』
「へえ……そうなんですか……。私、スポーツってあまり得意じゃないから尊
敬してしまいます」
「そないに言われるとなんか照れるなあ……」
照れくさそうに答えたトウジの横顔を遠巻きに見つめるヒカリの目が怖い。
30分程前、アスカに呼ばれてここに上がってきて以来、トウジはミオに付き
っきりだった。面識のあるミオをヒカリは嫌いではないが、少し面白くない。
「……鈴原って女の子にはだらしないんだから……」
ぽつりとひとり言のように呟いて、ヒカリは目の前にあったビールのグラス
を一気に空けた。
「な〜にヤケ酒してんのよ……ヒカリ」
ふと後ろの方を仰ぎ見ると、アスカが悪戯っぽい笑みを浮かべて立っていた。
ようやく酔いが醒めて、頭が回り始めたらしい。アスカはヒカリが顔を背け
たのを見て苦笑いしてから、ちょこんと隣に腰を下ろした。
「ついにライバル登場って感じね」
「なんだか嬉しそうに聞こえるけど」
「あら、そう見える?」
「見えるわよ」
ヒカリは自分のグラスにビールを注ぐと、ぐっと一気に飲み干した。
「……ま、でもいい事じゃないの? ライバルが出来るっていうのも」
「経験者は語る、っていうヤツね……」
「あら、言うじゃない?」
「……もう、どうだっていいのよ……あんなバカの事なんて……」
ヤケ気味にそう言いながら、ヒカリは机に突っ伏した。それを見て、アスカ
はクスッと微笑む。 なぜなら、アスカは男の子に対して『バカ』と言えるこ
とがどれだけ幸せで素敵なコトなのかを、よく解っているから……。
すうすう寝息を立て始めたヒカリの頭越しに見える、蒼銀の髪の少女と話す
少年の横顔をじっと見つめながら栗色の髪の少女はつぶやく。
「……バカ……」
と……。
その横顔はどことなく嬉しそうであった……。
さて、一方のトウジもさっきから時々ヒカリを気にしてはいるのだが、目の
前で楽しそうに話すミオの顔を見ていると、その場を離れるワケにもいかなか
ったらしく、相変わらず会話を弾ませていたのだった。
「ギターを弾くの、上手なんですね」
上品でいて、嫌味のない艶のある声でミオは言った。
「んっ……あぁ……ある人の受け売りやけどな」
『ある人』とは言わずと知れたギター狂の青葉シゲルの事である。
「また演奏する時には呼んで下さいね……私絶対に行きますから」
トウジの目を真っ直ぐに見つめながらミオは言う。そのまなざしはいつも見
慣れたヒカリのものとは違い、透明感にあふれているとトウジは感じていた。
「あ、あぁ……覚えとくわ」
吸い込まれそうな彼女の瞳から少し視線を反らせながら答える。
その彼の横顔を、ミオは微笑みながら嬉しそうに見つめていた……。
「カヲルく〜ん……一緒に飲も?」
「……ちょ、ちょっと離してくれないか? 僕はシンジ君の所へ……」
一目でカヲルを気に入ってしまったうららが彼を捕まえている。ちなみに忘
れているかもしれないが、カヲルは白のタキシード姿である。
「ダ〜メっ……! せっかく久しぶりにレイちゃんと逢えたんだから、邪魔な
んかしちゃダメよぉ」
うららはニッコリと笑って、カヲルの肩にぎゅっとしがみついた。
「ちょ、ちょっとやめたまえっ……!」
「どうしてぇ……?」
あくまで無邪気に答えるうらら。
カヲルの顔がほんの少し赤く染まったような気がする。
「……どうでもいいから、離れてくれないか!」
「イ〜ヤっ……! 離れてあげないもんね〜っだ」
うららはすりすりとカヲルの肩に頬をすりよせた。とうとう、カヲルの頬は
真っ赤に染まった。
「……うっ……意識が……」
こめかみを押さえ、何とか気を正常に保とうとするカオルであったが、そん
な事もお構いなしにうららは自分の手をカヲルの額に当てて首をひねる。
「おっかしいなぁ……熱はないみたいだけど?」
不思議そうに、そしてかわいらしく首を捻る仕草を見せる。
『ぼんっ……!』
カヲルの中で何かが弾けた……。畳の上にバタンと仰向けにひっくり返る。
「ちょ、ちょっと……! どうしちゃったのよ!? カヲルくんっ!」
生まれて以来初めて女性にカラダに触れられたショックで、どうやら倒れて
しまったらしい……。
加持クンのように女性に見境がないのも困り者だが、女性に全く免疫がない
というのも、全く困り者である……。合掌。
さてさて、場面は移って酔い潰れたヒカリの隣でグラスを傾けているアスカ。
「ったく、もうガマン出来ないわっ!」
「久しぶりに逢ったのだから」と、ずっとヒカリの隣で我慢していた彼女だ
ったが、遂に限界が来たらしく、ダンッと勢いよく立ち上がると、シンジとレ
イのそばに駆け寄っていった。
「ア、アスカっ……!?」
シンジの声にも構わず、二人の間の小さなスペースに無理矢理割り込むと、
アスカは素知らぬ顔でシンジのグラスのビールを一気に飲み干した。
「そ、それ……僕のだけど……」
「そんなの分かってるわよっ!」
ギロリとシンジを睨みつける。アスカは背中に熱い視線を感じてくるりと振
り返った。レイがそのルビー色の瞳で、アスカの手のグラスをじーっと見つめ
ていた。
「な、何よっ……!」
アスカがレイの目を見てそう言った瞬間、少し甲高い少年の声が聞こえた。
『間接キスの決定的瞬間、イタダいちゃったよ、碇っ!』
シンジとアスカが声の方を見ると、カメラを首にぶら下げたケンスケがニヤ
ニヤと笑っていた。
「ケ、ケンスケっ……?!」
「……な、何を言ってんのよっ……!」
「それ、碇のグラスだろ?」
アスカの手のグラスを目で示しながら、悪戯っぽく言う。アスカはそのグラ
スを見て、ようやく自分のしでかした事の重大さに気付いたらしく、頬を真っ
赤に染めると、ぷいとシンジ達の方から顔を逸らした。けれど、顔を逸らした
その先で、今度はおもむろにレイと目が合ってしまう。
「……な、何よ……言いたいことあるんなら、はっきり言いなさいよね」
アスカは照れくさいのを隠すかのように、レイを睨みつけた。
そんなアスカにレイはたった一言、こう言った。
「……間接キスって何……?」
冗談や意地悪で言っているとは到底思えない真面目で純なレイの真紅の瞳。
瞬時にアスカの顔は真っ赤になる。
「……な、な、何って……何でもないわよっ!」
アスカはバッと立ち上がると、ばたばたと部屋を出ていった。その横顔は、
遠くからでもはっきり認識できるほどに真っ赤だった。
シンジは心配そうにアスカの背中を見送っていたが、ふと視界に入ってきた
レイの不思議そうな顔に、思わず吹き出してしまった。
「綾波っ……今の一言最高っ!」
ケンスケはばんばんと畳を叩きながら、大ウケしている。
そんなケンスケの隣で、レイは「なぜ?」とでも言うように、二人の顔を不
思議そうに見比べていたのだった。
それぞれの場所で繰り広げられているそんな光景を、アヤはグラスを傾けな
がら嬉しそうに眺めている。
琥珀色の液体に浮かぶグラスの中の氷がカランと心地よい音を立てた。それ
を聞いて、アヤは微かに微笑みを浮かべると、なんとなく窓の外へ視線を移す。
今日も空にはまあるい月がぽっかりと浮かんでいた……。
○『SCENE9』
さてさて、偶然とは恐ろしいもので、レイ達が宴会をしている部屋の襖一枚
隔てた広間では、ミサトをはじめとするネルフお祭り軍団が宴会を繰り広げて
いたのだった。まあ、歓迎会というよりも破壊行為といった方がお似合いなの
かもしれないけれど……。
「きゃははははははっはは……」
今日も豪快にそしてパワフルに暴れ回るミサト様。その洗礼を受けるのは当
然の如く加持君である。
「葛城……ビール瓶で殴るのはよせって言ってるだろ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
「全然大丈夫じゃないんだが……」
人間慣れてくるとビール瓶だろうが一升瓶だろうがドラム缶だろうが、殴ら
れても全然平気なものである。
「じゃ、今度はドラム缶にしよっかな〜」
きゃははっと陽気なミサトさん。
「葛城……頼むから止めてくれ……。オレはもう死にたくない」(泣)
大丈夫だ加持……この話の中じゃ、絶対に誰も死なないから……。まぁ、多
少は痛いかもしれないけどね。(笑)
「うるさいっ!」
天井に向かって叫ぶ加持。
「誰に向かって言ってのよっ!」
けれどやっぱり、一升瓶でミサトさんにぶん殴られた。
ネルフは今日も平和だ……。
そんな騒ぎも蚊帳の外とばかりに、張りつめた雰囲気を醸し出す空間。
マヤと付き合い始めてからというもの、相変わらず青葉に話しかけ辛い日向
に対し、青葉はボーッとグラスを傾けている。
「……先週……ずっと休んでたけど……どこかに行ってたのか?」
「んっ……? あ、あぁ……ちょっと旅にな……」
「そうか……」 グラスを見つめたまま日向は言う。
「どうかしたのか……?」 青葉はチラリと日向を見た。
「……い、いや……なんでもない……」
「……フッ……変なヤツだな……」
青葉は口元に微かな笑みを浮かべた。青葉のそんな顔は本当に久しぶりで、
日向はなんだか嬉しくなる。二人の間に訪れた季節外れの長い冬も、ようやく
終わりが来ようとしているのかもしれない。
「さ、大和クン……飲んで飲んで」
一方、ほろ酔い気分で陽気に酒を勧める我らが伊吹マヤ嬢。
その杯に預かっているのは、逆らうことも出来ず、ずっと捕まりっぱなしの
大和クンである。
「あっ……ど、どうも……」
逃げようにも逃げられず、いろいろとマヤの噂は聞いているので、彼はなす
がままになっていたのだった。
「マヤ、お気に入りだからって、あんまり大和君を一人占めしちゃダメよ」
クスッと笑いながら、リツコが大和とマヤの間に割って入った。
「やっぱり分かります〜ぅ」
その言葉を耳にした日向と青葉がギロリと大和の方を見る。
「……ほ、本当だったの?」
少し意外そうな、それでいて少し不安そうな表情のリツコさんである。
「だって、大和クンのおかげで、随分仕事が楽になりましたからっ。高性能の
パソコンを支給されるよりもすっごく嬉しいですっ」
「……そ、そう……良かったわね」
マヤらしいといえば、らしい喜び方だとリツコは思った。
「センパイも嬉しいでしょ?」
「わ、わ、私……?」
大和も青葉も日向も、どつきあいを展開していた加持とミサトでさえも、少
し動揺気味のリツコの顔を見た。
「……そ、それは……すごく助かってるけど……」
「それだけですかぁ……」
「そ、それだけよ……」
ほんの少しだけピンク色に変わったリツコの頬に気が付いたのは、すぐそば
にいた大和だけだったかもしれない。
「じゃ、乾杯」
リツコは微笑みを浮かべてグラスを掲げ、大和とコツンとグラスを合わせた。
美味しそうにビールを飲むリツコの顔を大和はしばらくボーッと見つめてい
たが、ふとやわらかな微笑みを浮かべると、ゆっくりとグラスに口を付けた。
「うお〜っしゃ〜! もう一丁行きますかぁっ!」
俄然と元気が出るミサトさん、一升瓶ごと酒をあおり、フルパワー全開だ。
「よ、よせって葛城」
「うお〜りゃ〜っ!」
加持がミサトの腰をひっつかまえたが時既に遅し……バリッと嫌な音を立て
てミサトは襖をぶち破ってしまった。 (^^;
「ミサトっ! 何してるのよっ! 他のお客さんにだけは迷惑をかけるなって
いつも言ってるでしょ!」
そうリツコは怒鳴ったが、驚いた顔でこっちを見ていたレイと目が合い、黙
ってしまった。レイもレイで、何がどうなっているのやら分かっていないらし
く呆然としていたが、アスカだけはすぐにミサトの側に駆け寄った。
「ミサトっ! アンタ、なに馬鹿な事やってんのよっ!」
「あ〜ら、アスカじゃな〜い? 元気ぃ〜」
「馬鹿な事言ってないで、さっさとなんとかしなさいよねっ!」
そう怒鳴ったアスカの声を聞いているのかいないのか、ミサトはくるりと辺
りの惨状を見渡して、ニマーッと笑った。
「ん〜っと……面倒くさいからこのまま一緒に宴会しちゃお〜」
「それ名案ですねぇ……葛城さん」
手を挙げて陽気に同意するマヤの隣で、リツコが頭を抱える。
「よ〜し、多数決で決定っ!」
きゃはははっと楽しそうに笑うミサトさん。酔っぱらいには逆らわない方が
……いやミサトとマヤには逆らうべきではないと思ったのか、男連中は一向に
口を出す気配がない。
「カヲルく〜ん」
珍しもの好きのうららは人間であって人間でないカヲル君にかかりっきりだ
し、ミオは一応ネルフの宴会というものの経験者であるから対して驚きはしな
かったが、ただアヤだけが呆然とミサト達の方を見ていた。
そのアヤも偶然に目があったリツコがやさしく微笑んだのを見て、ようやく
我に返る。
「んじゃ、もう一騒ぎ行きますか!」
ミサトが陽気に叫ぶ。この人は楽しければそれでいいらしい……。
そして、子供、大人入り乱れての宴会が始まった……。
○『SCENE10』
その頃、賑やかな居酒屋の前を通りかかる一組のカップル。
男の方・冬月が何か感じたように、ふと店の2階部分を見上げた。その仕
草に、彼より頭一つ分くらい背の低い春香がくるりと振り返る。
「……どうかなさったんですか?」
春香も店の方へと目をやる。
「……いや……」
冬月は春香の方に視線を移した。
「……聞き覚えのある声が聞こえたような気がしてな……」
春香はそっとやわらかな微笑みを浮かべると、冬月の方を見た。
「……このまま帰ってしまうなんて、もったいないと思いませんか?」
「んっ?」 少し驚いたように冬月は春香の顔を見た。
彼女は時々冬月がドキッとするような言葉を投げかけてくる。ここ数十年、
女性と長く付き合った経験のない冬月にとっては、それはとてつもなく強烈で
あり新鮮でもあった。
「せっかくのお休みなんですし、それにまだ眠る時間には早いですよ」
悪戯っぽい笑みの混じった微笑みを浮かべながら、春香は軽やかな口調で言
った。冬月は腕時計に目をやる……時計の針はちょうど8時を指していた。
「……確かに……」
自嘲しながらぽつりとつぶやき顔を上げる。顔を上げた瞬間、冬月は驚いた。
ニッコリと微笑みながら、そのぱっちりと瞳で冬月を見つめる春香の顔が目
の前にあったからだ……。
「お酒……飲みに行きませんか……」 春香は微笑んだ。
「し、しかしだな……」
冬月が躊躇したのは、恐らく2階にいるであろう連中のメンツを想像したか
らだろうし、春香はそれをなんとなく察していた。
けれども冬月がためらうのには、また別の理由がある。
「……こんな時でもないと、機会がありそうにないですから……」
それは全くもって事実だった。冬月と春香は暇の出来る時間が全然違う。
きっちりと週末に休みはあるものの平日は遅くまで仕事に追われ時間の取れ
ない冬月に対し、平日は比較的時間に融通がきくものの週末は保育園の行事に
時間を割かれがちな春香。
ふたりが1日中一緒にいられる時間というのは、滅多になかった。
「それはそうだが……」
冬月はためらう。こんな恋人みたいなマネをして、本当にいいのか、と。
最初はさして意識もしなかった。いや意識しなかったと言えば嘘になるかも
しれないが、そんな対象になるなんて思ってもいなかった。
ユイにそそのかされて、食事に招待されたお礼にと、映画に誘ったのをきっ
かけとして、逢えば逢うほど、彼女を愛しく思う気持ちは強くなり……話せば
話すほど、彼女を自分のものにしたいと思う自分の気持ちが押さえられなくな
ってきていた。けれども、親子ほどの歳の差……それを乗り越えてでも、とい
う勇気は今の冬月には残念ながらなかった。
「……早く行きましょう」
そんな思いを巡らせ困惑する冬月の腕を、春香は無邪気に引く。
自分はからかわれているだけなんじゃないだろうか、誰かの悪戯なんじゃな
いだろうかと思ったこともある。けれども、話している時の彼女の目、そして
時折見せるこんな積極的な仕草を見ていると、嘘とも思えなかった‥‥いや、
思いたくなかった。
‥ こんな歳になって、こんな事になるなんてな…… ‥
その横顔を見下ろしながら、冬月はふと微笑んだ。
あまりに遅すぎた出逢いに彼が出逢いの女神に恨み言を言うまでには、あま
り時間は必要ではなさそうだ……。
○『SCENE11』
第3新東京市郊外の住宅街にある碇家のキッチン。
軽やかな女性の歌声がキッチンから響いている。
「シンジは今日は遅いのか?」
そのユイの歌声をBGMに夕刊を読んでいたゲンドウが、日本茶をすすりな
がら言った。
「ええ……さっき電話があって、今葛城さん達と宴会をしているみたいですわ」
流しで洗い物をしている彼女が微笑みながら答える。
「葛城クン達と……? どうしてまた」
新聞から顔を上げて、ゲンドウは不思議そうにユイの背中に尋ねた。
「さぁ……? アスカちゃんやレイちゃんも一緒みたいでしたし……。でも、
シンジ……すごく楽しそうでしたわ」
「……そうか……ならいい」
ゲンドウはそう言って、また夕刊に目を通し始めた。
「こうしてふたりきりでいると、新婚の時みたいですわね」
フフッと嬉しそうに微笑みながら、ユイは振り返る。
「……そ、そうか……?」
新聞の隙間からのぞいている髭面の男の赤く染まった顔を見ながら、ユイは
幸せそうに微笑んだ。
世間のためにそして家族のために、汗水流して一生懸命働く夫。
その背中を見ながら、すくすく成長してゆく息子。
そんなごくありふれた普通の家庭……。
それが彼女のずっと望んできたものだったのだから……。
○『SCENE12』
そして1時間後……。
案の定、収拾がつかなくなった宴会場の片隅で、完璧に酔いが回ったマヤが
日向に頬ずりしていた。……まったくもって、うらやましい奴である。
「日向ク〜ン……すりすり……」
「ちょ、ちょっと……伊吹さんっ!」
戸惑いながらも内心かなり喜んでいる日向であったりする。ふと日向は青葉
が気になってそっちの方を見た。すると
「青葉さんってカッコいいなぁ」
「いやぁ……そっかな……」
ニコニコと楽しそうに笑ううららの隣で、青葉が照れくさそうに笑っていた。
うららは恨み言葉を残して学校へ帰ってしまったカヲルから標的を変えたら
しかった。けれど、青葉の笑みは少々引きつっている。どうやらうららのよう
なタイプは苦手らしい。それを見た日向はくすっと微笑んだ。
いつの間にか膝の上に心地よい感触を感じて、日向が膝の上を見ると、マヤ
がすうすうと小気味よい寝息を立てていた……。
そこから少し離れた席で、冬月がお猪口を傾けている。やっぱりミサトに捕
まったらしい。彼の視線の先には加持や大和と話をしている春香の姿がある。
‥ 確か大和君と同じくらいの歳か…… ‥
冬月の空になったお猪口にすっと誰かが日本酒を注いだ。
「……ミサトに捕まるなんて、災難でしたわね」
……リツコだった。彼女はすっと冬月の隣に腰を下ろすと、ちらりと春香達
の方を見てからフフッと愉快そうに微笑んだ。
「私の相手なんかしていていいのかね」
少し意地悪な口調で冬月は言う。
「あら……副司令こそ私なんかが相手でよろしいんですか?」
隣で酔いつぶれているヒカリを気遣いながら、悪戯っぽく微笑んでリツコは
言った。冬月は思わず頬を赤く染めると、ぐいと酒を飲み干した。
そんな冬月を離れた場所から見ていた春香はくすっと微笑むと、目の前のサ
ワーのグラスに口をつけた。隣で加持がなにやら口説いているが、彼女の耳に
は全く入ってはいないらしい。
「加持っ! あんた何やってんのよっ!」
その加持もミサトにどこかへ連れていかれてしまった。
春香は加持を引きずってゆくミサトの背中を見ながら微笑むと、また冬月の
方へと視線を移した。
愛しい男の顔を見ながら飲む酒は、格別なものがあるらしい……。
「そうなんですか〜……すごいわぁ〜」
そんな春香の隣で、ミオが向かいに座るトウジを見ながら感心したように言
った。彼女は少したりとも酔ってはいない。なぜなら真面目な彼女は最初から
一滴もアルコールの類を飲んでいないのだから。
「い、いやぁ……」
トウジもまんざらでもなさそうである。
これはこれでいいのかもしれないが、トウジ……本当にいいのか?
「シンジっ! 今度はあれが食べたい」
シンジの目の前の大皿を指さしてアスカが言った。あ〜んと口を開ける。
「ったく仕方がないなぁ……」
そういいながらも、大して嫌がる様子もなく、シンジは箸でそれをアスカの
口へ運んだ。
「……んっ……美味し……」
そりゃあ美味しいだろう……好きな男に食べさせてもらえるのだから……。
それはともかく、一度レイに敗北を喫したアスカがなぜここにいるかという
と、レイが席を外した隙を見計らって、シンジの隣をしっかりキープしたから
だったりする。当然シンジは何も言えず、ただアスカに従うしかなかった。
幸せそうに料理を頬張るアスカを少し離れた場所から見つめるルビー色の瞳。
その瞳はどことなく寂しげで……せつなかった。
「……行ってこいよ。話したい事、まだたくさんあるんだろ?」
突然後ろから声を掛けられて驚いたレイが振り返ると、アヤが微笑みながら
立っていた。
「後悔しても知らないぜ」
悪戯っぽく、けれどやさしさの感じられる口調でアヤは言う。
「……後悔……」
レイはぎゅっと奥歯を噛みしめると、しゃきっと立ち上がって、つかつかと
アスカとシンジの方に歩み寄った。そして驚きの表情で見ているふたりに構わ
ずシンジとアスカの間に無理矢理割り込むと、アスカと同じようにシンジの前
の大皿を指して言う。
「……碇君……それが食べたい……」
呆気にとられていたシンジはふと我に返ると、クスッと微笑んで、アスカの
時と同じように料理をレイの口へ運んでやった。
嬉しそうに料理を噛みしめるレイを、シンジは微笑みながら見つめる。
「……っくう〜っ! ファーストっ! いい度胸してるじゃない!?」
アスカがそう怒鳴っても、レイは素知らぬ顔で今度はさっきの大皿の隣の器
を指さした。
「……今度はそっちがいい……」
シンジはクスッと微笑みながら、またレイの口へと料理を運ぶ。
「無視するんじゃないわよっ!」
一瞬、レイが悪戯っぽく笑ったように見えたのは、アヤの気のせいだったの
だろうか……。そう思えるほどに、レイには今の状況を楽しんでいるような気
配が伺い知れた。
アヤは今さっきまでレイが座っていた座布団の上に腰を下ろすと、自分でビ
ールをグラスに注いで、一気にそれを飲み干した。
ふと辺りを見回す。大概が2、3人で固まっているものの、一人だけアヤと
同じようにポツリとグラスを傾けている人物がいた。不意に視線が合うが、な
んだか照れくさくて視線を逸らす。
しばらく一人で飲んでいると、後ろから声を掛けられた。
「ひとりなのかい?」
アヤが後ろの方を見上げると、さっき視線があった男……大和が笑って立っ
ていた。
「まぁね……」 わざと興味がなさそうにテーブルの方へ視線を戻す。
「未成年にお酒をすすめるのもなんだけど、よければ付き合わないか?」
手に提げた一升瓶を掲げながら大和は言う。
「べ、別にいいけど……」
「じゃ、失礼して……」
大和は笑みを浮かべたまま、少しだけ頬を染めたアヤの隣に腰を下ろす。
冬月の隣で、リツコがそんな大和とアヤの姿を、じっと見つめていた……。
そんな束の間の宴もやがて終宴の時を迎える事となり、みんなそれぞれに再
会を約束して別れる事となったのだった。
でもまぁ、近いうちに第2回が開催されるのは間違いないだろう。
ネルフに葛城ミサトがいる限り……。(笑)
○『SCENE13 〜ムーンライト〜』
日も変わろうとしている第3新東京市のとある住宅街を歩く2つの影。
「お互い……世話の焼けるお姫様を選んだもんだな……」
眠ってしまったミサトを背負った加持が悪戯っぽい口調で言った。
「……えっ? そ、そうですね……」
同じく眠ってしまったアスカを背負ったシンジが答える。
「……ま、葛城は誰かそばにいてやらないと危なっかしいからな……」
そう言う加持の額の生傷が痛々しい。今日も傷が5つも増えた。
そんな加持の充実したような表情を、シンジはうらやしいとさえ思う。
「……シンジ君もアスカのこと……そう思えるようになったかい?」
「……まだ……僕には分かりません……」
「……そうだろうなぁ……俺も気付いたのはごく最近だったからな……」
空に浮かぶ月を見上げながら加持は言う。
「焦る事はないさ……。それにシンジ君にはもうひとり、そばにいてあげたい
女の子がいるみたいだしな……」
「そ、それは……」
「隠すことはないさ……。アスカも多分それを分かってる……。結果はどうあ
れ、君が自分で出した結論なら誰も文句は言わないさ」
シンジは何も言わず、加持の後ろを着いてゆく。
‥ 僕はどうすればいいんだろう……? ‥
淡い月の光がアスカの栗色の髪を照らし出す。
振動で身体が揺れる毎に、彼女の自慢の栗色の髪はロマンティックな淡い光
を放っていた……。
一方、そこからかなり離れた住宅街の細い路地を、背中にリツコを背負った
大和が歩いていた。
その後ろからは頬を上気させたレイとアヤがてくてくと着いてきている。
さっきからレイは嬉しそうに微笑んだままだ。
どうやら大和の背中で嬉しそうに寝息を立てているリツコの姿が嬉しくてた
まらないらしい。そのレイはふと隣に目をやった。
‥ アヤ……さん……? ‥
今まで見た事もない熱い瞳で、アヤが大和の横顔をじっと見ていた……。
そして数分後−−
「……ありがとうございました……」
玄関の先でリツコを支えながら、レイが言う。
「……失礼じゃなければ、中まで手伝おうか」
「いえ……大丈夫ですから……。おやすみなさい……」
レイが微笑みながらそう言ったので、大和とアヤはそのままリツコのマンシ
ョンを後にした。路地へ出た所で不意に大和がアヤに尋ねる。
「君の家はどこなんだい?」
「ここから歩いて20分くらいだけど……?」
不思議そうな顔でアヤは答えた。
「送っていくよ……」
「……えっ!? だ、だって駅と反対方向だし、少し遠いし、それに……」
アヤは頬をほんの少し赤く染めて、地面の上に視線を落とした。
「女の子を一人で返すわけにはいかないだろ? ほら、行こう」
歩き始めた大和の背中をアヤはぼーっと見つめていたが、やがて我に返ると
彼の方へ向かって駆け出した。
「そっちじゃないぜ!」
「えっ?」
大和が立ち止まり、振り返る。
「嘘だよ!」
その大和の額をポンッと叩いて、アヤは真横を走り過ぎていった。
「ほ〜ら、オレを送ってくれるんだろ? ついてこられるかな?」
悪戯っぽく笑いながら、アヤは駆けて行った。
「当たり前だろ」
大和は笑みを浮かべると、勢いよくアヤの後を追った。
静まり返っていた住宅街に響くふたつの足音。
満月の光が、ふたりの姿を鮮やかに照らし出している……。
○『SCENE14』
大和とアヤにお礼を言って別れた後、レイはリツコの肩を抱いて、彼女をベ
ッドのそばまで連れてきた。掛け布団をめくり、真っ白なシーツの上にリツコ
を寝かせようとすると、突然リツコがレイにしがみついてくる。
『……レイ……大好きよ……だ〜いすき』
おそらく酔って寝ぼけているのだろうが、リツコはそう言いながらレイの首
根っこをぐいと引き寄せた。
酔っぱらいの力は強い。一瞬抵抗しようとしたレイではあったが、ふと微笑
みを浮かべると、リツコのされるままに任せて、彼女の胸の感触を思う存分に
味わうことにした。
『ず〜っとそばにいてあげるからね……』
レイをひしと抱きしめたまま、リツコがひとり言のようにつぶやく。レイは
ハッとした表情を浮かべたが、瞼を閉じると、じっとリツコの体温を感じた。
『……もうひとりになんてしないから……』
はっきりと聞き取れなかったが、おそらくそう言ったのだとレイは理解した。
そのふくよかなリツコの胸に、レイは頬を擦り寄せる。
‥ ……あたたかい…… ‥
リツコの心臓の鼓動が聞こえる。ひとつひとつ確実に打ち鳴らされる胸の鼓
動。自分の心臓も、こんな熱い響きを奏でているのだろうか?
レイはそんな事を思った。
『……う〜ん……』
少し苦しくなったのか、リツコが力を抜いたのを見計らって、レイは彼女の
腕から脱出した。衣服の乱れを整えながら、リツコを見下ろす。
肩口で切りそろえた金色の髪。きりっとした眉に、すっと通った鼻筋。そし
て薄紅色の唇……。
じっと見つめていると、なぜか熱いものが胸にこみ上げてくる。
「…………」
レイは吸い寄せられるように、リツコの頬に唇を近づけた。
自分の頭にある限りの知識を元に、唇を頬に触れさせる。今までに味わった
事のないそのやわらかな感触は、なんだか変な気分だったけれど、とてもやさ
しい気持ちになれたような気がした。
レイは唇を離すと、リツコの寝顔を見下ろした。幸せそうで、そして安らか
な寝顔……。いい夢を見て欲しいと、レイは心からそう思う。
「おやすみ……なさい……」
そう小さく囁きながら、リツコの肩に布団を掛け直して、レイは扉の方へと
振り返った。
明日の朝、自分を抱きしめたことなど、多分彼女は覚えてはいないだろう。
でも、私は忘れない……。
レイは胸に誓うと、部屋の明かりを消して、リビングに出ていった。
やわらかな、そしてやさしげな満面の笑みをたたえて……。
隠れていた月が雲の隙間から現れ、やさしく、そしてやわらかに リツコの
顔を照らした。
その顔にはあふれんばかりの微笑みと……ひと雫の涙。
月の光のヴェールを身体にまといながら……リツコはひとときの眠りにつく。
……きっと今夜は素敵な夢が見られることだろう……。
○『エピローグ』
その翌日の事である。
レイの短大近くのあのジャンボパフェの喫茶店の前の通りを、レイがミオの
手を引いて、嬉しそうに歩いてくる。その後ろには苦い顔をしたアヤとニッコ
リと微笑んだうららが並んで着いてきていた。
「だから、オレは甘い物が苦手だって言ってるだろ」
「いいじゃな〜い。せっかくレイちゃんとミオちゃんが仲直りしたことだし、
その記念にね」
「……そもそも、その喧嘩の原因はお前なんだぜ……」
「何か言った?」
「ったく、全然反省の色がないな」
そうこうしている内に、4人は喫茶店にたどり着いた。レイが勢いよく扉を
押し開けると、今日も彼女の透き通った声が聞こえた。
「あ〜ら、いらっしゃい。今日は大勢ね」
カウンターの中からこの店のウェイトレス・優美が微笑みながらレイ達の方
を見て、やさしい口調で言った。
お昼前ということもあってか、広い店内にはお客はひとりしかいない。
「……じゃ、そろそろ仕事に戻るわ」
そう言ったそのたったひとりのお客はうららと来た時におしぼりを持って入
ってきたあの青年だった。
「そう……? しっかりと働いてきなさいよ」
「お前に言われなくったって分かってるよ」
横に置いてあったキャップを深くかぶりながら彼は言う。
「ふんっ……だったら普段からもっとしっかりしなさいよねっ」
ちょんと青年の額を小突きながら優美は微笑んだ。
「……じ、じゃあな……」
青年はちらりとレイの方を見てから、そそくさと横を通り過ぎ、店を出てい
った。彼の頬がほんの少し赤く染まって見えたのは気のせいだろうか……。
レイはクスッと微笑むと、ミオの手を繋いだまま店の隅のテーブルに席をと
った。ここからだと、表の景色がよく見えて、日当たりも良い。
「今日も暑いわねぇ……じゃ、メニューが決まったら言ってね」
優美は微笑みながら、水の入ったグラスをテーブルに置くと、軽い足取りで
カウンターの方へ戻っていった。
まだミオは少し不安そうな表情を浮かべたままで座っている。どうやら講義
をサボってしまった事にまだ引け目を感じているらしい。楽しそうにメニュー
を見ているうららを横目で見ながら、アヤは窓の外に目を向けて言った。
「つまんない講義なんてさ、さぼっちまえばいいのさ」
アヤの言葉に、ミオは少しだけ怪訝そうな顔を見せた。
「いつも一生懸命なのもいいけど、そのうち疲れちまうぜ」
その言葉に、ミオはなんとなく視線を背ける。
「……講義を受けるのも大切かもしんないけど……こうやって講義をサボって、
みんなでこうやって遊べるのも……今だけなんだからさ……」
アヤは少し照れくさそうに言って、窓の外に視線を背けた。ミオはハッとし
たようにアヤの方を見てから、レイの方を見る。レイはミオと視線が合うと、
ただ一度だけ、こくりとうなづいた。
「そうそう、講義をさぼって遊ぶのってサイコーだよ。このスリルがたまらな
いのよねぇ」
「うららは黙ってろ」
「なんでよぉ?!」
ぷうーっと頬を膨らませてうららは反論する。
「お前が口出しするとロクな事にならないんだよ。少しは反省しろ」
「いいじゃない。こうやってまた仲直りできたんだし……ねっ?」
うららはレイとミオの顔を交互に見た。
ふたりはお互いの顔を見合わせてから、照れくさそうにうなづく。
「……ったく……少しは反省しろよな」
仏頂面で窓の外に目をやってしまったアヤを見て、レイはクスッと微笑む。
「よっし、ここはうららのオゴリだ。ミオ、レイ、遠慮なく頼め」
「なんでよ〜っ?」
ぷぅ〜っと頬を膨らませてうららが言う。
「少しくらいいいだろうが。お前、昨日バイト代入ったばっかだろ?」
ここで初めて、ミオはうららがアルバイトをしている事を知った。遊びの為
だけに学校へ来ているなんて思っていた自分を反省する。
「っんもうっ! ……いいわよ、オゴってあげる。でも、レイちゃんとミオち
ゃんだけね」
「なんでだよ〜?!」
「アヤちゃん、もう友達じゃないもん」
ぷいと顔を背けながら頬を膨らませてうららは言った。
「お前ね〜……まだ根に持ってんのか?」
頬杖をついたまま、アヤは呆れたような顔でうららを見た。
「一生忘れてあげないんだからっ!」
「3歩歩けば忘れるクセに……」
「あ〜っ……またうららの悪口言ったぁ〜っ!」
そんなふたりのやり取りを、レイとミオは微笑みながら見つめていたが、ど
ちらからともなくお互いの顔の方に視線をやった。
そして微笑む……。やさしく、そしてやわらかに……。
「にぎやかね」
優美が微笑みながら、パフェを4つテーブルの上に置いた。そのパフェのあ
まりの巨大さにミオは言葉を失う。
「……すごいでしょう……?」
レイの言葉に、ミオはただこくりとうなづくだけだった。
「……七瀬さんに……食べさせてあげたいって思ったの……」
カラフルなパフェの山の向こうで、レイがニッコリと微笑む。
その顔を見て、ミオはそっとやわらかな微笑みを一面に浮かべた。
「わ〜い。パフェだパフェだ」
うららがきゃいのきゃいのとはしゃいでいる。
「ほら……もう忘れてるだろ?」
アヤがうららを指さしながら言ったので、レイとミオは思わず笑ってしまっ
た。
‥ ずっと一緒にいられたらいいな…… ‥
レイは心からそう願う……。
その日。その喫茶店にはお昼をかなり過ぎるまで、少女たちの楽しげな話し
声と幸せそうな笑い声が響いていた。
この少女たちの未来に幸多き事を 心から祈りたい……。
『ムーンライト』(了)
【あとがき】
『女子大生・綾波レイ シリーズ(PART4)
「ムーンライト」』
をお届けしました。
というわけで、レイとミオの初めての喧嘩もなんとか解決したようです。
徐々になだれこんでゆく宴会シーンは我ながら感心してしまいます。
この話で、ミオは『生真面目』、アヤは『他人思い』、うららは『能天気』
というように、カラーが明確になりましたね。(^^)
これからも彼女らを交えて、レイは楽しく素敵な学校生活を送れることでし
ょう。(^^)
でわでわ、またお会いしましょう。