ねじ式
(1998)

監督:石井輝男


石井輝男による、

「ゲンセンカン主人」(93)に続く、つげ義春原作の2度目の映画化。

「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎや主人」を繋げて、「ねじ式」に雪崩れ込む、

売れない貸し本漫画家=ツベの彷徨を描く怪作。

久々に石井輝男の映画を見たけど、そのテイストは変わってないナァと感じた。

過去にゃ、

「網走番外地・望郷編」(65)

「徳川いれずみ師 責め地獄」(69)

「江戸川乱歩全集 恐怖畸形人間」(69)

「亡八武士道」(73)

ぐらいしか見てないが、美女が劇中、滅茶苦茶な扱いを受ける

(睡眠薬を飲んだツベが、病院で長々と爆発的な小便をするシーン。

意識不明のツベの体を支える看護婦に、小便の嵐が!)とか、

脇役の男優が別の世界の生物?(シェパード、国子の浮気相手の男、もっきり屋の客)

といった味は変わってないのじゃ。

いきなり舞踏の赤い映像で始まる所とかね。

「もっきり屋の少女」と「やなぎや主人」の部分の出来は完璧だと思う。

特に、「もっきり屋の少女」!コバヤシチヨジ役のつぐみが良い!

幻想的な「ねじ式」には多少不満が残る。

スパナを持った背広の男は滑稽に描かれていたが、

脂ぎった政治家ふうの男と原作では思っていたので意外だ。

蒸気機関車もミニチュアではなく、本物を走らせて欲しかった。

機関車がもと来た村へと逆走する過程の説明は不要では?

「死と真夜中に巨人化」の描写がなかったのは?

ラストもモーターボートに乗って海に去って欲しかった。

全体的に「田園に死す」(74)ぐらい作り込んで欲しかったなぁ。

しかし、ツベ役の浅野忠信赤いパンツは視覚的に新鮮。

浅野を見てると妙に現代的な存在っていう印象があるが、

どんどん駄目な方に流れてゆく下降思考(?)を

見事に体現していると感じたのじゃ。

98/10/24


Kの独善的評価 ★★★★(近年、なかなか見れない類の作品である)


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