監督:崔洋一
1995年 日本映画 138min
Y氏曰く「あの膨大な情報量の物語を2時間の映画にすることじたい無理がある」
確かにこれは当たってる。
映画を見ていても何がなんだか訳が分からないと思う。
ダイジェスト版といった作品である。いや、縮小ANOTHER版だろうか?
全然小説と別物とも見えるんじゃ〜。
背後に迫ってくる山の圧迫感、押しのけても押しのけても重く垂れ
かかってくる氷のカーテンの冷たさが無く、しらじらとした刑事物におちついている。
野村ひさし殺害の背景となった学生運動を重要視しすぎで、
山で殺したことは二の次になっている。
また、連続殺人者マークスの描写がよろしくない。
陰と陽とがはっきりしない。
脳髄にぶら下がっている別の人格マークスは、眼球が眼底を覗き見
るようにぐるりとまわり、
毛細血管が無数に浮いた白目が炎を放つ顔貌となるはずなのに、
それがない。
小説の水沢=マークスは怖ろしい人物だった。晴天がはじけたかのような、
度を超した爽快な笑い声としなやかな跳躍力。
しかし、薬漬けにされて壁に糞を投げつける。
生まれてこの方、甘いものを喰ったことが無く、
精神病院-刑務所と、金をほとんど必要としない生活を送ってきた。
まるで別世界の男である。しかも、男とも女とも寝る。
精神の根底には暗い山がある。
小説を読んでいてマークスが出てくると怖いと思った。
平気でセメントを飲む人間は、経験情報の中には存在せず、
想像できない。
映画作品は、小説のイメージでしかないだろう。
そこでは、合田も水沢も林原も血肉の通った存在ではある。
96/07/04
Kの独善的評価 ★(もう少しまじめに作ってちょうだい)